AsthmaExpertForum2013に参加しました

AsthmaExpertForum2013 ー喘息の増悪因子を考える
が2013年9月29日に東京で開催され、出席いたしました。
全国のアレルギー診療に携っている医師が集まる会議です。
最新の知見を学んで来ましたので、自分のメモをもとに「研究会報告」をいたします。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

 

喘息増悪因子としての黄砂およびPM2.5 渡部仁成先生 鳥取大学第三内科講師

PM2.5 煙 ガス

黄砂 東アジアの砂漠地域や黄土高原から

黄砂の中心粒径は4μである。

大気粉塵成分は地域差がかなりおおきい。(鳥取、大阪、京都 などでも差がかなりある。)

黄砂がとぶと大気中の真菌が非常に増加する。とくに大きな粒子ほど真菌や細菌などが付着しやすいことがわかっており、粒子が小さくなると振り落とされていくのではないかと考察されていた。

また黄砂は、日本に届くまでの飛行ルートが3つあり、そのルートによって黄砂に付着する物質がちがうと考えられる。

NEJM2007;357:2348 イギリスでのPM2.5の濃度の研究 喘息60人の研究や
AJRCCM2010の研究では、喘息発病とPM2.5との関連は有意に相関するという。

黄砂と喘息に関する報告では、韓国や日本でPM2.5と喘息症状の増悪は関連している報告が多数あり。

鳥取大学では1518例の喘息患者を2007年から2012年まで電話調査し毎年23−10%に症状増悪(風邪を除く)が認められた。また有意に肺機能の低下を認めた。
黄砂飛散前後で7日間喘息スコアを記録したが、やはり10%程度の喘息症状が増悪していた。
1518例のうち282例が呼吸器症状の増悪を自覚し、もっとも多い症状は喘鳴と呼吸困難であった。
ただし喘息発作までにはいたらない。

最近黄砂と間違われる煙霧という減少がある。視界が10km未満となることを煙霧という。湿度が75%以上は霧。

煙霧は硫酸塩エアロゾルと考えられる。患者が黄砂と煙霧を区別できないので、演者らはピークフローと大気汚染物質の関係をしらべた。 (WatanabeらAllergology International 2011)

※大気汚染物質の鉛をはかると、海外から越境してきた大気汚染物質の量が推定できる。なぜなら日本では鉛のないガソリンしかほとんど使わないので、日本では鉛を含む大気汚染物質は発生しないからである。

193例の喘息患者をロジスティック解析した検討で、黄砂と関連する喘息の悪化はアレルギー性鼻炎合併のみであった。

J ASTMA 2012;49:134の報告では、砂漠の砂を吸うと喘息が悪化する。 とくに粒子が小さいほど、粘度が高いほど肺機能が低下する。 しかしこの研究での問題点は、その濃度が日本で観測される濃度の10倍−20倍濃いので、そのまま参考にはならない。

鳥取県で採取した黄砂時の粉塵や黄土高原土壌の粉塵をオートクレーブだけで処理(蛋白などの有機物を残すということ)したものをマウスに吸入させて気管支肺胞洗浄(BAL)を行ったら、明らかに細胞成分が増えて好酸球なども増加した。

黄砂時大気粉塵や黄砂時大気粉塵の水溶液上清をマウスに吸入させると炎症に関与するIL8が増加した。

まとめ: 黄砂に付着している何らかの物質こそが喘息増悪の原因と考えられた。

特殊な大気粉塵集塵システムを用いて粉塵を採取しているが、最近のPM2.5の原因だったのは、ディーゼル粒子ではなかった(自動車や工場の粉塵ではなかった)。むしろ暖房などの比較的低温での燃焼物質(家庭での暖房器具など)が主体と考えられた。

 

高齢者喘息 (COPDを含めて) 山内広平先生 岩手医科大学

疫学 1996年までは6000人以上の喘息死だったが、2012年では1800人台まで低下したが、9割が65歳以上の高齢者である。

40歳未満での発症を若年発症 40歳以上を高齢発症 と定義する。

高齢者喘息の大多数は高齢発症である。

発症20年以上は明らかにそれ以下よりも呼吸機能が低下している。

若年発症はアトピー型がおおく、高齢発症は非アトピー型が多い。

高齢者喘息はアトピー型が20%程度しかない。(アレルギー2005 高橋清ら)

若年発症の高齢者喘息は重症度が高い。

喘息重症度:小児持続型喘息 >成人アトピー型 >成人再発型 >成人非アトピー型 の順に気道過敏性が強い

COPDと誤診された高齢者喘息患者の特徴は( CHEST2003;123:1066−72)、年齢が高く 一秒量が低く 気道可逆性がない などであった。

高齢者喘息の治療:吸入薬を十分に使用できない患者がいる。

喘息発作のあるCOPD患者の肺機能は低下する(予後が悪い)。一方喘息発作がコントロール出来ているものは予後はほぼ喘息合併なしと同等である。

※ 喘息と確定診断しにくい患者は、PEFの記録をさせると、PEFのdipが認められることがあり有用な診断方法である。

 

鼻炎合併喘息 SACRA update 太田健先生

平均年齢20歳の枯草熱 の患者についての検討では、in seasonでは気道過敏性が亢進している。

平均年齢31.4歳 での検討では アレルギー性鼻炎と喘息を併発する患者では抗原に対して気道過敏性亢進が認められた。

アトピー性喘息の患者では鼻炎症状の有無にかかわらず鼻粘膜に好酸球性炎症が認められ、かつ相関する。

非喘息のアレルギー性鼻炎患者に抗原吸入試験を行うと、鼻粘膜にも気管支粘膜にも好酸球浸潤が増加しかつ末梢血にも増加する。

抗ロイコトリエン薬LTRAの投与は喘息とアレルギー性鼻炎の両者を改善する。

喘息を悪化させる修飾因子 鼻炎 気候 肥満 好酸球性鼻副鼻腔炎 などである。

SACRA studyから喘息患者の67.3%に鼻炎の合併を認めた。

SACRA study で使用された自覚症状の評価であるVASで得られた喘息コントロールの評価は患者も医師もほぼ同等であった。一方問診によると医師がより重症に評価し、患者はより軽症に自己評価していることがわかっている。

SACRAquetionnaireから 粘り気のない水様性鼻汁 という質問項目が特異度93 で鼻炎合併の診断に有効であった。

SACRA問診票だけでは副鼻腔炎は除外できない。 ARIA のガイドラインでは、膿性鼻汁、後鼻漏、アレルギー性鼻炎治療による難治性である場合は耳鼻科受診が必要 とされている。

 

喘息におけるロイコトリエン拮抗薬の位置づけと今後の展望 相良博典先生 昭和大学

システィニルロイコトリエンは血管外漏出作用 気道過敏性亢進 につよい作用をもっている。

βアゴニストや吸入ステロイドを投与しても気道のロイコトリエン濃度は低下しないことが示されている。

副鼻腔炎と喘息喘息患者の40−60%に副鼻腔炎を合併している。喘息合併の場合マクロライド療法の効果が悪い、特に好酸球が多い副鼻腔炎では効果が低い。

アスピリン喘息ではより気道過敏性が高く、呼気NOも高値である。

喫煙と喘息:気道分泌物が増加して、吸入薬の効果が低下する。

スモーカーはピークフローが改善しにくく、気道過敏性も改善しない。
喫煙患者にはロイコトリエン拮抗薬LTRAの併用が有用である。

月経随伴性喘息の特徴:女性の30−40%は月経前に喘息症状が悪化し、システィニルロイコトリエンの血中濃度が上昇している。吸入ステロイドを高容量投与が必要。

ウイルス感染と喘息:ウイルス感染では上皮細胞からTSLPが産生され気道炎症が増悪していると言われている。

RSウイルス感染は気道過敏性亢進、気道炎症を増強するがLTRA投与はその増強を抑制する。
BAL中の好酸球数も抑制する。ゴブレット細胞の増加も抑制する。

これらの効果はLTRAがTH2系の炎症を抑制するのがその機序であろうと推察されている。

LTRAを長期併用するほど、喘息コントロール(ACTスコア)が良好となっていく

●重要 JACI のレビュー 2013 131 646−57

呼気NOがACQスコアと相関する

特に夜間喘息においては好酸球が非常に増加している

症状の変化とISO R5の変化が相関している

JACI 131 763−71 2013

エビデンスにより喫煙する喘息患者に対してステロイドの有用性は減少するがLTRAが有効と考えられる。

ロイコトリエン拮抗薬は好酸球誘導性の気道炎症を効果的に抑制する可能性が示唆されている。

● NEJM2013 369 549−57、Bel EHら

成人および5歳以上の小児における軽症喘息治療のアルゴリズム (演者は今度の検討を要すると注釈されたが…)が紹介された。

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