高尿酸血症・痛風治療薬に関する勉強会

当院ではウォンツ伊勢丘薬局薬剤師と定期的に勉強会を実施しております。
内容要約を以下に記します。

重要事項リスト

  • 痛風は尿酸代謝異常による高尿酸血症が根底にあり、尿酸塩結晶が関節内に析出することで激烈な痛みを伴う急性関節炎発作を引き起こす疾患である。
  • 高尿酸血症の病型は、腎負荷型、尿酸排泄低下型、混合型に大別され、それぞれに適した尿酸降下薬(尿酸生成抑制薬または尿酸排泄促進薬)を選択する。
  • 痛風発作時には尿酸降下薬の新規開始や増量を行わず、コルヒチン、NSAIDs、ステロイドを用いて炎症の鎮静化を最優先とする。
  • 尿酸生成抑制薬のアロプリノールは腎排泄型であり、腎機能低下例では減量が必要だが、フェブキソスタット等は肝・胆汁排泄型であり比較的使いやすい。
  • 尿酸排泄促進薬を使用する際は、尿路結石のリスクを低減するために十分な水分摂取と尿アルカリ化薬の併用が必須である。
  • 腫瘍崩壊症候群などの急性高尿酸血症に対しては、尿酸分解酵素薬であるラスブリカーゼが用いられる。
    講演テーマ
  • 高尿酸血症および痛風の疫学と病態生理の理解
  • 痛風発作時および間欠期における適切な薬物治療の選択基準
  • 尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の作用機序、副作用、相互作用の比較
  • 患者の病型および合併症(特に腎障害)に応じた治療戦略の立案と最新治療の動向

高尿酸血症と痛風の疫学および病態生理

高尿酸血症は、性別や年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dL超の状態と定義される。

疫学的には、日本の全体人口の10〜15%が高尿酸血症に罹患している。

性差が顕著であり、男性は約20〜30%を占め、特に30代から50代にピークを迎える。一方、女性は2〜5%に留まるが、閉経後に増加する傾向がある。これは女性ホルモンであるエストロゲンが尿酸の排泄を促進するためであり、閉経によるエストロゲン低下が影響している。

男性においては、アルコール摂取、プリン体や高カロリー食の摂取、 tender筋肉量が多く尿酸産生が活発であることなどが高尿酸血症の要因となる。

実際に痛風を発症するのは全体人口の0.1〜0.5%であり、高尿酸血症患者全員が痛風に至るわけではない。また、高尿酸血症患者の約80%は糖尿病や肥満などの生活習慣病を合併している。インスリン抵抗性は尿酸排泄を低下させるため、血中尿酸値の上昇に直結する。

遺伝的要因も強く関与しており、日本人痛風患者の50〜80%において、尿酸排泄に関与するトランスポーターであるABCG2遺伝子の多型(変異)が認められる。通常、尿酸プールは一定に保たれるが、産生と排泄のバランスが崩れることで高尿酸血症へと進展する。

痛風発作と痛風結節・痛風腎への進行プロセス

血清尿酸値が7.0mg/dL以上の状態が持続すると、尿酸塩が過飽和となり、関節腔内などに結晶として析出・遊離しやすくなる。このトゲトゲとした尿酸塩結晶をマクロファージや好中球などの白血球が異物として認識し、貪食を開始する。しかし、結晶の鋭利な形状によって細胞膜が損傷・破壊されると、インターロイキン(IL-1β、IL-8)やプロスタグランジンなどのケミカルメディエーターが漏出する。これにより強烈な炎症反応が引き起こされ、激痛、熱感、発赤、腫脹を伴う痛風発作が発現する。

特に第1中足趾節関節(足の親指の付け根)に好発する理由としては、心臓から遠く血流に乏しいため冷えやすいことや、運動量が多く局所のpHが低下しやすいため、尿酸の溶解度が下がり結晶化しやすい環境であることが挙げられる。

すでに沈着していた尿酸塩結晶が急激な尿酸値の低下によって遊離することでも発作が誘発される。

痛風発作自体は通常7〜10日程度で自然寛解し、次の発作までは無症状の期間(間欠期)が続く。しかし、長期間にわたって高尿酸血症を放置すると、痛風発作が慢性化し、耳介や関節周囲の皮下組織、骨に尿酸塩結晶と肉芽組織からなる痛風結節が形成される。

さらに進行すると、腎臓の髄質間質に尿酸塩結晶が沈着し、間質の線維化や糸球体硬化を引き起こす痛風腎へと至る。過去には痛風腎から尿毒症へと進展し死に至るケースが多かったが、医学の進歩により現在では減少している。

痛風発作の薬物治療戦略

痛風発作が発生した場合、患者のQOLは著しく低下するため、速やかな炎症の鎮静化が求められる。

発作時の治療には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド、およびコルヒチンが用いられる。ガイドライン上、明確な第一選択薬は指定されておらず、患者の腎機能、消化器症状、合併症などを考慮して選択される。

NSAIDs(ナプロキセンやインドメタシンなど)は比較的短期間に高用量を投与し、強力に炎症を抑える。NSAIDsが使用できない、あるいは効果が不十分な難治例や腎機能低下例に対しては、プレドニゾロンなどのステロイド(20〜30mg/日、3〜5日間)が用いられる。

コルヒチンは、細胞骨格を形成する微小管の構成タンパク質であるチュブリンに結合し、微小管の重合を阻害することで、マクロファージのサイトカイン放出や好中球の遊走といった細胞機能を強力に抑制する。発作の前兆期(ムズムズ感など)に服用することで極めて高い予防・鎮静効果を発揮するが、すでに炎症がピークに達し白血球が集積した後に投与しても効果は乏しい。コルヒチンの副作用として、細胞分裂の活発な消化管粘膜の分裂も抑制してしまうため、悪心・嘔吐や下痢といった消化器症状が高頻度で発現する。また、妊婦への投与は催奇形性があるため禁忌である。薬物相互作用にも注意が必要であり、コルヒチンはCYP3A4で代謝されるため、クラリスロマイシン等のCYP3A4阻害薬との併用は血中濃度を上昇させる危険がある。近年のガイドライン改定により、コルヒチンの1日最大投与量は海外基準に合わせ、1.5mgを超えないように厳格に定められた。

尿酸降下薬による間欠期のコントロール

痛風発作が完全に鎮静化した後、再発予防のために血清尿酸値を6.0mg/dL以下にコントロールすることを目標とし、尿酸降下薬の投与を開始する。間欠期の治療の原則は生活習慣の改善であり、アルコール(特にビール)やプリン体、高カロリー食の制限が指導される。

尿酸降下薬の導入時に必ず少量から開始する。急激に尿酸値を下げると、関節内に沈着していた尿酸塩結晶が遊離して痛風発作を誘発・増悪させる危険があるからである。発作中は絶対に新規投与や増量を行ってはならない。

尿酸降下薬は、大きく「尿酸生成抑制薬」と「尿酸排泄促進薬」の2系統に分類される。患者の病型(腎負荷型、尿酸排泄低下型、混合型)や合併症に応じて適切な薬剤を選択することが重要である。

尿酸生成抑制薬の特性と使い分け

尿酸生成抑制薬には、アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットがある。

これらは、プリン体が尿酸へと代謝される最終段階で働くキサンチン酸化還元酵素(XOR)を阻害し、尿酸の生合成を直接的に抑える。

アロプリノールは古くから使用されている薬剤であり、それ自身がプリン骨格を有している。そのため、尿酸代謝だけでなく他のプリン・ピリミジン代謝酵素にも影響を及ぼす可能性があり、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)といった重篤な皮膚粘膜眼症候群を引き起こすリスクがある。また、アロプリノールおよびその活性代謝物であるオキシプリノールは主に腎臓から約70%排泄されるため、中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス:Ccr 30〜50mL/分)がある患者では、血中濃度の上昇による副作用を防ぐために、通常の100〜300mg/日から100mg/日、あるいは50mg/日へと厳密な用量制限が必要となる。アロプリノールの血中半減期は約1.6時間と短い。

比較的新しい薬剤であるフェブキソスタットとトピロキソスタットは非プリン骨格を持つ選択的XOR阻害薬であり、他の代謝系への影響が少ない。さらに、これらは主に肝臓で代謝され、尿だけでなく胆汁からも排泄されるため、軽度から中等度の腎機能障害患者であっても減量せずに通常量を投与できる利点がある。尿酸生成抑制効果としてはフェブキソスタットが最も強力であり、1日1回投与で済むため服薬アドヒアランスの向上にも寄与する。

尿酸排泄促進薬の機序と結石予防対策

尿酸排泄促進薬には、プロベネシド、ベンズブロマロン、ドチヌラド(ユリス®)が存在する。

糸球体で濾過された尿酸は、近位尿細管に存在する尿酸トランスポーター(URAT1)によって約90%が再吸収され、最終的に約10%のみが尿中へ排泄される。尿酸排泄促進薬は、尿細管における尿酸の再吸収を抑制することで尿酸の排泄を強力に促すトランスポーター(URAT1)阻害作用を持つ。作用の強さとしてはベンズブロマロンが最も強力であるが、2000年に劇症肝炎による死亡例が報告されたため、投与開始後6ヶ月間は定期的な肝機能検査が義務付けられているなど、使用には慎重なモニタリングが求められる。

最新の薬剤であるドチヌラド(選択的尿酸再吸収阻害薬:SURI)は、URAT1のみを極めて選択的に阻害するため、他のトランスポーターへの影響が少なく副作用が低減されている。

プロベネシドは、ワルファリンやペニシリン、メトトレキサートなどの排泄経路とも競合するため、広範な薬物相互作用に注意が必要である。

これらの尿酸排泄促進薬を使用する際の最大の注意点は、尿中の尿酸濃度が上昇し、尿路結石を極めて形成しやすくなることである。これを予防するため、水分を3L程度摂取して1日の尿量を2L以上に保つとともに、尿アルカリ化薬(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤:ウラリットなど)を必ず併用する。尿のpHを6.2〜6.8にコントロールすることで尿酸の溶解度を高めるが、pHが7.5を超えると逆にリン酸カルシウム結石が析出するリスクがあるため、過度なアルカリ化にも注意が必要である。すでに尿路結石の既往がある患者に対しては、尿酸排泄促進薬は禁忌であり、尿酸生成抑制薬を選択しなければならない。

高尿酸血症の病型分類に基づく治療戦略

高尿酸血症は、尿中尿酸排泄量と尿酸クリアランスの値に基づき、大きく3つの病型に分類される。

最も頻度が高いのは「尿酸排泄低下型」であり全体の約60%を占める。

次いで、尿酸の産生が過剰となっている「腎負荷型(尿酸産生過剰型および腎外排泄低下型)」が約10%、両者が混在する「混合型」が約30%を占める。

従来は、排泄低下型には尿酸排泄促進薬を、腎負荷型(産生過剰型)には尿酸生成抑制薬を使用するという病型に応じた薬剤選択が基本とされてきた。しかし近年では、尿酸排泄低下型の患者に対しても、尿酸生成抑制薬(フェブキソスタットなど)の有効性が確認されており、特に尿路結石のリスクを避けたい場合や、腎機能低下を合併している患者においては、病型にかかわらず尿酸生成抑制薬が第一選択として広く用いられるようになっている。

特殊な高尿酸血症:腫瘍崩壊症候群と尿酸分解酵素薬

造血器腫瘍などの悪性腫瘍に対するがん化学療法を実施した際、抗がん薬によって腫瘍細胞が急激かつ大量に破壊されることで、細胞内の核酸が血中に一気に放出される。この核酸が代謝されて大量の尿酸が産生され、急性かつ重篤な高尿酸血症、高カリウム血症、急性腎不全などを引き起こす病態を「腫瘍崩壊症候群(TLS)」と呼ぶ。この生命を脅かす病態を予防・治療するためには、通常の尿酸降下薬では効果発現が間に合わない場合がある。そこで、直接的に尿酸を分解する生物学的製剤「ラスブリカーゼ(ラスリテック®)」が静脈内注射として投与される。ラスブリカーゼは尿酸オキシダーゼを遺伝子組換え技術を用いて製造したものであり、ヒトには本来存在しない酵素の力で、難溶性の尿酸を極めて水溶性の高いアラントインへと速やかに変換し、腎臓からの排泄を劇的に促進する。がん治療の4〜24時間前に投与を開始するが、アナフィラキシーショックや溶血性貧血などの重大な副作用リスクがあるため、患者の腫瘍崩壊症候群(TLS)発症リスク分類(中間リスクか高リスクか)を厳密に評価し、中間リスクであればフェブキソスタットの予防投与を優先し、高リスク例やフェブキソスタット不応例に対してラスブリカーゼを選択するという慎重な使い分けが行われる。

腎障害合併時の治療アプローチと最新の治療動向

痛風患者は高率で腎障害(CKD)を合併するため、薬剤選択には常に腎機能の評価が伴う。

腎機能が著しく低下したCKDステージ4などの症例において、アロプリノールは50〜100mg/日という極少量しか投与できず、単独では十分な尿酸降下作用が得られないケースがある。そのような場合、肝代謝型であり腎障害時にも比較的効果が維持されるベンズブロマロンを20〜50mg/日という少量で追加併用する療法が、ガイドライン上も有用であるとされている。さらに、既存のNSAIDsやステロイドに抵抗性を示す難治性痛風発作に対する最新の治療アプローチとして、炎症のコアとなるインターロイキン1(IL-1)を直接ブロックする生物学的製剤(カナキヌマブやアナキンラなど)の臨床応用が海外を含め研究されている。また、痛風の根本原因を断つ新規の尿酸生成抑制薬として「ティグリクソスタット」などの開発も進んでおり、既存薬を凌駕する強力な尿酸低下効果が期待されている。

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