2020年8月9日に 第117回 日本内科学会講演会 緊急シンポジウム(WEB講演会) が開催され、 新型コロナウイルス感染症に関する最新の知見を学びました。

2020年8月9日に 第117回 日本内科学会講演会 緊急シンポジウム(WEB講演会) が開催され、
新型コロナウイルス感染症に関する最新の知見を学びました。
この聴講録が少しでも患者様のお役に立てば幸いです。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

■緊急シンポジウム第一部

1.新型コロナウイルス感染症の現状と今後の課題
国立感染症研究所 脇田隆字先生

2.第一波・第二波の疫学データ分析
京都大学 西浦博先生

3.臨床と感染対策
防衛医科大学校 川名明彦先生

4. COVID-19の治療薬の現状と課題
藤田医科大学 土井洋平先生

■緊急シンポジウム第二部

〜日本内科学会サブスペシャリティ学会からみた新型コロナウイルス感染症〜

1.感染症学会の立場から
日本感染症学会理事長 舘田一博先生

2.呼吸器内科医の立場から
日本呼吸器学会監事 長谷川好規先生

3.内分泌代謝医の立場から 〜他領域の内科医と共有したい問題点〜
日本内分泌学会理事 田辺晶代先生

4.リウマチ膠原病内科医の立場から
日本リウマチ学会理事長 竹内勤先生

5.血液内科医の立場から
日本血液学会理事 谷口修一先生

■緊急シンポジウム第一部

〜新型コロナウイルス感染症ー疫学・対策から臨床・治療まで〜

1.新型コロナウイルス感染症の現状と今後の課題

国立感染症研究所
脇田隆字先生

コロナウイルスは多数の種類があり人畜共通感染症として今回発生した。

COVID19は8割が軽症である。
免疫反応でサイトカインストーム、ARDS、血管炎→凝固障害が重症化の原因である。
SARSは有症状者を追っていけばよかったが、COVID-19は無症状者が3割程度おり、無症状なのに感染を起こすのが特徴的である。

インフルエンザもCOVID-19も実行再生産数は同程度で約2だが、COVID-19は一人が多数に感染させクラスターを発生させる。

クラスターの特徴は三密で大声を出す状態である。クラスターを制御すれば感染を抑制することができる。
ウイルスゲノム解析では、初期の武漢のウイルスは制御できたが、第二波ではヨーロッパ由来の株の残党が現在の流行になっている。
現在は新宿の接待を伴うクラスターが6月中旬より突然顕在化しクラスターを形成している。
首都圏の実行再生産数は7月中旬で1につ近づいており首都圏の流行は早晩収束する見込みである。
関西圏はまだ実行再生産数が高いのでまだ流行はつづくであろう。
6月以前は全年齢にまんべんなく感染し有症状がおおいが、7月以後では無症状患者がおおくなり、明らかに若年層に多い。
また6月以前は重篤な肺炎がみられたが(7.3%)、7月以後は明らかに減少している(0.4%)。

我が国のクラスター対策の特徴は、さかのぼってクラスターの共通の感染源を突き止めることである。

院内感染クラスターの事例では、処置時など感染対策の不徹底による職員感染、休憩室など換気が悪く密だった→さらに別病棟へ広がり、感染に気づかないまま他施設へ転院。
昼カラオケクラスター事例では、マスクせずに長時間歌う、複数店舗利用者が別の店舗へ感染拡大、有症状で店舗利用していた。年配者がおおく重症化しやすい。
夜の街クラスター事例では、流行地からの来店客、接客時の三密、店員から利用客への感染、有症状者の勤務などがみられた。
クラスターを閉じることが重要な感染対策となる。

専門家会議は法的な位置づけがない。

感染拡大防止にはNPI;非医療的介入として特措法による緊急事態宣言が必要だった。
現在の対策の中心は、新しい生活様式と事業主のガイドラインに基づく感染対策である。
専門家の助言組織のあり方が議論され、現在は施策提案は専門家、制度補強と施策執行は厚労省となった。
新型コロナウイルス感染症対策本部の下に有識者会議があり、その下に新型コロナウイルス分科会がある。
分科会と厚労省に対してアドバイザリーボードから提言する形となり、演者らはそこに所属している。

直近の感染状況の評価

若年層がおおい、早期に診断されている。重症化予防治療が一定の効果あり、院内感染・施設内感染の抑制がされており、基礎疾患のある高齢者の感染も抑制されている。
現在のところ市中感染が多くないのでスーパーの利用などで感染が拡大する状況にはないと考えている。
今後想定される感染拡大を踏まえて、ステージに合わせて対策をとることとなった。
現時点で講ずべき施策とは、
  ①迅速なリスク評価、②クラスターの封じ込め、③基本的な感染予防の徹底(三密回避など)、④保健所の業務支援と医療体制の強化、⑤水際対策、⑥人権への配慮、⑦対策を実行するための制度と財源の効率的活用、である。

SARS-CoV2ワクチンの主な取り組み

遺伝子ワクチン(DNAワクチン、RNAワクチン)→ サブユニットワクチン(組み換えタンパクワクチン)→不活化ワクチン の順に開発されていくであろう。
ワクチンの標的はウイルス細胞表面に発現するスパイク(S)タンパクであり、このタンパクはACE2受容体に結合し細胞内に侵入する。この結合を止める抗体を誘導できるワクチンの開発が望まれる。
様々なワクチンは有効性と安全性が重要であり、安価に大量生産されなければならない。
治療薬はクロロキンは無効と判明。
治療効果は発症後早期にウイルス量を抑制するほど効果があると考えられている。

Q and A

Q.重症化要因で高齢者以外の要因がありますか。
A.血液型の遺伝子が重症化と関連している可能性が指摘されている。
凝固因子も関連を示唆されている。
また医療センターを中心に重症化因子の解析が進められている。

2.第一波・第二波の疫学データ分析

京都大学
西浦博先生

日本では4月まではクラスター対策、4月8日以後は緊急事態宣言と地域でクラスター対策が主体であった。

その後、新しい生活様式 + 改善版クラスター解析がなされている。
一人あたりの2次感染数はすくないが、特定の患者が多数に感染させる。
三密が感染を助長させる。

頻繁なクラスターの発生箇所

ライブハウス、夜間の接待飲食店、居酒屋、フィットネスジム・屋内運動施設、医療施設・福祉施設
これらをまとめて表現するものが「三密」である。
→ 行動変容を期待し、日本人への鉄壁の信頼を寄せて乗り切った。
3月の感染流行は欧州流行+3月の多数の輸入感染者が引き起こした。
接触8割減ならば新規感染症は急減することを示したし、ほぼ予定どおり感染者は減少していった。
実行再生産数の推定値は、外出自粛、夜間の外出自粛要請などにより、GW明けまでは1未満を維持していた。
その後じわじわと上昇傾向である。
現在の東京の実行再生産数は1.2-1.4程度で推移している。個々の感染対策が功を奏していると考えられる。
ハイリスク環境の接触を50%以下とすれば、徐々に感染は低下していると思われる。

まとめ

接触を削減できると特異的予防・治療のない間でも制御が可能である。
経済的インパクトが大きい。
高い異質性がある(接待飲食業 飲食業 病院・施設)。
R<1にできる対策combinationの発見が望まれる。
再流行を防ぐポイントとして、
 居酒屋・夜間接待飲食業での接触をどうへらすか、
 海外からの移入の対策、
 皆さんの移動旅行や大規模イベントへの対峙の仕方 
が重要である。

3.臨床と感染対策

防衛医科大学校
川名明彦先生

COVID-19の臨床像

潜伏期間: 平均5日(2-7日)
発症から入院までの中央値:7日(3-9日)
入院患者の年齢:74-86%は50歳以上
感染経路:飛沫、接触、一部エアロゾル感染
感染の48-62%は未発症者からの感染である。
臨床症状:検査所見はリンパ球減少(83%)、炎症マーカー(ESR,CRP,TNFα、IL-1、IL-6)上昇
合併症: 肺炎、ARDS、心機能異常、腎機能異常

中国の報告(N=44672)では、8割軽症、2.3%が死亡

症状は、発熱、咳嗽、肺炎、全身倦怠感、咽頭痛、嗅覚味覚障害(64-80%)など、インフルエンザと区別は困難である。
重症度分類:軽症はSpO2 96%以上、95%-94%は中等症I;呼吸不全なし、93%以下は中等症II、とされている。 (COVID-19診療の手引より)
日本人の場合、80歳以上の致死率は26.9%である。

重症化のリスク要因

高齢(60歳以上)、慢性腎臓病、免疫抑制状態、重症心臓病(心不全、冠疾患、心筋症)、2型糖尿病、COPD、肥満(BMI>=30)、鎌状赤血球症
おそらくリスクを上げる要因として、喘息(中等症から重症)、嚢胞性線維症、骨髄移植、HIV、ステロイド、免疫抑制剤、肝疾患、喫煙、脳血管疾患、高血圧、精神神経異常(認知症)、妊娠、サラセミア

画像について

胸膜下優位の敷石状すりガラス状陰影
死亡例のCT:両側すりガラス陰影が全肺野に広がる。
文献的には、末梢優位の両側性、GGO、GGO+コンソリデーション、胸膜近傍の濃度上昇、Crasy-paving pattern、エアーブロンコグラム、コンソリデーションなど。
胸水貯留、リンパ節腫大などはむしろCOVID-19ではみられない。
CTの陰影の広がりが広いほど予後不良といえる。
発症7日以内の早期はGGOがおおく、それ以後の後期はcrasy – paving やconsolidationがおおくなる。
病理解剖例では、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症などが解剖後に判明した例がある。

PPEについて

N95以上の高性能マスクを推奨、PAPRも使用可能、フェイスマスクも代用として許容できる。

COVID-19は発症前にウイルス排泄量がピークに達するのが大変厄介である。

台湾の報告(N=2761)では、
2次感染例は全例、COVID-19患者が発症してから5日以内に接触していた。
2次感染リスクは、COVID-19患者の発症前に接触した735例でも高かった。

COVID-19は空気感染するのか?

2004年にRoy&Milton の分類では、飛沫のサイズだけで感染性を明確に分類することはできないとされた。
ほぼ空気感染する結核、環境によって空気感染しやすい麻疹と水痘、特定の状況下で空気感染しうるSARS。
2007年CDCガイドラインでも飛沫の飛散距離は種々の影響を受ける(飛沫の初速度、分泌物の濃度、環境要因など)とし、
患者の2-3m以内に近づく場合は、マスク着用が賢明であるとした。
最近Roy&Miltonらの提案に、日本の西浦先生の提案した「三密」対策が重要とされた。

Q and A

Q. COVID-19の後遺症について教えていただきたい。
A. 重症化して人工呼吸器管理をした患者は肺線維化を残す、在宅酸素療法のまま退院もある。頻度は今後調査が必要。

4. COVID-19の治療薬の現状と課題

藤田医科大学
土井洋平先生

治療目標

治癒の促進
 入院期間の短縮
 重症化・死亡の予防
 重症者の救命
COVID-19は治療の目標を示すことが難しい疾患である。

病期による病態の違い

病初期は抗ウイルス作用、後期は抗炎症作用が重要であろうと考えられている。

レムデシビル

肺炎起こした患者にレムデシビル群とプラセボ群では退院となるまでの時間を比較したところ、レムデシビル11日間、プラセボ15日間と有意に短縮した。
ただし重症には効果は認めず、中等症に適すると考えられる。

ファビピラビル(アビガン®)

中国での非ランダム化群間比較試験では、ウイルス陰性化までの中央値が、ファビピラビル群 4日間、ロピナビル・リトナビル群 11日間、と有意差がでた。
日本でのファビピラビル特定臨床研究では、
89名の患者をランダム化、通常投与群と遅延投与群(6日後から投与)に分けた。
主要評価項目は6日目までのPCR検査陰性化であったが、最初から服用群でPCR陰性化が早期の傾向があった。
→症例数少なく有意差は示せなかった。
体温は通常投与群で解熱が1日程度早かった。
有害事象は尿酸値上昇(84.1%)、投与後は低下していた。
一方、ロシアにおける第II相3群ランダム化試験が2020年8月8日に報告あり。
中等症60名をファビピラビル高用量投与群、インフルエンザ治療量投与群、標準治療群の3群に分けられた。
投与5日目で、高用量投与群で62.5%、標準治療群で30%のウイルス陰性化率であり、高用量群で有意に高かった。
また解熱までの期間が早かった。・・・ファビピラビルは有望と考えられるので継続して研究される。

インターフェロンβ

香港での報告(中等症から重症患者N=86)では、ロピナビル・リトナビル+リバビリン+インターフェロンβ-1b群とロピナビル・リトナビル群に無作為化し、
PCR陰性化までの日数がインターフェロンβ併用群で有意に短縮した。(併用群:単独群=7日:12日)
現在香港と米国で大規模RCT進行中。

シクレソニド

抗ウイルス活性が認められている。
日本では軽症例への適応外投与が進んでいる。
国立感染症研究センターが肺炎発症抑制効果を検証中である。

イベルメクチン

抗寄生虫薬だが、抗ウイルス活性あり、比較的良好な増殖抑制活性があるという。
フロリダ州のコホート研究では(N=173)、イベルメクチン投与群の院内死亡率が低下した。(投与群15%:標準治療群25.2% の死亡率)
これから日本でもRCT予定である。

ナファモスタット

膵炎・DICに適応のあるプロテアーゼ阻害薬であるが、現在ファビピラビルとの併用投与VSファビピラビル単独 のRCTが東京大学主導で進行中である。

デキサメサゾン

英国での大規模RCTの結果が報告された。
COVID-19患者にデキサメサゾン投与(N=2104) VS 標準治療(N=4321)の比較で、28日総死亡率がデキサメサゾン群で22.9%、標準治療で25.7%と有意差がでた。
特に挿管患者では死亡率35%低下、酸素投与患者では20%低下した。
重症化しつつある患者での重症化抑制効果が期待される。

トシリズマブ

重症患者に対する第III相試験(N=450)では、症状や死亡率の改善予防効果は示されなかった。
退院要件までの日数は有意に短縮した。引き続き併用療法の検討がされるとのこと。

ワクチン

17のワクチンが2020年8月9日現在臨床フェーズに入っている。
オクスフォード/アストラゼネカ の共同開発で、チンパンジーアデノウイルスを使ってSpike glycoprotein遺伝子を発現させるもの。
中和抗体が産生されることが確認されている。
mRNA-1273 はSpike glycoprotein遺伝子のmRNAワクチンであるが、これも全員中和抗体が産生されたという。
前例のないスピードで開発が進んでいる。

日本発エビデンスの必要性

日本ではここまでRCTは難航しているが、その理由として、
 風評被害への懸念
 患者が不足していると研究はすすまないし、増えると現場が逼迫して進まない。
 患者の多くは市中病院で診療されている。
 緊急時に進められる臨床研究のあり方が問われる。
とされている。

Q and A

Q. 治療薬投与のタイミングについては
A. 理論的には早いほうがよい。

■緊急シンポジウム第二部

〜日本内科学会サブスペシャリティ学会からみた新型コロナウイルス感染症〜

1.感染症学会の立場から

日本感染症学会理事長
舘田一博先生

COVID-19の発生者数と死亡数

5月8日から8月8日の間に世界の感染者数は5倍、死者数は2.7倍に増加している。
1日20万人以上が感染し5000人以上が死亡している。
人口100万人あたりの死亡率は日本は8人で128位 1位はベルギーで850人である。
第二波の死亡者数が第一波ほど多くないが、その理由は不明だが、高齢者の割合が少ない、治療法、ウイルスの変異?などが関与しているのではないか。
人工呼吸器、ECMO使用患者数はゆっくり増加中だが、第一波と比較して明らかに少ない状況である。
東京の入院患者数も第一波は3000人まで増加したが、今現在は1400人程度である。徐々に医療を圧迫しつつある。
東京・大阪における感染者数の推移は、大阪に関しては下に凸の増加カーブから最近横ばい、東京は上に凸の増加カーブから横ばいとなっている。
漸増の状況にあり、すぐにオーバーシュートではないが対策を早くすべきと言われている。

感染様式

咳・くしゃみ・おしゃべりによるマイクロ飛沫がしばらく浮遊し吸入して感染する。
マスクの着用が推奨される。

クラスターを発生しやすい場所と要因

会食、接待を伴う飲食店、学校、職場、において三密が重要である。

診断法

遺伝子検査に加えて抗原検査が可能である。
COVID-19では6月19日以後唾液検体検査可能、さらに7月17日以後は無症状者に対してもPCR検査、抗原検査が
可能となっている。
COVID-19およびインフルエンザを想定した外来診療のあり方、が2020年8月3日に日本感染症学会より提言された。

ワクチンは期待されるが、抗体依存性感染増強(ADE)を出しにくいワクチンの開発が重要である。

SARSのときにこのADEのせいでワクチン作成に失敗した。

今後の展望

Hammer & Dance で対峙する。
感染が立ち上がってきたときにはHammerで叩いて抑え込みながら維持する。
今どのような対応が必要か、どこで緊急事態宣言を出すか、with Corona時代の新しい生活様式、などが盛んに議論されている。

COVID-19は人・社会・国に分断を引き起こす感染症である。

差別偏見をどうやって対応していくか
市政と行政・専門家の温度差 ・・・正しい情報発信が重要
国民性という力を信じて 対策を議論すべき
ピンチをチャンスに変えていきたい ・・・技術、革新、連携、協力 
産官医の連携が重要である。

Q and A

Q. 抗原検査は遺伝子検査と同等となったということだったが、施設の状況に合わせて選択でよいのか
A. LAMP法と同等の感度である。うまく移行していきたい。

2.呼吸器内科医の立場から

日本呼吸器学会監事
長谷川好規先生

日本呼吸器学会のアンケート調査をもとに入院施設をもつ病院に対して過去2回アンケートを実施している。(4月20日と5月27日)
その結果をもとにした報告である。

COVID-19の治療について

中等症では8割以上の施設でファビピラビルが投与され、ステロイドが16%であった。
重症では64%がファビピラビル投与、ステロイドは50%で投与され、レムデシビルは60%に投与された。トシリズマブも26%以上の施設で投与された。

COVID-19の合併症では特に肺炎が重要である。

入院時は軽症の肺炎がみるみる悪化し1週間でARDS、呼吸不全に陥っていく。
サイトカインストームを抑えて挿管を回避できないか、が大きな課題である。

人工呼吸回避すると、様々なメリットがある。

人工呼吸器使用数の減少
 人工呼吸管理による医療者への負担軽減・・・医療者には大変な負担なのである!
 2次感染予防
 医療費の抑制

現在AMEDの支援を受けて軽度呼吸不全を呈するCOVID-19肺炎患者のファビピラビル/ステロイド併用療法の試験が進行中である。

まとめ

呼吸器内科医は、COVID-19の主科となっている。
3割の施設が重症例に関わっている。
半数の医療機関は呼吸器内科の通常業務を縮小した。
8割以上の施設でPPE不足に強いストレスを感じている。
約3割でCOVID-19に関するハラスメントを経験している。
重症例の様々な治療の工夫がなされている。
今後はARDSを防止できないか、それに対する治療が開発できないか、と考えている。

3.内分泌代謝医の立場から 〜他領域の内科医と共有したい問題点〜

日本内分泌学会理事
田辺晶代先生

糖尿病・高血圧患者に対しての注意点

治療自己中断しない、ソーシャルディスタンスをまもる、体重増加に注意、糖尿病シックデイ対応、副腎機能低下症の副腎皮質ホルモン補充療法を中止しない。

副腎皮質機能低下症

内分泌疾患による一次性:副腎疾患、二次性:視床下部・下垂体疾患
非内分泌疾患:三次性 ステロイド治療中
慢性副腎不全の患者は感染や外傷などのストレスが加わると容易に急性副腎不全(副腎クリーゼ)を起こす。

下垂体→ACTH→副腎→コルチゾール → 下垂体に抑制性のフィードバックがはいる。

このループの中で均衡が保たれている。
ここにストレスが加わると、ストレスが下垂体を刺激→ ACTH分泌が増加 →副腎でのコルチゾール分泌が増加(血中コルチゾールは5-10倍に増加する。)
原発性副腎不全やステロイド治療中ではコルチゾールは分泌されていない、投与中のグルココルチコイドがいつも下垂体を抑制してACTHが抑制されているからである。
ここにストレスがはいるとACTHーコルチゾール反応は鈍っており、血中コルチゾールは増加しないので、ステロイドを追加投与する必要がある。

副腎抑制状態は全身投与のステロイドのみではない。

全身投与のステロイドのみならず、吸入、点鼻、点眼、経皮・外用のコルチコイドでも抑制は起こりうる。
経口ステロイド投与患者では60%で分泌不全が認められ、吸入、塗布、点鼻でも20%以下の抑制が認められている。
フルチカゾン吸入では、500μgでストレス下20%の患者がACTH負荷試験でコルチゾール分泌不全を認める。

ストレス下で副腎不全はどうやって判断するか

症状は、倦怠感、脱力感、下痢、発熱などだが、COVID-19と区別がつかない。
一般検査で特に特徴的なのは、好酸球数増加、低ナトリウム血症である。
 ※ただし低ナトリウム血症は、肺炎を合併するとSIADHを発症することに起因することがあり注意を要する。

内分泌検査

基礎値 血中コルチゾール低値、特に午前中のコルチゾールが低値は(5μg/mL以下)副腎不全を疑う。
 ※ただしプレドニゾロン内服中の場合は基礎値は使えない。プレドニゾロンはコルチゾールとして測定されるから。
デキサメサゾンやフルチカゾン、ベタメタゾンはコルチゾールとして測定されない。
確定診断はACTH負荷試験。コルチゾール反応性低下をみる。・・・一般的な検査ではなく緊急時にも実施不可なのが問題点である。

副腎不全ステロイド投与中の患者におけるCOVID-19蔓延時期の発熱時の対処について

米国とイタリアから緊急提言が出された。
37.5度以上+上気道症状の発熱ではステロイド投与は2倍にする、ヒドロコルチゾンHC換算50-60mg/日(PSL換算12.5-15mg/日)
38度以上+下気道症状はHC100mg/日(PSL25mg相当)に増量、入院して静注を考慮。
肺炎/ARDS、血圧低下、副腎クリーゼではHC200mg/日を持続点滴が望ましい。肺炎にデキサメサゾン投与でも代用できる。

経口ステロイド増量時の注意事項

発熱時は受診あるいは電話連絡する。
漫然と増量を継続しないこと。 症状改善後はもとの用量に戻す。
症状持続や悪化は必ず受診し入院を検討。
高血糖に注意する。

まとめ

一次性・二次性副腎不全患者や慢性的ステロイド治療中患者は、慢性副腎不全状態にあると考えて、ストレス下では生理量のHC投与が必要である。

4.リウマチ膠原病内科医の立場から

日本リウマチ学会理事長
竹内勤先生

特に免疫抑制下にある疾患における新型コロナウイルスに対する対応

特に患者から非常に問い合わせがあった。

免疫抑制薬は自己中断しないこと、主治医の指示に従うことをホームページに掲載している。
日本リウマチ学会がREDCAPを用いて症例を集積している。

リウマチ性疾患におけるCOVID-19の報告例

リウマチ性疾患の感染リスクは一般対象より高い可能性がある。
入院・死亡は非リウマチ疾患と同等である。
重症度リスクと免疫抑制薬、生物学的製剤、JAK阻害薬投与は関連しない。
グルココルチコイド(PSL換算)10mg/日以上は入院リスクを高め、抗TNFは入院リスクを低くする可能性がある。
治療薬中断によって、効率に原疾患が悪化する。

多変量解析の報告では(N=600)、重症リスク因子は
65歳以上、高血圧、肺疾患 糖尿病、慢性腎障害 が明らかにリスクが高い。

SLEはP=0.06なので有意差はないが、ややリスクが高いかもしれない。
通常の抗リウマチ薬はリスクには関与しない。
JAK阻害薬投与によりCOVID-19重症化リスクを低下させる。
一方PSL換算10mg/日以上は有意に入院リスクを上昇させる(P=0.03)。
関節リウマチを始めとして生物学的製剤を使用しているが、これらの製剤はCOVID-19感染リスクを下げる可能性がある。
IL-6受容体抗体トシリズマブとIL-1β受容体アンタゴニスト アナキンラは多くの報告がなされてきた。

SARS-CoV2に対する自然系免疫の不均衡応答

通常のコロナウイルス感染症では、ウイルスRNAが核内に侵入するとセンサーの働きでINF-IとIII が産生されてウイルスやウイルス感染細胞に対して細胞傷害性に働く。
すなわち生体を守るように働く。
ところが、SARS-CoV2はviral sensorで感知されたのちにウイルスから産生されるnon-structual proteinがINF pathwayを抑制する!
その結果INF-IとIII の低産生がおこりウイルス排除の作用がないまま、炎症がより強く惹起されることになる(CXCLs、IL-6、IL-1、TNFα)。

COVID-19における過炎症症候群のメカニズム

SARS-CoV2が細胞内に侵入すると察知した好中球や単球といったinnate系細胞がケモカインをhyper-productionし、ケモカインに呼応した様々な免疫系細胞(好中球、マクロファージ、T細胞)が集族してくる。とくにINF pathwayを抑制され、proinflammatory-cytokine(IL-1β、TNFα、IL-6)が過剰産生される。→全身性の過炎症症候群を惹起する。
この機序が血管内皮障害→血管内皮炎 の病態ではないか。

5.血液内科医の立場から

日本血液学会理事
谷口修一先生

血液内科患者は感染しやすいか?

1.担癌患者に発症率については様々な報告があるが、全般に感染しやすいと考えるべき。
細菌、真菌、ウイルスなどの混合感染が報告され、死亡率は高い。
永寿総合病院の血液内科48名で、23名がCOVID-19で死亡した。

血液内科患者内でのリスクファクター

特にウイルス感染と関係ある液性免疫について低下している疾患は易感染性であろう。
 B細胞の多発性骨髄腫
 悪性リンパ腫でリツキシマブ使用例・・・B型肝炎ウイルス既感染の患者はセロコンバージョンで劇症化のリスクあり
 急性白血病移植後
 長期ステロイド内服 ITP,AA,AIHAなど
新型コロナ感染症に真菌感染の合併がある。
好中球減少をきたしている急性白血病、MDS、化学療法中

血液内科患者のリスクファクター

英国の報告では、血液患者の約40% およそ1700万人以上のデータでは、
発症後1年以内、腫瘍の状態がactive、化学療法中、の患者が、予後不良である。

急性白血病や予後中等度群以上の悪性リンパ腫は疾患の進行が早く、治療開始のタイミングが遅れると治癒不可能となる。

血液患者は通常から感染予防を励行している。

人混みを避ける、マスク、手洗い、うがい・歯磨き、生ものの摂取を避ける。

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