心不全は喘鳴と呼吸困難を主訴とする、気管支喘息と鑑別が必要な疾患です。

以下の内容は文献を参考にまとめました。万一記載間違いがある場合はご容赦ください。

心不全は喘鳴と呼吸困難を主訴とする、気管支喘息と鑑別が必要な疾患です。
2022年4月の内科学会講演会を聴講後、さらに心不全について最新の知見を学びました。
(参考:日本内科学会雑誌2022年2月号 慢性心不全の薬物療法)

心不全の進展ステージを4期に分ける

 ステージA 危険因子のある段階。 高血圧、糖尿病、動脈硬化性疾患など。
 ステージB 器質的心疾患のある段階。 まだ心不全症候なし。
      虚血性心疾患、左室リモデリング(左室肥大、駆出率低下)、無症候性弁膜症など。
 ステージC 心不全の症候がある段階。あるいは既往も含む。
 ステージD 心不全治療抵抗性。

ステージCでは治療を開始する。
 心エコーにて左室駆出率がLVEF<40%の場合(HFrEF) 基本薬:ACE阻害薬/ARB + β遮断薬 + MRA
 *MRA:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
 基本薬でコントロール不十分な場合、ACE/ARB → ARNIに変更し、+ SGLT2追加
  + 利尿薬 + イバブラジン(コララン®錠);洞調律75/分以上 + 必要に応じてジギタリスや血管拡張薬

各薬剤について

・ACE阻害薬(ACE I)・・・エナラプリル(レニベース®)、リシノプリル(ロンゲス®)、ARB・・・カンデサルタン(ブロプレス®)、ARNI・・・サクビトリル/バルサルタン(エンレスト®)
・MRA:スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノン(セララ®)、エサキセレノン(ミネブロ®)
・SGLT2:ダパグリフロジン10mg 1日1回(フォシーガ®)、エンパグリフロジン10mg 1日1回(ジャディアンス®)
   糖尿病の有無に関わらず、心血管死や心不全増悪入院を有意に減少させる。腎保護作用もある。
・利尿薬・・・ループ利尿薬:フロセミド(ラシックス®)、低K血症に注意。さらに→長期使用で利尿効果が減弱する。(遠位尿細管の細胞肥大を通じてNa再吸収が下位ネフロンにシフトし利尿効果減弱する)
経口フロセミドは腸管で吸収される。腸管うっ血時は経口薬の吸収が阻害され、静注投与が有利である。
    フロセミド抵抗性となってきたら、サイアザイド:トリクロルメチアジド(フルイトラン®)を少量併用する。
・β阻害薬・・・カルベジロール(α遮断作用も有する)、ビソプロロール(β1選択性)
 β遮断薬は特に非虚血性心不全において用量依存性に心機能を改善させる。
 投与開始のタイミングは心不全急性増悪からの回復期で、入院中が望ましい。
 初期投与量はカルベジロール2.5mg分2から、ビソプロロールは0.625mg分1から開始し、徐々に増量して各承認最大用量を可能な限り投与すべきである。カルベジロールは20mg/日、ビソプロロールは5mg/日。
 過度の低血圧(たちくらみ)や徐脈の出現に注意する。→これが現実的に投与制限となる。
 心房細動例でも死亡率軽減効果の報告がある。
・バソプレシン拮抗薬・・・トルバプタン(サムスカ®)は水利尿を行う。 フロセミド抵抗性となった重症難治性心不全において、引ききれない血管外うっ血を軽減する。しかも血行動態悪化は最小限で、腎機能への悪影響も少ない。特に低ナトリウム血症を合併し、かつ血管外うっ血として体液貯留がある場合、水利尿を通じて低ナトリウム血症をほぼ確実に是正し血漿浸透圧を上昇させる。その結果、血管外から血管内へ水分を引き込み低心拍出への傾倒を防ぐ。
トルバプタンは併用するループ利尿薬を減量できる。→ 腎機能が保持されやすい。

最近の治療薬(今後ガイドラインにはいる可能性が高い)
・イバブラジン(コララン®錠)・・・β阻害薬を投与しても安静時心拍75回/分以上の慢性心不全患者に限るが、β阻害薬に忍容性がないか禁忌である場合も投与可能である。
 血圧を下げずに純粋に心拍数のみを低下させるのが特徴である。
 イバブラジン投与開始28日後にHRが75以上、70から75未満、65から70未満、60から65未満、60未満、と5刻みで分けた時、心拍数が少ないほど予後は良好だった(心血管死や心不全悪化による入院)。
 (副作用)徐脈、光視症:視野の限られた領域で一過性に眩しい光を感じる症状・・・6.3%に出現
      心房細動の発症リスクが15%上昇するので注意。
  (注意)β遮断薬に忍容性がない患者にイバブラジン投与して心不全が改善した場合、β遮断薬への忍容性が良くなり増量再開できることがある。その場合は必ず増量すること。ただし今のところ循環器専門医へ委ねるのがベスト。
 (投与方法)通常、成人にはイバブラジンとして、1回2.5mgを1日2回食後経口投与から開始する。開始後は忍容性をみながら、目標とする安静時心拍数が維持できるように、必要に応じ、2週間以上の間隔で段階的に用量を増減する。
・ベルイシグアト(ベリキューボ®)・・・可溶性グアニル酸シクラーゼ(sCG)刺激剤。NT-pro-BNP 8000 pg/mL以下の心不全患者において、とりわけ4000 pg/mL以下の患者において心血管死亡と心不全入院を有意に減少した。

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