『第37回岡山びまん性肺疾患研究会』に出席し最新の知見を学んで参りました。

2017年1月21日に岡山市のプラザホテルにて開催された
『第37回岡山びまん性肺疾患研究会』
に出席し最新の知見を学んで参りました。
以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

嚢胞性肺疾患の診断と治療-LAMを中心に

- 順天堂大学呼吸器内科学 先任准教授 瀬山邦明先生

肺嚢胞の基礎的な知識について

一見正常に見える肺野(肺の内層)にポツンと含気腔が認められるもので壁が2mm未満径2cm以上を狭義の嚢胞という 壁が厚いものはcavityと言われる。
嚢胞は一般的に加齢性変化と考えられているが、
40歳以上でも5個未満の嚢胞は加齢変化と考えても良いであろう。
40歳以上で5個以上の嚢胞がある場合、何らかの疾患を考慮する必要がある。
嚢胞の有無で比較検討した報告では、(Thorax 2015; 70:1156-1162)
臨床的に有為な差はないが、DLcoが嚢胞合併例で低い傾向にある。
嚢胞は数が増えてくると周辺の肺胞が圧迫されて軌道に対する弾性収縮力が発揮されなくなる。

嚢胞のでき方と性状

小葉中心にできる嚢胞 弾性収縮力はほぼ均等に働くので、画像上は類円形となる。
小葉辺縁にできる嚢胞は、不整形なものとなる。
→嚢胞の形状はしんだんの参考になるであろう。

BHD症候群(Birt-Hogg-Dube症候群)

常染色体優性遺伝性皮膚疾患 である。
皮膚毛包の付属器の良性腫瘍 (過誤腫性)
腎腫瘍 (オンコサイトーマ、嫌色素性腎細胞癌)
肺嚢胞/気胸 fibrofolliculoma
FLCN遺伝子(17p12.2)の胚細胞遺伝子変異が病因である。
遺伝子はEXON 1-14の広範な部位に異常がある。
25歳以上から発症してくることが多い。
気胸は20代から増えて40歳以後減少する。
気胸は米国では2−3割に合併するが、日本人は7割と合併が多い。
腎癌は40歳以上で増える。
嚢胞は7歳くらいから認められる。→呼吸器科医が発見するきっかけとなる。
BHA症候群の嚢胞は不整形で、数は少なく肺血管に接するあるいは取り囲む嚢胞が肺底部を中心に認める
↔︎ リンパ脈管筋腫症(LAM)では類円形、びまん性で均一
BHD症候群の診断には、
少なくとも5個以上の肺嚢胞 、うち一つ以上病理学的にfibrofolliculoma を証明
顔面に皮疹
腎腫瘍
follow up方法は、
一般集団と同様の頻度で健診すること。
皮膚病変のフォロー ・・・悪性化の心配はなく経過観察
皮膚病変の生検は診断と治療になる。
腎腫瘍は年に1回CTフォロー
腫瘍性病変は腎臓以外にも唾液腺・甲状腺・肺・消化管にも認めることがあり、肝嚢胞は10%程度認められる。

LAM(リンパ脈管筋腫症)

経過とともに増加する嚢胞 (転移性肺腫瘍が増加していくようにLAMでは嚢胞が増える)
病理像では、嚢胞に見えるのは、不整形に拡張したリンパ管である。なので、LAMの肺は何となく水っぽく見える。
診断は、
乳糜胸水も見られることがあり、乳糜胸水にはLAM細胞が多数認められる(LAM細胞クラスター)ので、胸水を抜いて病理に提出すると診断可能。HMB45陽性細胞を証明する。
胸腔鏡下肺生検
血清VEGF 800以上あればLAMと診断して良いであろう(ただしまだ保険適応外)

治療:

シロリムス(mTOR阻害剤)を服用すると肺機能は1年間低下しなかったが、中止すると再び低下する。シロリムスは治癒は期待できない。
肺機能安定化しQOLをあげる薬であり、治癒を目指す薬ではない。

副作用:

口内炎50%以上、(クレーター型の痛みが強いものが多い)
下痢、皮疹、月経不順、感染症(気管支炎・感冒)などが多い。
内服開始時期の副作用の頻度は多いが、半年から1年経つと慣れてきて頻度が減る。
FEV1<70%ならシロリムスを服用した方が良い。

シロリムス治療:

望ましい効果・・・ 肺機能安定化 乳糜漏の治療
望ましくない効果・・・ 様々な有害事象 妊娠できない 中止すると再び悪化=長期間の内服が必要
生命予後は肺機能低下である。

投与の適応について

肺機能低下の進行が早い症例は投与すべきである。
例えば30歳でFEV1 70%程度なら予後不良と考えられる。
効果は胸部レントゲンで十分評価可能、粒状網状影が1ヶ月で消えていく症例もある。
慢性呼吸不全となった気腫化の強い症例は、効果は期待できない。肺移植しかない。

症例提示:

・乳糜胸水で発症した34歳症例:発症前まで息切れは全くない
妊娠したいので胸膜癒着術のみで対応
・乳糜胸水で発症した28歳女性:乳糜胸水が1年半改善しないためシロリムス1−2mg投与し、2ヶ月で胸水がかなり低下。
シロリムスの標準投与量は2mg/日であるが、低用量でも十分な効果がでる症例もある。 本来はトラフ値を測定してコントロールするが測定は保険適応でない。
2mgで副作用が強い場合は1mgに減量して忍容性が上がる場合もある。
どのように外来管理すれば良いか。
3ヶ月ごとに採血レントゲン半年ごと胸部CT 、経過がよければ、1年後からCTは1年に一回程度。

まとめ

治療のゴールは肺機能安定化しQOLを改善すること
治療対象は肺機能が高度か、乳糜胸水で自覚症状がある症例
治療薬は2mg/日が標準だが、副作用がある場合は忍容性を考慮して1mgでも可能な症例がある

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