2013年10月16日 福山喘息セミナー に特別講演の座長として出席いたしました。

2013年10月16日 福山喘息セミナー に特別講演の座長として出席いたしました。
特別講演は川崎医科大学呼吸器内科学講師 尾長谷靖先生で
「SMART療法は喘息管理の標準治療となりうるか?-ICS/LABA合剤の新しい使い方-でした。

先生の精力的なご講演を聴講しましたので研究会報告をいたします。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

喘息発作の概念は今までは 好酸球性炎症→壁肥厚 →喘息発作
好酸球性炎症があるから吸入ステロイドが必要という理論だった。
ダニ喘息が最も多い。
ダニ抗原陽性喘息患者にダニ抗原を吸入させると約15分で思い切り気管支が縮む。ベネトリン吸入で改善。ダニ抗原がない部屋に移すと数時間(6−7時間)で再度一秒量が低下する。
つまりまず急速に平滑筋収縮したのち、気道浮腫(水ぶくれ)を生じる。水ぶくれを放置するとやけどの治癒過程のようにリモデリングをおこす。
治療 気道収縮にはβ刺激薬◎ LTRA◯ テオフィリン△ 気道炎症にはステロイド◎ LTRA◯
LTRAは収縮も遅発性反応も抑制できるが十分ではない。
ちぢみ むくみ 厚み ・・・むくみまでは治るが厚みができると治らない
アトピー性喘息は気道に抗原刺激→ 好酸球性炎症
非アトピー性喘息 抗原刺激なし →しかし結局好酸球炎症が重要
喘息はどうやって治療するのか 昔β刺激薬 今炎症を抑える吸入ステロイド。
もし早期に吸入ステロイドを導入すると5年後95%肺機能が保たれるが、遅れた群(つまり診断から2年以上遅れて治療開始すると)は87%しか保たれない。
アレルギー学会で吸入ステロイドに何をアドオンするか議論しているうちにアドエアが上市されたので議論が頓挫して、アドエアですべてOKとなってしまった。
また、そもそも吸入ステロイドだけがきちんと効けばよかったはずが、アドエアの非常によい効果が証明された。
また患者の希望は早く効くことであるから、早く効く薬が売れる。シムビコートに含まれるフォルモテロールはSABAなみに早く効く。
最近5年間の喘息の標準治療はアドエア250かシムビコート2*2 である。
さらに世界ではこの標準治療薬に増悪時SABAを併用するのが世界標準である。
アドエアやシムビコートを吸っている人にSABAを処方されていない人が40%以上いる。そこでちょっと悪化したときはアドエアやシムビコートを追加で自己判断で吸っている。
◯ 抗原連続誘発後の臨床像 病理像について研究した論文では、(NEJM 364 2006−2015 2011 )
ダニを吸入させると抗原抗体反応がおきて好酸球性炎症がおきる。
メサコリンを吸わせると咳はするが(気管支収縮するが)好酸球性炎症はおこらない。→しかし壁肥厚がおこってくる。つまり炎症がなくてもリモデリングがおきることが示された!

※ アレルギー学会ではいままで抗炎症が重要であると言い続けてきたが、気管支収縮を抑制することも重要であることが示された論文である。
Ajustable maintenance dose  が最もよいとされていた。
2013年コクランレビュー O’Boyneらの報告では
ちょっと発作があったことがある喘息患者3アーム(BUD400μg/日+SABA頓用、BUD200μg/FM12μg+ SABA頓用、 BUD200μg/FM12μg +BUD100μg/FM6μg頓用:SMART療法)各900人以上で比較すると SMART療法のみが発作の回数が減ることがわかった。
しかも、吸入ステロイド量総量は少なくても吸入ステロイド/LABA配合剤の方がより症状コントロールが良かった。
→これからは 炎症を抑えるだけではなく、はなから気管支収縮をおこさせないようにするのが重要である。
SMARTに適した患者とは
喘息のことをよくわかっている患者が適するが
初診時から2*2を基準にちょっとしんどいとすぐに追加吸入して、収縮を抑えることがリモデリング抑制に重要。

※ 小児科では吸入ステロイド使用に最近ブレーキがかかっている
理由は10歳までに吸入ステロイドをしっかり使うと20歳の時点で7−10mm身長が低くなる。
この身長低下についてどう判断するかは医師と患者および家族との相談となる。小学生が喘息を理由に体育の授業を受けられない辛さも当然考慮されるべきである。

※ 気道過敏性試験において過敏性の程度を10から9 9から8 に下げるのに1年かかるので、治療はずっと継続が重要。
長崎大学の医学部学生 を対象に小児喘息があった症例に気道過敏性を測定すると陽性になるし、喀痰好酸球は陽性である。つまりずっと炎症はのこっている
2冬連続で風邪を引いても喘息症状がでなければ薬の休薬を考慮できる、といえる。
運動誘発で咳が出る症例には、収縮を契機に炎症がおきるのだからBUD/FM配合剤を吸入させるべきである。

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