第8回広島呼吸ケア研究会 福山分科会 に座長として出席いたしました。

2016年11月24日、見出しの会が開催され、私は座長をさせて頂きました。呼吸ケアに関連する最新の情報や診療に有益な情報を学びましたのでご報告します。
以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

【事例報告】

2人の先生方に発表頂きました。

・呼吸器疾患における運動耐容能評価の一例~タブレットPCを用いて~ さくらの丘クリニック理学療法士 岡田剛典先生: この報告では、最近6分間歩行試験のデータを記録し解析する方法としてタブレットPCを用いているとのこと。指先に装着したオキシメータのデータ、試験前後の観察時間までを含めたバイタルサインの記録や息切れ度評価、歩行距離の予測、などが記録され、以下の2点が有用である。

1.検査中にリアルタイムにSpO2と脈拍がモニターできるのでSpO2低下をいち早く察知でき非常に安全である。
2.治療介入前後での評価をまとめ患者にわかりやすく説明できるとともに、モチベーションの維持に繋がる。

・人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防策 セントラル病院感染管理認定看護師 恵谷和郎先生 :VAPの発症要因は挿管チューブによる気道の汚染、口腔咽頭鼻腔の細菌の流出、胃液の逆流を誤嚥、気道のバイオフィルムの形成、があり、いままではこれらの対策をその都度個別に実施していたが、最近の考え方では予想されるこれらのすべてを要因を初めから「VAP予防バンドル」としてまとめて対策を実施することが重要である。すわなち、

1.手指衛生を確実に実施する、
2.人工呼吸器回路を頻回に交換しない、
3.適切な鎮静と鎮痛、特に過鎮静を避ける、
4.人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する、
5.人工呼吸器中の患者を仰臥位で管理しない、ファーラー位で。

最近はVAP予防だけでは十分とはいえず、VAE(人工呼吸器関連イベント)と大きく捉えてサーベイランスが行われている。

【教育セミナー】

酸素療法とパルスオキシメーター マツダ病院呼吸器内科主任部長 大成洋二郎先生: ご講演では、呼吸器の解剖・生理の基本事項に始まり呼吸不全の定義、PaO2やSaO2の違い、呼吸解離曲線、パルスオキシメーターの利用とピットフォール、在宅酸素療法、などについて幅広い基礎知識が身につくご講義内容でした。

興味深い症例として、間質性肺炎の急性増悪(拡散障害による呼吸不全)の事例をご紹介頂きました。診断時は低酸素血症のため過換気状態でPCO2低下し呼吸性アルカローシス、しかし病状の悪化につれて呼吸不全が進行しPCO2が上昇して呼吸性アシドーシスに変化しました。同一患者の短期間の変化に聴講者の方々も非常に勉強になったと思います。

【実技セミナー】

在宅呼吸リハビリテーションの実際~呼吸理学療法でできる呼吸困難軽減と動ける体づくりの方法~ 福山循環器病院理学療法士 相方由香里先生

・数年前までは、呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)といえば、とにかくやや強めの運動療法を実施して運動耐容能をあげるのが目標となっていたが、最近の考え方は「身体活動量の増加」が重要で予後改善に寄与し、必ずしも運動強度が強い必要はない。寝たきりに近い患者様が家の中をごそごそと自分の身の回りのことをできるようになるとか、近くのスーパーまで歩いて行く、というような生活に即した運動でも十分リハビリになる。

リハビリ前のフィジカルアセスメントは重要:頸部の斜角筋の緊張の度合い、横隔膜呼吸ができるのかどうか、胸郭の硬さ、歩行可能かなど。

・呼吸介助法について詳しく学びました。

呼吸をすると上部胸郭は上下に動く、下部胸郭は横と上下に動くのでその動きに併せて呼気をしっかり介助する。背臥位、側臥位、座位にて実施可能である。

口すぼめ呼吸はCOPDのみならず、間質性肺炎や心不全でも死腔換気を減少させるのに有効である。

・運動のコツ

しんどくない動き方:運動療法中の呼吸法の原則は、動作は必ず呼気で行うことである。呼吸と動作のマッチング(協調)を練習する、つまり一呼吸一動作である。 吸う時は吸うのみ、息を吐く時に動く。
運動時の低酸素血症(EIH;exercise induced hypoxemia)は肺動脈の攣縮を引き起こす可能性があるので、運動中のSpO2は>90%を維持する。低酸素でも自覚症状がない場合は運動強度をSpO2、心拍数、運動量などの客観的指標を用いて十分把握させる必要がある。
歩行時は1,2で吸気、3,4,5,6で呼気のリズムにするだけで、かなり息切れは軽減し歩行距離が延長する。

講師の先生方

講師の先生方

在宅呼吸リハビリテーションの講演を頂いた相方先生(向かって右。)

在宅呼吸リハビリテーションの講演を頂いた相方先生(向かって右。)

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