第57回日本呼吸器学会学術講演会 が開催され、学会発表ならびに、最新の知見を学んで参りました。

2017年4月21日−23日に、東京国際フォーラムにおいて第57回日本呼吸器学会学術講演会 が開催され、学会発表ならびに、最新の知見を学んで参りました。
以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

ランチョンセミナー2

GOLD2017 Report major revisionの意味するところ~日本人COPD患者の特徴からみた課題とは~
北海道大学呼吸器内科学分野 西村正治先生(GOLDの理事もされている。)

GOLDは5年ごと改訂される。昨年末に改訂されたばかり。
Chapter1 定義の変更
Chapter2 ABCDアセスメントツールの変更
Chapter3 吸入療法アセスメントの重要性に言及
Chapter4 escalation について
Chaptere5 急性増悪の管理について

・COPDは予防可能で治療可能な疾患である。
2016では通常は進行性 →2017で削除 治療すると呼吸機能が維持される。
COPDは低下群や急性低下群もいるが、維持群も3分の1程度あり。
男性25歳ごろに肺機能のピークがある。
もともと肺機能が低い患者は、COPDになりやすい。
リスク評価からFEV1.0 を除くので、2016でGroupDと分類したものがGroupBに変更になることもある。
SHINE studyでは日本人のQOLアンケートスコアとBMIがともに非常に低く、予後不良のはずであるが
現実は死亡率は低い。
北海道コホート患者と欧米大規模研究の比較では
 N=256 を10年フォロー。欧米では心血管系イベントで死亡しているが、日本人は呼吸器疾患で死亡。
 死亡の約20%はガンである。ガン死亡を予測する因子は認めなかった。唯一肺気腫がつよい群がややガン死しやすい。
・ACOとは:
 COPDには非気腫型の存在がある
 気管支喘息には好酸球性のほか好中球性もある
呼吸器科医が気管支喘息ではないと診断した患者の中で Athma-like featuresを検討。
 気道可逆性陽性
 末梢血好酸球数 300/μL以上
 アトピー素因
これらの3つとも異常だったのは数%あり、全くない人は50%しかいなかった。
10年間で予後良好なのは、喘息様の特徴が2つ以上もっていてICSが入っている群であり、
もっとも予後不良なのは、喘息様の特徴が全くない群(Suzukiら AJRCCM)であった。

生物学的製剤と抗酸菌感染症 (日本結核病学会との共同企画

生物学的製剤投与患者における抗酸菌感染症の発症機序

 大阪大学 朝野和典先生
結核はTNF-αとINFγで協力して肉芽を形成する。
結核で肉芽を形成するにはTNF-αを介した作用が必要であり、肉芽をTNF-αが維持している。
抗TNFα抗体を投与したら、マウスの肉芽が崩れた。
※非結核性抗酸菌症の機序が結核と同じかどうかは不明。
・抗TNFα抗体投与後の結核は肺外結核が多いのはなぜか。
 小児は肺野の一次病変後にリンパ節に取り込まれるが、免疫が確立していないので、
その後肉芽腫で局所にとどめておく力が弱く播種しやすい。
成人の免疫抑制状態も同様であろう。
242人の抗TNFα抗体をうけるRA患者で半年以内に結核発症した症例は、ベースにIGRA陽性の患者であったが、20ヶ月以上で発症の症例は当初はIGRA陰性で発症時は陽性となった。

まとめ
潜在性結核の治療により発症を減らせる割合は、約60%。
投与中のIGRAの値の変化は結核の発症を予測できるかもしれない。(まだエビデンスはない)

結核の診断と治療

 NHO東京病院呼吸器センター 永井英明先生
結核発病リスク要因はエイズが50-170倍、生物学的製剤投与は4倍である。
4倍以上は積極的に予防内服することを推奨。
罹患率は10万対14.4 (米2.8、英は10) 結核蔓延国であるが10未満で蔓延国でなくなる。
新規発症は58.9%が70歳以上、80歳以上が38.3%、若年者はほとんど外国人である。
入国時に検査が不十分、日本人学校での集団感染も報告が増えている。HIVは無関係。
年齢別推定既感染は50歳で10%未満まで低下している。
米はRA患者のTBは19.2/10万人 抗TNFα抗体投与すると40/10万人以上に跳ね上がる。
アダリムマブが最も発病リスクが高く、エタネルセプトが最も低く比較的安全。
日本におけるRA患者の結核発症リスクは4倍である。
インフリキシマブとアダリムマブはTB-responsive CD40 の比率を70%と50%低下させるがエタネルセプトはその作用が低い。
・結核のスクリーニングについて
 胸部レントゲン・CT・IGRA など。
・治療の注意点
発症した結核は治癒後からTNF-α製剤を投与すること。
結核感染が疑われる場合は投与3ヶ月前からINHを投与してから続いて抗TNF-α抗体を投与。
抗TNF-α抗体投与中の結核発症は、基本はTNF-α抗体を中止して結核治療をする。
メソトレキセートは抗結核薬との相互作用は確認されておらず主治医判断で投与。
ステロイド薬はリファンピシンにより血中濃度が低下するので2-3倍量を投与。
生物学的製剤:日本では中止することになっている。しかし、中止により回復した免疫反応により局所反応が増強する→生物学的製剤の再投与により病状が安定。
これは免疫再構築症候群 と考えられる。
・生物学的製剤を投与中は予防内服を続けるべきか。
 HIVの論文では、6ヶ月よりも36ヶ月治療のほうが有効(ボツワナ)。
 6ヶ月と5年では差がない(南アフリカ)。
 6ヶ月の標準治療後にINHを12ヶ月投与すると結核再発を7.8→1.4/1000人に発症率が減った。

※今後外国人留学生の結核発症が問題になってくるであろう。IGRAと胸部レントゲンは必須である。

非結核性抗酸菌症の診断と治療

 近畿中央胸部疾患センター 鈴木克洋先生
現在150種類以上のNTMがあり30種類が人に感染する。
ヒトーヒト感染しない。
診断基準を満たす必要あり。
経過が極めて緩慢、 年単位である。
診断基準 :それらしい画像所見と喀痰から2回、あるいは気管支鏡で1回起炎菌検出したら確定診断。
肺NTM症の推定罹患率14/10万人、 88%がMACである。
結節気管支拡張型肺MAC症の再発はほぼ再感染だった!
633例5年死亡率は23.9%
無治療で経過観察してもよいもの(演者の私見)
 高齢
 やせていない。
 画像で空洞なし
治療期間は空洞型は排菌陰性化後1年ではなく2年が望ましい。1年では再発しやすい。
NTMに抗TNF-α抗体を投与してよい場合は、
 服薬がきちんとできている。
 全身状態良好
 画像で空洞なし
 CAMの耐性がないこと。
※ IGRAが陽性の症例は、例えMAC症であっても経過で結核発症する可能性があり注意すべき。
※ RAに抗TNF-α抗体投与中に画像が増悪し、排菌では抗酸菌でず、抗MAC抗体を測定すると陽性となった場合、治療はどうするか? エビデンスはないが、演者の個人的な意見では治療すべき。

発症予防

 大阪府結核予防会大阪病院診療部内科医 松本智成先生
RAの治療 ;NMB、 NSAIDs、 MTX、 Biological
アダリムマブ(ヒュミラ)の投与前スクリーニングで異常なしでも、結核発症患者の42.3%が異常なしの判定だった。→生物学的製剤投与は結核発症をいつも念頭に置く必要がある。
投与開始6ヶ月以内の発症が多いのは間違いないが、それ以後も3ヶ月毎の集計で36ヶ月まで1-6人程度は発症している。しかもINHで予防内服していた患者が半数近くであった。
アダリムマブ投与7000人以上を演者が解析したところ、INH投与していない患者のほうが結核発症は有意に高かった。 
スクリーニングをして高リスク群にLTBIの治療を実施が妥当である。
INHの肝障害があるかどうか、INHの忍容性をみるならINHは3週間ではなく2ヶ月くらい経過をみてから抗TNF-α製剤を投与したほうがよいのではないか。

※アダリムマブの結核発症時の症状は、発熱、全身倦怠感、食欲低下、体重減少、発汗、→このときにIGRA測定すべし。
発症時は89.6%がIGRA陽転化した(しかも3以上の結構高い値)。
注意は、画像が少し遅れて粟粒影がでてくる可能性がある。
※結核発症を抑える場合、アメリカではINHを積極的に行ったところ、INH耐性はまだでていないらしい。演者らの経験でもINH耐性が誘導されたという明確な報告はない。

ランチョンセミナー18

血痰・喀血の治療戦略と血管内治療の実際 

喀血患者をUnmet medical needsにしないために

 NHO東京病院呼吸器センター 川島正裕先生
・喀血の疫学データについて本邦ではビックデータによる報告はないが、フランスからの報告がある。
全入院患者における喀血患者の割合は0.17%、特発性 48.9% ・・・やたら多い
 その他呼吸器感染、肺癌、抗凝固療法、気管支拡張症 などが原因としてあがる。
特発性喀血の再喀血率は35-40%と非常に高い。→基礎疾患の診断と治療がなされていないことが原因ではないか。
演者らが2008年-2009年に喀血で入院した患者を3年間経過観察したところ、
気管支動脈塞栓術BAEを実施したのは2008年4.1% 2009年4.3% しかなかった。しかも塞栓部位は1-2箇所と少なかった。
フランスの疫学調査を参考にすると、本邦では3万人以上喀血の入院患者がいると推定される。
・喀血患者の予後は肺癌をのぞいても初回入院時5-7%の死亡率、2回めで13-16%の死亡率である。
生命予後因子として
 喀血量、臓器因子 が挙げられる
24時間に200ml以上の喀血を”大量喀血”と定義される。
大量喀血では報告にもよるが10-50%の死亡率であり、BAEを行うと10%前後まで低下させられる。
まずBAEで安定させて、その後手術すればさらに死亡率を低減できる。
・内科的な治療として、
 基礎疾患への薬物治療(肺NTM,肺結核、肺アスペルギルス症、肺癌)
 止血剤 トラネキサム酸は1週間後の止血率は変えないが速く止血するかもしれない。
大量喀血の死因は失血死ではなく窒息死である。
片肺挿管やバルーンによる止血
2万倍ボスミン、トロンビン散布、気管支鏡タンポナーデ、EWS、可視範囲ならYAGレーザー
OXIDASE、セルロース
BAEについては呼吸器内科も熟知すべきである。
・BAEの適応は、
 生命を脅かす喀血
 止血剤投与にもかかわらず喀血や血痰の持続・反復
 血痰の反復でQOLやADL低下、精神的不安を有するなど
・喀血の基礎疾患
 NTM24%、BE23%、肺アスペルギルス症18%、その他
2013年ー2016年までに360例の喀血、挿管の必要な重症喀血は13例3.8%のみ、待機的塞栓術がおおい。
喀血病巣をfeedingしてる責任血管を側副血管も含めて包括的塞栓することが重要である。
気管支動脈はTh5-7の下行大動脈から分岐している。
演者らはCT-Angiographyをまず行ってから、BAEをおこなう。
金属コイルによるBAE予後であるが、MAC症35例 1年後の88.6% 3年後70.4% 累積喀血制御率。
肺アスペルギルス症は1ヶ月で90%が再喀血する・・・早期に手術を。
489例の金属コイルによるBAEは無喀血生存率86.9%(Ishikawaら:BMJ)
周術期合併症2007-2016年 562例で縦隔血腫4例0.7% →保存的治療のみでOKだった。
※特発性気道出血 はCT-Angiographyを行うと、気管支動脈が2mm以下と細いことも多いが、僅かな毛細血管増生像もあるので、注意深く読影することが大事。座長によると1mmでも太いと言われていた。

難治性喀血に対するIVRの最新技術 update:塞栓物質の選択

NHO東京病院 長谷部光泉てるみず先生
大動脈造影だと喀血の責任病変は20-40%しか判明しないが、MDCT-Angiographyでほぼ判明する。
責任病変には、
 Bronchial artery
 Non-bronchial artery ・・・ 内胸動脈、肋間動脈、外側胸動脈→肺動脈へシャント、鎖骨下動脈から分枝する異常血管とか。
治療に用いる塞栓物質は、
 ビーズ: 球状
 金属: コイル Target coil
 液状: Onyx

教育講演16 がん免疫に関与するがん微小循環

西川博嘉先生
免疫チェックポイント阻害剤
レスポンダー バイオマーカー ノンレスポンダー 抗腫瘍免疫応答 遺伝子変異 非自己 Neoがん抗原
免疫抑制ネットワーク トランスレーショナル
免疫の基本は自己と非自己を見分ける、ということになる。(Ono oncologyのHP参照)
ガン免疫とは、まさに自己と非自己の見分けの研究である。
歴史的には、強い炎症をおこしたあとはガンが自然縮退する症例がある、と報告がある(William.B.Coley)。
ガン免疫編集(Cancer Immunoediting)
 体内で異常細胞が発現した場合、1.自己修復機能、2.免疫系の中で存在可能な細胞に変異、3.さらに進化?して免疫系から逃避する。
つまり2なら自己もどき、3は非自己に近く、現在がん免疫療法がいろいろ有効な状態は3である。
細胞内には自己の分子が多数存在するので、たったひとつの抗原シグナルが入っただけ(T細胞レセプターに抗原が結合)でT細胞が活性化すると問題が生じる。そこで共刺激というシグナルが入らない限りT細胞活性がおこらないような巧妙にコントロールする仕組みになっている。
T細胞の活性化を制御する共刺激(活性・抑制)分子群は多数あり
 刺激を促進する群・・・ブロッキング抗体
 抑制する群・・・
免疫治療は効果のない症例が必ず存在するが、その患者群に有用なバイオマーカーがあればさらに有用な治療有効群が探し出せ、無効群に無駄な治療をしなくてよくなる。例えば抗がん剤が効かない肺癌患者でも、EGFR遺伝子変異が陽性ならイレッサ有効群があきらかになり選択的に治療できる。
CD4+CD25陽性T細胞は免疫応答を抑制する制御性T細胞であり、1995年に同定された。
 自己の免疫寛容を司る非常に重要な細胞である。(自己免疫疾患の発症抑制の動物実験にて発見された。
メラノーマや肺癌はmutationがおおい。mutationとは免疫系では異物である。
mutation由来抗原はneoantigenと呼ばれる。自己抗原を認識するCD8陽性T細胞と制御性T細胞を共培養すると、CD8陽性細胞は分裂増殖を停止(免疫学的に不応答:Anergy)の状態になる。一方Neoantigen(外来抗原)をもつ細胞と制御性T細胞を共培養しても、細胞分裂は抑制できない。
どうやら抑制系が違うらしいことがわかってきた。
PD-1やPD-L1は非常に良いマーカーであるが、mutationであるとかそれを認識するCD8の反応も考慮にいれないと各患者の免疫応答を理解するのは難しいといえる。
 演者らはEGFR遺伝子変異の解析をしているが、wild typeのEGFR遺伝子変異の腫瘍には、腫瘍局所でCD8陽性細胞が多く、CD4が少なく、制御性T細胞も少ない。一方mutationの遺伝子変異の腫瘍には逆にCD8陽性細胞が少なく、CD4が多い、かつ制御性T細胞が多い。なぜなのか? wild typeの腫瘍局所ではPD-1がCD8に発現している。グランザイムの発現はCD8のいないT細胞に発現している。mutationの腫瘍ではそもそもCD8が少ない上に、PD-1はCD8に発現しておらず、CD4やTregに発現しているので、PD-1抗体を投与しても効果がないということになる。

教育講演17 特発性間質性肺炎 最新ガイドラインの動向について

坂東政司先生

間質性肺炎(IIPs)の種類は: IPF と non IPF(6種類)
「てびき」とは:IIPs診療における臨床現場の意思決定を支援する解説書
2009-2013年でIPFと診断した患者の14%にピルフェニドンを処方される。
AJRCCM 2011にはHRCTで典型的IPFなら肺生検なしに治療してよいとなった。
・国際IPFガイドライン(ATS ERS JRS ALAT)2015
→これを踏まえて2016年12月に日本の診断と治療の手引(改訂第3版)が作成された。
MDDを踏まえて,clinical IPF、IPF、nonIPF に診断を分類した。
 (MDD:multidisciplinary discussion: 間質性肺炎の診断に精通した臨床医、放射線画像診断医、病理医による集学的検討)
問題点:MDDの回数が多すぎると言われている。
MDD残された課題
 どのような患者に行うのか
 Teamメンバーは?
 テレビ会議でもよいのか
※疾患の経過に応じた対応についても柔軟な考え方が取り入れられている。
国際的には急性増悪も新基準が提唱されている。
 誘引のある急性増悪(triggerd AE)と誘引のない急性増悪(idiopathic AE)
かかりつけ医のための診療アウトライン ・・・フローチャートにされている。
・IPF治療ガイドライン2017年2月 (診断 とついていないのは、国際的診断に整合性を合わせるため)
 ガイドラインとは:診断は国際的整合性を重視し、治療については日本の現状を踏まえたものにした。
科学的根拠、系統的な手法により推奨を含む文書で患者と医療者を支援する目的で作成されたもの
Grade システム AからDの4段階でエビデンスを分類している。
ステロイド単独療法を行わないことを強く推奨する。推奨1、エビデンスD
ただし実臨床では典型的とはいえないIPF、たとえば自己抗体を認める膠原病の匂いのあるIPFなどは、この限りではない。
ピルフェニドンは使用を推奨する、が、実臨床では副作用との関連で選択されることが多い。
ピルフェニドンとニンテダニブの併用について →結論は先送り
急性増悪では、臨床試験を行うことは難しいので、ステロイドパルスは提案する、免疫抑制薬は一部有効なものもある、リコンビナントトロンボモジュリン(リコモジュリン®︎)、好中球エステラーゼ阻害薬、PMXなどは必要に応じて。

教育講演18 PPFE(pleuroparenchymal fibroelastosis)の病態

福岡大学 渡辺憲太朗
PPFE 残気率 抗線維化薬
まれな間質性肺炎に分類される。
典型例46歳 上肺野に陰影・胸膜側有意・嚢胞状となる部位がある → 気胸合併 →両上肺野に膿疱性病変 →呼吸不全進行し死亡60歳
頻度は少ないのか? 意外に多い?
PPFEと網谷病はどう違うのか
 網谷病は初期は上肺野に限局、その後徐々に下肺野へも進展 →結局区別は困難。
PPFEは肺線維症といってよいか。→言って良い。
PPFEにはIPFにみられるfibroblastic focusは認めるのか→古い線維化の発育先進部にはIPF同様のfibroblastic focusは認められる。しかもIPF同様に急性増悪を繰り返しながら増悪していく。
PPFEの扁平胸郭は先天性か後天性か →少なくとも線維化がすすむと、扁平化は進行するので後天性の要因はある。
肺の線維化だけで拘束性換気障害を説明できるか → 扁平胸郭も関与する。
例 TLC2930ml なのに、FVC870ml、その結果RV/TLCが非常に増大する。
↔ IPFのみならTLCとFVCはほぼ同様に低下する。
PPFEはどのようにして病態はできあがるか
急性肺傷害からPPFEに進展するのではないか?
弾性繊維が肺胞壁を取り囲むように増生し、とくに胸膜下に線維化が集中するのが特徴である。
急性肺傷害→マクロファージが回復に失敗→線維化の進行
線維化に関与する遺伝子の発現の亢進、線維化を抑制する遺伝子の発現の抑制 → 線維化の進行によるリモデリング →拘束性換気障害となる。しかしDLCOは意外に低下しない、つまり肺胞破壊が強くないからである。
PPFEは既往歴に注意。感染症が重要である。 呼吸器感染症、NTM、アスペルギルスなど。その他に悪性腫瘍治療、放射線療法、造血幹細胞移植、肺移植なども。
気胸はしばしば合併し再発もおおい。タバコも関連あり、やせは顕著で特徴的。
扁平胸郭が徐々に顕著となっていくが、IPFでは認めない。ばち指もPPFEでは認めない。
病理組織:上肺野はPPFE、下肺野は種々のパターンあり:IPF、PPFE、NSIP、分類不能など
肺胞構築は保持される つまり肺胞破壊はあまり認めない。↔IPF
FVCの低下が著しいのでRV/TLCは上昇する。
PPFEの肺機能的特徴
 肺の線維化による肺のコンプライアンス低下
 扁平胸郭による胸郭のコンプライアンス低下
予後:概してIPFよりもよいことが多い。が、ゆっくりとFVCが低下するものと比較的急激に低下するものがあり、様々。
診断基準案を現在研究班が作成中である。
※まとめ(PPFEの特徴)
やせ・ばち指なし・fine cracklsを聴取しない・扁平胸郭・RV/TLCが上昇する・DLCOは低下しない

教育講演19 最新の肺癌診療ガイドライン 改訂のポイント

和歌山県立医科大学 赤松弘明先生
肺癌治療の基本方針は、NSCLC(非小細胞肺癌)について切除可能な症例は手術、 放射線治療可能なものは照射、かつ化学療法も追加する。
改訂の主な改訂ポイントは、新規薬剤の登場による。

・主にNSCLC 2次治療としていろいろ追加された
トピック:NSCLCでは、ドライバー変異陰性でPD-L1≧50%ならペンブロリズマブ(キイトルーダ®︎点滴静注)単剤をfirst lineで投与を推奨。
ペンブロリズマブが化学療法に比して有意に予後延長した。
有害事象はペンブロリズマブに先行したニボルマブ(オプジーボ®︎点滴静注)と同様の副作用。 
ALK遺伝子転座陽性肺癌では、クリゾチニブ(ザーコリ®︎カプセル)とアレクチニブ(アレセンサ®︎カプセル)の比較試験では有意にアレクチニブが有効であった。
 → ALK陽性肺癌ではアレクチニブがFirst lineで推奨
トピック:ROS1遺伝子転座陽性肺癌:クリゾチニブ単剤をfirst line で推奨。現在はどこも測定ができないので、現段階ではガイドラインに入れるべきではなかったかもしれない。クリゾチニブが奏功するとの報告がある。Shawら(NEJM2014)、奏効率70%、平均生存期間19.2ヶ月と非常に有効性が高かった。ASCO2016でも同様の報告がなされており、1年以内に適応拡大される可能性が高い。
EGFR uncommon Mutation
エクソン19欠失・L858R変異陽性の場合には、EGFR-TKI単剤がfirst line。
 エクソン18−21の遺伝子変異の場合、ドライバー変異陰性の治療方針に準じる。

・NSCLC 2次治療における変更点
 オシメルチニブ(タグリッソ®︎錠)、 セリチニブ(ジカディア®︎カプセル)、 ラムシルマブ(サイラムザ®︎点滴静注)、 ニボルマブ(オプジーボ®︎点滴静注)などが重要な薬剤。
T790M陽性に対する阻害剤オシメルチニブOsimertinib(タグリッソ®︎錠)・・・ EGFR-TKIをFirst lineで使用し増悪例に対して、T790M陽性ならば投与可能。
 AURA3試験 オシメルチニブ群 VS プラチナ+ペム(この群に有効と言われる化学療法)
 HR 0.3と著名な差で有効であった。
 注意 間質性肺炎ILDがオシメルチニブで3%、化学療法で1% ・・・日本人は若干ILDが起きやすい(今まで同様)
 ※ 以前は再生検で証明が必要だったが、採取が難しい症例の場合には血漿から抽出したゲノムDNA中のEGFR T790Mが陽性ならオシメルチニブを使用してよいことになった。
ALK陽性肺癌でFirst lineでクリゾチニブ(ザーコリ®︎カプセル)耐性例に対して、セリチニブ(ジカディア®︎カプセル)が有効。
 奏効率37.1% 日本人では40%
 有害事象 下痢・悪心嘔吐・食思不振 が日本人では多い。→減量・休薬の頻度があがる。
ラムシルマブ(サイラムザ®︎点滴静注)(血管新生阻害薬) :ドセタキセルとの比較で10%の奏効率の上乗せがあった。
 Sqにも使用できる
ニボルマブ(オプジーボ):ドセとの比較で有効だった
ペムブロリズマブ PD-L1陽性例のみ
 SqではPD-L1<1%が確認された場合はペムは推奨しない。ドセを中心につかうこと。

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