2020年9月10日に気管支喘息に関する講演会に出席いたしました。

2020年9月10日に気管支喘息に関する講演会に出席いたしました。会場は1テーブルに一人しか着席しないかつ十分なソーシャルディスタンスを保ち、リモート参加も併用での開催でした。最新の知見を学びましたので報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

Bio製剤Expert Seminar in 福山
~重症喘息の病態と臨床実態を探る~

●KEYNOTE SPEECH
重症喘息ってなんだろう - 脱ステロイド –

中国中央病院呼吸器内科
池田元洋先生

喘息は吸入ステロイドの治療により徐々に受診率は低下している。2019年は1300人の喘息死亡であるが、徐々に低下している。高齢者の喘息死が多いのが特徴である。

ここ数年ステロイドバーストの副作用の報告が相次いである。

骨折リスク、白内障・緑内障、糖尿病…短期ステロイドバーストは敗血症、静脈血栓症、骨折等のリスクを増大する。
傾向ステロイド年間4回以上の使用と有害事象 骨粗鬆症、高血圧、肥満、2型糖尿病、白内障、消化性潰瘍などが増加することが報告されている。
他の報告では精神障害の増加も報告がある。
総投与量が増加するほど、これらの有害事象は増加する。
発作時ステロイドは切れ味がよいが、その後の依存・抵抗性をきたし、リモデリングを生じ経年的呼吸機能低下を生じる。
有害事象のリスクはステロイドの用量と関連している。
骨折10倍、白内障2倍、糖尿病、高血圧などがある。
経口ステロイドを要する発作があると、その患者は再度ステロイドが必要な時期がくる。
脱プレドニンや、コントロール不十分症例、の次の一手は抗体製剤と思われる。

重症喘息の定義

高用量吸入ステロイドおよびLABA、LTRA、LAMA、を併用してもコントロール不良の場合は重症喘息である。
重症喘息の割合は治療中の患者で7.8%、さらにコントロール不良の重症喘息は2.5%。
重症喘息のフェノタイプで治療を選択するのが最近の考え方である。
5割以上は好酸球性炎症、これにはアレルギー性と非アレルギー性がある。
これらをまとめてType2炎症と呼ばれる。
好中球性気道炎症が主体のものがありこれは未だ治療法は確立されていない。
好酸球性アレルギー性炎症はステロイドが有効であるが、非アレルギー性好酸球性炎症(自然免疫系)はステロイドが効果があまりない。

重症喘息のバイオマーカー(抗体製剤の使い分けが目的で)

血清総IgE、末梢血好酸球数/喀痰好酸球数、FENO、末梢血好中球。
アトピー型にはFENOが高値の気道炎症が強い症例はデュピルマブ(抗IL-4/-13製剤)。
Svenningenら(ERS)より抗体製剤の使い分けのフローチャートが示された。

メポリズマブ中止患者率

継続81%、19%が中断。中止の最大の理由は患者判断。
経口ステロイド10mg/日維持されていた患者はメポリズマブ投与後半年で5mgに減量できた。
1年間で30%程度がステロイド中止可能であった。
注射部位のしびれ、注射皮膚部位の反応が約1割である。

講演
バイオ製剤を中心とした令和時代の重症喘息治療
– 全身性ステロイドに頼らないこれからの選択肢 –

滋賀医科大学呼吸器内科学内講師
山口将史先生

(演者の先生はリモートで出席されました。)

なぜ重症喘息に生物学的製剤が必要か

QOLを改善できる。
全身性ステロイドの減量/中止が可能となる。
重症喘息は7.8%が重症喘息で、2.5%がコントロー不良*Nagase HらAllergol Int2020)中等症と比較し重症喘息患者は全身性ステロイド投与量が20倍となり入院日数は4.9倍となる。
2003年の喘息治療はSTEP3と4の違いは経口ステロイドの有無だけだった。
現在は多数の選択肢がある。
経口ステロイドの累積用量と有害事象の関連では、睡眠障害、挫創、皮下出血、体重増加、気分障害、骨粗鬆症、などすべて投与量に比例して頻度が増加する。
PSL投与を中止後1年以内に骨折リスクは急激に低下するが、最終的に0にはならない。
つまりある期間比較的長期に全身性ステロイドを投与するとリスクは残存するということである。
年に4回以上ステロイドバーストすると同様にリスクが上昇する。

喘息重症度別の喀痰好酸球数をみると、重症ほど好酸球性炎症が強くなることがわかっている。

血中好酸球<400/μL、喀痰好酸球<3% と血中好酸球>=400/μL、喀痰好酸球>=3%の比較では好酸球数が多いほど喘息が重症である。
好酸球の活性化にはIL-5,IL13,IL-4が重要なサイトカインとなる。

演者らのメポリズマブ投与症例一覧

N=22 以下、それらの症例から紹介された。

症例1 58歳女性

22年間SABAのみで対応できていた。
49歳で慢性副鼻腔炎を合併し以後喘息コントロール不良。
ABPAと診断され月に3回程度PSL15mg3日間のバースト投与されていたが、メポリズマブ開始後は9ヶ月でPSLは離脱した。
ACTは14点から24点に上昇した。喘息は増悪により呼吸機能は経年的に低下する。
(Matsunaga Kら JACI pract 3  759-)メポリズマブはMENSA試験とMUSCA試験において急性増悪率50%減少させ、さらに24週間後にQOLを有意に改善させた。

症例2 47歳男性

MPO-ANCA陽性のEGPAと診断された。
好酸球性副鼻腔炎/中耳炎も合併。PSL投与すると寛解するが中止で再増悪。
CPA→AZPの併用、しびれにIVIGも継続投与されていたが寛解せず。
途中でオマリズマブを投与するが効果が乏しく、ステロイドも減量できず大腿骨頭壊死を生じた。
メポリズマブ投与可能となったタイミングで開始したところ寛解した。
MIRRA試験では、メポリズマブは経口ステロイド薬の平均1日投与量を有意に減少させた。

症例3 72歳男性

20年以上鼻閉を自覚。63歳で好酸球性副鼻腔炎と診断され、67歳で喘息診断されコントロール不良であったのでメポリズマブ投与
WBC11100 Eo15.9%(1764/μL)ACTは14点だったが、16週後に22点に改善。ただし好酸球は400程度から低下しなかった。
そこでベンラリズマブに変更したところ末梢血好酸球数はほぼ0になったが、肺機能の上乗せ改善はなく、NOはむしろ上昇、本人の自覚症状も改善はなかった。

GETE評価では、20例中16例がexecellent からgoodだった。

COSMEX試験の主要評価項目である喘息増悪発現率は非常に低下した。

228週以降はほとんどの患者は経口ステロイドを中止可能であった。

抗メポリズマブ抗体の発現率は335例中6例、中和抗体は0であった。

アダリムマブの抗薬物抗体の研究では、血中のアダリムマブ濃度が低下し治療効果も低下する。
やはり抗薬物抗体はできないほうがよい。

他領域

関節リウマチの治療

ステロイド→ MTX → 生物学的製剤 OR JAK阻害薬の併用と変化してきた。
2004年まで全身性ステロイドは50%の患者に投与されていたのが、以後バイオ製剤の投与が始まり、現在は30%程度まで低下し、しかもDAS28が有意に軽症化している。
潰瘍性大腸炎も同様であり、ステロイドが寛解導入するが、寛解維持する効果はなく、バイオ製剤が有効である。

質疑応答

会場の参加者からの質問

Q.メポリズマブからベンラリズマブに変更、あるいはベンラリズマブ→メポリズマブに変更、あるいはメポリズマブ→デュプリマブに変更した症例はご経験があるか。

A. メポリズマブからベンラリズマブに変更例ではあまり良くならなかった。ベンラリズマブからメポリズマブへ変更の経験はない。
デュプリマブに変更例は、メポリズマブで喘息はよかったがアトピー性皮膚炎合併しており皮膚が良くなかった例に変更し良好となった。

Q. 好酸球性副鼻腔炎合併例にデュプリマブがよいのか、アスピリン喘息の患者にオマリズマブがよいのか。

A. 好酸球性副鼻腔炎に対して演者も2例経験があり有効である。ただしメポリズマブ投与例は鼻にも効果があり、鼻があるから必ずデュプリマブというわけではない。アスピリン喘息については今年の早い段階で相模原のグループからオマリズマブ投与でアスピリンが服用できるようになるかもしれない、というデータがでてきており、そのことをふまえての質問と思うが、演者も2例ほどオマリズマブを使用している。確かにアスピリン喘息に関しては疫学的にも経験上もオマリズマブのほうが優先度が高い気がする。

リモート出席者からの質問

Q. バイオ製剤投与についての注意事項は

A. アナフィラキシーはときにみられるが、概して安全に使用できる。
注射部位反応や注射後に熱が出る人がおり、予め話しておいたらよいであろう。

座長より質問

Q. 好酸球数が300というのがガイドラインにあるが、好酸球数が300前後ではバイオを入れたほうがよいのか?

A. 好酸球数だけでは決めていない。
QOL低下しているかどうかである。
症例3は好酸球数がさらに低下すれば有効性がさらに高いかもと考えてのメポからベンラへの変更をしたが、好酸球数は減っても実際には有効性に差はなかった。

Q. このような患者はメポリズマブがよい、という先生のお考えがあるか。

A. これと言ったものはない。メポリズマブの経験がたまたまおおい。
好酸球性副鼻腔炎に対する効果はメポリズマブがベンラリズマブより高いという印象はある。

Q. EGPAの症例は好酸球数が非常に多いものばかりだが、症例3だけは150/μLと低値だったのはなぜか。

A. ステロイドが先行投与されていた症例である

Q. 下肢のしびれに有効性はどうか

A. 文献的にはメポリズマブはしびれにも有効であるが、自験例では効果がすくなくIVIGが有効だった。
一般的にしびれにはメポリズマブよりもIVIGが効果が高いと思われる。

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