2016年2月23日に開催された「COPD Breakthrough Academy」にて、特別講演の座長をいたしました。

2016年2月23日に開催された「COPD Breakthrough Academy」にて、特別講演の座長をいたしました。
演題は「LABA/LAMA firstを考える患者」で、演者は市立岸和田市民病院呼吸器アレルギー科部長 加藤元一先生です。
先生のご講演は興味深く、会場の先生方も良い講演だったと満足されていらっしゃいました。
先生にご教示いただいたCOPDに関する最新の知見について報告します。
以下の記事はあくまで私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

好中球は細菌感染時にproteaseを放出するが、喫煙すると細菌がいなくても放出する。これが好中球性炎症を惹起するのである。

観察1年目に急性増悪を起こすと2年目も3年目も急性増悪をおこしやすい。
一方1年目に急性増悪を起こさない患者は以後も起こしにくい。
→急性増悪を起こす群と起こさない群は違うphenotypeと考えられる。

喀痰中の好中球数と急性増悪の頻度は無関係と判明。

一方、血中の好中球数が多いと急性増悪が多い。気流制限や肺気腫に関連する遺伝子は多数報告されており、遺伝子を用いて急性増悪をしやすい患者群としにくい患者群を鑑別することは不可能である。(Thorax 2014; 64: 666-672)

9219人のCOPD患者を対象として研究では、約28%は頻回に急性増悪を起こす。

(Respiratory Medicine 2015; 109: 228)
その患者の特徴をまとめると

  • mMRC grade4 ・・・症状が重い
  • 一秒量が30%未満 ・・・気流制限が強い
  • 心血管合併症がある
  • 抑うつ
  • 骨粗しょう症
  • 女性

が挙げられた。 一方痩せは急性増悪との関連はなかった。
増悪入院の頻回なCOPD患者の特徴は
75歳以上
mMRC grade4
であった。

スペインのCOPDガイドラインはユニークで、増悪頻度に着目して予後規定する3つのphenotypeに分類した。

(Arch Bronchoneumol 2012;48:86-98)
the exacerbator (増悪頻回症例)・・・LABA/LAMAが治療に必須
ACOS ・・・・喘息のコンポーネント・喀痰好酸球があるなら吸入ステロイド薬の併用が必要
気腫合併 ・・・治療に反応不良な患者がおおい
その他、ミオパチーやGERD合併例は難治性である。

COPDを以下の3つのphenotypeに分類した場合

(Respiratory Medicine 2013; 107: 724-731)
Type1 Emphysema 43.2%
Type2 Chronic Bronchitis(CB) 44.7%
Type3 ACOS(喘息とCOPD合併)12.1%
Type2は日本ではマクロライド少量長期投与している群に相当する。DLcoは良好。
増悪頻度はphenotypeで差はなかった。
Type1は症状がより強く、肺機能も悪い。残気量が多い。薬剤反応も悪い。→ゆえに薬剤は初期からLABA/LAMAをfirst にすべきであろう。
Type2のような痰が多い患者は、そうでない患者に比較して増悪入院や増悪受診の頻度がおよそ2倍多い。

CB,nonCB,healthyの3群に分けて検討した報告では

(Chest 2015;147: 1235-1245)
FEV1.0(L) の平均がCB,nonCB,healthyの順に2.1,  2.4,   3.1とCBが最も低く、CBは息切れが強く運動耐容能は低下しすぐに過換気になる。
細気管支の部分でcheck valveとなり過膨張になると推察されている。
→ CBタイプのCOPDは確かに存在するので、肺機能検査・mMRC・CATなどを行って診断すべき。診断したら、運動耐容能が低下しているのでLABA/LAMAで治療すべきである。

COPDには普段から起炎菌となりうる菌が末梢気道に生着していることがおおい。

なので普段の菌をしれば、新しい菌は起炎菌と同定しやすい。時に肺実質まで細菌が認められることがあるが、これはcolonizationではなくinfectionである。

デスモシンについて

エラスチンが破壊されると尿中に排出が増加する。演者が主治医のCOPD患者の9割は禁煙しているが、デスモシンを測定すると上昇している。→つまり、禁煙後も肺構造破壊が進行することを意味している。デスモシンはQOLと逆相関し、肺機能低下と相関する。

治療について

強い運動強度で息切れするときは単剤(LABAかLAMA)、弱い運動強度で息切れするときは2剤(LABA+LAMA)を投与する。
Achは喘息患者の気道上皮に働いてIL-4,IL-5、MMP9を放出する。すなわち喘息の病態を悪化させるが、抗コリン薬であるチオトロピウムはそれを阻害する。

M3レセプターをknock outしたマウスは杯細胞の増殖を抑制する

(AJRCMB 2014;50:690-698) 。

チオトロピウムは気道粘膜への好中球浸潤を抑制し杯細胞を減少させ、細気管支の線維化を抑制した

(ERJ 2011)。

気道収縮させると粘膜下のcollagen bandが肥厚した。

つまりmechanical stressでリモデリングが起こるので気道収縮させてはいけない (NEJM 2011; 364:2006-15)。
気管支収縮は炎症細胞浸潤を惹起する (Pulmonary Pharmacology and Therapeuticis 2002; 15:147)。

ミストタイプ(=つまりレスピマット)の方が、MDIやDPIよりもより末梢へ薬剤が届く。

なのでチオトロピウムもカプセルからレスピマットに切り替えると、症状やFEV1.0が改善する。

ACOSの治療 喘息合併を示唆する所見があるときは必ずICSを併用すること。

COPDにICS単独の治療は効果がないので行わないこと。

尿閉と前立腺肥大は無関係と言われている。

チオトロピウム使用にあたり、前立腺肥大の診断があるからといってすぐに禁忌ではないと考えられる。

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