2016年3月13日、大阪国際会議場に於いて「第10回肺がんCT健診認定医師講習会」が開催され出席いたしました。

2016年3月13日、大阪国際会議場に於いて「第10回肺がんCT健診認定医師講習会」が開催され出席いたしました。
最新の知見を学んでまいりましたの報告します。
※以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

低線量胸部CT検診今後の展望 -結核接触者検診への導入-

岡山健康づくり財団附属病院 西井研治先生
(配布プリント参照)
潜在性結核(LTBI)とは、結核菌に完成しているが発病していない状態を指す。
感染から1-2年以内は発病リスクの高い状態であるが、胸部レントゲンにて異常を指摘できずLTBIとしてINH単剤で予防内服をした症例に、経過中にINH耐性肺結核を発病した事例があり大変問題となった。
低線量胸部CTを検診として実施していれば発病を診断できたと考えられる。
乳幼児では、父母あるいは同居祖父母が肺結核を発病するとほぼ感染する。乳幼児は空洞形成を伴うことが少なく胸部レントゲンでは異常を指摘しにくいが、胸部CTで早期診断に有用だったとの報告がある。ただし乳幼児に対して放射線を浴びせることになり、異論もある。
演者からの意見として
①胸部XPでは発病のスクリーニングの発見もれリスクがある
②低線量胸部CTをすれば結核発病初期像の発見が可能
③胸部CT実施対象者の選定基準作成が必要、あるいはIGRA陽性の接触者には全員おこなう?
④胸部CT実施にあたっては、放射線被曝(どこまで低減できるか)とコストが問題となる
⑤低線量CTが接触者検診スクリーニングでスタンダードになれば、被爆量は大幅に低減でき、対象者拡大が可能となる
⑥国の指針で接触者検診に低線量CT実施を明記してもらえば、各医療機関で低線量CTに対する理解が進む

低線量肺がんCT検診の実際 及び読影と経過観察

JA長野厚生連 小諸厚生総合病院 丸山雄一郎先生
2011年の佐川班研究における「低線量」の定義は、
 CDTIvol(容積CT線量指標)2.5mGy以下を推奨、上限4mGy である。
低線量CTでは肺野のざらつきなどのnoiseが問題となるが、画像再構成法の進歩(MBIR法)により画質がかなり向上している。肺野もであるが縦隔臓器や軟部陰影は特に有用。
低線量CT画像の特性
 信号雑音比(S/N比)の低下
 コントラスト分解能の低下
 空間分解能の低下
 再構成関数の違いによる画質の変化が顕著
 体格の違いによる画質の変化が顕著

低線量肺がんCT検診での読影と経過観察

JA長野厚生連 小諸厚生総合病院 丸山雄一郎先生
肺結節影の検出頻度は
 7-10mmスライス厚低線量CTでは5-44%、1-5mmスライスでは45-76% である。
発見された結節影の取り扱いについては
 低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方第3版(2013年5月追加改訂)
 Fleischer Societyによる肺小結節の取り扱いに関するガイドライン(2005、2013)、などがある。
WHOの肺腺癌分類は2015年に大幅に変更があった。
 BACは廃止。
 preinvasive lesion・・・AAH, AIS(adeno ca. in situ)
 Minimally invasive adenocarcinoma(MIA)
 Invasive adenocarcinoma・・・Lepidic predominant , Acinar pattern pred.  ,Papillary p. pred. , Miciropapillary p. pred. , Solid p. pred.
肺結節の定義:最大径3cm以下の円形、あるいは、辺縁不整な吸収値上昇領域
すりガラス陰影の定義:薄層CT上において認められる陰影で、内部に肺血管や気管支といった正常の既存肺構造が透見して見えるもの
 均一なすりガラス陰影 pure ground-glass nodule (pure GGN)
 一部軟部組織吸収値を含むすりガラス part-solid nodule (PSN), Fleischer societyではpart-solid ground-glass nodule(part-solid GGN)
 軟部組織吸収値を呈する陰影 solid nodule
・日本CT検診学会の肺結節判定基準と経過観察の考え方(第3版)
pure GGN
5<=, <15mm ・・・・3,12,24ヶ月後の経過観察薄層CT(TSCT)
15mm<=   ・・・・確定診断を行う
part-solid nodule
5<=, <15mm (solid成分<=5mm)・・・・3,12,24ヶ月後の経過観察薄層CT(TSCT)
5<=, <15mm (solid成分> 5mm)・・・・確定診断を行う
15mm<=  ・・・・・・・・確定診断を行う
Solid nodule
5<=, <10mm (喫煙者)・・・・3, 6, 12, 18, 24ヶ月後の経過観察薄層CT(TSCT)
5<=, <10mm (非喫煙者)・・・・4, 12,  24ヶ月後の経過観察薄層CT(TSCT)
10<=  ・・・・・・・・確定診断を行う

肺がんリスク要因としての放射線 

放射線医学総合研究所 島田義也先生
放射線への細胞の影響
 放射線はDNAを切るが、切れたDNAが間違って修復された場合に発ガンする。
 2000mGyを細胞に当てると多数切断されるが24時間でほぼ修復される。
なぜ実効線量が100mSvなのか。
 広島長崎のデータが良く用いられる。
 被爆後10年以内でまず白血病が増多、その後固形がんが徐々に増加。
 白血病では200mSv、固形がんでは100mSv以下になると、被爆していない方と統計学的には有意な発病ではなくなる。
100mSvで障害の癌死亡は0.5%上昇する。
ヒトの発がん要因 1位はタバコ、2位は感染症(HPやパピローマウイルスなど)
ヒトの死亡要因の4分の1は癌であるが、100mSvを浴びると0.5%ガン死が増加する。
北海道は最も生涯ガン死亡リスクが高く、最も低い長野県と比較して5%多い!
東京都のみをみても地域に寄ってがん死亡率が30%以上も違う。
年齢が若いほど、発がんリスクが上昇する。
過剰相対リスクat 1Gy では、甲状腺がんは若い時ほどリスクが高く、乳がんは乳腺が発達する10代で浴びると高い。
日本人の年間被ばく線量
 自然被曝量2.09mSv、医療被曝量3.87mSv
リスクが高い臓器
 全身被爆すると、肺がん、乳がん、胃がん、骨髄にガンが増える。
 過剰相対リスク(ERR)は1Gyあたり肺がんと乳がんのリスクが高まる。
放射線と喫煙の複合効果
 喫煙本数が増えるほど、肺がんの過剰相対リスクが上昇するが、1Gy(1000mGy)の放射線が当たると、0.75%増える。10本程度の喫煙の人であれば、リスクは急上昇するが、20本以上の喫煙者は被爆によるERRは増加しない。
胸部CTによる被爆の場合
 CT検査でも僅かであるがDNAは切れる(実験では数カ所)。
胸部レントゲンでは1回の撮影につき10mSv被爆する。肺結核の患者の場合2週間に1回程度胸部レントゲンを撮影するが、トータル3年間、840mSvを浴びても肺がんリスクは増加しない。 ただし乳がんについては1.29と若干相対リスクが上昇する。
30歳未満の女性に結核患者と同様の反復被爆をすると、乳がんリスクが最大2倍増加するが、やはり10から24歳がリスクが高い。25-30歳で1.3倍程度である。
カナダの透視患者の調査では、乳がんの発症率が1回あたり50mGyを反復した場合と2mGyで反復し、総量が変わらない場合でも、低線量の方が乳がんのリスクは上昇しなかった。
肺がんリスク
 たばこ1-9本/日の患者の相対リスクは4.6で、放射線量に換算すると3400mGyに相当する(米の報告)。
日本でも20本/日で3000mGy程度に相当すると言われている。なので、喫煙して肺がん検診でかかった患者はおそらく40歳以上なので、CTによる肺がんリスクは上昇しない! と結論できる。
乳がんについては、若年者に胸部の被爆はできるだけしないように考慮するべき。ただし、低線量ならかなりリスクが低減する。
まとめ
100mSvの全身被爆は統計学的に発がんリスクを増加させない。
多くの臓器は、被爆年齢が若いほど発がんリスクが上がるが、乳がんでは10代から20代前半が高い。
リスクの高い臓器は乳腺、肺、胃、結腸、骨髄。
1日10本以内の喫煙が放射線との複合効果が最も大きく、30本以上の喫煙者ではリスクは増えない。
反復被爆で乳がんのリスクは若干上がるが、肺がんリスクは観察されない。
リスクは、放射線量、臓器、年齢、被爆様式(反復)、喫煙歴などできまる。

末梢小型肺がんに対する外科療法の現状2016

JA長野厚生連 北アルプス医療センターあづみ病院 呼吸器外科 花岡孝臣先生

低線量CT検診で発見される肺がんと諸病変

日立健康管理センタ 中川徹
管電流が25mAである低線量CTでも15-10mmは十分に検出できる。
solid type 腫瘍倍加時間260-500日の腫瘍はかなり救命率が高いと実感する。
気腫性変化に接する結節影はまず悪性を疑うべき。
炎症にみえる結節影が一旦縮小傾向にみえて、その後再増大するタイプがある。
国内における肺がん死亡者急増しており、CT検診が注目を浴びている。しかし読影医師不足が課題。
CAD(コンピューター診断支援システム)の利用が、今後考慮される。
大腰筋に脂肪が差しのように入ってくるのは異常! 大腰筋は牛で言うとフィレだから。
大腰筋が弱く萎縮すると脚があがらなくなるということであり、転倒の危険が高い。
肺がん死亡7万7千人 罹患患者数13万5千8百人・・・非常に多い。
低線量CTで医用画像みえる化が切り開く健康診断の可能性について、以下の疾患に期待されている。
 肺がん COPD 内臓脂肪 骨粗しょう症 仮想大腸内視鏡

低線量肺癌CT検診の精度管理の現状と課題

大阪府立成人病センター 中山富雄先生
カナダの報告では、乳がん検診においてナースが触診したのみとマンモグラフィ上乗せでは差がなかった。これは結局マンモグラフィの画質が全く悪くて検診に向いていない状況だったとのこと。
精度管理が必要である。
数値化、見える化(グラフ化)を図ること
 目標値・基準値への到達
 飛び抜けて高い低いはないか。

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