東部地区疾患フォーラム〜重症喘息の治療を考える〜《ZOOM配信》

2021年7月29日に東部地区疾患フォーラム〜重症喘息の治療を考える〜《ZOOM配信》
が開催され、私は座長をいたしました。最新の知見を学びましたので報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

●障害年金制度とは〜喘息患者の障害年金受給の可能性について〜
NPO法人障害年金ヘルプデスク 社会保険労務士 水野剛先生

●特別講演 Type2炎症を標的とした重症喘息治療〜Dupilumab投与の実際を踏まえて〜
山口大学医学部付属病院呼吸器・感染症内科准教授 平野綱彦先生

障害年金制度とは〜喘息患者の障害年金受給の可能性について〜

NPO法人障害年金ヘルプデスク
社会保険労務士 水野剛先生

老齢年金 一定条件を満たした加入者が65歳以上から受け取れる制度
障害年金 障害となった場合に支給 現役世代に支給される制度
公的年金制度は2階建てである。
国民年金(基礎年金)の上に厚生年金保険が上乗せしてある。

障害年金は現役世代も含めて受け取ることができる制度である

仕事や生活が制限されるようになった場合に支給される。
障害者手帳を取得していない場合でも請求は可能。障害の等級とも関連はしない。
障害者が利用できる所得保証等の制度である。
国民年金法 厚生年金保険法 → 障害基礎年金が定められている。
老齢基礎年金を受けるまでの60歳から64歳までのあいだに、病気やケガがもとで一定以上の障害が残り、障害の年金を受けられる保険料の納付要件を満たしている方にも支払われる。
障害基礎年金は1級と2級がある。
障害厚生年金はさらに3級が用意されている。

障害厚生年金

厚生年金加入者の制度である。
受給要件 3つ
厚生年金に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること
一定の障害の状態にあること
保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。

呼吸器疾患の障害年金認定基準

呼吸器疾患は障害年金をほとんど利用していない。大概精神疾患である。
肺結核、じん肺、慢性呼吸不全、気管支喘息について定めがある。
ここでは喘息について検討する。
障害の程度、1から3級、1級は喘息治療ガイドラインのStep4の症状である。

池田医師より症例提示
症例1 8歳の頃から気管支喘息治療中
Step4治療中 経口ステロイド持続投与されている。
(Q)この症例は障害厚生年金が受け取れるか
(A)障害年金3級に該当する可能性はあるが、8歳の発症と受診であれば、国民年金の期間になるので障害年金3級の枠はなくなる。
もし、10年くらい寛解する期間があり、再発時が厚生年金加入時期なら3級に該当する。
症例2 ACO 低肺機能 
ステロイド持続投与中 Step4治療中
(Q)この症例は障害厚生年金が受け取れるか
(A) 障害3級以上に該当すると考えられる。
バイオ導入前の日常生活の状況 症状の程度、治療歴、を総合的に判定する必要がある。
ADLやQOLの程度を患者に書いてもらい、障害の程度を明らかにすることが認定につながりやすい。

特別講演 Type2炎症を標的とした重症喘息治療〜Dupilumab投与の実際を踏まえて〜

山口大学医学部付属病院呼吸器・感染症内科准教授
社会保険労務士 平野綱彦先生

喘息の管理目標 ・・・ガイドラインより引用され説明された(省略)。
気管支喘息は急性増悪を起こすたびにFEV1は急激に低下し、都度回復するが前値にはもどらず経年的に徐々に低下していく。

気管支拡張薬吸入後1秒量(FEV1.0)の経年的変化の多様性

喘息患者のFEV1.0は平均22ml/yearの減少であるが、一見コントロール良好に見える患者でも4分の1の患者はrapid decliner(急激にFEV1が減少していく)がいる。-40から120mLも年間に減少する群であるが、やはり急性増悪が大きく関与している。
・喘息増悪を1回おこしただけでもFEV1は年間41mL低下し、2回だと58mL低下したと報告がある。
・重症喘息は、急性増悪を繰り返す患者と言い換えられる。
頻回増悪や前年の増悪のあるものは、将来の増悪リスク因子となる。

増悪評価のバイオマーカー

血中好酸球やFENOが高値ほど増悪が頻回であるが、血中好酸球よりもFENOがより予測に適している、とする報告がある。

重症好酸球性喘息の増悪回数と呼吸機能の変化

治療中の重症好酸球性喘息増悪回数は、呼吸機能の予後と関連するが、
増悪0回の患者のFEV1.0は +143mLと増加するが、1回だと+23ml、2回以上だとFEV1.0は減少に転じてだと−3mL、3回なら-40mL以上である。
他の報告でも喘息症状があると肺機能が低下している(NEJM2016;374)。

ステロイドに反応する重症喘息の特徴

40歳以上、Late onset、低肺機能、肺機能改善しやすい、Type2炎症。
・高齢者におけるFENOとFEV1の関係
FENO 40ppb以上で%FEV1<80%の症例は重症率が高いが、
福山市の人口で推定すると分子標的治療薬の適応となりうる重症喘息患者は3700人以上である。
演者らは本邦のステロイド使用実態を調査したところ、ステロイド内服量が多いほど入院・医療機関定期外受診がおおく、コントロールが悪い事が判明した。
・健康寿命を考慮した難治性喘息におけるステロイド治療
演者らは環境的因子が原因で喘息発症し、さらに難治性喘息となり、健康寿命短縮につながると考えているとのこと。

喘息フェノタイプと分子標的治療薬の適応

Type2炎症を有する症例が分子標的治療(バイオ)の適応である。
バイオのもっとも重要な結果は、喘息症状改善し、ステロイド減量、肺機能が改善することである。
・良好な喘息コントロールのためにはOne way One diseaseの考えで治療が必要である。
難治性喘息の有意な増悪リスクは副鼻腔疾患と末梢血好酸球数増多である。
好酸球性副鼻腔炎の診断(JESREC Study)では、この2つの増悪リスクを含んだスコアとなっている。
・演者らのバイオ使用症例(N=38 )の検討では、
副鼻腔炎あり、末梢血好酸球数増加、FENO高値、IgE高値が特徴である。
副鼻腔炎と血中好酸球数を丁寧にみていれば、バイオの適応かどうかだいたい分かる。
・重症喘息患者は普段から増悪を不安におもっており、QOLスコアは低下する。
喘息単独と副鼻腔炎単独ではFENO値は同程度であるが、両者合併患者のFENOは有意に高値である。
・One way One diseaseの発症時期と疾患進行過程
アレルギー性は小児期から発症がおおい、非アレルギー性はLate onsetが多い。
鼻茸の頻度があがると、気管支喘息の合併率も同様に上昇する。両者が合併している患者の場合には、Type2炎症に加えて、Type1炎症が合併しており、すなわち難治性症例である。
・難治性喘息は鼻茸を持っている患者がおおいが、とくに黄色ブドウ球菌エンテロトキシンIgE高力価である。

症例1

好酸球性副鼻腔炎2回手術した症例であるが、呼吸器症状に乏しい。しかし2年間でどんどん肺機能が悪化していることが2回目の手術時に判明した。
上気道炎症があるとか気道炎症もつよいのに無症状の症例があり、注意が必要である。
オマリズマブ→ベンラリズマブと投与したが、呼吸機能は改善せず、鼻茸も改善しなかった。そこでデュプリマブに変更するとFENO低下し、好酸球は上昇し、呼吸機能と鼻茸は改善した。
・ILC2は重症喘息の局所(喀痰中ILC2)でも増加し、血中ILC2も増加している。
・ILC2と副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の鼻茸のIL-25レベルが非常に増加している。
マウスにライノウイルスを感染させるとIL-25の増加を認めた。
・デュピルマブはIL-4とIL-13 をブロックする。

症例2

重症喘息とアトピー性皮膚炎と副鼻腔炎の合併症例
ベンラリズマブでは呼吸機能はむしろ悪化したが、デュピルマブに変更して呼吸機能は改善し、鼻茸も消退、TARCも減少した。
・QUEST試験ではQOLスコアがじわじわと改善していった。
重症度が高いほどAQLQはスコアが低い。この理由は重症喘息ほど末梢気道の狭窄がつよいものと考えられる。末梢気道が呼吸困難と強く関連するのであろう。
気管支鏡所見は、末梢気道が閉塞していたがベンラリズマブで若干内腔が開口し、デュピルマブでさらに内腔が広がる →デュピルマブ投与後に末梢気道が徐々に開くので徐々にAQLQがよくなっていくと考えられる。
・ベンラリズマブは3分岐付近の気管支内腔をひろげるが、デュピルマブは4分岐以降の細い末梢気管支の内腔を開く効果がつよい→デュピルマブが症状改善効果が高い理由のひとつであろう。

気管支総数と重症喘息重症度

重症度が増すほど末梢気管支内腔面積が減少している
重症ほど末梢側の換気ができていない (AJRCCM2020;201;923)。
・PRM法 parametoric response map法
演者らの研究では、微小な末梢気道閉塞を空間的・定量的に評価できる画像解析法(PMR法)によるイメージングバイオマーカーが喘息の末梢気道機能障害の非侵襲的・簡便な評価法として有用であると報告している。
デュピルマブによる重症喘息治療前後をPMR法で評価したところ、換気が非常によくなったことが示された。デュピルマブは末梢気道を開く(エアートラップを改善)すると考えられる。
→過膨張を改善し、換気血流不均等を改善する。 → 息が楽になる、息が早く吐けるようになる。→ ACTは改善する。

Q and A 

Q. 好酸球性副鼻腔炎症例においてFENOが高いのは上気道のFENOが検出されているのか。
Q. 上気道の炎症が血中を介して下気道の炎症を悪化させている可能性は否定できないが、FENOの測定方法では鼻腔のNOは混入しないようになっているので、ほぼ下気道のNOと考えてよいと思われる。
Q. 池田医師から、 バイオの使い分けはどうか
A. Type 2炎症があるならまずは使ってほしい。どの製剤でもよい。

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