2022年10月13日に喘息に関する講演会 「GSK Asthma Seminar in Fukuyama」が開催されました。
私は座長およびkey note speechを行いました。
特別講演を聴講し最新の知見を学びましたの報告します。
(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
「喘息に対するトリプル治療の意義 ~実臨床に対するデリルジーの役割」
山口 将史先生
喘息診療におけるLAMA
テリルジーに含まれる成分
臨床試験とtreatable treats
最新の喘息学会のアルゴリズムとトリプル製剤
・喘息診療におけるLAMA※の位置づけ
※LAMA:Long-acting muscarinic antagonist長時間作用性抗コリン薬
喘息死はICSが普及するに伴い減少しており最近は年間1000人程度である。
アレルギー内科もしくは呼吸器内科外来通院中の患者でさえ、ICS+LABAでは客観的なコントロオール良好群は55%しかいないと報告されている。
2004年のGOALスタディでは、フルタイド®よりもアドエア®を使うことでコントロール良好であることが示されたが、2−4割はコントロール不良であった。
喘息治療管理ガイドラインで、LAMAはステップ2−4で併用することが推奨されている。
スピリーバ®は2014年に初めて喘息に適応をとったがまだ歴史が浅いので、喘息治療に浸透していない。
2019年時点でLAMAは喘息患者の5%程度にしか処方されていなかった。
継続治療している患者の残存症状は、日中の咳が半数、痰においていは圧倒的に多い。
ガイドラインにおける長期管理薬の位置づけでは、咳と痰の両方に有効なのはLAMAである。
テリルジー®に含まれるICSは抗炎症作用がつよく全身作用は少ない。
テリルジー®に含まれるビランテロールはベータ2選択性が強い。
テリルジー®に含まれるウメクリジニウムはスピリーバ®と同程度に長時間作用性である。
・臨床試験とtreatable treatsに基づくICS+LABA
ICS+LABAで症状が残る場合、ICS増量、LAMA追加、製剤変更などがある。
ICS増量をむやみに行うのは最近は再考されている。
2019年AJRCCMの総説では、ICS中用量で臨床効果は90%に達しているので、高用量にしてもその上乗せ効果は少ない。むしろdoseが増えるほど肺炎、NTMなどの感染症リスクは上昇する。その場合はレルベア®100→テリルジ®ー100にステップアップが考慮される。
ICS/LABA中用量にチオトロピウム追加すると、一秒量は154ml増加した。喘息の咳嗽に対する効果も高い。
北海道コホート研究ではCOPDを対象にLABAとLAMAの反応性を調べたところ、LABAとLAMA両方有効群、LABAだけ効く群、あるいはLAMAだけ効く群、を認めた。
吸入回数の多いデバイスはコンプライアンスが悪い。アンケート調査では1日1回1吸入が望まれている。
複数デバイス使用患者と単一デバイス使用患者における喘息増悪回数は複数デバイスのほうが頻度が多かった。おそらくアドヒアランス不良となっていくのであろう。
CAPTAIN試験(N=2436):アドエア®3週間、その後レルベア®2週間の導入期間を経て、テリルジーを導入し観察した。結果:LAMAは1秒量が+100ml増加した。しかも初日から増加しており、患者の自覚症状改善は十分得られたと考えられる。
・臨床試験とtreatable treats
患者個々に症状コントロールが上手く行っていない事情は異なる。それらに対応する対処/治療をおこなう。
症状や増悪頻度、好酸球数、呼吸機能は可能な限り評価が必要である。
CAPTAIN試験ではレルベア100→200にしてもFEV1は51mlしか増加していない。
レルベア100→テリルジー100 トラフ1秒量110ml増加
レルベア200→テリルジー200 トラフ1秒量94ml増加
ICS増量よりもLAMA追加のほうが1秒量は増加している。
・症例提示 60歳代 女性
ICS/LABAで咳が改善しない、アドヒアランス不良の患者をテリルジー100に変更したら、ACT13点→17点に上昇(改善)したが、まだ点数は低いのでテリルジー200に変更したら20点に上昇した。呼気NO濃度は、76ppb →53→40と改善した。
・喘息診療ガイドライン(日本喘息学会)の治療のアルゴリズムとトリプルの位置づけ
中用量ICS/LABAからの開始が原則だが、咳痰息切れが高度の場合はトリプルから開始も許容するとの注釈がある。
症例57歳 男性 アトピー性皮膚炎治療中
上気道感染をきっかけに乾性咳嗽が持続するため皮膚科から紹介。
喘息症状が非常につよくて長期に及んでいるのでテリルジー®200の投与を開始。
開始直後から胸のつかえがとれ乾性咳嗽は20%程度に減少した。
3ヶ月後からテリルジー100に減量。
・トリプル製剤の適応のポイント(演者の私見)
固定性の気流制限
ACO
咳嗽がつよい
喀痰が多い
肥満
吸入薬の吸入回数や本数が多いとコンプライアンスが悪化する
特に症状が強い症例
・ステップダウンについて
ステップダウンはエビデンスが乏しい。
喘息学会の診療ガイドラインによると、
喘息コントロール良好:3~6か月持続 かつ 呼吸機能(スパイロメトリー、PEF)安定していたら考慮する。
前年の増悪・救急受診 、FEV1 低値、気道過敏性亢進、喀痰中好酸球增多 が観察される場合にはステップダウンは慎重に判断すべきである。
Q and A
Q 前立腺肥大に対する対処は
A LAMAは前立腺肥大と緑内障が問題になると思われるが、過去に呼吸器学会のシンポジウムでも議論したが、診断のみで処方しないのではなく、有症状患者に
Q 外来でのキーワードは
A 目の前でACTをつけている様子をみていく。もし体調が十分でない印象なら検査をしてみる。