第118回日本内科学会講演会(WEB開催)聴講録その2

2021年4月9日~11日の3日間で第118回日本内科学会講演会(WEB開催)行われ、その後オンデマンドで2週間聴講可能でした。繰り返し聴講し最新の知見を学びましたのでご報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

◆シンポジウム3 「代謝を標的とした内科疾患の治療戦略」

●教育講演14 腸管感染症・最近の話題
JR大阪鉄道病院消化器内科 清水 誠治 先生

●教育講演11 特発性炎症性筋疾患の診断と治療
東海大学医学部リウマチ内科学 佐藤 慎二 先生

●教育講演12 肝硬変合併症の治療
奈良県立医科大学 吉治 仁志 先生

●招請講演3 機能性消化管障害の病態と臨床
兵庫医科大学兵庫医科大学 三輪 洋人 先生

●教育講演5 悪性リンパ腫 治療の進歩
三重大学先進血液腫瘍学講座 山口 素子 先生

◆シンポジウム3 「代謝を標的とした内科疾患の治療戦略」

教育講演14 腸管感染症・最近の話題

JR大阪鉄道病院消化器内科
清水 誠治 先生

腸管感染症は感染性腸炎、感染性下痢症、食中毒を含む概念である。
総論

感染症は病原体と宿主の間で成立する

腸管感染症の場合、外因性では多くが経口的であり、糞口感染である。経肛門的にはクラミジアや梅毒トレポネーマ、経気道的に結核菌、経皮的に糞線虫と日本住血吸虫がある。
内因性は潜在感染の再活性化がある。サイトメガロウイルスなど。
腸管症状の下痢は、14日以上は糞線虫感染を、30日以上はIBD(炎症性腸疾患)や感染後IBS(過敏性腸症候群)などを考慮する必要がある。
腸管外症状として発熱が最も多く、腸チフスやパラチフスは高熱が主症状のため別名enteric feverと呼ばれている。
カンピロバクター腸炎に続発するGuillain -Barre症候群、腸管出血性大腸菌感染症に合併する溶血性尿毒症症候群が特徴的合併症である。
一方無症候症例も多数みられ、無症候性保因者として感染源となる。

腸管感染症の病態

毒素型の病原体が放出するエンテロトキシン、サイトトキシンは腸管上皮細胞に直接作用する。
組織侵入型の病原体は多くがM細胞から侵入し、その後はMφに感染するもの、腸管上皮に侵入するもの、細胞外で発育するものなど増殖形態は様々である。
病原体の伝播経路は、食品、水、動物、環境、土壌、ヒトなどである。

食中毒

食中毒の潜伏期間は、生体外毒素型が最も短く数時間以内、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌は2-10日であり、病歴聴取に注意が必要である。
食中毒の最小発症病原体数は赤痢菌、腸管出血性大腸菌、ノロウイルスは100個未満で感染が成立する。カンピロバクターやサルモネラは1000個以下と比較的少量で感染成立する。
赤痢菌、腸管出血性大腸菌、ノロウイルスは胃酸抵抗性である。
少菌量で感染する病原体では二次感染/交叉感染が多く、原因食品の特定が困難で、ヒト-ヒト感染もみられる。
2020年の食中毒統計で最多患者数は病原大腸菌(約4割)、次にノロウイルス15%、ウェルシュ菌10%。
事件数ではアニサキスが40%、カンピロバクター15%、ノロウイルス12%であった。
食中毒のサーベイランスで発表された患者数の50倍以上実患者は発生していると予想されている。

Clostridioides difficile感染症(CDI)

Clostridioides difficileは、グラム陽性偏性嫌気性細菌。亜端在性の楕円形の芽胞を形成する。

病型分類は無症候性から劇症偽膜性大腸炎まで様々である。

CDIの診断基準と発症因子

2歳以上の患者で、24時間以内に3回以上の下痢便がみられ、かつCDトキシン陽性もしくは毒素産生性CD分離、または大腸内視鏡や生検組織で偽膜性腸炎がみられる。

※ 新生児および12ヶ月以下の乳児は高率に菌を保有しているが、毒素に対するレセプターが発現されていないため、ほとんど発症しない。
注意すべきは、偽膜はCDIに特異的ではなく他の感染症でもみられるため、診断基準としての妥当性に疑問が残る。

CDI発症の危険因子のひとつにPPIの投与がある!

CDIの発症は胆汁酸代謝が関与する。
健常状態では、CDはほとんど芽胞で経口的に消化管に入るが、栄養型は胃酸で死滅し、芽胞は一次胆汁酸(タウロコール酸、コール酸)、大腸では二次胆汁酸(デオキシコール酸)の存在下で発芽せず排泄される。
ところが、抗菌薬やPPI、H2ブロッカーの服用はDysbiosis(※1)の原因となり、大腸で二次胆汁酸は生成されず、大腸に到達した芽胞は発芽して栄養型となりCDIを発症する。
(※1)Dysbiosis. 腸内細菌叢を構成する細菌種や細菌数が減少することにより,細菌叢の多様性が低下した状態を示す。

CDIの検査法について

下痢検体を用いて、GDH抗原検査:CDの菌体抗原であるGDH(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)の検出、CDトキシン:CDが産生する毒素トキシンA/B
を検出する。
もしGDH陽性、トキシン陰性なら → NAAT検査(nucleic acid amplification test, NAAT :CDのトキシンB遺伝子検出する検査)(感度は80%程度である。)
ただしNAATは実施施設に制約(※2)がある。

CDIは市中感染する!

従来CDIは院内感染、抗菌薬関連、と考えられていたが、最近CDIの市中感染が注目されている。
入院後48時間以内、または退院後1ヶ月以降に発症するものを、Community-associated/acquired (CA)CDIと呼ぶ。
米国の報告では、CDIの発生数に占めるCACDIの割合が2013年49%→2018年61%と経年的に増加している(JAMA Network Open 2019)。
CACDIと院内発生例を比較し、CACDIの特徴は、
 発症年齢が若い(平均50歳)、女性、抗菌薬投与割合が少ない、PPI投与が低率、重篤な基礎疾患や悪性腫瘍が少ない、重症CDIが少ない、などである。
演者らの内視鏡所見の検討では、CACDIは入院発生に比較して有意に偽膜陽性例は少なかった。偽膜がない場合は疑わないと診断できない。

腸管感染症の検査法

原因菌の検出について (3-day rule とVBNC)

日本では病原体によって検査法が異なるが、海外ではNAATを用いて多数の病原菌を一度に検出する方法が用いられている。今後日本でも実用化が望まれる。
新鮮下痢便検体の塗抹鏡検は特別な機材なく実施できる。ジアルジア、赤痢アメーバ、腸管スピロヘータ、糞線虫など。
一般的な病原細菌の培養には培地が用いられるが、入院後3日して発症した下痢の原因菌が特定されることは極めてまれである。よって便培養は推奨されない(3-day rule)。
様々な病原細菌は生存に不利な条件では仮死状態となり、生きていても培養できなくなる。この状態をVBNC(viable but not culturable)と呼ぶ。

炎症性腸疾患(IBD)類似の内視鏡所見となる腸管感染症

IBDの診断では内視鏡が決めてとなるが、腸管感染症においてもIBD類似所見がみられるものがある。
潰瘍性大腸炎との鑑別が問題となる疾患は、主に直腸からびまん性に炎症がみられるものである。
Crohn病との鑑別では、敷石状所見、縦走潰瘍、discrete ulcer 、アフタ、などがみられる疾患である。

教育講演11 特発性炎症性筋疾患の診断と治療

東海大学医学部リウマチ内科学
佐藤 慎二 先生

特発性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathy :IIMs)とは

特発性に筋肉に炎症が起こって筋痛や筋力低下などをきたす疾患群であり、多発性筋炎/皮膚筋炎 と 封入体筋炎(inclusion body myositis: IBM)が含まれる。
1975年にBohan&Peterが発表したPM/DM診断基準は長年利用されてきたが、2002年に典型的な皮膚症状を呈しながら筋症状のない無筋症性皮膚筋炎、あるいは検査所見が軽度の異常を認めるも臨床症状がないものをまとめてCADM;Clinically amyopathic DMと呼ばれることになった。
・免疫介在性壊死性筋症(IMNM)
病理学的に筋線維の大小不同を伴う重症壊死性筋症および再生線維を認める。筋線維内への炎症細胞浸潤に乏しい。
臨床的には、潜行性・亜急性に発症する近位筋優位な重症筋力低下を来すものをIMNMと定義した。
・2015年日本のガイドラインはCADMの診断基準を提唱した。

筋炎スペクトラム

最近は、特発性炎症性筋疾患は筋だけでなく皮膚、関節、肺、心臓の病変、悪性腫瘍併発などが様々な程度で出現する多彩な症状を呈する不均一な病態として筋炎スペクトラムという概念が提唱されている。
多発性筋炎、免疫介在性壊死性筋症、PM/DM、CADM、JDM、抗ARS抗体症候群、他の膠原病を合併する筋炎、封入体筋炎が含まれる。
IIMsを診断するために、筋生検が推奨される。
IIMsに見いだされた特異/関連自己抗体は重複することなく、多くの抗体は経過中消失することはない。
各特異抗体ごとに臨床症状と密接に関わっている。

IIMsに見られる特異/関連自己抗体

抗ARS抗体 :抗ARS抗体症候群
抗Mi2抗体 :古典的皮膚筋炎(CDM)
抗MDA5抗体 :CADM>CDM(東アジア)、急速進行性間質性肺炎
抗TIF1-γ抗体 :CDM、成人の悪性腫瘍合併、JDM
抗NXP-2抗体 :CDM、成人の悪性腫瘍合併、JDM(カルシノーシス)・・・保険適応なし
抗SAE抗体 :CDM(発症時はCADM)・・・保険適応なし
抗SRP抗体 :免疫介在性壊死性筋炎(IMNM)
抗HMGCR抗体 :IMNM、HMGCR阻害薬関連筋炎、悪性腫瘍合併
抗cN1A抗体 :封入体筋炎

多発性筋炎(PM)サブセット

臨床的に機械工の手以外の皮膚症状を伴わない対称性の近位筋優位の筋力低下を特徴とする。
自己抗体は抗ARS抗体が陽性となるとされてきたが、それらの症例は抗ARS抗体症候群として独立した概念と考えられてきている。
これまでPMと診断されていた症例の中に、IMNMやnon-specific myositis(NSM)も含まれると考えられる。

皮膚筋炎(DM)サブセット

抗Mi-2抗体は、核に局在する転写調節に関わるNuRD(nucleosome remodeling deacetylase)が対応抗原である。

・抗Mi-2抗体は、核に局在する転写調節に関わるNuRD(nucleosome remodeling deacetylase)が対応抗原である。
典型的皮膚所見を呈する古典的DMで陽性となる。
抗Mi-2抗体陽性例は予後良好とされるが、再発を繰り返す症例がある。
・抗MDA5抗体は、DM特異的抗体で、CADMで見いだされた。
急性/亜急性間質性肺疾患に有意に併発することが特徴である。
発熱、多関節炎、皮膚潰瘍、手掌紅斑が高頻度である。
・抗TIF1−γ抗体は、臨床的に成人の悪性腫瘍合併DMに高頻度(20−80%)に認められる。
間質性肺炎の併発は低く、DMに典型的かつ重症の皮膚症状が特徴である。
小児皮膚筋炎(JDM)では、成人と違って悪性腫瘍合併は認めず、間質性肺疾患が低頻度である。
・抗NXP−2抗体 (保険適応なし)
核内転写に関与するnuclear matrix protein 2に対する自己抗体。
JDM、成人DM、悪性腫瘍併発DMで陽性(25−35%)となる。
JDM症例では、皮下石灰化(カルシノーシス)を高頻度に認める。
・抗SAE抗体(保険適応なし)
post-translational modification に関与するsmall – ubiquitin activating enzyme(SAE)に対する抗体。
抗SAE抗体陽性例は、当初CADMで発症し、経過とともにCDMに診断されるユニークな特徴を持つ。

抗ARS抗体症候群サブセット

・抗ARS抗体症候群は、発熱(80%)、多関節炎(50−90%)、レイノー現象(60%)、間質性肺疾患(50−80%)、機械工の手(70%)を併発する。
間質性肺疾患を高頻度に併発し、出現時期も多彩。主に慢性進行し筋病変に先行する場合もある。ステロイド有効だが、再発例が多く免疫抑制薬の併用が推奨される。全く進行しない例や急性型/亜急性型も経験される。
小関節中心の多関節炎で、骨びらんなど関節リウマチと同様の変化を来すことがある。関節症状が先行して関節リウマチと当初は診断されることもある。

免疫介在性壊死性筋症(IMNM)サブセット

(※筆者追加 本邦の筋炎コホートでは特発性炎症性筋疾患460名のうち177名(38%)がIMNMと診断され、抗SRP抗体陽性39%、抗HMGCR抗体陽性26%、両抗体陰性35%。抗SRP抗体陽性では間質性肺炎や心臓合併症、血清反応陰性では悪性腫瘍の合併が多い。対称性の四肢近位筋力低下、CK高値。自己抗体測定や筋生検がされないと本診断名には至らず、多発性筋炎として診断されている例が多い。)
・抗SRP抗体
粗面小胞体でのタンパク合成とその膜輸送に関与するsignal recognition particle(SRP)を対応抗原とする。
血清CK高値、亜急性に経過する治療抵抗性難治例(重症の筋力低下)が多く、免疫抑制剤や免疫グロブリン大量静注療法の併用を要する。
発熱、Raynaud現象、間質性肺炎の併発は低頻度である。
・抗HMGCR抗体
スタチンの作用するHMG-CoA還元酵素に対する自己抗体。
抗SRP抗体と同様に、IMNMに見出される。
抗体陽性例の63%でスタチン製剤の使用歴がある。
小児から成人まで、亜急性の経過で近位筋優位の筋力低下、血清CKが高値となる。
副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、IVIGに対する治療反応が良好な例がある。悪性腫瘍併発例の報告がある。

封入体筋炎(IBM)

・抗cN1A抗体は、ヌクレオチドの糖とリン酸との結合を加水分解する酵素のcytosolic 5′-nucleotidase 1A(cN1A)に対する自己抗体である。
高齢者、男性におおい。潜行性発症、緩徐に進行。
近位筋+遠位筋が障害され、血清CKは軽度上昇(2000以下)、大腿四頭筋や手指屈筋群が障害されやすい。
輪状喉頭筋の筋力低下による嚥下障害、頸部の筋力低下を来す。
病理:壊死・再生像は乏しく、筋線維内の縁取り空胞(rimmedvacuole)や核内・細胞質内の繊維状封入体が特徴。
(※筆者追加 筋線維内にアミロイドが存在すること、封入体にはアミロイド前駆蛋白やリン酸化タウが証明できることなど、アルツハイマー病との相同性が指摘されるようになっている。)
副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤による治療は無効。IVIGが嚥下障害に有効との報告がある。細胞変性に対する治療有効性を検証する試験が実施中である。
運動療法/作業療法、装具などが筋力や機能維持に推奨される。

封入体筋炎を除くIIMsの治療について

・悪性腫瘍や急速進行性間質性肺炎ありあるいは疑い → まずこれらの治療を最優先。
・筋炎に対する治療
急性期は安静、筋炎の炎症沈静化後に、筋力回復のために理学療法。
高タンパク、高カロリー食。
副腎皮質ステロイド 1.0mg/kg/日、PSL40−60mg/日、2−4週間。原則3分割。
→ 有効なら漸減、あるいは免疫抑制剤併用
→ 無効ならmPSLパルス 1g3日間、および免疫抑制薬併用、IVIG。

間質性肺炎に対する治療

急性/亜急性の場合、高用量ステロイド+免疫抑制剤、更に抗MDA5抗体陽性なら3剤併用療法:高用量PSL+IVCY+タクロリムス。
慢性なら非進行性は経過観察のみ。
慢性進行性なら抗MDA5抗体陽性例でPSL+免疫抑制剤、抗MDA5抗体陰性かつ抗ARS抗体陰性でPSL単剤。

教育講演12 肝硬変合併症の治療

奈良県立医科大学
吉治 仁志 先生

肝硬変の成因の変遷

以前はB型、C型肝炎などウイルス性が70%以上を占めていた。
2014年以降の統計ではウイルス性は約5割、NASH25%、アルコール性が9.1%、AIH4.4%、胆汁うっ滞性3.2%、特発性7.5%である。

肝硬変診療ガイドライン2020(第3版)が発行された。

5年前の第2版との違いは、C型肝炎の非代償期を含む経口抗ウイルス薬、NASHを中心とした肝硬変の治療、サルコペニア、筋痙攣、そう痒症、門脈圧亢進肺高血圧(PoPH)、ビタミンD欠乏、ハームリダクションなどが追加された。

栄養療法

① 血清アルブミン=<3.5g/dL、Child-Pugh BまたはC、サルコペニア(JSHの基準を用いて判定)の有無を評価
② ①がいずれも無しなら、BMIに合わせて栄養指導を行う
③ ①のいずれか有りならば、栄養食事療法・指導(分割食、就寝前補食LES:Late Evening Snackを含めて検討)および肝硬変合併症に対する薬物治療
④ 食事摂取量低下、栄養状態悪化があり、かつ
  腹水または肝性脳症 → 肝不全用経腸栄養剤(へパス®、アミノレバンEN®)
  低アルブミン血症 → 分岐鎖アミノ酸顆粒BCAA(リーバクト®、アミノレバン®、ヘパンED®など)

抗ウイルス療法、肝硬変はウイルス排除により治癒する可能性がある!

肝硬変のChild -Pugh分類Bの3年生存率は71%、分類Cでは30.7%と非常に予後不良であることが知られている。
C型非代償性肝硬変においても、ウイルス療法を実施することが推奨されている。
Child-Pugh 分類B → SOF/VEL12週間(重度腎障害がないこと)
Child-Pugh分類C → SOF/VEL12週間(重度腎障害がなしなら肝臓専門医による治療方針判断) or 経過観察
非代償性肝硬変においてC型肝炎ウイルスに対する直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals;DAA)の投与により、Child Bの45%が12週間後にChild Aに改善した。
Child Cは33%がChild Bに、8%はChild Aに改善した!
すなわち肝硬変はウイルス排除により治癒する可能性がある。

腹水

単純性腹水と複雑性腹水に分けられる。
単純性腹水・・・Grade1:少量の腹水で、画像検査でしか診断できないもの、Grade2:中等量の腹水で、理学的に貯留が明らかなもの、Grade3:大量の腹水で、腹部膨隆あり
難治性腹水・・・利尿薬抵抗性腹水:塩分制限し利尿薬やアルブミン製剤を使用しても減少しないもの。利尿薬不耐性腹水:利尿薬の増量により、腎機能低下や肝性脳症が発生するもの。その他に特発性細菌性腹膜炎がここに分類される。

腹水治療
  1. 単純性腹水はまず塩分制限(5-7g/日)+ 利尿剤スピロノラクトン25-50mg/日内服 ± フロセミド20-40mg/日内服
  2. 1が無効な場合、トルバプタン(サムスカ®)3.75-7.5mg/日内服
  3. 1,2がいずれも無効な場合、腹水穿刺(+ アルブミン製剤) or 腹水濾過濃縮再静注法
  4. 1,2,3のいずれも無効ならば肝移植
    ・腎障害は非代償性肝硬変の予後を増悪させる。

フレイルは肝硬変の予後が不良である。

肝臓学会ではまず握力を測定し、握力低下したフレイルでは予後不良であることが示された。
男性握力<26kg、女性<18kg、でサルコペニアと判定する。
握力正常群は5生率約50%、握力低下群は5生率が約30%であった。
筋痙攣は肝硬変患者に頻度が高い。病態に応じて芍薬甘草湯、カルニチン製剤、BCAA®製剤、亜鉛製剤を選択する。
患者からはほとんど訴えないので医療者側から問診にて聴取することが重要である。

その他

血小板減少にはトロンボポエチン受容体作動薬の投薬を推奨する。
肝硬変に伴うそう痒症に抗ヒスタミン薬は効果がないので、ナルフラフィン(レミッチ®、ノピコール®)を推奨する。

招請講演3 機能性消化管障害の病態と臨床

兵庫医科大学兵庫医科大学
三輪 洋人 先生

機能性消化管障害には、非びらん性胃食道逆流症、機能性胸やけ、機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群、機能性便秘症、がある。

機能性消化管障害はストレスに過剰反応し腸管が異常収縮する。

乳幼児期・思春期の強いストレスはIBS発症に強い影響を与える。
IBS発症・増悪に対する性的虐待の影響を調査した研究では、体験の頻度が多いほどIBSの重症度が高いほど増加し、重症IBS患者の20%以上、大学病院のIBS患者の30%以上に認められるという。
演者らの研究では、FDの患者は被虐待歴が有意に多かった。
・消化管感染後の機能性消化管障害発症が多い
スペインでは2002年サルモネラ感染のアウトブレイクが発生した。感染者が1年後にFDあるいはIBSを発症する確率(RR)は、それぞれ5.2倍、7.8倍、であった。

消化管症状が起こるメカニズムについて

正常では食事を摂ると受容体弛緩反応が起こる(食事を溜め込むために胃上部が膨らむ)。胃酸と蠕動にて十分に粉砕され2mm以下となったら幽門部から十二指腸に排出される。
この機能が異常をきたすと、受容性弛緩反応の障害→早期満腹感、胃排出能の障害→胃もたれ・食後膨満感、となる。
FD患者やIBSでは患者では消化管知覚過敏となっている。胃内や腸管内にバルーンを膨らませると健常人よりもかなり少量から痛みを感じる。

機能性ディスペプシア(FD)の病態は、十二指腸の炎症と関連する

・FDの病態は、
①ストレスに対する過剰応答性を獲得した患者が、②ストレスに反応して上部消化管症状を起こす。
ストレスとは、幼少時・思春期環境、遺伝子、消化管微細炎症(感染後)。
上部消化管症状とは胃運動異常と知覚過敏である。
③その症状発現をさまざまな因子が修飾している。
 精神心理因子、胃酸過多、ピロリ菌感染、食事、生活習慣等。
では、③の様々な因子はどのように胃運動異常と知覚過敏にさせるのか?
最近の研究では”十二指腸”が症状発現を司ると考えられるようになっている。
健常人の十二指腸に酸や脂質を注入すると胃運動低下、知覚過敏を誘発し強いディスペプシア症状を引き起こす。
ベルギーからの報告では、FD患者の十二指腸には微細炎症が生じ粘膜透過性亢進していることを発見した。
また演者らの報告では、FD患者の十二指腸には好酸球と肥満細胞が増加していた。
微細炎症→過敏 という構図であるが、ではなぜ炎症が生じるのか?
感染症後の炎症の残存はわかりやすいが、幼小児期の強いストレスが微細炎症と関係があるのか?
そこで演者らは、IBSのモデルであるラットに母子分離ストレスを1日2時間、10日間負荷し、その後49日まで母子一緒に育てたあと胃機能検査を実施した。
結果は、胃排出能が有意に低下し、胃知覚は亢進していた。この十二指腸には有意に好酸球が浸潤していた。
ラットに母子分離ストレスを与えると、胃排出能は低下し胃知覚過敏が生じるのである。

FDの治療

まずヘリコバクター・ピロリを除菌する。ただし演者らの研究では除菌の有無で症状に有意差はなかった。
現在日本で使用されている運動機能改善薬の殆どは、症状改善に有意差を示せていない。
心療内科的治療として催眠療法は有意に効果が示されている。H2ブロッカーとプラセボは全く有意差はなかった。

FD診療ガイドライン2021

機能性ディスペプシアと診断したら、最も重要なのは「説明と保証」である。
すなわち、なぜこのような症状が出ているかを説明し、この症状は命に関わる病気でなくちゃんと良くなることを保証してあげることである。
医療機関を訪れるFD患者は非常に不安がつよい。
食事生活指導も重要である。 高カロリー脂肪食は嘔気と痛みをより強く誘発する。
グルテンを含む小麦や、FODMAP食は症状を増加する可能性がある。
六君子湯は有意に症状を改善する。

教育講演5 悪性リンパ腫 治療の進歩

三重大学先進血液腫瘍学講座
山口 素子 先生

悪性リンパ腫とは

リンパ球に由来する悪性腫瘍の総称である。
毎年3万人以上が新規発症し急速に増加している。20年前と比較し罹患数は3倍、がん年齢調整罹患率は10万人あたり7人→12人である。
全身のあらゆる部位に発生し、どの科でも診療機会がある。
抗がん剤への反応が良好である。
一昔前はホジキンと非ホジキンに分けて治療選択していたが、現在はWHO分類(2017)に基づき病型特異的治療アプローチがなされている。
患者数に占める各病型の割合は、2007-2014年の統計では(N=9426)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫36%、濾胞性リンパ腫22%、T/NK細胞リンパ腫19%、ホジキンリンパ腫6%、その他17%(主にBリンパ腫)である。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 Diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)

特徴

Aggressive リンパ腫(月単位で進行する)の約80%を占める。
B細胞マーカーであるCD20陽性。CD20は成熟B細胞だけに発現する。
発見時進行しているものが多い。

現在の初回標準治療

R−CHOP療法 :リツキシマブ(R)(抗CD20抗体)+ CHOP、3週間で1コース、3-8コース実施する。
R−CHOP療法では、5年生存率は約70%と良好である。しかし40%の患者で治癒は得られない。→ この部分で予後改善が望まれる。

最近の治療薬と開発中の治療薬

開発中の分子標的薬として、汎B細胞抗原に対する治療薬が開発中である。抗CD79b抗体+MMAEのポラツズマブ・ベドチン、抗CD19抗体のtafasitamab、BTK阻害薬のアカラブルチニブ。いずれも現在国際試験が進行中である。

希少病型での治療開発が進んでいる

CD5陽性DLBCLはDLBCLの10%を占めるが、治療後も2年以内に再発増悪、血管内大細胞型B細胞リンパ腫は不明熱、神経症状などで発症。いずれの病型も2年で中枢神経系再発が高率(前者は13%、後者は25%)であったが、大量MTX療法(原発性CNS DLBCLの標準治療)を治療早期に組み込むことで、2年生存率が90%前後となった。血管内大細胞型B細胞リンパ腫はかつては剖検で診断されることが多かったが、現在では診断されれば大半の患者が治癒する疾患となった!

再発/難治DLBCLに対する治療

キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法:自家移植後再発/難治例に対して輸注例で40%以上の2年生存率が確認されている。(以前はほぼ助からなかった)
開発中の治療薬:抗CD20/CD3特異性抗体薬、マクロファージ免疫チェックポイント阻害剤など。

濾胞性リンパ腫

リンパ腫全体の約20%を占める。
低悪性度リンパ腫の代表格で、B細胞腫瘍の一つ。CD20陽性。年3%程度がDLBCLなどへ移行する(組織学的進展を示す)。
腫瘍量が少なければ、進行期でも経過観察も可能である。
なぜなら初発進行期で腫瘍量が少ない場合、リツキシマブ+Chlorambucilによる標準治療を行っても無治療経過観察のOSを延長しないからである。
治療が必要となる高腫瘍量の基準を満たすと抗CD20抗体併用化学療法±維持療法 が選択される。
R-CHOP療法 + R維持療法、・・・副作用として脱毛、末梢神経障害、好中球減少などが多く、患者が負担である。
BR療法(ベンダムスチン+R) ・・・R-CHOPより無増悪生存期間PFSを延長する。副作用として脱毛なし、末梢神経障害なし。血球減少も軽度。
オビヌツズマブ併用化学療法 ・・・濾胞性リンパ腫に特に有効

再発/難治濾胞性リンパ腫

いわゆるChemo -free の治療方法が開発されている。
R2療法(R + レナリドミド(免疫調整薬))など。

ホジキンリンパ腫

古典的ホジキンリンパ腫の標準化学療法は、ABVD療法。
 ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、28日を1コースとする。

初発進行期に、BV併用AVD療法

最近抗CD30抗体:ブレンツキシマブ ベドチン(BV)が使用可能となった。

再発・治療抵抗性例には65歳以下で自家造血幹細胞移植併用大量化学療法 がある。

自家移植後再発・治療抵抗性群には、BV単独療法を実施する。奏効率75%、完全奏効率34%である。
抗PD-1抗体薬(ニボルマブ、ペンブロリズマブ)は、奏効率69%、完全奏効率12-22%である。
 → 初回治療など、治療早期への導入が検討されている。

リンパ腫に対する放射線治療の進歩

3次元治療計画による照射体積の縮小、正常組織への被爆低減を可能としている。

T/NK細胞リンパ腫

約30の希少な病型からなる。
主なもの:末梢性T細胞リンパ腫・非特定型、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病(ATL)、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型。ATLは特に予後不良である。

初発CD30陽性T細胞リンパ腫の新初回標準治療

CD30は正常T細胞の大半で陰性であることを利用し、BV併用CHP療法が開発された。
CHOP療法のビンクリスチンをBVに置換したものである。
CHOP療法との比較では(N=452)、PFS、OSともにBV併用CHPが上回り、有害事象はCHOPと同程度であった。

NK/T細胞リンパ腫の治療に進歩

東アジアに多く、鼻に好発、不明熱、血球貪食症候群としても発症。
腫瘍細胞は多剤耐性に関与するP糖タンパクを発現する→CHOP療法の効果不十分である。
そこで、アントラサイクリンを含まない治療が開発された。
頚部リンパ節までの限局期;RT-2/3DeVIC療法・・・放射線治療と2/3DeVICを同時併用する。
DeVIC:デキサメサゾン、エトポシド、イホスファミド、カルボプラチン
その他、SMILE療法(デキサメタゾン、MTX、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、エトポシド)

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