2016年2月25日に福山市医師会館で開催された「第21回福山地区感染制御研究会」に出席して最新の知見を学んで参りましたので、報告します。

2016年2月25日に福山市医師会館で開催された「第21回福山地区感染制御研究会」に出席して最新の知見を学んで参りましたので、報告します。
以下の記事はあくまで私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

一般演題

●カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症 中国中央病院 血液内科増成太郎先生
猫や犬の口腔内常在菌 噛まれて感染する→敗血症
コンプロマイズドホストに感染症を引き起こす
国内犬猫の約50%に保菌がある。
犬猫咬掻症の殆どは局所の感染症であるが、カプノサイトファーガの場合は重篤な全身感染症を引き起こす。
※ただし、犬猫咬傷だけでなく、不明の感染経路があるのではないかと言われている。
C.canimorsusの一部はβラクタマーゼ産生菌であるため、アモキシリン/クラブラン酸の経口投与が推奨されている。

特別講演

●不明熱診療について 大阪医科大学附属病院総合診療科特任教授 鈴木富雄先生
現在の不明熱の定義
38.3度以上の発熱が3日間以上持続
入院または外来で3日以上の検査で診断がつかない。

原因

3大原因は感染症 悪性腫瘍 炎症性 と言われるが、現代の不明熱は未診断が多い。
つまり、検査が高度となり不明熱の定義に入る時点で診断が難しい状態である。

◯不明熱になりやすい感染症

内科医が苦手な部分の感染症 深い部分、隠れた部分
鼻・耳・肛門・婦人科・膿瘍
病歴と診察 接触歴、渡航歴、ペットなどに注意。
抗菌剤は中止すること。
血培はかならず2セット以上実施。
必ず造影CT、 単純CTは意味がない!
感染性心内膜炎疑いなら必ず市猫
感染部位と起炎菌の推定なしに抗菌剤は使用しない ・・・重要
結核真菌などの非定型感染にも注意。

◯不明熱になりやすい膠原病

血管炎が多い
感染症・悪性腫瘍を除外
病歴 関節痛 筋痛 全身倦怠感
特徴的な診察所見 皮疹 後半 口内炎 筋肉把握痛
フェリチン 血沈 尿沈渣
熱に対してNSAIDsはできるだけ使わない ロキソプロフェンなど
ただしアセトアミノフェンは使って良い。抗炎症作用を持たず、解熱鎮痛作用のみだからである。
1800mg /dayくらいしっかり使う。
最後はこれという場所を、生検(皮膚、筋肉、神経)
チンチンチンと勝利の鐘の音
フェリチン・・・ 著明に上昇  成人Still病 悪性リンパ腫 血球貪食症候群 の3つ
血沈・・・ CRP に比較して血沈が高いとき PMR 側頭動脈炎 血管炎各種 結核など
尿沈渣・・・ 変形赤血球 各種円柱 →腎実質障害 自己免疫性疾患

◯不明熱になりやすい悪性腫瘍

なんといっても悪性リンパ腫とくに血管内リンパ腫
白血病 MDS 腎癌・肝癌 膵癌 大腸がん 原発不明がん 中枢神経への浸潤(下垂体転移、癌性髄膜炎など) 心房粘液腫

悪性リンパ腫の診断戦略
sIL2R リンパ腫で著明に高値
造影CT(胸腹部と頭部)
PETにて病変部位を探る(CTで所見がないとき)
リンパ節生検 (取れそうなところを)
肝生検 (肝酵素が上昇している場合)
骨髄生検(貧血など血液異常がある場合)
皮膚生検(皮疹があれば、その部分を) ・・・血管のついた検体がほしい。
各種の生検を繰り返し、やっと診断がつく場合もある。

◯不明熱をきたすその他の疾患

クローン UC
下垂体不全 副腎不全
甲状腺機能亢進症
亜急性甲状腺炎
サルコイドーシス
キャッスルマン病
肺血栓塞栓
静脈血栓症
自己炎症疾患
薬剤性
心因性 うつだけでも38から39度でることあり!
詐熱 疾病利得のある場合  →監視検温

不明熱に対する13ヶ条の原則

  1. 詳細な病歴を取り直せ
  2. 何度でも身体診察を繰り返せ
  3. 前医からの抗菌剤はすべて中止せよ
  4. 血培を2セット以上採取せよ
  5. まずはひとまず熱型観察
  6. 解熱剤としてのNSAIDSは可能な限り使用するな
  7. チンチンチンと勝利の鐘の音(フェリチン、赤沈、尿沈渣)
  8. TSPOTも忘れずに
  9. 膿瘍除外の造影CT
  10. 困ったときのガリウムシンチ(PETスキャン)
  11. これと思えば逃さず生検
  12. 最終的には主治医が総合的に判断すべき
  13. 医療者の焦りが病態を複雑にする 急がば回れとはこの時のためにあることを知るべし

破壊性甲状腺炎 :CRPよりESR亢進 軽度の肝障害もある
亜急性甲状腺炎 は甲状腺に圧痛あり
無痛性甲状腺炎 は橋本病の一型である

肛門周囲膿瘍

不明熱の感染症のうち3-15%
疑わなければ見逃される。本人も症状を言わない場合が多い。
忙しくても直腸診すること。

成人発症Still病

好中球が増加するのが特徴の一つ
診断基準を満たし、フェリチン高値、サーモンピンク皮疹

偽通風

単関節から多関節炎だが関節症状が明確でないと高齢者の不明熱の原因になる。
内科的、外科的イベントが発作の誘因になる(入院後の不明熱となる)。
関節液は穿刺後すぐに鏡検しないと、ピロリン酸カルシウムがわからなくなる。

骨髄炎

糖尿病のコントロール不良例に多い
Staphylococcus aureusが起炎菌 一旦かかると難治
診断には足のMRIが感度がよい。

ぶれてはならない3つの軸

  • 論理的思考
  • 確固たる信念
  • 共感的対応

信頼で結ばれた診療担当チーム

石による診断過程を理解した上で患者家族を支えることができる看護体制
病院内外の優れた専門家とのネットワーク

QandA

フェリチンが200以上あれば、少なくとも鉄欠乏は考えにくい。
炎症性腸疾患 乾癬 強直性脊椎炎
関節付着部炎を引き起こす。

アセトアミノフェン 解熱鎮痛作用はあるが、抗炎症作用は弱い(PGに作用しない)
NSAIDS 解熱・鎮痛・抗炎症を均等にもつ
成人Still、 軽症の血管炎、には対応できる。

ある程度精査して診断がつかず、状態安定している症例はアルゴリズムでは経過観察であるが、
多くの場合は予後が良好である。

診断の階段のどこにいるのかを、患者と情報共有することを心がけること

 

鈴木富雄先生とツーショット

鈴木富雄先生とツーショット

医師会の先生方との懇親会の席にて

医師会の先生方との懇親会の席にて

コメントは停止中です。