第512回福山地区内科会学術講演会が開催され、
ZOOM参加しました。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

2023.2.22に第512回福山地区内科会学術講演会が開催され、
ZOOM参加しました。最新の知見を学びましたのでご報告します。

見逃さない副鼻腔CT 抗菌薬選択とタイミング

福井大学医学部 耳鼻咽喉科 講師
坂下雅文先生

花粉症について

スギ花粉症全国有病率ランキング
第一位は山梨県で 有病率は65%。
杉林の風下になる県/地域は有病率が高い。
広島県は有病率40%と比較的高い。
広島県の北部中国山地のスギ花粉は偏西風に乗って広島に飛散すると考えられる。
広島県は過去10年で最大の飛散量と予想されている。昨年の1.8倍、例年の1.5倍程度である。
2020年の時点で日本人の約4割はスギ花粉症である。
すべてのアレルギー性鼻炎を含めると日本人の2人に1人は花粉症を罹患している。

治療について

・くしゃみ鼻水型→第2世代抗ヒスタミン薬、 重症で点鼻ステロイド薬
・鼻つまり型→抗ロイコトリエン薬、抗PAF薬、抗TXA2薬、重症で点鼻ステロイド薬
・両方の症状があるタイプ →点鼻ステロイド薬、さらに経口ステロイド薬もときに処方する。
・「自動車運転等危険を伴う機械操作を避ける」という記載のないものは4剤のみ
フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン

副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の変遷

1974年頃は慢性副鼻腔炎がおおかった。(子供ころ、はなたれ小僧といわれてたもの)
以後減少しつづけ、アレルギー性鼻炎がどんどん増加している。
副鼻腔炎は炎症のタイプで分類され、
1型炎症 急性副鼻腔炎 原因は細菌感染、
2型炎症 アレルギー性鼻炎(急性で即時型)、原因はアレルゲン、 2型炎症のうち慢性で遅延型炎症・・・好酸球性副鼻腔炎

・副鼻腔炎の鼻内所見

鼻鏡は鼻毛のある場所以上の奥にはいれないこと(それ以後は痛いので)
中鼻道が特に重要
好酸球性副鼻腔炎では中鼻道にポリープが認められる。
正常の副鼻腔は繊毛運動により自然に中鼻道へ分泌物が排泄されていくような構造になっており、毎日1Lから1.5L程度の鼻汁を自然と飲み込んでいる。
その排泄口が塞がれば蓄膿となり、そこに細菌感染と炎症が加わると痛み(頭痛や頬部痛)がでる。鼻汁は膿汁となる。粘膜が腫れてくるとポリープになる。

・非好酸球性慢性副鼻腔炎

関与する主要なサイトカインは、IL-1β、TNFα、IL-8、である。
上顎洞優位の病変分布
膿性鼻汁
びまん性汎細気管支炎(DPB)を合併しやすい。
治療はマクロライド薬である。

・好酸球性副鼻腔炎

東アジアでは年々好酸球性副鼻腔炎が増加している。
主要なサイトカインは、Type2 サイトカインである。
篩骨洞優位の病変
にかわ状の粘稠な鼻汁
NSAIDS不耐症を合併しやすい。
診断にはJESRECスタディによるスコアを用いる。更に重症度をこれで分類すると、
重症度が高いほど再発率がたかく、重症は60%が再発する。
手術は単洞化することである。
単洞化すると点鼻ステロイドが到達しやすくなり、鼻腔洗浄も効果が高くなる。
治療薬 生物学的製剤 デュピクセント

好酸球性副鼻腔炎を疑う症状は何か。
 → カレーの匂いがわからなくなったら疑う。
カレーは色々な香辛料が使用されており、いろんな成分を含む匂いである。

・慢性副鼻腔炎の約2割が鼻茸を合併している。

副鼻腔陰影をきたす疾患の鑑別にはCTが重要である。

・歯性上顎洞炎

CT所見は、上顎洞内陰影、上顎骨透亮像、根尖病巣(歯根嚢胞の炎症)
副鼻腔CTスコアをつかい、片側性の陰影で①上顎洞、②前篩骨洞、③前頭洞に陰影があるものが疑わしい。
歯性上顎洞炎は抗菌薬が有効である。
なぜなら多くが口腔内の嫌気性菌による感染である。
副鼻腔真菌症は抗真菌薬はあまり効果なく手術しかない。
歯性上顎洞炎は片側性副鼻腔炎の3-7割を占める。

・急性副鼻腔炎

発熱の有無を問わず「くしゃみ、鼻汁、鼻閉を主症状とする病態」
急性ウイルス性鼻副鼻腔炎と急性細菌性鼻副鼻腔炎がある。
急性細菌性鼻副鼻腔炎:定義
急性発症;発症から4 週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、「鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽:呼吸器症状頭痛、頬部痛、顔面圧迫感を伴う。」

・慢性副鼻腔炎の感染菌は耐性化して急性増悪を起こすことがある。

黄色ブドウ球菌
肺炎球菌
インフルエンザ菌
モラキセラ
緑膿菌
グラム陰性桿菌

・急性副鼻腔炎の治療薬

急性鼻副鼻腔炎に対する抗菌薬治療(成人)
軽症例:抗菌薬治療は行わず5 日間の経過観察と対症治療を行うことを推奨する。
中等症以上:抗菌薬使用を考慮する際には投与前に鼻汁細菌検査を行うことが望ましい。
抗菌薬治療の第一選択としてはペニシリン系のAMPC(高用量)(経口 1 回 500mg·1 日 3 回)を推奨する。5日間経過をみる。
重症例あるいは中等症例で BLNARの関与があれば
経口第三世代セフェム系抗菌薬(高用量)
レスピラトリーキノロン
5日間経過をみる。
※筆者補足: BLNARは菌が2つの細胞に分裂する際の仕切りを作る酵素,すなわち隔壁合成酵素をコードする遺伝子上に変異が生じたインフルエンザ桿菌である。この菌は抗菌薬剤を作用させても単に隔壁形成が阻害されて伸長化するのみで死滅(溶菌)し難いうえ、抗菌薬が体内から消失すると,伸長化した菌は元の桿菌へと短時間で戻る。

・急性副鼻腔炎の重症度

鎮痛剤が必要なほど顔面が痛むとすでに中等症以上である。
あるいは膿汁が多量も中等症以上である。
点数化がむずかしい場合でも、膿性鼻汁があり痛いなら中等症以上と考えて良い。
治療薬の候補としてラスクフロキサシンがある。
嫌気性菌にも有効なのが他のキノロンと違う特徴である。
1ヶ月以上遷延する副鼻腔炎は耳鼻咽喉科に紹介を。

まとめ

・副鼻腔炎には急性と慢性がある ・鼻茸のある副鼻腔炎は全体の20%
・好酸球性副鼻腔炎は手術・術後治療に長期的な治療が必要 ・急性と慢性の急性増悪
①アモキシシリン
②第 3 世代セフェムまたは、レスピラトリーキノロン ・片側性副鼻腔炎には特徴的な画像パターン
·歯性上顎洞炎
片側性副鼻腔炎の30-70%
3つのタテ並びの陰影あり・後方陰影なし
起因菌は嫌気性菌が多い
・好気性菌をしっかり抑え、嫌気性菌に効くレスピラトリーキノロン

Q and A

Q 発熱のある副鼻腔炎は抗菌薬は使用してよいか
A 発熱があるのは重症化の途中だと思われるので抗菌薬も仕方ないかも
Q ラスビックの処方後クラリスロマイシン1錠/日 という処方を数名みかけたが、耳鼻科の先生のスタンダードなのでしょうか。
A まずはペニシリン系を投与して効果不十分な場合にはその後CAMを継続処方することがあるがスタンダードとは言い難く、治療の工夫の範疇と考える。

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