2016年4月17日に、第113回日本内科学会講演会 於東京国際フォーラム に出席して参りました。

2016年4月17日に、第113回日本内科学会講演会 於東京国際フォーラム に出席して参りました。最新の知見を得たのでご報告します。

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

腎臓病の新たな視点ー低酸素とepigenetics 東京大学 南学正臣先生

慢性腎臓病の進行には、糸球体硬化症に加え、
尿細管間質障害のほうが腎臓予後と関連することがわかった。
腎臓は非常に酸素を消費する臓器であり、血流の25%、酸素の28%を消費している。
腎臓の低酸素化の原因として、
 線維化による毛細血管の脱落
 レニン・アンジオテンシン系の活性化による尿細管周囲毛細血管の血流低下
 腎性貧血
などがある。
低酸素感知マウスを用いた実験では、
吸入気酸素分圧を減らしていくと脳は最後まで維持されるが腎臓は容易に低酸素状態となる。
新規リン光プローブをもちいると尿細管の酸素分圧を測定できるようになった。
糖尿病腎の測定でも腎臓は低酸素状態であることが分かった。
糖尿病モデル動物でも同様に腎臓の低酸素が証明された。
人ではどうなのか。
 BOLD-MRIという手法を用いると、eGFRの低下とともに腎血流は低下し腎臓低酸素なることが判明した。
生体は低酸素に対する防御機構として低酸素誘導因子HIF(hypoxia-inducible factor)を備えている。HIFは低酸素の防御機構を活性化する因子である。低酸素暴露によりHIFがHREに作用して低酸素障害の防御機構がはたらく。
低酸素の原因の一つに炎症がある。低酸素によるSterile inflammationとして有名。
HIFを調節する因子としてCEBPBを演者らのグループが発見した。
HIF活性化療法で糖尿病腎症モデルの腎障害が改善できることがわかってきた。
様々な腎臓病モデル動物におけるHIF活性化療法の有効性が発表されている。
prolyl hydroxylase domain(PHD)阻害薬 :HIFを活性化する薬剤 の臨床試験が進んでいる。
非透析CKD患者にPHD阻害薬を投与すると腎性貧血が改善する。
epigeneticsと腎臓病
 epigeneticsな変化とは、遺伝子の変化を伴わずに長期間に形質変化することで定義される。
例)醜いイモムシが美しい蝶に変化する。
HAC → ヒストンのアセチル化 → 遺伝子調節因子がDNAにアクセスできるようになる。
DHAC  →HACの逆の作用。
糖尿病の初期に厳格に血糖コントロールすると30年後の予後、蛋白尿が有意に良好である。
血糖管理の不良は、腎臓におけるNfκBのプロモーター領域の変化がおきて炎症が発現する。
Sirt1はヒストンアセチル化酵素の一種で長寿因子として知られるが、糖尿病性腎症では発現低下しており、cortactinが細胞質内に発現できず、ストレスに弱くなることが分かった。
一時的な腎臓の低酸素状態が10年から20年後の腎機能に影響を及ぼす。
低酸素によるヒストンの脱メチル化による。
※腎臓病の進行に低酸素が重要であるが、それに伴うepigeneticsな変化が同様に重要である。

代謝調節系の新たな視点ー臓器連関による糖代謝調節系の理解 東北大学 片桐秀樹先生

全血液量が体重の8%
持続血糖測定システム(CGC)によるデータを解析すると、
糖応答性インスリンだけで、本当に血糖コントロールしているのか疑問。
むしろ臓器連関による糖代謝調節系が重要なのであろうと考えた。
一臓器での急性代謝変化を実験的に介入して起こし、他臓器・組織の反応を検討した。
脳からの神経を介する信号が重要であり、
脂肪組織→脳へシグナルがでてることが10年前に判明。
肝臓のみに脂肪を貯めるとどうなるか→脂肪組織は縮小した。血液系は関与していないことがわかった。重要なのは脳へのシグナル。
迷走神経肝臓枝が脳へ無数に伸びている。
過栄養→肝臓へ脂肪蓄積 → 迷走神経が脳へシグナル → 交感神経を介して脂肪細胞へシグナル →代謝亢進→脂肪細胞の脂肪分解。
肝臓のPPARγ
想定外の食物過剰摂取の持続 ⇔ 体に備わった恒常性維持機構 ⇔ メタボの病態
全世界の肥満の爆発的増加を考えると恒常性維持機構に相反するシステムが有るのかもしれない。
肝グルコキナーゼ発現増加(糖代謝を亢進させると)は褐色脂肪組織の熱産生を抑制した。
 つまり、肝臓に脂肪として蓄積が進むと脂肪分解に反応するが、グルコースレベルでの増加は逆に脂肪蓄積にすすむ(また飢餓状態がくるかもしれないという体の反応のためである。)
少し太っても糖尿病にならないようにするメカニズム =膵臓β細胞の増殖
肝臓へのアミノ酸取り込みを増加させたらどうなるか。
肝でのアミノ酸トランスポーター(SNAT2)発現は食後の高中性脂肪血症を惹起する。
すなわち、肝臓 → 迷走神経 → 脳 → 交感神経 → 脂肪組織のTG加水分解抑制 → 高中性脂肪血症、という機序である。
 アミノ酸代謝と脂質代謝において、栄養素間ネットワークが個体レベルで起こっていることが新たな発見であった。
臓器間代謝情報ネットワーク発見の意義
1.個体レベルの恒常性維持機構 この破綻が糖尿病の発症につながるのであろう
2.メタボリックシンドロームの解明につながる
3.全身臓器の代謝中枢として脳が働く
4.新規治療薬の開発につながる
膵臓β細胞の少なくなった糖尿病にこのネットワークを使って膵臓にβ細胞を増やす可能性もある。

免疫調節系の新たな視点ーセマフォリンと免疫代謝の話題を含めて 大阪大学 熊ノ郷淳先生

セマフォリン
Sema4Dと関節リウマチ
免疫代謝(immunometabolism)とマクロファージ
セマフォリンは神経発生分子・神経ガイダンス因子として発見された。
自己免疫疾患発症時に血清で検出され、週がすすむと上昇してきた。
その後の研究で、セマフォリンは免疫系と骨細胞保護作用が判明
セマフォリンは7つのサブユニットがあるが、様々な免疫現象に関わることがわかってきた。
特に慢性炎症疾患に関わることが次々報告されるようになってきた。
Sema4Dは免疫細胞活性化し骨形成抑制活性をもつ。・・・つまり関節リウマチの病態を説明しうる因子である。
関節リウマチ患者では関節液内に有意に増加。炎症マーカーとセマフォリンが相関する。生物学的製剤投与が有効だった患者では、関節液内セマフォリンが減少した。

脂肪細胞の新たな視点-アディポネクチン受容体の作用機序と新たな機能の解明 東京大学 山内敏正先生

脂肪細胞 高脂肪食で脂肪細胞大型化 →悪玉アディポカインを分泌する。インスリン抵抗性も起こる。
脂肪細胞が小型脂肪細胞のままで数が増えただけでは悪玉アディポカインは分泌しない。インスリン感受性である。
肥満に伴って肥満細胞が大型化し発現低下する分子としてアディポネクチンがある。2型糖尿病の発症につながる。
高脂肪食による肥満はアディポネクチン発現を低下させインスリン抵抗性を惹起するが、外からアディポネクチンを投与するとインスリン抵抗性が改善することが判明した。
演者らはアディポネクチンの抗糖尿病作用とその受容体であるAdipoRを発見した。
AdipoR1は骨格筋に、AdipoR2はPPARを活性化させる。
AdipoR1はAMPキナーゼを活性化させる。骨格筋では高発現しており、AMPキナーゼとCaイオンの両経路を活性化しPGC1αを高発現させる。
100歳以上の長寿の方のアディポネクチン値は高値である。
動物実験ではAdipoRonを内服させると個体レベルでインスリン感受性を高め、高カロリー高脂肪食負荷によって寿命が延長した。動脈硬化にも有効。

教育講演14 肺がん分子標的治療 順天堂大学 高橋和久先生

非小細胞肺癌85% 小細胞肺がん15%
扁平上皮癌と小細胞癌が喫煙に関連する。
肺腺癌におけるdriver mutationの発見が生存率向上に関与している。
EGFR遺伝子変異
 エクソン19の一部欠失 感受性遺伝子
 エクソン21の点突然変異 感受性遺伝子
 エクソン20点突然遺伝子 耐性遺伝子
ALK遺伝子変異
2015年の肺がん学会ガイドラインでは、
 まずEGFR遺伝子変異を検索し、陽性ならまずEGFR-TKIを使う
 ALK陽性ならばクリゾチニブを使う。
EGFR-TKI
 第一世代はゲフィチニブ(イレッサ®)とエルロチニブ(タルセバ®)
 第二世代はアファチニブ(ジオトリフ®)
ゲフィチニブは皮疹が多い。
毒性はエルロチニブやアファチニブがつよく、抗腫瘍効果はアファチニブがつよい。
間質性肺炎はいずれも同様に認める。
アファチニブは下痢が多い。
問題点は、一年程度(9-14ヶ月)で耐性となる。
この耐性(T790M陽性)に対してオシメルチニブ(タグリッソ®)が開発され、有効性がある。
EML4-ALK融合遺伝子・・・極めて癌性のつよい遺伝子変異である。
 クリゾチニブを使ったほうが、化学療法よりも有意に無増悪生存期間が延長した。
 アレクチニブ(アレセンサ®) 副作用がすくないが肝障害が若干ある。
 クリゾチニブ(ザーコリ®)は消化器症状と特に視力障害がつよい。
 セリチニブ(ジカディア®)は消化器症状がつよい。
これらも1年程度で耐性となるのが問題。耐性遺伝子に対する治療薬が開発されつつある。
 ROS1遺伝子変異にもクリゾチニブは有効。

※ 免疫療法 チェックポイント阻害剤
 抗PD-1抗体 ニボルマブ(オプジーボ®)
腫瘍細胞表面にはPDL1、PDL2受容体が発現しており、PDLRに結合している。
結合すると細胞傷害性T細胞の活性を抑制している。そこでこのPDLRを阻害すれば細胞傷害性T細胞が活性化され、抗腫瘍効果が期待される。

オプジーボは年間3000万円近い医療費がかかり、医療費圧迫しているのは間違いない。真に必要な患者を選択する必要がある。

招請講演4 慢性腎臓病(CKD)に対する取り組みと展望 名古屋大学 松尾清一先生

2014年末の時点で32万人の透析患者がおり、日本人の400人に1人である。
透析患者の医療費は2001年から2010年で120兆円に達している。
腎機能悪化するにつれて、死亡、入院、心血管疾患の発症が増大していく。
CKDはCVDのリスクファクターである。
CKDのアウトカムは末期腎不全・心血管イベントである。
CKDはなぜ重要か
 1.CKD is common
  2. CKD is harmful
  3. CKD is treatable
CKDの定義
 蛋白尿と腎機能GFR<60
eGFRの計算式は簡便であるが、るいそう、四肢切断、極端に筋肉の少ない、菜食主義者などでは不正確となる。
新しいCKD重症度分類(日本腎臓学会2012)が作成された。
 腎機能がG3b以下か、蛋白尿がある患者は予後が不良である。
ここ数年透析患者は横ばいである。
糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎は減少傾向になっているからである。
一方腎硬化症による透析患者が徐々に増えている。
糖尿病性腎症の早期診断
糖尿病患者では、アルブミン尿がないにもかかわらず、腎機能が低下しているものが11%もいる。この患者群は腎硬化症の患者の特徴を持つ。
eGFR<30で切ると、明らかに予後が異なることがわかり、2014年新たな臨床病期分類が作成された。

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