第19回福山市医師会医療安全研修会(WEB)聴講録

2021年6月10日、以下の通り研修会があり、医療安全について学びました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

第19回福山市医師会医療安全研修会(WEB)

聖マリアンナ医科大学病院認定看護師
中谷佳子様

(※中谷様はCOVID-19入院病棟に従事されていらっしゃいます。)

適切な場面で手指衛生、マスク着用 適正なソーシャルディスタンス が重要である。
感染対策は何かを安全にできるようにするものである。できなくするとかやってはいけないとか諦めることを増やすことではない。

新型コロナウイルスの基礎知識とこれまでの変遷

2020年1月24日COVID-19の第一報であった。

日本国内では1万3千人超が死亡しており死亡率は1.8%である。
現在第4波中であり、少しピークを過ぎたかもしれない。
コロナウイルス自体は昔から知られており、形が王冠ににていることからコロナウイルスと呼ばれる。
通常の感冒ウイルスであるが、SARS/MERSは重症肺炎として知られるも日本では流行しなかった。
新型コロナウイルスは7番目に見つかった新ウイルスである。
犬猫にも感染するが、いままでは種を越えての感染はなかった。しかしCOVID-19はヒト-イヌ感染、ヒト−ネコ感染が報告されている。
ウイルスは微生物の中でもっとも小さい生物である。
そもそもウイルスは常に遺伝子変異を繰り返している。
新型コロナウイルスはスパイク蛋白のある外殻と内部のRNAだけで構成されているシンプルな構造である。
重症感染者は15-20日くらい感染力があるが、軽症者は10日までである。
発症から1週間で肺炎症状が強くなる。
嗅覚・味覚障害は全くなくなるのが特徴的である。中途半端な障害はあまりない。
演者らはCOVID-19後遺症外来を開設しているが、咳の残存者がおおい。
特効薬は未だないが、ワクチンは発症予防や重症化予防がある。ただし持続効果は不明である。
新型コロナはプラスチック表面で最大72時間生存すると報告あり。

変異株について

ウイルスの遺伝情報が変化し、タンパク質の一部が変異し新しい性質を持つに至ったもの。
何度も変異するとまれに人間にとって都合の悪いウイルスが出現し、感染性を大きく変えてしまうことがある。
ワクチン開発のイタチごっこになる可能性がある。
変異ウイルスは、感染力が高い、重症化や死亡リスクが高い、ワクチン効果が減弱する可能性あり。
ただし現状のワクチンは変異株に有効であり接種が推奨される。
国内で注目されている主な変異株は イギリス株α:N501Y、南アフリカ株β:N501Y、ブラジル株γ:E484K、インド株δ:L452RとE484Q
私達の感染対策はいままでと何ら変わりなし。ただし感染率が上がっているので3密をさける対策は継続すべきである。

感染対策の具体的な対策について

医療機関の感染拡大要因・・・基本的な手指衛生の不徹底・不十分、不適切な個人防護具、ゾーニング不徹底など

職員間の感染に注意が必要である。
 食事、休憩室、更衣室、狭く密になりやすい環境での飛沫接触感染
 物品の共有(仮眠室リネン、PHS等)の可能性

事例から学び、備える

標準予防策の再教育 ・・・概念、手指衛生、PPE着脱方法
COVID-19具体策の遵守
 接触飛沫予防策、ゾーニング、消毒・換気
職員間の感染防止対策
 体調不良時の報告と休みやすい環境整備
情報共有システムの確率

なぜ標準予防策が重要なのか

すべての人に対して検査を実施していない。し、する必要もない。
完璧な検査方法はない。
ウインドウ期(潜伏期間)の存在がある。
 感染症の多くはウインドウ期があり、検査を実施しても陰性となる期間がある。
検査等により診断された感染症は氷山の一角に過ぎない。
血液・汗を除く全ての体液・粘膜・傷のある皮膚は感染の可能性のある物質として扱う。
標準予防策の基本的手段は、手指衛生であり、これを徹底すれば8割は対策済みと考えてよいであろう。

手指衛生の基本的考え方

目に見える汚れがあるときは、流水と石鹸・・・病原を10000分の1にできる。30秒以上洗う必要あり。
目に見える汚れがない場合は、アルコール・・・10万分の1に減少できる。かつ数秒で終了。
現在のアルコール製剤は保湿剤が混ぜてあり、流水よりも手荒れが少ないとされている。
ノロウイルスとバチルスはアルコールに耐性なので注意すること。
手指消毒はまず「指先から」がポイント、よく擦り込むことが重要である。
特に利き手は汚染がおおく洗いにくいので意識して洗浄すること。
アルコールによる手指衛生はCDCとWHOは手首まで洗うことはとくに推奨していない。
手首を洗うのは日本のみである。
演者も汚染されているかもしれない手首を最後にあらうのはどうかと考えており、手首は必須ではないであろう。

PPE

まず手洗い、その後色々装着して、最後に手袋を装着。
脱衣は順番がとくに重要。1.まず手袋、2.手指衛生、3.ビニールエプロン、4.アイガード、5.マスク、6.手指衛生。
エプロンやガウンの脱衣:とにかく前面は汚れているのでできるだけ触れないように脱衣すること。
マスクは鼻ところ、顎をしっかり覆うこと。
マスクの素材による飛沫防止効果の違い・・・不織布製80%カット、布製は66-78%である。
フェイスシールドのみではマスクの代わりにはならない。目の保護のみである。

マスクは正しくつけること

ノーズワイヤーがある方が上、オモテウラもあります。
2色使いのものは色が外側(表)である。メーカー名が入っているものは人から読めるの側が外側(表)である。
プリーツは折り目が下向きが表である。
オモテウラを間違うと、ウイルスや花粉がマスクに付着しやすくなる、肌トラブルを起こしやすい、呼吸がしづらくなる、などがありうる。

ゾーニングとは

感染者と非感染者の区域を分けることである。
場所だけでなく、時間を区切ることもゾーニングである。
ゾーニングでは、必ず平面図を用意して記録しておくこと。後日の検討に必要である。不適切な事例がみつかることもあるので。
床にテープ、矢印を床に示す、看板をつくるなど、初めての人でもわかるようにすること。
消毒には熱水80℃以上、アルコール、次亜塩素酸水など有効である。
次亜塩素酸水では汚れがひどいときは200ppm以上の濃度を使うこと。汚れがめだたないときは80ppmをしっかり濡らして清拭でもよい。

換気

空気の流れをつくることが重要である。
2箇所開放すると空気の流れができて換気効率がよい。
1箇所しか開放できない場合は、扇風機やサーキュレーターで空気の流れを作る。
定期的な換気ではなく、常に少量換気されているようにする。
CO2モニターによる定量評価 1000ppm以下であれば換気ができている目安である。

職員間での感染防止対策

職員が陽性の場合は速やかに保健所に連絡し指示に従う。
職員や家族の体調不良時の対応について院内のルールを予め決めておく。
早期発見するための体制整備・・・報告窓口の一本化、報告しやすい環境整備
休憩室等「気が抜けやすい」場所の院内巡視
繰り返しの啓発活動

Q and A

Q 一部の空気感染とはどのような条件ですか。
A 密閉空間で換気ができていないところ、と考えられる。
マスクの隙間や正しい手指衛生などの遵守などがおろそかになっている可能性が高いと思っている。

Q CO2モニターは1000ppm以下と感染予防のエビデンスはありますか
A 1000ppmを越えていると換気できていない、という一つの指標です。
エビデンスはこれからでてくると思われます。

Q コロナウイルスは情を示したところで感染する気がする。
ポストコロナで新しい生活と言われるが、人間らしさを保つために将来のビジョンがありますか。
A 欧米はすでに緩和している。近い将来日本でも同様になると信じている。
コロナ病棟で働く看護師は目しか見えない。そこでネームカードに素顔の写真を載せている。
マスクをはずして仕事をするのはまだ難しいので、工夫したい。

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