第6回夜間成人診療所プライマリケア・ミニ勉強会が2018年1月11日木曜日に開催され座長を務めました。

第6回夜間成人診療所プライマリケア・ミニ勉強会が2018年1月11日木曜日に開催され座長を務めました。

タイトルは「プライマリケアで遭遇する循環器領域の疾患とその対処について」

講師は福山市民病院循環器内科統括科長 吉川昌樹先生です。

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

タイトル通りプライマリ・ケアで遭遇しやすい症候や疾患について、胸痛、呼吸困難、一過性意識障害、動悸、高血圧性緊急症、急性動脈閉塞性疾患、急性大動脈解離、肺血栓塞栓症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、の順に解説されましたので、以下概要を記します。

【胸痛】

鑑別疾患は多岐に渡り、プライマリケアでは心血管疾患13%、肺疾患20%、消化器疾患10%、筋骨格系21%、精神疾患7%、の頻度である。救急では重症心疾患の割合が高く、特に急性冠症候群(ACS)の評価が急がれる。病院救急部なら心電図、ポータブルXP、心臓超音波検査、心筋マーカーなどの検査を患者到着後30分以内に行うが、プライマリケアでは問診で絞り込むことが望まれる。3つの質問で虚血性心疾患らしさを評価するとよい。胸痛は胸骨の裏か、労作時増悪するか、休息やニトロで消失するか、である。3つそろうと92%が冠動脈疾患であり、2つで75%、1つで47%である(JACC 1983)。可能なら全例心筋逸脱酵素のCK-MBを評価する。AST、LDHは参考程度である。トロポニンIは発症3〜12時間後に出現し、ラピチェック® H-FABP (ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白)は2〜3時間で上昇するが、偽陽性が多い。ACS以外では急性大動脈解離(AAD)、肺血栓塞栓症(PTE)、食道破裂、緊張性気胸を鑑別する必要がある。大動脈解離は突然の激烈な痛みがあり、痛みが移動して治まると典型的であり、血圧の左右差を認めることがある。残り3つも胸痛が突発する。食道破裂は皮下気腫に、気胸は肺音の左右差、に注意する。肺血栓塞栓症の原因は深部静脈血栓(DVT)であるが、そのリスク評価にはWellsスコアが有用である。

【呼吸困難】

呼吸困難は以下の3つのパターンのいずれかを呈することが多い。1.発作性夜間呼吸困難;就寝して1〜2時間後に息苦しくて目覚める。うっ血性心不全による左房圧上昇が原因である。2.起座呼吸;臥位で苦しく座位ですぐ楽になる。心不全や呼吸器疾患で起こる。3.扁平呼吸;起座呼吸の逆で、起き上がると呼吸が苦しい。右-左シャントが原因であり、肝肺症候群、心房中隔欠損症などがある。呼吸困難は急性発症か慢性かどうかで鑑別疾患が変わるが、急性の場合は急性左心不全、慢性ならば、うっ血性心不全が多い。もちろん急性慢性ともに呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、気胸など)は鑑別に挙がる。胸部レントゲン、心電図、血ガス、心エコーなどを実施し鑑別を行う。意識障害を伴えば糖尿病性昏睡などの代謝障害も考慮する。

【一過性意識障害】

意識障害の持続が秒から分単位のものを一過性とし、かつ意識が自然に回復するもの。失神と非失神発作に分類できる。失神とは血圧低下に伴う全脳の血流低下による。非失神発作とはてんかん、脳血管疾患、代謝性疾患、精神科疾患などである。循環器疾患によるものとして不整脈による失神が挙げられる。完全房室ブロック、MobitzII型2度房室ブロック、心室頻拍、持続性洞性徐脈、3秒以上の洞停止、を心電図で認めると不整脈が原因と診断できる。不整脈原性を疑う所見は、WPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群などである。不整脈以外の循環器疾患による失神の原因精査には心エコーが非常に有用であるが、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、左房粘液腫、心タンポナーデ、肺血栓塞栓症、肺高血圧症、脱水などがある。

【動悸】

鑑別すべき点は、1.不整脈、2.心血管系に不整脈以外の異変がおきたための動悸、3.全身の生体異変に反応した動悸、4.心因性(不安神経症やパニック発作)である。受診時に動悸が持続していれば鑑別診断は容易であるが、すでに停止している場合には病歴が参考となる。脈が不整、あるいは突発性の頻脈や徐脈は1.を疑うが、脈の不整なく心拍数正常か軽度上昇なら2から4と推定される。鑑別診断に心電図は必須である。SpO2、心エコー、BNP、Dダイマー、血糖、甲状腺機能、CRPなどを行う。

ここから後半です。

【高血圧性緊急症】

血圧の異常高値のみならず、標的臓器障害が急速に進行し直ちに降圧治療を開始しなければ致命的となりうる病態をさす。例えば高血圧性脳症、脳血管疾患、AAD、ACS、急性左心不全、急性腎不全、褐色細胞腫のクリーゼ、降圧薬中断による反跳性高血圧、子癇などである。血圧値は目安であり、必須ではない。血圧が異常高値でも急性あるいは進行性臓器障害がなければ高血圧切迫症として、緊急降圧は必要ない。降圧目標は最初の1時間以内で平均血圧を25%低下、2−6時間で160/100~110mmHgを目標にする。具体例を示すと、アテローム血栓性脳梗塞では180/105未満を目標にする。脳出血では発症24時間以内の超急性期・急性期では収縮期180または平均血圧130を超えるときに、前値の80%とする。くも膜下出血では160を超える場合に前値の80%、AADでは収縮期血圧を100〜120に維持、ACSでは140未満とする。

【急性動脈閉塞】

原因としては心房細動で生じた塞栓物質によるもの、血管内膜病変部に急速に形成される動脈塞栓、急性動脈解離や外傷などがある。塞栓症320例の発症部位について検討した報告では、大腿動脈34%、腸骨動脈領域16.6%、上肢16%、膝窩動脈14.2%、大動脈9.1%、浅大腿動脈4.5%である。症状は、四肢動脈の閉塞の場合、疼痛、脈拍消失、蒼白、知覚鈍麻、運動麻痺(5P;pain,pulseless,pale,paresthesia,paresis)が重要である。腹部内蔵動脈(特に上腸間膜動脈塞栓症)では急激な腹痛、下痢、下血を、腎動脈では側腹部痛、血尿、腎機能低下、頸動脈や椎骨動脈は脳梗塞である。非可逆的となる時間は神経4−6時間、筋肉6−8時間、皮膚は8ー12時間、24時間以上で約20%は切断を余儀なくされるため、緊急の対応を要する。

【急性大動脈解離AAD】

突然の急激な腰背部痛、背中から腰部へ移動することが多い。非常に猛烈で引き裂かれる痛み(70−80%)であり、発症時間が何時何分何秒とはっきりいえるくらいである。裂ける方向に向かって上下に痛みが移動することがある。上行大動脈に解離が及ぶStanfordA型では、大動脈弁閉鎖不全による心不全44%、狭心症17%、急性心筋梗塞5%、脳血管疾患5−15%を合併するので注意を要する。StanfordA型では1時間毎に1%死亡し、最初の48時間で半数が死亡(大動脈破裂や心タンポナーデ)、1年で70%死亡するという。診断確定するには造影CTが必要なので、疑ったらすぐに救急搬送してよい。

【肺血栓塞栓症PTE】

下肢などの静脈や心臓内で形成された血栓が遊離し、急激に肺血管を閉塞する病態。症状は非特異的だが、胸痛(42%)、呼吸困難(75%)、頻脈、頻呼吸が主要症状、喘鳴、咳、冷感、発熱、血痰なども認めることがある。中枢肺動脈閉塞では失神(10%)や心停止もありうる。PTEを疑う目安としてWells criteriaがある。DVTの既往あり、PTEより可能性の高い診断がない、心拍数100を超える、4週間以内に外科手術または臥床がある、DVTやPTEの既往、血痰、ガンなどがあればリスクが高いという。これも疑ったらすぐ紹介する。

【不安定狭心症】

最近2週間以内に狭心症が増悪した場合と、新たに発症した狭心症をいう。心筋梗塞に移行する可能性が極めて高い。採血、心電図、心エコーで異常がないことはしばしばである。とにかく病歴が勝負である。胸骨後方の締め付けるような痛み、労作で増強する。(↔数ヶ月に渡りいつもの労作で増強する胸痛は安心である:安定狭心症)。ニトロ舌下で10分未満で胸痛は消失(秒単位ではない)。随伴症状に左肩・上腕への放散痛、嘔気・発汗がある。

【急性心筋梗塞AMI】

臨床症状、心電図所見、血清酵素上昇のうち2つ以上あればAMIと診断してよい。ただし、超急性期には心電図や血清酵素に典型的変化がみられないことがあり、臨床症状を最優先させること。臨床症状としては、突然の前胸部圧迫感、締め付け感、恐怖感。20分以上持続する胸痛はAMIを疑う。喉、顎、左肩・首筋、左上腕内側・右胸部に痛みが放散したり、背部痛の場合もある。

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