第55回 日本呼吸器学会学術集会に出席し、最新の知見について学んでまいりました。

2015年4月18−19日に第55回 日本呼吸器学会学術集会に出席し、最新の知見について学んでまいりました。
以下の記事はあくまで私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

◆ミニシンポジウム膠原病関連肺疾患

●RA関連呼吸器病変

産業医科大学 膠原病内科で評価治療した106例
UIPパターン21例 NSIPパターン23例 boronchiolitis パターン(以下BCL)33例
never smoker はbronchiolitis パターンが有意に多かった。
BCL群hはRA病期進行群が多かった。
UIPパターン群に比較しBCL群はMTXの治療が有意に多かった。
9年生存率は3群間で有意差なし。
EULAR response criteria
BCLパターンとNSIPパターンは予後不良予測因子と考えられた。

Q.一般的にステロイド治療が感染症リスクであり、BCL群ではあまりステロイドを使われていないのでリスクは少ないはずだがどう考えるか。
A.今回の検討は肺機能検査による閉塞性の検討は行っていない。

●オシレーション法により評価したRA肺病変の検討

一次性肺病変は多彩である。
リウマチ肺の一部の症例で致死的経過をたどる。また感染症合併のリスクも高い。
呼吸機能検査とFOTを経年的に検討した52症例。平均64.5歳、抗CCP抗体は90%の症例が陽性。
CT結果 GGO44%、網状影65%、nodules が多かった。
初回測定時に1秒率<70%は3割に認められた。
32ヶ月観察中に10例に感染症、2例に肺癌、1例に悪性リンパ腫
CT所見とX5
X5の変化量と呼吸機能の変化量に有意な相関関係を認めた。といってもR0.3程度と弱い相関である

抗ARS、抗MDA5抗体
抗ARS抗体は8種類ありJo1抗体は20%に陽性、その他は5%程度陽性である。
陽性の皮膚筋炎はPM>DM ILD、メカニックハンド と特徴的
抗ARS抗体陰性で抗MDA5抗体陽性例は、治療抵抗性で予後不良。
抗ARS抗体陽性10例、抗MDA5抗体陽性9例を検討した。
死亡4例で全例でARS陰性MDA5陽性だった。
全例にステロイド投与され、タクロリムスの併用が最も多かった。
12ヶ月の観察では、抗ARS陽性群はKL-6は有意に低下しDLcoも有意に改善した。VCは有意差なし。
生存:抗ARS抗体陽性例は予後がよく、抗MDS5抗体陰性例は予後がよい
抗ARS抗体陽性はclinical ADMが有意に多かった。
抗MDS5抗体陽性例は急性の間質性肺炎増悪とは関連するが、慢性経過例とは関連しないと考えられた。
ステロイド+タクロリムスの治療で再燃はしにくい。

※ 大阪医大槙野先生 間質性肺炎でNSIPをみたら抗ARS抗体を測定するとかなり陽性になる。

●間質性肺炎のユーロライン測定 富山大学

筋炎関連抗体測定 Jo1 PL7 PL12 EJ OJを ユーロラインで測定できる。
127例の間質性肺炎にユーロラインを測定したところ、何らかの陽性がでたもの96例、 陰性31例あり、そのうち、6割はCVD-IPであった。
ユーロライン別病型分布では IPFのあり、なしがほぼ50%ずつ
既報ではIIPsの抗ARS抗体陽性は10%強の陽性率。
演者の施設では、全症例の間質性肺炎で7割以上、IIPsに対するユーロライン測定で6割以上、陽性であった。

◆ランチョンセミナー 慢性血栓塞栓性肺高血圧症

毎年16000人程度の肺血栓塞栓症が発症し、うち2%が慢性化している。
治療:PAH治療薬は52%、下大静脈フィルター25%程度、肺動脈内膜血栓除去は10%台である。
HLA-B5201陽性例の83%が女性であり、下肢に74%陽性である。
Myofibrolobrast like cells
診断;肺換気血流シンチグラムがキーとなる検査だが、明らかな血栓なら造影CTで診断可能。

慢性肺血栓塞栓症の重症度分類

※血流シンチだけでは鑑別できない疾患として
高安病、線維性筋異形成症に合併した肺高血圧症
造影CTでは血栓で閉塞した肺動脈末梢はうつらないが、3DーCTで作図すると、緩徐相で気管支動脈より造影されてくるので、dynamicでうつらない末梢肺動脈がわかるようになる。

胸膜下領域血流不良の症例は極めて予後不良、しかも術後の血栓症による死亡率も高い。
安定期肺動脈圧が30を超えると、有意に予後不良となるので、ワーファリンだけではコントロールできないので手術を検討する。→千葉大学では8割の症例は手術する

内科的治療

1.全例に抗凝固療法 半永久的
2.肺動脈バルーン
末梢血管抵抗の高い症例は、予後不良で9年で生存率20%程度。
※ 手術不能な慢性血栓性塞栓性は高血圧症、または外科的治療後に肺高血圧症が再発したまたは残存する患者におけるリオシグアトの有用性の検討。
リオシグアト:適応は「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」
16週で46mの6分間歩行距離が延長した。ボセンタンでは達成できなかった運動耐容能の改善が得られている。
肺血管抵抗やNT-proBNPも改善した。

◆教育講演10 咳の病態と治療 新実彰男先生 名古屋市立大学 呼吸器・免疫アレルギー内科学

anatomic diagnositic paradigm からCough hypersensitivity syndromeへ
診療所の受診理由 咳11%と最も多い。
※咳嗽に関するガイドラインから抜粋
成人に於ける遷延性・慢性咳嗽の原因疾患
 日本はCVA5割 atopic cough30% SBS10% GERD10%前後
合併例
 咳喘息 + GERD +α
 咳喘息 + SBS + GERD +α
つまり+αが何かをわかりかねている現状がある。

Cough Hypersensitivity Syndrome
 従来原因とされていた疾患は咳の誘因であり、CHSがその基本病態である、とする説。
最近のCHSの定義 Morice RW ERS2014
咳のトリガーについて Matsumoto H NIIMI allergology INt 
CHung KF Lancet Respir Med 2013 の総説
TRPV1の発現と咳感受性は相関する 温度に反応する
TRPA1とTRPV1は咳を誘発するものである。
GERD 逆流がおこると下部食道迷走神経刺激を受ける。
CHSの機序 TRPファミリーが関与している。
 咳をsensory neuropathy と考えるのが一般的となりつつある。
症例:上気道感染後に咳がつづく post viral neuropathy
 鎮咳剤で改善しない咳に対してアミトリプチリンを10mg投与したら全例咳が改善している。
難治性咳嗽にガバペンチン投与の効果 2012 LANCET Rayan NM
 ガバペンチン1800mg(日本で使える最高用量)を投与。
Khalid S JACI2014 ・・・negative dataだった。
Morice AH LUNG 2012 Cough hypersensitivity syndrome のpro/con
Morice AH ERJ 2014 44 1132-48 
 CHSを疾患群として認めるか、という専門家へのアンケート調査の結果
 もっとも多い回答はagree with minor reservations と懸念はあるが一応認める であった。

◆結核・抗酸菌症診断のピットフォール (結核病学会との共同企画)

●呼吸器疾患鑑別におけるIGRAの検査前確率と限界

IGRAはBCG接種に影響を受けない結核感染症診断である。
菌陽性の活動性肺結核患者、かつ感染リスクの少ない症例でのデータである。
IGRAの偽陽性について
 検査前確率1%とすると、100人と仮定し感度90%、特異度98%とすると、PPVは陰性的中率は30数%。
→ ※検査前確率が低い対象では、IGRA陽性だけでLTBIとしてはいけない。
事例2 結核接触者健診 QFT3G陽性13例中、T-SPOTは半数が陽性だった。
AJRCCM 2014;189:77 (重要)
 検査前確率の低い国 では、QFT、TSPOTの陽性一致率は50%しかなく、不一致した症例の再検では50%が陰転化した。
また陽性から陰性 114例中27例 に認めた。
結論;IGRAは偽陽性がある。 TSPOTとQFT両者ともに陽性はLTBIとして治療する。
△ 検査前確率の高い集団、あるいは免疫抑制宿主や免疫抑制剤治療中は偽陰性となる。
免疫抑制治療をする呼吸器疾患61例のうち間質性肺炎45例にTSPOTを実施し陽性3例いたがLTBI治療はしていない。陰性42例のうちステロイド単独ではLTBI治療はしていないが、ステロイド+免疫抑制剤治療の2症例はLTBI治療を実施した。
→ ※IGRAは偽陰性があるので、強い免疫抑制治療を行う症例ではLTBI治療を考慮すべきである。
排菌陽性の41例にTSPOTを実施したところ陽性は27例 陰性12例もあった!これらの症例はリンパ球数が少なく、アルブミンも低値であった。
→活動性結核における演者の施設での検討では、IGRAの感度は予想よりもかなり低かった。

まとめ

検査前確率の低い集団では偽陽性があるが、陰性なら結核感染は否定できる。
検査前確率の高い集団ではIGRA陽性は間違いなく既往である。
検査前確率の低い集団では偽陽性の可能性が高い。 陽転化や陰転化は偽陽性の可能性がある。

Q 新規の就職ナースがIGRA陽性だった場合、偽陰性の可能性がある。患者接触の既往やレントゲンなども考慮し、後日再検査、が望ましい。
呼吸器疾患の多くは高齢者におおい つまり検査前確率の高い集団

●画像診断のピットフォール

 飛沫吸入 → メカニカルに排除機構が正常なら感染せず
      →一方不十分なら感染成立し、うち5%が発症
     → 95%は不顕性 その後5%が後日発症(2次結核)
一次結核は 浸潤影 リンパ節腫大 胸膜炎 がおおい 中下肺野に多い。
二次結核は 空洞 結節影 S1,S6,S10 に多い。
tree in bud 所見は種々の鑑別疾患がある。
DPB 比較的太めの細気管支に病変があり、気道が厚い。
結核は末梢(細葉まで)まで病変があるのでコントラストがつく。はっきり、くっきり、ぼそぼそ、と陰影を作る。 ただしはっきり、くっきり、じわー、もある。
細葉中心性粒状影→結節影となっていく。
単純写真だけでは、空洞はわかりにくいことがある。

ピットホール

一次結核では肺炎と鑑別を必要なエアブロンコグラムを伴う陰影が起こりうる。
抗TNFα抗体療法による結核の特徴:空洞を作らず浸潤陰影をとることが少なくない。なぜなら肉芽を作りにくいからである。肉芽を作らずリンパをスルーするので、肺外結核も多い。

粟粒結核

粟粒とは1mm程度をいうが、胸部レントゲンでは見つけにくい。すりガラス陰影に見えることもある。HRCTなら明らかな粒状にみえるが、7mm以上のスライスだと粟粒に見えないことがあり注意を要する。間質性肺炎と間違われる。
粟粒結核は非常に粒状陰影がそろっている。転移性腫瘍はサイズが不揃い。珪肺の鑑別は必ず必要である。

結核腫

癌との鑑別は難しい、PETでも鑑別がむずかしい。
肺結核を疑う画像所見は、境界明瞭で陰影濃度が濃い。
肺MAC症の画像所見
 空洞壁が結核よりも薄く、散布巣が少ない。
再発症例の場合、必ずしも画像が悪化するとは限らない(XPとCTどちらも)。喀痰検査を行うべし。

●適切な菌検査検体採取の必要性と結果の解釈

ガフキー陽性でPCR陰性だった場合もあるので注意。
HIVではMycobacterium genavenceが播種性に感染症を起こすことがある。

●結核・抗酸菌症の血清診断の使い方

結核新規患者は20495人程度である。
結核血清診断は67の研究をレビューしたが、感度は59−76%と非常に低い。その理由は人によって産生される抗体が異なるからである。
単独検査では各検査の感度は70%前後であるが、組み合わせると90%になる。しかし特異度は86%しかなく、今後血清診断は無くなる予定。
MAC症の血清診断

GPLはMAC壁を構成する主要成分で、結核菌やKansasiiにはない。

演者の開発したキットでは、GPLーcore IGA kit の感度84%、特異度は100%
2015年演者の報告では感度78.6、特異度98%。 IJTLD2015 19  97ー
False negative になりやすい人

スメアで陰性 気管支鏡で診断したひと、肺区域が4以下にしか病変がない人

※治療経過の抗体の推移
治療が奏功し排菌が停止し維持される症例は、すみやかに抗体価が低下し低値で維持される。排菌陰性でも抗体価が治療後に上昇するものは、培養が陽性になっているものであり、活動性が高いものであった。
排菌陰性化するものでも、抗体価は正常値まで低下することはなく、化学療法の終了の目安とはなりにくい。

●気管支喘息の免疫療法 永田真先生

吸入ステロイドで喘息はなおるのか?
→ICSは喘息の自然経過を変えることはない。
3年間最小量のICSで寛解し、治ったと信じている患者群にICSを中止して経過をみたところ、INFγは増えないが、Th2サイトカインはあっという間に増加して元にもどる。
アレルゲン免疫療法のメカニズムは、
 遮断抗体としてのIgG4クラスの上昇が起こる。Tregが関与しているであろう。
 Th2-Th1バランスの是正
ダニアレルギーの急速免疫療法 演者の施設では入院にて数日間でダニの抗原を飽和状態(維持量)まで持って行き、その後外来フォローとする。
ダニ・アレルゲン免疫療法は喘息・鼻炎・結膜炎のすべてを改善させる。(JACI2006)
ダニ舌下免疫療法(SLIT:sublinguial immunotherapy)は喘息増悪発現までの期間を延長させる。
ダニSLITを行うと種々のアレルギー発症を抑制する。
ダニSLITは小児アレルギー喘息を4年で寛解し、その後中止しても再発していない。(CEA2003)
小児喘息におけるダニSCITとSLITの1年後の比較では、SCITの方が効果がある。注射の方がダニ特異的IgG4がしっかりと産生されることに由来する。
WHO見解書におけるアレルゲン免疫療法の喘息における適応
 重症喘息はだめ
 治療ステップ3までの%FEV170%以上で皮下アレルゲン免疫療法を考慮。

●肺感染症と肺上皮細胞免疫 NHO長崎医療センター 山本和子先生

肺炎の重症化メカニズム
サイトカインを制御する転写因子
重症肺炎とは
 日本ではADROP
 敗血症や急性肺障害を伴うもの
重症肺炎の原因微生物;肺炎球菌が最多、インフルエンザウイルス、レジオネラとつづく
マクロライドをβラクタムに併用すると、キノロンを併用するよりも明らかに予後を改善した (Int Care Med 2010)。
マクロライドは炎症性サイトカインを抑制する (J Infect 63; 187-199,2011)
 ステロイドを併用しようとしまいと、マクロライドは炎症性サイトカインを抑えることが報告されている。
炎症性サイトカインあるいは微生物が細胞表面のレセプターにつくと、NF−κBが核内転写されて炎症性サイトカインが産生される。NF-κBのサブクラスがありRelAが特に重要。
NF-κB RelAと自然免疫
 肺胞上皮細胞は最初の微生物侵入門戸である。 肺胞の表面積80㎡である。
肺上皮NF-κB RelA欠失マウスにより、肺胞に好中球はmigrateできず殺菌もできないことが分かった。
CXCL5,GM-CSF、CCL20は肺上皮細胞から産生されることが判明した。CXCL5はII型肺上皮細胞から、GM-CSF、CCL20はI型から産生される。
mouseCXCL5=human IL8 炎症を惹起する。
GM-CSFは好中球遊走+肺上皮細胞保護。
CCL20  抗菌活性+自然免疫から獲得免疫への橋渡しをしているのでは、と考えられているがまだまだ未解明。
重症細菌性肺炎にGM-CSFを間欠的に吸入投与を繰り返すと、肺炎の予後が改善すると報告があり、臨床応用のために研究が進行中。

Q. CXCL5を欠損させると好中球遊走が遅れるということだが、その後追いついてきますが、それはどこからの供給があるのでしょうか。
→CXCL5は血小板からたくさん分泌される。肺胞上皮は最初の段階のバリアであり、その後は種々の細胞から分泌されていると考えている。

●びまん性肺疾患と免疫 久留米大学 星野友昭先生

サイトカインは可溶性タンパクであり標的細胞の挙動や性質を変化させる物質である。
Th1 INFγ
Th2 IL-4,5,13 喘息にくわえて最近ではIPFにも関与すると言われている。
肺は最も酸素にさらされる臓器であることが重要な要件である。
IL-1ファミリーであるIL-18を演者のグループは研究しており、IL-18はIL-12の存在下でdendritic cellを非常に抑制する。
IL-18を皮膚特異的に発現させたトランスジェニックマウスをつくると、ひどいアトピー性皮膚炎を発症した。
IL-2+IL-18は用量依存性の致死性間質性肺炎をひこ起こす(Okamoto、Blood 2002)
ブレオマイシン肺障害モデルでは血清と肺でIL-18が増加する(Hoshino T,AJRCCM 2009) 
ヒトのIPFの肺病変部と血清中にIL-18が強く発現していた。
IL-18は喘息にもCOPDにも発現しているので、IL-18トランスジェニックマウスを作成したところ、肺気腫が発生した。IL-18は作用するタイミングで喘息発症、COPD発症、間質性肺炎発症といろいろ作用がある。
IL-13とTGFβはIPFの重要な線維化促進因子である。
IL-13抗体lebrikizumabは間質性肺炎の治療の治験が走っている。
ペリオスチンは、ongoingな線維化病変に特異的に発現している。
血清ペリオスチン値はIPF、fNSIP、COPで上昇している。
ベースラインの血清ペリオスチン値はIPFの6ヶ月間の呼吸機能低下や予後の予測因子となりうる。
Il-13やIL-18はびまん性肺疾患の治療ターゲットとなりうる。

●PD-1抗体によるがん免疫療法 産業医科大学分子生物学講座教授 岩井佳子先生

免疫のブレーキ役 PD-1
がん免疫療法とは 生体に本来備わっている免疫力を利用
特異的免疫療法: ペプチド療法 樹状細胞療法など
非特異的免疫療法: 活性化リンパ球療法など・・・PD-1抗体はこちらに入る
免疫チェックポイント阻害剤とは
 キラーT細胞に発現する受容体に着目して作成された。樹状細胞が抗原提示し、かつ共刺激が必要であり、そのシグナルにより活性化か抑制かが決まる。
1992年 PD-1発見
2001 PD-1リガンドの発見 PD-L1 PD-L2
2002 抗ヒトPD-1抗体の作成
PD-1はCD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体である。活性化T細胞に特異的に発現している。
抗原刺激 + 共刺激 + サイトカイン →PD-1が活性化T細胞に発現する。
PD-1欠損マウスは自己免疫疾患を発症することから、PD-1は自己免疫寛容に重要であると分かった。
PD-1は感染や炎症がおこって初めて発現する。正常マウスでは発現していない。健常者の末梢血にもほとんど発現がない。
PD−1の発現は非常に限局的! たとえば扁桃炎を起こすと扁桃のみ発現する。
一方リガンドであるPD-L1(B7ファミリーに属する)は様々な臓器に発現がある。
PD−L1の役割 ・・・・腫瘍に発現すると増殖能が増加し転移に関与する。
例 マウスのP815という腫瘍は良性だが、PD-L1を発現させると転移するようになった。
B16メラノーマ細胞を膵臓に発現させると門脈を介して肝臓に転移するが、PD-1欠損マウスでは転移は起こらなかった。
PD-1が欠損するとT細胞が増殖するしT細胞の機能が高まる。腫瘍周囲にT細胞が集積することが分かった。野生型では腫瘍周囲にリンパ球は集積しない。
メラノーマ28% 腎細胞癌27% 肺癌は扁平上皮癌で33%に有効であった(NEJM2012 )
免疫系を車に例えると、ブレーキがPD-1抗体、アクセルが今までの種々の療法であった。
副作用
 倦怠感 発疹 下痢 そう痒感
 肺炎 白斑 腸炎 肝炎 下垂体炎 甲状腺炎 1%前後に認められる
他の薬剤との併用で注意事項として
 炎症下で自己抗原が存在すると自己免疫応答が発現されやすくなるので、手術などの炎症が起きているときには投与を避けたほうがよいであろう。
がん細胞はPD-L1を発現して宿主の免疫寛容を誘導していると考えられるので、これをPD-1抗体やPD-L1抗体で阻害することで、免疫反応を高めることができる。
CTLA4は制御性T細胞に発現している。作用は非特異的である。PD-1抗体は抗原特異的活性化T細胞に作用するので、がん抗原に非特異的な分子を標的としながらがん特異的なT細胞を増やすことができる。
今後の課題 3割にしか効果がないが、のこりはどうなっているのか明らかにする必要がある。

一般演題

・ステロイド治療中に発症したニューモシスチス肺炎(PCP)の臨床的検討:高崎総合医療センター 石川大介先生 の報告では、関節リウマチ及びそれ以外の疾患でステロイドの全身投与を受けている患者に於いてPCP発症について検討された。発症した全例がST合剤の予防投与をされていなかった。RA群はMTXを全例併用しており、PSLは10mg以下で、PCP発症まで平均37ヶ月であった。一方、非RA群ではステロイド投与量10mg未満は10%で、発症まで6ヶ月以内が85%であった。死亡例は有意に末梢血リンパ球が低値であった。

・ERV/FVCの低下はどのような臨床情報を提供するか:市立伊丹病院 原綾子先生 の報告では、肥満者以外の要素として心筋梗塞の既往が挙げられた。文献的考察では左心不全がおきるとTLCとVCは低下しRVが増加し、心不全治療後もほぼ変わらずその病態はのこる。肺水腫は下葉に強く起こり、間質圧の上昇は肺胞弾性力の低下も引き起こすからである。

・ステロイドは自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)に対して有効か無効か:新潟大学 赤坂圭一先生 の報告では、全国165施設にアンケート調査し43例のaPAPでステロイド投与を受けた症例を確認し31例で検討した。23例は臨床診断がIIPsとして治療された。投与期間中央値は191日、投与量中央値は18.9mg/dayで、24ヶ月の累積悪化率80.8%。ステロイド投与後に感染症合併が有意に増加していた(投与後にアスペルギルス症3例、肺炎球菌感染症2例、ノカルジア感染症1例、肺膿瘍1例)。ステロイドは肺胞サーファクタントのクリアランス能を低下させ、分泌増加を促すので、病勢を悪化させる可能性がある。
・ステロイドへの反応が不良で死亡した急性好酸球性肺炎(AEP)4例の検討:倉敷中央病院 武井玲生仁先生 の報告では、BALで好酸球分画が50%以上(4例中3例)にもかかわらずステロイドに反応しなかった。文献的考察では死亡例の多くの病理像がDADであり、本症例でもその可能性が高い。AEPと診断しても予後不良例の存在があり慎重になるべきである。

・特発性器質化肺炎(COP)の再発予測因子の検討:NHO近畿中央胸部疾患センター 谷口善彦先生 の報告では、2007年から2013年に近畿中央胸部疾患センターにて診断したCOP301例のうち、ステロイド投与で一旦臨床的に寛解した78例を検討した。再発症例(n=14)は、ステロイドパルスを必要とした重症例、CRP高値例(再発あり平均10.9mg/dl(0.03−32)、再発なし0.97mg/dl(0.01−20.9))、両側陰影症例。再発例は全例PSL10mg以下で再発しており、10mgまで減量したら注意を要する。文献的には3葉にまたがる症例で再発が多い。初回治療から再発までの最長日数は1033日であり、リスクの高い患者は長期フォローが必要。再発は死亡率には影響しない。

・当院における膿胸症例の臨床的検討:徳島県立中央病院 佐古雅宏先生 の報告。2011年1月から2013年12月に経験した膿胸45症例。抗菌薬は半数以上MEPM、つづいてSBT/ABPC,TAZ/PIPC。ドレナージのみは16例(軽快14例、死亡2例)、胸腔鏡下手術は29例(軽快27例、死亡2例)。胸水培養は15.5%が陽性で起因菌はMRSA,Enterobacter cloacae,Proteus mirabillis,Peptostreptococcus species,が各1検体,γ−streptococcus 2検体であった。死亡4例のうち3例は高齢、糖尿病、維持透析中、手術しないで死亡した2例は全身状態不良のため手術不能であった。死亡例の血清アルブミンは低値だった。入院時のCRP値は予後、入院期間に影響しなかった。

・一般病棟へ入院後に肺結核と判明した症例の検討:NHO東京病院 渡邉かおる先生 の報告では、平成22年1月から26年12月に入院後肺結核と判明した症例を検討。入院時診断肺炎が13例、気管支鏡検査入院8例、片側胸水精査入院4例、他科疾患入院4例であった。全28例中25例は空洞は伴わず、既存の異常陰影により結核病変がマスクされている診断困難例は6例であった。→肺炎時はいつも結核の鑑別をする、入院前にはIGRAや喀痰抗酸菌検査を実施する、などが対策として挙げられた。

・同様の報告していた熊本中央病院 貞松智貴先生 の報告では、診断までの平均日数が長い群は、ステロイド投与例、腎不全例、および初期診断で全く結核を想定していない例であった。約40%が塗抹陽性、塗抹陰性でPCR、培養によって診断した症例が多数あった。

・百日咳抗体[PT-IgG、FHA−IgG]値は経時的にほとんど低下しない:池袋大谷クリニック 大谷義夫先生 の報告では、PT-IgG値と年齢に相関はなく、1975年−85年に出生した年代(百日咳ワクチンを受けていない)と1974年以前および1985年以降ではPT-IgG値に有意差なかった(順に47±45.1EU,、53±49.1、49.3±51)。患者の18%(72/403 )はPT-IgG>=100EU/mLであるが、最終診断は咳喘息が多く、アクティブな百日咳患者はほとんどいなかった。PT-IgGは経時的に低下せず、PT-IgG >=100EU/mLでもほとんどが既往かワクチン接種歴を示しているにすぎず、シングル血清では過剰診断となっている可能性がある。ワクチン接種による抗体獲得とされるPT-IgG10EU/mL以上の患者群でも、5%の症例はその後に百日咳に感染した(ペア血清PT-IgG 2倍以上増加)。

・単結節型肺野病変を呈したサルコイドーシス(Sa症)の臨床的検討:群馬大学 小澤友里先生 の報告では、単結節型Sa症は肺癌と鑑別は困難で、本邦ではspiculationを伴うものが多い。高率に縦隔肺門リンパ節腫大を伴うが、肺野のみの症例もある。ぶどう膜炎は合併が多い。単結節型は本邦では比較的高齢者が多いが、高齢によりリンパ球機能低下によりSa症の活動性が抑えられるからという仮説がある。細胞性免疫能異常からSa症患者では肺癌発症リスクは高いと報告がある。TBB検体でサルコイド結節と診断されても悪性腫瘍によるサルコイド反応の可能性もあるので、十分な検体量が必要である。

・難治性慢性咳嗽患者における潜在性重症睡眠時無呼吸症候群の検討:東京女子医科大学八千代医療センター 横堀直子先生 の報告では、慢性咳嗽患者において咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、後鼻漏症候群に対する治療にて改善不良であった重症OSAS4症例を検討した。Epworth sleepiness score(ESS)は全例3点以下で日中の眠気は自覚ないが、咳嗽の重症度(咳VAS)は中等度から高度認めた。CPAPを導入すると全例に咳の改善が認められた。文献的考察では気道閉塞よりもイビキが咳嗽の誘発に関与している可能性があるとのこと。

・EBUS-TBNAを用いた肺門縦隔リンパ節吸引生検時の至適吸引圧の検討:藤田保健衛生大学病院 峯澤智之先生 の報告では、低吸引圧20Kpaと高吸引圧80Kpaを比較した場合、悪性腫瘍の場合に高吸引圧では挫滅面積と挫滅割合が増加して病理が観察しにくくなり、良性疾患では高吸引圧でも挫滅割合は変わらず病理診断に有利であった。

・COPD GOLD B群における間質性肺炎の検討:NHO東京病院 扇谷昌宏先生 の報告では、COPD B群では間質性肺炎の合併により閉塞性障害が抑制され、気腫化の程度に比して良好な%FEV1.0が示される症例が含まれる可能性があり、間質性肺炎の合併により酸素化障害が進行しやすいので予後不良と推察される。

・オマリズマブ投与前後における特異的IgEの変化:昭和大学 水野紘子先生 の報告では、オマリズマブ投与後に総IgEが上昇することが知られているが、抗原特異的IgE値の変化も上昇するものがある。47名の検討では投与前には陰性であったスギ、カンジダ、ガが投与後に陽転化した。スギは4名が陽転化し、全員がスギ花粉症を罹患していた。immunoCAP基準値が0.35未満でよいかどうか検討を要する。

・気管支鏡検査におけるプロポフォール・デクスメデトミジン併用鎮静の安全性と有用性の検討:横浜市立大学 石井宏志先生 の報告では、この2剤による鎮静にて有意に気管支鏡下生検時の気管支鏡挿入時間が短縮し、局所麻酔薬投与量が減量した。血圧低下・徐脈がしばしばみられたがエフェドリン投与により対応可能であり帰室後まで遷延することはなかった。

コメントは停止中です。