2015年4月5日 「HOW TO SLIT シダトレン勉強会岡山」 舌下免疫療法のシダトレン勉強会に出席いたしました。
舌下免疫療法(以下SLIT)関する最近の知見、および専門家の考えについて学びましたので報告します。
以下の記事はあくまで私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。
テーマ「シダトレンによる舌下免疫療法の実際」
- 舌下免疫療法とシダトレン第III相臨床試験結果の概要 大久保公裕先生
- シダトレン投与前のポイント 岡本美孝先生(千葉大学耳鼻科・頭頸部腫瘍学教授)
- シダトレン投与時のポイント 後藤穰先生(日本医科大学多摩永山病院耳鼻科部長)
1.花粉飛散量と綜合鼻症状薬物スコア を比較した検討では
ピーク期間ではスコアが1.7有意に低下。
2シーズン経過でのSLITの治療効果は、抗ヒスタミン約であるロラタジンと鼻噴霧ステロイドであるナゾネックスを併用したものと同程度の改善効果であることが示された。
しかし、一方で全く改善を自覚できない症例も数%あり。
副作用:口腔内腫脹・違和感・ピリピリ感が多い。
花粉の飛んでいない時の鼻所見は正常である。
鼻汁好酸球検査も花粉の飛んでいない時期には陰性である。
鼻誘発テストのディスクは市販されていない。
→結局問診が重要!
通年性なのか季節性か 症状発現は屋内か屋外か などなど
※ 特異的IgE抗体が陽性だからといって発症していない人も多い。
重複感作症例としてハウスダストHD1、HD2、コナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ が3割前後はあるが、重複感作があってもSLITの治療効果に差はなかった。4種類以上の重複感作があっても、スギ単独症例と治療効果に差はなかった。
2.シダトレン投与前の注意事項
喘息発作時や急性感染症罹患時は投与不可。
抜歯後等口腔内の術後、または口腔内に傷などある場合も同様。
副作用の発現は1ヶ月以内に8割起こる。
蕁麻疹は24週以内くらいまでに発生し、中毒疹は72週頃も発症あり。
口腔内の副作用は多くが14日以内で1ヶ月以内で消失する。
スギ花粉症有病率 全国平均26.5%
2015年3月15日現在シダトレンを処方可能な医師は現在広島県147人 岡山96人である。
※パネルディスカッション
治療適応について
スギ花粉症の患者、重症度は規定されてない。
治療前に奏効率や無効率、年余に渡り投与が必要など理解していただけることが重要。
妊婦: 維持療法中に妊娠した場合には継続してよい。
治療に適した患者
抗ヒスタミン薬で業務に支障をきたす患者、つまり薬の副作用で治療困難な症例。
妊娠前に治療薬を減量することを期待する症例。
効果の期待できない患者
多重感作例には一般的に免疫療法は効果が弱いが、舌下免疫療法に限っては今のところ同程度である。
まだ予測は難しい。
ステロイド投与中の患者は投与に適さない。
吸入ステロイドとの併用は大丈夫と思われる。
ヒノキ花粉症にもある程度の効果はあるが、飛散量が多い年は薬物療法併用が必要となるでしょう。
スギSLITのデータはないが、皮下では海外の報告では感作を抑えるものがある。ただし国内データには全くないので、推奨されない。
→休薬して、難聴治療が終了したら再開。
複数の論文から、舌下免疫療法は花粉飛散時期の3−4ヶ月前から開始すると、治療効果が期待できる。花粉飛散時期のスギてもしばらく過敏性が残存しているので、6月くらいからの開始がよいでしょう。
子供の場合は夏休みを利用して開始するのがよいのではないか。
アドヒアランスの維持向上について
軽微な副作用を契機に治療中断するので、まず治療前の説明が重要である。
受診回数が多いほど、脱落率が少ない。
対症療法の併用について
何らかの症状が出た場合は薬物療法は併用しているが、問題なし。
予防投与は必要なし。有症状時にon demand でadd onすればよい。
休薬や中止 再開する場合について
休薬の必要性:口内炎、口腔内異常、程度ならよいが、顔が晴れたり全身症状の場合は休薬。喘
息症状不安定、感冒なども。
再開の目安は2週間以上で維持量スタートしてもよい。
増量期での中断の場合は、スタートから。1−2日以内ならスケジュール通り再開。
全身症状がでた場合の中止後の再開は、増量期のスケジュールで再開がよいであろう。
インフルエンザワクチン接種時の対応は、特に必要なし。
ただし、添付文書上は慎重投与になっており推奨するものではない。
口腔アレルギー症候群に対する効果は疑問視されているので、慎重投与で考えるべき。
口腔内腫脹は舌下後3時間程度で一旦正常になり、翌日も同様。このような症例は継続でもよいであろう。
シダトレン は室温で1周間でだめになるので、4度C保存が原則。なので短期旅行ならそのまま再開。
1ヶ月以上の休薬なら、本来なら増量期から再開。
1年以上継続後の1ヶ月休薬なら維持量でよい可能性が高いし、3ヶ月以内の方が1ヶ月休薬なら増量期が無難であろう。
副作用について
アナフィラキシーが起こる可能性はあるので、アナフィラキシーガイドラインを参考にすること。
消化器症状として下痢:抗原反応がもっとも考えられるが、SLITにグリセリンが使用されていることも原因の可能性がある。
→2分間舌下後に嚥下せずに吐き出す、という対処も考えられる(岡野光博先生)
→舌下は皮下より安全だ、というコンセプトなのでそこまで慎重にする必要があるのかということと、全例に併用すると保険できられるかもしれない。
軽微な副作用ばかりなので、抗ヒスタミンは必要ないであろう。
エピペンの携行も推奨されていない。
投与期間について
海外文献では3年実施すると、少なくとも2年は効果持続するとあり、3年以上の持続が必要である。
日本のデータでは3年目までは継続するほど治療効果は増加するが、4年目以後はあまりかわりなし。
投与間隔はどうか。
シダトレンは海外のものに比較して決して濃度は高くないので、毎日投与がのぞましい。
投与時間は午前中がよい。何かあった場合の医療機関への相談ができるからである。