IPFセミナー in 福山 於福山ニューキャッスルホテル

■IPFセミナー in 福山 於福山ニューキャッスルホテル 平成29年1月26日

公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科部長 片岡健介先生

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

びまん性肺疾患の診療の実際

間質性肺炎患者の初診時どう対応するか

経過:急性とは6週間以内、亜急性とは急性と慢性の間、慢性(3ヶ月)・実際には数ヶ月以上、慢性経過の急性増悪は積極的に聴取する必要がある。
全身症状として、体重減少、膠原病の有無、呼吸器症状として咳と息切れ、
過去の画像検査歴など注意する。 特に膠原病の有無と肺移植の適応は意識すること。

肺移植の適応

特発性間質性肺炎に対する肺移植適応ガイドラインによると

組織学的あるいは画像上UIPと診断されている場合

・DLco<39% predicted
・6ヶ月の経過観察中にFVCが10%以上の低下を示す
・6分間歩行テスト中の酸素飽和度が88%を下回る
・HRCTで蜂巣肺を呈する

組織学的あるいは画像上NSIPと診断されている場合

・DLco<35% predicted
・6ヶ月の経過観察中にFVCが10%以上低下、あるいはDLcoが15%以上低下を示す

脳死肺移植の適応:レシピエント(臓器を移植される患者)の条件

・両肺移植 55歳未満
・片肺移植 60歳未満
・心肺同時移植 45歳未満

この条件を1日でも越えると適応とならない。

IPFの予後

特発性肺線維症の予後は診断後の5年生存率が27-8%と非常に悪い。

特発性間質性肺炎の重症度を、次のように分けた場合
I:PaO2>80 Torr、II:PaO2 70~80, SpO2>90%、III:PaO2 60~70, SpO2>90%、IV:PaO2<60,(or PaO2 60-70, SpO2<90%)
北海道Study(びまん性肺疾患に関する調査研究平成23年度研究報告)によると、I,IIとIII,IVで予後が大きく異なる。
生存中央値 I度 62ヶ月、II度 51ヶ月、III度 21ヶ月、IV度 19ヶ月
つまり I,II度なら>4年、III,IVなら<2年 である。

IPF治療と予後

ATS/ERS/JRS/ALAT合同のIPF治療ガイドライン(AJRCCM2015)によると推奨治療薬はピルフェニドン(ピレスパ®︎)、ニンテダニブ(オフェブ®︎)、である。
ステロイドホルモンは使用しないことを推奨。

ピルフェニドンのASCEND試験では、N=555,プラセボとの比較を行い、FVC低下の軽減(プラセボ−428ml,ピルフェニドン−234→⊿193ml)、を認めた。さらにPooled analysis(CAPACITY1,2、+ACSCEND)では全死亡48%減少、IPF関連死68%減少した。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26647432

IPF患者に対するピルフェニドンの長期安全性を評価した4臨床試験のpooled analysis(RECAP試験の患者+RECAP試験に参加しなかったASCEND、CAPACITY試験の患者)では、生存期間中央値82.6ヶ月(6.9年)で、少なくとも臨床試験に入る患者群の予後がよいことが判明した。

ニンテダニブはINPULSIS-1,-2の試験によりVC低下を抑制することが報告された。

演者の病院(公立陶生病院)では2016年5月までにニンテダニブを60例処方され、2015年12月末までに41例が6ヶ月後の効果判定可能であった。

%FVCの低下が10%未満の症例(有効例)は16例あり、これらの症例について治療前後の状態をINPULSIS導入基準をもとに比較検討したところ、FVC>=50%、DLco>=30の両者を満たしたものは15例であった。逆に6ヶ月後に評価不能であった症例15例のうち導入基準を満たしていたものは1例しかなかった。

ピルフェニドンは演者らは2008年12月から2012年11月に107例投与された。1年後非悪化群N=49,悪化群N=58であった。(非悪化群:1年後のFVC低下<10%)。非悪化群の生存期間中央値MST=4.34年、悪化群は1.12年。

ロジスティック解析の結果、非悪化群の予測因子はBMI>25FVC>75%、の2項目が独立因子と判明した。

ピルフェニドンの治療効果が不良なIPFにステロイド+シクロスポリン療法は有効か?

演者らは2008年12月から2012年11月にIPF患者107例にピルフェニドンを投与した。後にPSL+CyA治療が投与された症例は39例、急性増悪時からの投与開始症例17例と前評価のない症例5例をのぞいた17例を後方視的に検討した。その結果、

・PSL+CyA療法の導入前後6ヶ月で評価可能症例では、肺活量、肺拡散能、6分間歩行距離の変化を軽減できた。
・17例中12例には治療を要する有害事象があった。(感染症5例、耐糖能異常4例、など)
・PSL+CyA療法導入後の中間生存期間は15ヶ月であり、今回の検討では長期予後は厳しい結果であった。

間質性肺炎/肺線維症の治療戦略

・診断学は従来同様に重要であるが、抗線維化薬の登場により、「治療」の時代へ突入している。
・大規模臨床研究では、ピルフェニドンとニンテダニブの効果はほぼ同等にみえる。
・実臨床において、2薬剤の有害事象は少々ことなる。
・進行したIPFに対しては、抗線維化薬の手応え(実感)を得られにくい。
・ステロイド+免疫抑制剤は一般におすすめできない。

質疑

Q.NSIPの患者にプレドニン+シクロスポリンで非常に有効な症例を経験するがどう判断すべきか。

A.膠原病関連の間質性肺炎は確かに有効な症例がある。例えNSIPでも、当初PSL+CyA治療をして5年でIPF様となる症例は、抗線維化薬の適応を考慮してよいであろう。

Q.学会ではニンテダニブやピルフェニドンの有効性が1年程度でその後増悪する、という報告もおおく、合併症を考慮すると積極的に投与しにくかったが先生の評価はいかがか?

A.ニンテダニブはまだ発売から短く1年の効果持続について不明だが、ピルフェニドンは9年たっても生命予後を改善しているので、投与を推奨する。

Q.ニンテダニブとピルフェニドンのどちらを使うか。

A.例えば紫外線に長時間暴露せざるを得ない職業などでは、ピルフェニドンは使いにくい。
凝固線溶系に影響するニンテダニブは、抗凝固療法や抗血小板療法を行っている患者には使いにくい。

Q.IPFの患者に在宅酸素療法を導入するタイミングについて演者の考えをご教示ください。

A.肺高血圧の合併、あるいは安静時SpO2 88%未満の症例である。

片岡健介先生と

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