第64回日本アレルギー学会学術大会に出席し、最新の知見について学んでまいりました。

第64回日本アレルギー学会学術大会 (2015.5.26-28開催)に出席し、最新の知見について学んでまいりました。
以下の記事はあくまで私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

◆シンポジウム10 汗とアレルギー

●発汗後の皮膚では細菌数が正常では減少するが、アトピー性皮膚炎(AD)では抑制されない。

汗腺は自然免疫の宝庫である
YokozekiH NEWTON 2012 8 汗は皮膚のバリア機能を高める?
※汗、汗腺の役割
 体温調節自然免疫など免疫防御機能
 幹細胞の倉庫:再生機能
 保湿効果
 バリア機能を高める
 排泄機能
 手足が滑らないようにする
 垢を落としやすくする
コリン性蕁麻疹
 小型の膨疹 チクチクとした痛み
 後天性無汗症を合併していることがある
 減汗性コリン性蕁麻疹
体温調節しているのはエクリン汗腺である。

S10−1
どの季節に生まれた子供がアトピーになりやすいか ・・秋
すなわち、南半球では春生まれが多い。
急性ADでは 汗は悪い。慢性ADでは 汗は良い。
手足の汗と体の汗は違う! 
なぜアトピーは増えたのか? 汗仮説・汗をかく機会が減ってきた。
角層の水分量のバランス
 外からの補給 汗 中からの補給  表面からの蒸発(TEWL)
健常人とAD患者では温熱負荷後の発汗が違う
 健常人 全身に万遍なく汗をかく、 AD患者はアンバランスに汗をかく→うつ熱をまねく。
皮膚にシリコンを貼り付けて発汗の様子を観察する研究では
 健常人は皮溝に汗腺が開いており、かつそこに汗がたまる。
 急性ADでは皮溝で汗はでなくなり、皮丘に汗(皮溝でなないので代償性の汗とかんがえられる)がでる。慢性ADになると皮溝も皮丘も不明瞭になりかつ汗もでなくなる。
ADの時期による発汗異常の進展
 急性AD まず皮溝からの発汗低下→角層水分量の低下 →皮丘からの代償性発汗→汗による増悪
 慢性AD 発汗機会の減少→皮丘皮溝の発汗低下→皮丘からの汗 皮下で汗が真皮内にもれて炎症になる。
皮溝の汗は主に角層水分量の維持に、皮丘からの汗は体温調節に働いている。
発汗異常はなぜ起きるか ・・ワセリンの過剰使用 ウイルス感染 ステロイド軟膏の多用など
ヒルドイドクリームを塗って6日目の皮膚は皮溝の発汗が認められるが、ステロイドホルモンを塗った皮膚では発汗はまったくなかった。→一部の保湿剤は皮膚の発汗反応を改善させる。(ヒルドイド)
アトピー性皮膚炎(AD)では汗をかかせたほうがよい。(昔はかかせない方がよいという考え方や指導があった。)
ADの汗管内に汗は産生されているが、皮疹のあるところの真皮には汗が汗管や汗腺周囲に相当もれていることが分かった。
アミロイド苔癬では
 発疹が多数あるが、汗管にアミロイドが多数たまっている。そこにヒルドイドを塗ると丘疹が目立つようになり、ヒルドイドラップをすることにより丘疹はなくなった。
→つまりヒルドイドを塗らないものは汗管で汗が漏れていたが、ヒルドイド塗布で発汗できるようになり丘疹がなくなるのである。
汗の表皮への漏れ→ DCDが表皮細胞を刺激 →表皮細胞CXCL10が発現し集まる
◯ まとめ 汗は全身にバランスよくかくことが重要 一部の保湿剤は発汗誘発剤である 
Q ヒルドイドローションがあわなくて、プロペトではべたつく →いろいろ試してみましょうとのこと。

●コリン性蕁麻疹における発汗障害 戸倉新樹 浜松医科大学皮膚科学

表皮下の交感神経末端のアセチルコリン → 発汗を促す 、コリン性蕁麻疹も促す
コリン性蕁麻疹は減汗している!
コリン性蕁麻疹機序の仮説
 アセチルコリン→肥満細胞脱顆粒促進(直接作用) →コリン性蕁麻疹
 アセチルコリン→発汗→汗管閉塞説・汗アレルギー説(間接作用)→コリン性蕁麻疹
正常の発汗:交感神経末端からアセチルコリン分泌されエクリン腺にはたらく→発汗あり、蕁麻疹なし
一方コリン性蕁麻疹の場合は、アセチルコリンがエクリン腺に向かわず肥満細胞に向かう→蕁麻疹
減汗性コリン性蕁麻疹 ・・・日本人に圧倒的におおい
内科は特発性後天性全身性無汗症IPSF と呼ぶ。 若年男性に多い。 減汗、疼痛、コリン性蕁麻疹を伴う。精神性発汗は保たれ、副腎皮質ホルモンがしばしば有効。両疾患ともにアセチルコリンM3受容体が汗腺上皮で低下している。発汗が改善しつつある部位にコリン性蕁麻疹が起こり、痛みも感じる。
汗アレルギーと比較して減汗性コリン性蕁麻疹では
 無汗部位に減汗性コリン性蕁麻疹は起こらない。
 無汗部位に汗の皮内反応は起こらない。
演者の仮説;低汗部位にアセチルコリン受容体は減少、アセチルコリンエステラーゼも減少。
アセチルコリンがオーバーフロウし周囲の肥満細胞に反応するため。
エクリン腺にMCP1 と TARCが産生が亢進している。

●アトピー性皮膚炎(AD)における汗アレルギー 広大皮膚科学 秀道広先生

汗はADの悪化因子である。汗をかくとかゆくなり、その後悪化することが多い
ADは 汗を自分の皮膚に注射すると皮内反応が陽性になり、ヒスタミン遊離試験陽性となる。
現在ではヒスタミン遊離試験によりヒト汗抗原の反応の原因としてマラセチア(ヒト表皮に寄生する真菌)の分泌するタンパク質の一部が汗抗原として同定された! ・・・マラセチアによるI型アレルギーと分かった。
9月に広島市内の学童に協力してもらい、シャワーするとADの増悪が抑制されることが分かった。
表皮で作られて抗原が真皮に入っていくという理論も考えられる。
タンニン酸はヒスタミンを失活させる。
 タンニン酸入りエアロゾルスプレイの臨床効果 →AD増悪抑制 
M.globosa(マラセチア・グロボーサ)
精製汗抗原(QR) は小児AD患者の3割から5割にヒスタミン遊離試験陽性と判明した。
血清中マラセチア抗原と汗抗原とは別物である。
M.globosaの分泌するMGL-1304 は、ヒト汗における主要ヒスタミン遊離抗原であるが、全てではない。
MGL-1304 はコリン性蕁麻疹を誘発させADを増悪させる。
ADではM.globosaの増殖が有害なのか?
そこで、AD患者IgEの結合するMGL_1304 のエピトープを調べたところ、
マラセチアは14種類同定されている。犬とヒトのマラセチアは進化的に近い。
犬マラセチアの抗原は、ヒトのマラセチア抗原と交叉反応する可能性がある。
Q:タンニン酸スプレーは手にはいらないので、一般的には推奨する入浴剤などあるか
九州では竹からつくった竹酢が民間療法で使われている 酢はPHが低くマラセチアを静菌的にする。タクロリムスもマラセチアに静菌的作用がある

●汗の対策

※ベース理論 汗を欠かせないようにするという指導はしていません。
汗の機能 保湿成分 乳酸ナトリウム 尿素 フィラグリンに由来する天然保湿因子
最近の報告では角質の保湿成分は汗に含まれる天然保湿成分が多い。フィラグリンが主ではない。
Newton2012 8月号 横関博雄先生監修
アトピー性皮膚炎(AD)の患者の汗と健常人の汗を比較したところ
 5mlの汗を採取するのに30分かかる(健常人は10分) ADのphは低い、タンパク濃度が濃い
汗をかくと痒みは抑制される Nattkemper Lら、 Br J Dermatol 2015,in press
かいた後の汗はどのように対策すべきか。
成人型ADでは発汗量が減少し、発汗に時間がかかる。
ADの発汗量低下のメカニズム 角栓形成 汗管からの皮下への汗漏出 ヒスタミンが汗管障害する。
では汗をかくだけで良いのか?
1.重炭酸イオンが汗のPHを決める。
汗が流れて肘窩などにたまる→汗蒸発→汚れがたまる→皮疹の悪化
 おしぼりで拭ってみる シャワーを浴びる 汗をかいたときは下着を着替える
Q;ワセリンを塗りすぎて逆に悪化することがあるがどうしたらよいか。
保湿について
汗をたくさんかくとすぐに保湿が保たれるわけではない。ADには炎症があり蒸散しやすいし、ADは角層に保湿能力が低い。ワセリンは発汗を抑制してしまう。 ヒルドイドクリームで汗をかくようになる。
Q:運動時の汗のpHは高いと言われるが、pHが高いとプロテアーゼ活性もあがると思われるが、どのように考えるべきか。
→汗のなかにプロテアーゼインヒビターもあり(例えばシスタチンAなど)それが活性を抑制するとかんがえられる。
汗はすべてのスタッフがととのっているよい保湿剤なのである。

◆教育講演7 真菌とアレルギー疾患 福冨友馬先生

重要真菌

 WHOには多数のアレルゲン真菌タンパク抗原が同定されている。

マラセチア アルテリナリア ペニシリウム 年齢があがるほど抗体価陽性率が低下する
年齢が上昇しても抗体陽性率が低下しないものとして カンジダ アスペルギルス 喘息重症化の原因として重要であろう。
屋外環境真菌 クラドスポリウム(梅雨と秋) アルテリナリア(梅雨) が2大真菌

アルテリナリア

 屋外浮遊真菌の代表 植物の表面で増殖 5−11月に検出
 胞子は大きいが、コンバインなどの機械的収穫で胞子が破壊されてアレルゲンとなりうる。アルテリナリア軽症喘息で感作率10%程度、重症喘息で約20%程度。
花粉の飛散時期に喘息発作が増える。
呼吸停止をきたした重積発作の喘息では11名中10名がアルテルナリアに感作されていた(NEJM)

雷雨関連喘息

アルテルナリア/クラドスポリウム感作が急性増悪の危険因子 
 破壊されたアルテルナリア胞子が増えて喘息発作 JACI2007
 (その機序)雷雨の天気予報→農家がコンバインによる雷雨前の刈り取り→小麦の表面に付着する胞子の粉砕→雷雨の到来→胞子の発芽→人口密集地の患者もアレルゲン大量暴露 (THORAX 2001 ;56 :468−471)
アルテルナリアのアレルゲン Alta 1 ・・・環境中で極めて安定 胞子の発芽で放出される
クラドスポリウム (黒かび)

主な屋外真菌

 屋内でも高湿度環境下では存在 フロでのクロカビ
 特異的アレルゲンが同定されていない
 クラドスポリウム単独感作症例は極めてまれ
 発作誘発閾値はアルテルナリアの30倍高い

屋内環境真菌

 ※ 屋内の環境真菌を同定することがむずかしいので研究がむずかしい
 屋内のカビ臭と喘息・鼻炎リスクが相関することが示された報告があるが、あくまでカビ臭。
我が国の屋内環境真菌
 1クラドスポリウム
 2アスペルギルス属 
 3ペニシリウム
 4アスペルギルスverc・・・
耐乾性・好乾性真菌が主体である。 すなわちペニシリウムとアスペルギルス属
 アスペルギルス・フミガタスだけでなく、アスペルギルス・レクトリクタスも重要
アスペルギルス・フミガタス(Af)
 室内環境真菌の少数派であるが、高い病原性 至適発育温度37度 胞子サイズ2−3μm
高いアレルゲン性で 吸入性<<気道内腐生(colonalization)して発症することが特徴
ABPA
Af感作例は低肺機能・気管支拡張に関与している。例えABPAの診断基準を満たしていなくても。
Af特異的IgE陽性喘息患者 つまりAfが気管支に腐生している重症喘息。 ABPAと同様の対処が必要。抗真菌療法有効。
喀痰Af培養陽性の喘息患者宅は、室内Af飛散量が多い。
※つまりカビ臭い家の喘息は重症化しやすい。 →環境整備が重要である。

マラセチア

 皮膚の常在菌
 脂質要求性 ・・・環境には絶対に生存しえない。
 癜風・マラセチア毛包炎・などに関与
 マラセチア粗抽出抗原は多数の抗原を含むので、交叉反応が多い。
Af特異的IgE陽性喘息患者はADを合併しているだけでAfに感作している。・・・交差反応

トリコフィトン

 
 皮膚糸状菌症の原因
 環境中にも存在するが少ない
 感作は 皮膚 頭皮 など
 白癬 が有名であるが、一部の喘息患者の重症化に関与している。
白癬合併重症喘息に対するフルコナゾール投与で喘息も改善する (JACI 1999 ;104 :p541)

カンジダ

 皮膚、消化管、気道に常在する酵母である。
 カンジダ・アルビカンス
 アトピー集団にIgE陽性率が高い
 Cystic fibrosis 患者の気道から高率に検出されるが、感作率とは一致しない。

カンジダにしかない特異抗原が重要な可能性。

Q:環境真菌の対策
まずは70%以下に湿度をさげる
湿度は室内でも局在性がある。風呂場、寝室のサッシの結露、など。
Q:食事で味噌 などで真菌感作されることはあるのか?
おそらく味噌の摂取ではないであろう。抗原が違うとかんがえられる。

◆教育講演9 アレルギー発症機序と発症予防戦略 松本健治先生

アレルゲン:免疫応答が過剰におきて宿主に不利益を与えるもの
 抗原特異的なIgE抗体を産生するよりも早くから慢性に経過する湿疹などの症状がある。
つまり、IgE非依存的なアレルギー反応が存在する。
Tollレセプターのないハエは生きたままカビが生えてくる。 自然免疫系

免疫反応はなぜ起きるのか

昔の理論;自己と非自己の識別 非自己を排除
デンジャ−モデル;新しい免疫の仕組み つまり自分の体に危険が生じると免疫反応がおこる。Toll様レセプターは細菌だけでなく、変性したヒアルロン酸、ヒートショックプロテイン などにも反応する。例え自己分子であっても体や細胞に障害を与えられるときは免疫反応を起こす。
体内にある免疫発動物質 アラーミン
HMGB1 DNAにバインドするが、強力なTh1型免疫応答を引き起こす。
IL33 TLSP IL25 が3種の神器である。
IL33は血管内皮細胞や上皮細胞の核に恒常的に発現してる。 対して同じIL1ファミリーであるIL18は刺激がないと発現しない。
IL33は肺微小血管内皮細胞が二重鎖RNAで刺激されると放出される。
TSLP もともとアトピー性皮膚炎の表皮細胞に高発現していると報告された。
皮膚の物理的障害によりTSLPが誘導され、所属リンパ節でのTh2サイトカイン産生を惹起する。
TLSPはマスト細胞をIgE非依存的に活性化し、IL5やIL13を誘導する。ただし炎症のある場所での反応。
妊娠/授乳中の特定の食品回避は子供のアレルギー発症予防に無効。
経口免疫寛容は一定の効果が期待できる。

◆教育セミナー15 気管支サーモプラスティ (Bronchial Thermoplasty:BT)

BTの機序:気管支に温熱を与えて肥厚した気道平滑筋を減少させることで、気道反応を低下させる。
適応は日本アレルギー学会あるいは日本呼吸器学会専門医が判断することになっている。
手技は気管支鏡専門医の指導のもとに行う。
(当院院長はアレルギー学会と呼吸器学会の専門医を取得しており、もと気管支鏡専門医である。)
できるだけ末梢気管支までの治療が有効である。5mm以下までの気管支を治療する。
高用量のICS/LABAを用いてもコントロール不良の喘息患者が適応で、治療ステップIVの一部である。
呼吸機能の悪い患者や呼吸器系基礎疾患をもつもの、1日10mg以上の経口ステロイド投与中の患者は慎重に。
治療後の喘息増悪が一過性に起こるのでその対策として
前治療 PSL50mg 5days  →右下葉実施し、3週間後→左下葉 →3週間後 両上葉。
PSLは治療3日前、治療当日、治療翌日に投与する。
BTの実際:
 人員は最低3名、できれば4−5人、術者、助手(カテーテル操作)、BTマッピング、記録者 加えて麻酔管理、口腔吸引、
※ 中葉は虚脱しやすく危険なので行わない。
フットスイッチを踏むと10秒間通電されて、ビープ音が2秒毎に鳴る。
カテーテルには5mmごとにマークがあり、それを目安に徐々に引き抜く。
治療時間は1時間以内。
BT後の状態確認
 手技後におこる症状 喘息症状の一過性悪化 無気肺 喀血 下気道感染
 その他胸痛 機序不明だが問題となることはない。
日本では現在10例施行。
気管支狭窄拡張術 1万150点
Alair気管支サーモグラフィカテーテル 323000円
コレを3回受ける必要あり。
オマリズマブだと3割負担で28回分に相当

5年間の治療後データを2年前に発表した。
非薬理学的な治療で、気道平滑筋が増加した症例に有用。
目標は気道収縮を抑えて喘息発作を抑制するものである。
喘息症状を5年間にわたって抑制する。補完的な他の薬物を完全になくすことができるものではない。
世界中では33カ国、450施設で行われている。
GINAによるステップ5の治療にBTは追加されている。英国胸部学会BTSのステップ4,5の治療、世界喘息会議でもBTは保険に収載されるべきとある。
日本のガイドラインに当てはめるとステップ3−4に適応されるべきである。
Alairカテーテルで65度の温度を与える。
下葉は40−100回のアクティベーションを与える。2回目は3週間以上あける。
機序:気道平滑筋を減少させる
Athma Intervention Research 2
BT190名 SHAM98名 →1年後181名と97名
1年後臨床的有意に改善 79%、sham群 64%。
入院、発作による緊急受診も減少させた。
Air2 extension Study 
5年間のフォローによる重度の増悪は32%程度と低く抑えられた。
HRCTにより5年間肺構造の異常は認められなかった。FEVは常に改善傾向を維持していた。
ER受診も78%減り、入院頻度の増悪はなかった。
適応(indication)
成人18歳以上 ICS/LABA治療でコントロール不良(最大限の薬物治療でも不良)
禁忌 ペースメーカー治療患者
声帯機能不全、SAS、COPD、重度の気管支炎、など除外
最近飼い始めた猫 →まず猫を手放すことから。
処方薬の確実な服薬がなされているか。
BTのメリットは、安全に痛みもなく治療できること。
Low FEV1: FEV1は最低限55%以上必要。
アレルギー性 非アレルギー性 両者に有効
Exacerbations :しょっちゅう急性増悪するひと まさに適応患者。

◆ミニシンポジウム16 安全な経口負荷試験実施のための様々な要因

●MS16-1

 
プロバビリティカーブは経口負荷試験の陽性率を予測するのに有用だが、誘発の重症度との関連については不明
牛乳経口負荷試験における検討を実施した。
2012年10月から2015年3月名古屋市立大学小児アレルギーネットワーク無いでの検討
牛乳経口負荷試験を行った153例( 総負荷量不足データ不足 判定保留を除外した)
平均年令1歳
負荷食品:非加熱牛乳
投与間隔:15−30分 1ml→2→5→10→20→
結果:負荷試験陽性88名 57.5%だった。
皮膚症状94.3%、呼吸器症状27.3% アナフィラキシー6.8%
牛乳特異的IgE抗体価による症状の重症度別プロバビリティカーブ・・・特異的抗体価が高いほど重症の症状が誘発されることが分かった。(例IgE 50kUa/Lのときに陽性率90%以上、grade 3以上は30%程度)
※grade 分類は食物アレルギー診療ガイドラインを参照した

Q: 多施設でやっているが、負荷量や判定についてどのようにしているか
 完全に統一しているわけではない。
Q: アナフィラキシーを起こした既往のある患者
どうしてもより少量から始めるなど、バイアスはかかると思うと。

●MS16-2

牛乳の経口食物誘発試験(OFC)でアナフィラキシー症状を起こす患者の背景を検討
130症例 年齢52ヶ月
grade 3(Sampsonによるグレード分類)以上をアナフィラキシー群 1,2を非アナフィラキシー群とした : grade 3はアドレナリン投与が必要な症状
マリービスケット3枚→シチュー → ヨーグルト(牛乳100ml)→牛乳パック200ml
結果:年齢4歳以上 牛乳特異的IgE12.5UA/L以上,アナフィラキシーの既往 気管支喘息の家族歴 などが有意であった。

Q:抄録では本人の喘息罹患は有意とあったが、発表の内容の結論では家族歴のみとなっている。実際にはどうだったのか? 臨床的には喘息のコントロール状態がかなり関与すると考えられるからである。
本来なら喘息の重症度を分類して検討すべきであったが、カルテベースでは治療重症度などが不明であったので、喘息ありなしで検討するにとどまった。
Q:4歳以上がリスクとのことであったが、紹介時の年齢や発症年齢なども関与すると考えられるがどうか? 
その辺はきちんと整理していない。
Q: IgEが高値ほどアナフィラキシーは起きにくい。発症年齢についてはむずかしい。というのが特異的IgE高値 というだけで食物除去されている方が少なからずいるので、今回の試験で初めて陽性ということも多いからである。

◆ミニシンポジウム18小児の喘息と呼吸機能評価

MS18−5

NIOX-MINO 6歳以上で100%検査可能 5歳で60%。multiple – breath法とsingle – breath法では測定したeNOに弱い相関が認められた。

MS24-4. 成人の果物,野菜アレルギー患者における臨床的特徴の検討

野菜もしくは果物摂取にて症状を有する患者42例につき,のべ183品目の検討。
誘発症状は口腔咽頭症状38例(90.5%),皮膚症状5例(11.9%),消化器症状2例(4.8%),呼吸器症状3例(7.1%)であった.アナフィラキシーは8例(19%)に認め,そのうちショックは2例に認めた.アナフィラキシー誘発食物は,リンゴ2例,梨2例,シークワーサー,ライチ,サクランボ,トマト,キャベツ,ブドウ,大豆が1例であった.42例中17例においては,薬物アレルギーなどの果物,野菜アレルギー以外でのアレルギー疾患で,アナフィラキシーなどの重篤な症状を経験していた.

◆シンポジウム14 免疫療法Up to date

●レビュートーク 大久保公裕先生

皮下免疫療法(SCIT) 患者ごとの維持量は変更できる 舌下免疫療法ではできない
舌下免疫療法(SLIT)にはsublingual /spit (吐き出し法)とsublingual/swallow(嚥下法)
2008年から2012年 2330万回の注射SCITにて1例の全身性アナフィラキシーにより死亡例があった。
SCITとSLITの治療効果の差は若干SCITに軍配があがるが、大きな差ではない。
アナフィラキシーの件数はSCITが多いが、副作用はSLITのほうが多く治療中断も多い。

●スギ花粉症の舌下免疫療法 後藤先生

日本のガイドライン重症度に当てはめると、重症/最重症が20−39歳は約6割である。
年齢が低いほど持続型が少ない。
アレルゲン免疫療法は軽症から最重症までどの重症度でも推奨される治療である。
現在1万3千人程度がSLITの治療中である。(概算では日本のスギ花粉症の0.05%)
SLITは1年目のシーズンでピーク時の症状スコアを20%減少、2年目で30%以上減少させた。
症状ピーク時に寛解と判断した症例は1年目は2.3%、2年目は17%で、いわゆる薬物フリーとなった。
投与によりspecific IgG4が上昇してくる。
副作用:投与開始後1ヶ月以内が最も注意すべき期間である。副作用症状発現後1ヶ月でほぼ症状は寛解する。従って投与開始から2ヶ月程度が特に注意が必要である。
現在SLITの患者は自ら服薬を希望するやる気のある人がほとんどであり、服薬コンプライアンスは極めて高い。長期処方解禁後が心配。
舌下の腫れや潰瘍が比較的特異的な副作用である。
※ 本治療は抗原回避を行った上での治療であることを忘れないように。

●ダニアレルギー性鼻炎に対するSLIT 岡本美孝先生

ダニ舌下錠の大規模臨床試験が国内で実施された。液化薬に比べて保存が効く。
12歳以上の小児及び成人
維持量として300単位(IR)群(=19000JAU相当)、500単位群、プラセボ群に無作為割付し52週間1日1回投与した。
最後の8週間の平均調整鼻症状スコア(MMRM法) 主要評価期間投与44−52週後)がプラセボ群に比較して1点程度低下した。平均レスキュー薬の頻度は低下。
投与終了時にダニ抗原特異的IgEおよびIgG4がともに増加する。
1年間治療後に無治療で効果をみると(キャリーオーバー効果)、治療効果は維持されていることが分かった。
(JACI 2011;127:30−38、JACI2013 )

Q ハウスダストの標準化とはどのようなものか
昔は自宅のホコリを集めてそれを投与すればという考えもありアメリカでは積極的にされていたことがある。しかしホコリにはダニ、ゴキブリ、真菌、などなどいろいろ含まれておりその濃度も違うであろうから、標準化できない。
Derf1の抗原でやる。

●喘息での免疫療法 中込一之先生

吸入ステロイドの問題点は中止すると大部分が再燃あるいは気道過敏性が亢進する。約2年でもとに戻る。しかし少量継続すると過敏性は鈍感なままで維持できる。
埼玉医大でも同様の研究結果 TAKAKU Y Int Arch Allergy Immunol 2010 ;152 :41-46
アレルゲン免疫療法はダニ喘息において、臨床症状都」気道過敏性を改善させ薬物減量効果を有する (AJRCCM 1995 151 P969)
ダニアレルゲン免疫療法は継続によりピークフローを改善させる。
鼻炎喘息合併患者では、舌下免疫療法は吸入ステロイドと比較して 鼻炎を改善と抗喘息効果も優れている。(Marogna M JACI 2010;126:969)
アレルゲン免疫療法は1秒率70%以下及び罹病期間10年以上では効果が少ない。(アレルギー永田真 1999)
ダニSLITは当面はアレルギー性鼻炎のみ適応である。
ダニSCITとSLITのメタ解析(JACI in Practice 2013 ; 1:361-369)

Q 20%以上の症状改善はスギでは治療効果の指標である、喘息ではどうなのか。フェノタイプはどうか。
鼻炎については少なくともダニ抗原の治療もクリアしている。
フェノタイプであるが、重症喘息には少なくとも効果は少ない。

◆教育講演11 ランゲルハンス細胞ー過去、現在、未来ー 京都大学皮膚科 椛島健治先生(かばしま)

過去はinVitroの実験ばかりであった・・・免疫反応の誘導 が主たる結果
現在:最近ランゲルハンス細胞だけをなくすことがマウスで可能となった。人ではまだできない。
未来:ヒトでできればよい。
ランゲルハンス細胞(LC)は表皮に存在する抗原提示細胞である。真皮には真皮樹状細胞(DC)がいる。
皮膚に存在する樹状細胞の一つと考えられていたが、現在はマクロファージ系と考えられるようになっている。
ランゲルハンス細胞(LC)はランゲリン陽性、バーベック顆粒陽性 である。
ランゲリン陽性だけなら真皮にもいる。
Paul Langerhans博士が発見した。
ランゲルハンス細胞のイントロ:
 出生前に皮膚へ移住し、基本的に生涯皮膚で維持
 Radio-resistant
 BMTでも基本的に置換されず
 マクロファージと類似
 IL34ーCSFRで誘導 TGFβで維持
 近年は遺伝子改変マウスでinvivoからvitroの実験ができる
 免疫誘導と抑制の両者の役割がある
 マウスではいろんなサブセットがある
Two photon microscopyで観察
 表皮に於けるランゲルハンス細胞
 3Dイメージで捉えるとお互いに手を伸ばしているだけでなく角層にむけても両手を広げているように伸ばしている。
定常状態ではじっとしているが、炎症状態では非常に手の出し入れが激しく、かつ遠方まで伸ばしている。その場所から消えていく(真皮の奥深くに移動:動画で確認される)
皮膚への外的侵襲、例えば外来抗原に対する皮膚免疫に関与し
抗原:ハプテンVS蛋白
 ハプテンは小さいMW (1000MW以下) タンパクはでかい
ハプテン暴露のときはLCは真皮まで多数migrateしている、タンパクの場合は表皮にとどまっている。
接触性皮膚炎(CHS) 表皮に小さな嚢胞が集まっている。真皮にはリンパ球がリンパ濾胞形成。
 通説ではLCはT細胞を活性化することになっていた。
 マウスにジフテリア毒素(DTR)を投与してランゲリン陽性細胞を殺してしまい実験したら、3者3様の結果がでた(LCないと接触性皮膚炎ができない;オランダ、無関係;フランス、増悪した;アメリカ)
 現在 LC およびランゲリン陽性細胞DC、を有り無しのキメラマウスで実験中。
高用量のハプテン暴露させるとランゲリン陽性細胞がいなくてもCHSはおこる。→他の抗原提示細胞が代償するから。
低用量だと動きが異なる。
※ どうやらLCには免疫を抑制する作用もあるのではないか。
接触性皮膚炎(CHS)の惹起時にLCは不要。真皮の樹状細胞が重要かつ必要。
蛋白抗原に対する免疫応答:
 LCは角層近くのタンパク抗原を取り込む
LC除去するとアトピー性皮膚炎がOVAで増悪しなくなる。
TSLPとTh2誘導について
 蛋白抗原に暴露した表皮にTSLPが非常に増えてくる。
 LCあり、TSLPなし では抗原特異的IgEが誘導できないことが分かった→LCに存在するTSLP受容体があり、TSLP存在下のLCの反応がアレルギー反応に関与していると考えられる。
DCがTregを誘導する機序がある。
※ 人ではLCの役割はまだ不明だが、亜鉛欠乏性皮膚炎を例にとると亜鉛は免疫応答において中心的な役割を果たす。
 亜鉛が欠乏すると T細胞やB細胞数が著明に減少する
 なのに、こすれる部分に亜鉛欠乏性皮膚炎がひどく起こるのはなぜか?
→ 皮疹部位をみると全くLCが存在しないことが分かった。刺激でケラチノサイト(KC)からATPが放出されて炎症が悪化するが、LCが炎症を抑えることができないために皮疹が増悪するのであろう、と考えられている。
Th0→( LC+TSLP )→Th2誘導
Th0→( LC+C.albicans ) → Th17 誘導 
樹状細胞がT細胞を活性化するばあい、皮膚からきたT細胞は皮膚へ戻りやすく、腸管由来のT細胞は腸管へもどっていく、のではないか。
※ 皮膚樹状細胞(LCと真皮DC) は周囲からの指示をうけて自分の方向性を決めるのではないか
 紫外線照射 Rankl → 免疫寛容(・・・?ちょっと自信ない)
 TSLP →Th2誘導
 VitaminD →T細胞の皮膚へのホーミング などなど。

◆教育講演14 IL33とアレルギー疾患 中江進先生

IL1ファミリーに属する ・・・IL1 IL18 IL 36
IL33はST2に結合するものとして同定された
IL33は核内に恒常的に存在する。
ネクローシスで核内から放出される→active IL33となる。
アポトーシスでinactive IL33となる。
IL33はTH2を誘導 ちなみにIL18はTh17誘導
好塩基球 マスト細胞 NKT細胞 TH2細胞 自然リンパ球 に作用するとTh2系サイトカインを多数誘導することがわかっている。
 獲得免疫にRag遺伝子が重要 自然免疫系はId2遺伝子が重要
 自然免疫系とは抗原特異性を持たないもの
ヘルパーTには Th1 Th2 Th17  Treg がある

自然リンパ球依存的な喘息モデルとIL33
Derp1 HDの抗原でありシステインプロテアーゼである。
パパインはDerp1によくにたシステインプロテアーゼである。
パパインは肉を柔らかくする効果があるが、その工場では喘息が多く発症したという。
パパインで肺を洗うと50μg/mlの濃度までは好酸球が増加しそれ以上濃いと今度は好中球が増加してくる。 病理は喘息と肺気腫の中間みたいになる。
パパインなどで細胞がネクローシスをおこすとIL33がでてきて働くのであろう。
パパインを吸入させた肺ではIL33が有意に誘導されてきた。その後好酸球性気道炎症がおきた。一方IL33ノックアウトすると、パパインで炎症は誘導されなかった。
プロテアーゼで気道上皮障害 → IL33放出 → IL13、IL5誘導 →好酸球性炎症
IL13とIL5のソースは好塩基球とNH細胞(自然リンパ球)
一方マスト細胞を除去するとTh2炎症が増悪したとこことから、マスト細胞は炎症を抑制する働きがあると予想された。
肺のリンパ節のT細胞にIL33をかけるとTh2細胞 Treg 誘導される。
マスト細胞にIL33をかけるとTregを誘導することが分かった!
IL33によるTreg細胞の誘導は
 TCRーMHCクラスII非依存的
 細胞間相互作用が必要(T細胞とマスト細胞の接触は必要)
 可溶性因子が必要
IL10ノックアウトマウスで誘導したTregでは好酸球性炎症は抑制できなかった。
※以上からIL10が炎症を抑制することがわかった。
IL33→マスト細胞刺激してIL2分泌→Treg誘導→IL10分泌→好酸球性炎症を抑制
マスト細胞は2面性がある
 はち毒が体にはいると一回目は解毒に働く
 しかし2回目は、すでに獲得免疫系がはたらいて特異的IgEができてしまっており、もしはち毒がはいると解毒するよりも速くアナフィラキシーをおこしてしまう!

Q IL2はいろいろ放出する細胞があるが…
IL2はアナフィラキシーのマスト細胞のときが多量にでる。
マスト細胞でも、IL3で培養したマスト細胞はTregを誘導できるが、IL3+SCFで培養すると誘導できない、など、マスト細胞にもいろいろある。なぜなのかまだ不明。
Q papainでIL33が放出される機序は?
パパインで組織障害→直接的に放出
PER2受容体を刺激することで細胞死することなく活性化してIL33を分泌する。

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