第56回日本呼吸器学会学術講演会 於国立京都国際会 に出席して最新の知見を学んで参りました。

第56回日本呼吸器学会学術講演会 於国立京都国際会 に出席して最新の知見を学んで参りました。

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

教育講演2 分子標的薬の効果的な使い方 和歌山県立医科大学呼吸器内科・腫瘍内科 山本信之先生

IV期NSCLC 1970年で生存6ヶ月、2000年で1.5倍、最近は4年 ただしある種の分子標的部位に有効な場合である。
ドライバー変異には EGFR-TKI 、ALK-TKI が有効である。
免疫チェックポイントインヒビターのニボルマブ(オプジーボ®;抗PD-1抗体)は、ドセタキセルDTX(タキソテール®)との比較試験で有意に予後(生存期間:OS)を延長した。
 ただしEGFR遺伝子変異をもつものはドセの方が有意だった。
EGFR-TKIは、PD-1阻害薬よりも優先される。
アジア人ではNSCLCでEGFR遺伝子変異は60%、ALK融合遺伝子が6%陽性である。
EGFR-TKIはまずゲフィチニブ(イレッサ®)、エルロチニブ(タルセバ®)、アファチニブ(ジオトリフ®)をつかい無効例にオシメルチニブ(タグリッソ®)を投与するとされている。
アファチニブはE19 -deletionに非常に有効でOS1.7倍延長させる。
minor mutationには今のところアファチニブが推奨される。
AURA study NEJM(第一相試験)では、T790mを有する非小細胞肺癌にオシメルチニブは奏功した。
AURA2 第一相と同様の結果である。
現在AURA3 第三相試験中である。
ALK融合遺伝子陽性肺がんでは、
 アレクチニブAlectinib(アレセンサ®)は非常に奏効率がたかい。
 特にクリゾチニブCrizotinib(ザーコリ®)は再発例でもRR(response rate)約70%。
 セリチニブCeritinib(ジカディア®)もクリゾチニブ不応例に約60%奏功。
 ※まずクリゾチニブを使用し、不応例にアレクチニブやセリチニブを使用する。
となっているが、ファーストラインでアレクチニブを使うと奏功するとの報告がもうすぐ出る予定。
しかしアレクチニブを先に使って不応となった場合クリゾチニブは無効なので結果的にOSは伸びないかもしれない。逆ならクリゾチニブ→アレクチニブでOSが伸びる可能性もある。
First Lineの薬により2nd lineや3rd lineの薬が決まってしまうので、よく考える必要がある。

広域周波オシレーション法による呼吸抵抗の評価 東北大学産業医学分野:黒澤一先生

強制オシレーション法(FOT)では、呼吸抵抗(Rrs)、インピーダンス、呼吸リアクタンス(Xrs)、FEV1.0、R5 、R20、R5-R20 などを測定指標が得られる。
オシレーション法の結果の表現方法として、
単一周波(正弦波)では値が高低のみだったが、広域周波にすることによりその波形をみて特性をみることができるようになった。
更にモストグラフでは広域周波に時間軸をつけた、つまり吸気や呼気時の連続データが測定できるようなった。
IOS(三角波)、モストグラフ(ハニング波)という特徴がある。
モストグラフの3Dグラフの意味について、
 健常者は緑一色。
 初期のCOPDは、呼吸周波数依存性を認める。
 Hasegawa等、Respirology2015; 20: 775-81 の報告では、
  気道壁があついほど吸気呼気の差が大きい。
スパイロメトリーと比較して強制オシレーション法(FOT)ではR5やFresを用いて閉塞性の評価を行うことができる。
※閉塞性の評価 スパイロとの関連について
 FEV1.0はFresと非常に相関する、双曲線の関係:FEV1.0が大きいほどR5は低い。
 抵抗が同じでもFEV1.0が高いひとは、おそらく呼吸筋力が強い人である。
咳嗽診療に於ける呼気NOとモストグラフの有用性に関する検討 市川裕久先生 日本呼吸ケアリハ学会誌2015 に報告されているが、レトロスペクティブの検討なので今後前向きに検討が必要。
QandA
Q 喘鳴を聴取するのに、モストグラフ抵抗値が正常の症例があるが何故か
A 不明である。
 喘鳴の症状はわずかの、局所でしかでていないひともあり、全呼吸抵抗を測定しているデータと合わないことはありうる。

◆シンポジウム8

なぜCPAPをすると体重が増えるのか 立川良先生

体重増加の理由は、
カロリー摂取が体重を規定する。

もともと痩せて、女性 が太りやすい。
ではなぜ一部の人は食べ過ぎるのか。
 レプチン(食欲抑制)は体重増加群で高値。
 グレリン(食欲亢進)は体重低下群で高値。
 →これは、食事量による結果であって、原因ではなさそう。

睡眠不足でも過食になる。

 食事一定の場合、睡眠制限するとグレリン↑ 食欲↑
 食事を自由にすると、グレリン→ 食欲↑

過食は進化した「ヒト」に比較的特異的である。

 本来は生きるのに必要なエネルギーをとるだけであるが、ヒトは美味しそうだから食べる、という高次脳機能で判断するからであろう。
食行動の乱れがCPAP後の体重増加につながる。

増えた体重はどこへ行くか。

 脂肪以外の体重が増えている?
小児もOSA治療後(扁桃摘出後)に体重増加するが、発育不良が正常になる。
※禁煙後の体重増加と比較すると、
 禁煙後基礎代謝は-60calであるが、食事摂取は+170cal.
CPAP導入後の体重増加と似ている。全体では平均して0.4kg増。
Q.体重増加群と低下群で炎症性マーカーなど測定あれば、どうか。
A.測定しているが有意差はなかった。
Q.高度肥満群ではさらに太ったのか?
A.今回アンケートを配ったので食生活に気を配った可能性がある。
もし何も介入していなければ太ったからもしれない。なぜなら超肥満群はもともと太りやすい生活習慣や癖があるからである。

慢性呼吸不全患者にとって睡眠薬は禁忌か 坪井知正先生

演者らは睡眠薬ゾルピデムがNPPV中であっても安全に投与可能かどうか検討した。
ゾルピデムを服用すると深睡眠が増加し、
どの睡眠ステージにおいても経皮的動脈血二酸化炭素分圧(PtcCO2)は増加せず、自覚症状は改善した。
月に10回以上睡眠導入剤や向精神薬を服用している群とそれ未満の群に分けて比較検討したが、PCO2は47torr程度で有意差なし。QOLアンケートでは重症呼吸不全患者にもっとも感度が良いとされるSRIでは、内服群で有意にスコアが低下(改善)している。ESSにおいても、眠剤内服群は昼間の眠気が少ない。
眠剤服用により寝付きがよく、睡眠も改善し、翌朝が目覚めがよく、頭痛やフラつきの増加がなかった。
結論: NPPV患者群はゾルピデム服用で安全に睡眠の質を改善できた。
Q.NPPV以外の慢性呼吸不全の方にも今後眠剤をどのように使うか?
A.少なくともNPPVはきちんと装着出来ている方が殆どだったので、問題ない。一方酸素療法のみでは慎重に対応する必要があるだろう。
Q.NPPVの患者に眠剤投与すると、換気低下とトリガーするかどうかが問題になると思われるが、T-modeならトリガーの問題はないであろう。
今回の研究ではT-modeの人数は10人程度で、とくに多いというわけではない。

肺胞低換気症候群

1.CCHS先天性中枢性低換気症候群 ・・・小児
2.原発性肺胞低換気症候群 ・・・日本では十数例しかいない
3.肥満低換気症候群はSASを除くもの
4 神経筋疾患、胸郭変形、薬剤による呼吸中枢抑制による肺胞低換気を除外したもの
・肺胞低換気症候群は、
 肺胞低換気は主に睡眠時に増悪する。
Phenotype A.
 夜間睡眠中に主に低換気/低酸素血症を呈する。
Phenotype B
 夜間睡眠中に主に無呼吸を呈する。
 呼吸調整異常と考えられる。
 このBのなかに、一部高炭酸ガス血症を合併するものがある。
・肥満低換気症候群は、
 肥満 低換気 呼吸調節障害
殆どのOSAS患者は無呼吸の負荷がかかっても無呼吸間の代償性過換気によりNETでは正常PCO2を維持できるが、一部は代償が不足し高炭酸ガス血症になる(OSASの14%程度)。
BMIが30以上、AHI=60 以上ではPCO2が高い症例が多い。
とくにBMI=40以上の症例ではCPAP導入後3ヶ月たっても全くPCO2は低下しなかった。
反応良好群N=19 、 15年間で生存率100%
反応不良群N=18、  15年間で生存率は55%程度

ランチョンセミナー17 外来でできる最新の呼吸器感染症対策

 東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科教授 松瀬厚人先生
感染性咳嗽の持続時間は、患者の予測では1週間から10日と答えた( Ebelらの2013年のアンケート調査の報告による)。
しかし文献的には実は18日続く。7-20日つづくの咳の場合が難しい。もし咳喘息と診断うけたら、今後造影CTなどできなくなる可能性もある。
1普通感冒に対する抗菌治療
2.急性・遷延性咳嗽と感染症
3。喘息と感染症
4。COPDと感染症

1.普通感冒に対する抗菌治療

 普通感冒とは鼻粘膜の急性炎症が主で、ウイルスが起炎菌である。
3000名のインターネット調査では咳が70%、咽頭違和感40%。以前つかった薬だからまた使う(咳止めなど)。
しかし普通感冒に抗菌薬の適応はあまりない。
 ハイリスクの患者は抗菌薬が必要であろう。
基礎疾患にCOPDがある患者にライノウイルスを鼻粘膜に植えた場合、健常者と比し下気道に感染が及ぶ(AJRCCM2013)。
YAMAMOTO等(2014)の報告では、基礎疾患のある患者に抗菌薬を処方した場合、改善率は変わりないが、早期に症状が改善した。
咳嗽に関するガイドラインでは、感染性咳嗽を疑う場合の特徴は、
 先行する感冒様症状
 自然軽快傾向
 周囲に同様の症状がいる
 経過中に膿性度の変化する痰がられる
感染性咳嗽に対する抗菌薬投与の適応は、
 マイコプラズマ、百日咳、肺炎クラミジア肺炎、である。
河野茂 松瀬厚人ら(日本呼吸器学会雑誌2016)の報告では、
 マイコプラズマ肺炎の確定診断でピークが過ぎていない患者にマクロライド系抗生物質を投与した場合17日目で咳は消失した。

2.急性・遷延性咳嗽と感染症

 成人の遷延性咳嗽咳嗽の8割は感染後咳嗽である。半数は自然軽快する。
僅かだが、咳喘息も含まれる。
感染後咳嗽の特徴は、
 風邪症状が先行
 遷延性咳嗽あるいは慢性咳嗽を生じる他疾患が除外できる
 自然軽快傾向がある
 治療は中枢性鎮咳薬、抗ヒスタミンH1拮抗薬、麦門冬湯、抗コリン薬など。
なぜ感染後咳嗽がつづくのかは病態が不明だが、ライノウイルスは直接咳受容体(TRP)に接着するものだから、という説がある。
TRPV1受容体へのチオトロピウムが有効の可能性あり(Birrell JACI2014)。

3.喘息と感染症

 Human Rhinovirus もっとも頻度の高い風邪の原因ウイルス。
喘息患者は風邪をひきやすいか?
 同居中のカップルで、一方が喘息の場合風邪の引きやすさは変わらなかった。しかし下気道症状は多かった。(Corne JMらLAMCET)
高用量のICSを使う喘息患者では喀痰中に好中球が多い。(Simpson JLらChest2016)
いくつかの疫学調査によると、喘息症状に関連する感染のほとんどはウイルス感染である。
ステロイドによる免疫抑制
SABAによる免疫抑制
ウイルス感染症と全身性ステロイド
 症状スコアはステロイド投与するものとしないもので変わりないが、ステロイド投与中の患者では血中ウイルス量がおおい傾向にあった。
ライノウイルス16型を実験的に感染させた場合、ステロイドの効果が減弱される。
同様にウイルス量が増えるに連れてβ刺激薬の反応性が低下してくる。
ウイルス感染による喘息増悪に対する既存薬による治療と予防には、
 ワクチン、禁煙
 抗菌薬、インフルエンザには抗インフルエンザ薬
 ケトライド抗菌薬(エリスロマイシンを併用すると症状が改善する)
 ロイコトリエン受容体拮抗薬
 BFC(シムビコート®)によるmaintenace and reliever療法
ライノウイルス感染と喘息増悪で入院か外来かの分かれ目は、
 喫煙者 
 吸入ステロイド量
風邪罹患後に喘息発作が起きるまでの日数は、3日以内がもっとも多い。
このときにスピリーバの適宜吸入は有益である。
ステロイドとLABAの抵抗性を回復できる。
短時間に速効性がある。
治験レベルでは、風邪を引くと同時にINFを吸入療法する治療が進んでおり、重症喘息では症状は改善し肺機能の増悪が予防できている。一方で軽症例では効果はない。
成人RSウイルス感染に対する経口抗ウイルス薬 ALSO-008176 (DeVincenzo NEJM2015)では血中ウイルス量が低下し症状の軽減効果がある。
難治性喘息患者喀痰中にマイクロバイオーム(総細菌叢解析)にて下気道に非常に菌量が増えていることが分かった。
高齢者喘息は誤嚥に加えて下気道細菌量が増えている。肥満も下気道細菌叢が増えている。
好中球性喘息にマクロライドを投与すると肺機能は改善しないが、QOLは改善する。
COPD患者の気道感染症の頻度は間違いなく高い。
増悪時の薬物療法 (COPDガイドラインを参照)
COPDはペニシリン耐性肺炎球菌の頻度が高い。
MOSAIC studyでは、
 COPDの急性増悪後の7日前後と長期予後(半年以上あとの増悪までを観察)を調査した。
 マクロライドもニューキノロンも急性期の効果は同等であったが、半年以上あとの増悪は有意にニューキノロンが抑制した。
調査の目的
 COPDの増悪の起炎菌
 肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスが3大原因
呼吸器感染症治療ガイドライン2014では、
 レスピラトリーキノロンをファーストチョイスとしている。マクロライドとニューキノロンの投与において14日までの投与で治療効果が有意によかったから。
高齢者では誤嚥の可能性もあり気道細菌叢には嫌気性菌も多い。クラビット®よりジェニナック®のほうが嫌気性菌もカバーしており治療効果が高い。
COPDの診断と治療ガイドライン第4版では、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン接種でかなり増悪予防できる、日常のコントロールでも予防できることを示している。
マクロライドによるCOPDの増悪予防は、AZMで有意に予防できているが、耐性菌がでてくる。
マクロライドの増悪予防効果で期待できるCOPD患者とは、
 まず禁煙していること
 高齢
 閉塞性生涯が軽度
 抗菌薬とステロイドの両方が必要な増悪

◆シンポジウム10 難治性呼吸器感染症の新しい治療戦略

非結核性抗酸菌症 新潟大学 菊池利明先生

非結核性抗酸菌症の89%がMAC症、カンサシ菌は4%である。
肺MAC症に対する我が国の化学療法は、CAM、EB、RFP、必要に応じてSMかKMを週2-3回筋注を追加する。
MAC症は線維空洞型、結節・気管支拡張型に分類される。
線維空洞型では、
 1-2上葉に好発、大結節と内部の空洞形成。
 既存の肺疾患あり、喫煙歴のある中高年男性。
 1年で急速に進行する可能性がある。
結節・気管支拡張型では、
 中葉舌区優位、小結節と気管支壁肥厚、既存の肺疾患なし、中年女性に多い。
治療について、間欠療法の可能性の報告がある。
 週3回投与で圧倒的に副作用が少ない(Wallace RJらChest2014)。
ある報告では(AJRCCM2015)連日は76%、週3回間欠で67%の奏効率であった。
 AZM500mg、RFP600mg、EB25mg/kg
 EB中止症例は、連日は24例、間欠療法は1例、と間欠療法が圧倒的に少なかった。
 排菌量の多い症例では間欠療法はうまくいかなかった。
週3回間欠療法を行った91例の肺MAC症のプロスペクティブスタディでは、
 結節・気管支拡張型、塗抹陰性例、初回治療症例、高齢、EB使用期間150日
が有意に奏功したことから、これらの症例が間欠治療の適応であろう。
・ニューキノロンを追加するとすれば、
CAM連日最低6ヶ月投与し菌陰性化しない肺MAC症に、モキシフロキサシン400mg/日を追加したら、菌陰性化率が42%だった。
・アミカシン吸入療法の可能性
前治療を平均5年間受けた難治性NTM症20例の検討では、
 M.avium1例、M.intracellulare4例、M.abscessus15例
アミカシン250mg/日で8例が一度は菌陰性化した。7例が副作用で中止。
MAC症の55例にアドオンした第2相試験では590mg/日で菌陰性化率が54%あったと昨年のATSで報告されていた。
・クロファジミンの可能性
 ハンセン病の治療で保険適応となっている薬剤。
 副作用は消化器症状と色素沈着(赤、茶、黒 一部可逆性)
日本ではハンセン病の多菌型に使う。
クロファジミン、CAM、AZM、を併用するとMAC症に菌陰性化率100%!
※副作用の点と治療効果の点で、CAMよりAZMがよいのではないか。
Q ニューキノロンでは何をつかうか
A クラビットはやや弱いかも

慢性肺アスペルギルス症の病態と治療戦略 長崎大学 田代将人先生

肺アスペルギルス症の分類は、
侵襲性(IPA)、慢性(CPA)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の3つ
CPA – SPA単一の空洞内に菌球をみとめて非活動性のもの →手術
・ERS2015では肺アスペルギルス症を5つに分類しているが、実際には病態が重なることが多く、きちんと分類できないことが多い。
  CCPA 組織侵襲のあるもの
  CNPA 2葉以上に病変があるもの
・単純性肺アスペルギルス症 手術
慢性空洞性肺アスペルギルス症CCPA 切除では完治できない
慢性壊死性肺アスペルギルス症は、
 年単位で侵襲していく ・・病理では非常に組織に菌糸が侵襲している。
そもそもCPAの亜分類は必要なのか。
 治療方針が変わるので単純性肺アスペルギルス症は重要。
 そしてそれ以外のものを慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA;chronic progressive pulmonary aspergillosis)と臨床的に診断するのが妥当。
・CPPAに対する抗真菌薬治療薬は、
 VRCZ
 ITC 
 MCFG いずれも50%以上の症例に何かしらの改善があった。
・CPPA急性期点滴治療をITCZとVCZのどちらで開始したらよいのか。
奏効率や死亡については有意差なし。
しかし再入院や他の治療薬に変更はイトラコナゾールがオッズで3.2倍、5倍であった。
・A.fumigatusのアゾール耐性が世界的に問題となってきている。
日本ではイトラコナゾール1-2% ボリコナゾールは6-7%が耐性である。
イトラコナゾール長期使用はアゾール耐性を誘導する可能性があるので定期的な喀痰検査を提出すべきである。
・in vitroもVIVOも慢性肺アスペルギルス症のモデルが全くないので、研究がすすまないという問題点がある。演者は現在3Dプリンターで空洞を再現しマウスに埋め込んでモデル作成に取り組んでいらっしゃる。
アスペルギルス症は糸状菌なので、胞子と菌糸で抗原が全く違いがあり、治療にも影響する。

劇症型肺炎に対する治療戦略 田坂 定智先生

症例 32歳男性 インフルエンザB型後の黄ブ菌重症肺炎 
 MEPM VCM LVFX Peramivirを入院後に投与し、経過中気胸合併、ECMOも行ったが第5病日に死亡した。基礎疾患はなかった。
 この症例についていろいろ頭をめぐったとのこと
  ・・・LVFXの代わりにマクロライド併用しておけばよかったかも…
     DICの治療をもう少し強力にしておけばよかったかも
     ステロイドパルス エラスポールなどもすれば…
・肺炎球菌、クレブシエラ、シュードモナス、E.coli、レジオネラ、による肺炎が重症化しやすい。
・非定型病原体のカバーはどれだけ必要か。
 2つの国際データベースから市中肺炎4337例の臨床経過を検討したところ、マクロライドやキノロンを投与すると病状が安定し、肺炎関連死亡も有意に減少した。
欧州9カ国、27のICUで重症肺炎のために人工呼吸管理をした100例の検討では、
βラクタム系にマクロライドを併用すると、フルオロキノロンを併用するよりも有意に治療成績がよかった。
・ARDSでは、人工呼吸器の離脱がマクロライド投与で有意に多かった。
マウスに経口的にインフルエンザを投与しその後CAMを投与すると肺内の炎症性サイトカインが有意に低下し、肺内に炎症を抑制する細胞集団が誘導されることがわかった。
感染なしでもCAMにより同様の細胞集団が誘導されることがわかっており、基礎疾患のある患者への予防効果にも使える可能性がある。
・重症市中肺炎に対してステロイド投与すると有意に予後が改善する。
ハイドロコルチゾン投与群の28日後予後は100%だったが、プラセボ群は70%だった。
市中肺炎に対してのステロイド投与の効果のメタ解析では、
8つの試験870名
 予後は改善せず。しかしサブグループ解析では重症肺炎では予後が改善しており、少し長めにステロイドを使うほうがよい。
・膜型人工肺(ECMO) Lancet2009 はARDSの治療に有用
 H1N1のインフルエンザパンデミック後のARDSにおいてもECMO群が有意に生存率がよい。
生存例と死亡例の差では、高齢者が死亡例に多い。インフルエンザA感染ではECMOで生存率が有意に改善したが、その他の重症肺炎には有意差はなかった。
ECMOが有効な症例は多臓器障害、高齢、インフルエンザ肺炎 である。
・PMX-DHP
 ポリミキシンB固定化線維カラムを用いてエンドトキシンを除去するものである。
EUPHA試験で有名になった。
 腹腔内感染で緊急手術を行い重症敗血症/ショックとなった64例におこない有意に生存率が向上した。
 肺炎29例誤嚥9例に行いN-21例が救命できた。死亡例は明らかにPMX導入時期が遅かった。
Q H1N1インフルエンザしかECMOが効かないのは細菌となにか違うのか。
A まだ不明。

気道検体からのMRSA分離と肺炎原因菌との関連性 長崎大学 迎 寛先生

網羅的遺伝子解析
16S rRNA遺伝子を用いた起炎菌検索法
 この部分は細菌に共通した遺伝子でしかも遺伝子改変が遅いので細菌を鑑別同定するのに非常に有用である。
例えばBAL検体を網羅的遺伝子解析をすると、各菌の遺伝子量がわかり、起炎菌の同定に繋がる。
症例 69歳女性
 外来中にどんどん悪化して気管挿管となった症例、喀痰では何も発育せず。
BAL検体を網羅的細菌叢遺伝子解析法を用いると、レジオネラ遺伝子が有意に増加しレジオネラ肺炎と診断できた。
NHCAPの原因菌は肺炎球菌に加えて、黄ブ菌、緑膿菌、クレブシエラが多くなる。
CAPの約60%、NHCAPの50%が起炎菌が不明であった。
院内肺炎治療ガイドラインのとおりに喀痰で起炎菌を同定しても、MRSAが定着なのか起炎菌なのかを区別することは困難。
演者らがNHCAPのBAL検体を細菌叢解析した場合、培養とは起炎菌の比率がかなりことなった。培養では嫌気性菌は不明だが、不明とされた検体の遺伝子解析では嫌気性菌がかなり検出された。
また、喀痰培養からはMRSAが分離された症例において、BALの遺伝子解析では結局MRSAの遺伝子は4%、殆どはS.milleliだった。
・MRSAが下気道から分離されても、肺炎なのか定着なのか判断がむずかしく、他の菌の感染の可能性を常に考えておくべきである。
Q 本日の講演ではMRSA肺炎そのものもかなり少ない。
A MRSAが検出されても、3分の1から4分の1くらいしか本物ではないと思う。細菌貪食像があっても、当てはまらないことがある。
市中肺炎の半分は混合感染、院内肺炎の7割が混合感染なので、クローンライブラリーを使うと、混合感染の起炎菌が同定できうる。
※死菌も拾うので、第一菌種がかならずしも起炎菌ではない可能性がある。
動物実験では肺炎球菌とプリモテーラの混合感染で病原性があがる可能性が指摘されている。

◆会長特別企画 症例を臨床から分子レベルまでの考える6 間質性肺炎

冨岡洋海先生 濱田直樹先生

ステロイド/CPの治療は間質性肺炎の予後を改善しない。
間質性肺炎は肺胞上皮細胞の損傷とその修復過程の異常と考えられるようになった。
→ピルフェニドンを我が国では30%使われている。
2015年WHOでは、ピルフェニドンは限定付きの推奨となった。
肺胞上皮細胞の障害; 本来なら2型肺胞上皮が再生されるはずが、その修復過程が異常→線維化となる。
IPFは高齢者の疾患である。
マウスの実験でもブレオマイシン肺障害は高齢マウスで起こりやすい。
テロメア長の短縮がおきて細胞老化がすすみ、線維化へ進むと考えられるようになっている。
症例1 慢性例 
IPは糖尿病合併率が高いと言われる。
日本では対照例11%に対してIP例は30%以上の合併率。
RAGE-/-マウスではBLM肺臓炎は抑制された。(-/- :KO)
IPF
HMGB1の免染で陽性。
JACI2007;120:247
IPFとCHP(慢性過敏性肺臓炎)では遺伝子発現レベルで全く別物である。
VATSでprobable UIP+OPと診断症例に、ニンテダニブ1年間投与後ピルフェニドンに変更。有効。最後にIL-13 阻害薬も投与した。
PDGFは線維化に関与している。
FGFの関与はまだ不明(FGFをブロックすると線維化抑制と増悪の相反する報告あり)
BAL中のVEGFは低下している。
IL-13中和抗体を投与するとBLM肺障害を抑制する。
LebrikizumabはIL-4RαとIL-13を阻害する。

石井晴之先生 北村英也先生

IPFの死亡原因の40%が急性増悪である。慢性呼吸不全は20%程度。
原因50%以上不明、感冒様症状3割位だがウイルスは検出されない。
急性増悪後10日間でPaO2 10 torr以上低下するのもは予後不良。
LDHが355以下に下がらないものは予後不良。
症例2急性増悪例 60歳男性
急性増悪の肺胞上皮などでCCNA2,α-defensinsが高発現している。
新規治療の可能性
 PMX
 ポリミキシンB
IPFは静脈血栓や急性冠症候群が多いことが知られている。
トロンボモジュリンはHMGB1抗体炎症を抑制する。

肺がん分子標的治療を振り返り将来を語る

イレッサは著効するも多くの患者は1年程度で耐性を獲得する。
EGFR-TKIの耐性問題
効果予測 L858R Exon19deletion など4つの変異によく効く。
日本人は肺腺癌の40-50%が陽性、 5%がALK融合遺伝子変異陽性。
Driver mutation陽性例は分子標的治療で予後が劇的に改善する(JAMA2014)。
米国では患者の採血と腫瘍検体から網羅的な遺伝子解析を行い、最適な治療薬があるときは投与、ない場合は臨床試験に入ってもらう、ということもしている。
肺がん個別化治療の発展
Patients with gene alterationsの場合は、
EGFR mut →Gefitinib,Erlotinib, afatinib, Osimertinib, CO1686
EML4-ALK →Crizotinib, Alectinib, Ceritinib
ROS1 → Crizotinib
RET→Vandetanib, E7080, Sorafenib, Cabozantinib
BRAF → Dabrafenib

EGFR-TKIの耐性獲得の機序はT790 Mがおおい →ここをターゲットとして新たな分子標的治療薬が開発されており64%が奏功する。
がん幹細胞は抗癌剤や放射線治療に抵抗性である、治療後の再発の目になっていると考えられている。この細胞をターゲットに治療が開発されている。
イレッサ抵抗性の残存細胞をgefitinib-resistant persisters(GRPs)と名付け、がん幹細胞(CD133陽性)かどうかを演者は検討し、がん幹細胞であることを証明した。
cancer-stem cellは低酸素下でさらに発育が亢進する。
IGF1R阻害すると有意に抑制する。
Oct4を遺伝子導入すると、gefitinbに対するがん細胞の耐性化が早期におこることがわかった。さらに低酸素下でさらに細胞増殖が盛んとなった。
肺がん細胞を静止期にさせると肺がん再発の目となるので増殖期に戻すことが必要である。

ランチョンセミナー26 呼吸器感染症の迅速診断 倉敷中央病院 石田直先生

なぜ呼吸器感染症の迅速診断が必要か。
 肺炎球菌やレジオネラ菌、インフルエンザウイルスの特殊な原因微生物に早期の対処が可能となる。
 培養できない、あるいは時間がかかる病原体の診断に有用である。
 地域や施設での原因菌についての薬剤感受性データが利用可能。
 外来での適切な治療開始につながる。
市中感染を惹起するもの、頻度が高いもの、または疫学的に重要なものとして、
 肺炎球菌、インフルエンザウイルス、肺炎マイコプラズマ、百日咳
特別な抗菌薬の必要なもの
 レジオネラ菌、抗酸菌
薬剤耐性が問題となっているもの
 肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、(緑膿菌)
培養が困難なもの
 肺炎クラミジア、ニューモシスチス
抗体検査に時間がかかるもの
 肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳

point of care testing ;POCT

 要するに誰にでも自分でできてすぐに結果が出る検査のこと。
肺炎球菌迅速診断導入前と比較して導入後は診断率が上昇した。
肺炎球菌尿中抗原は感度75%、特異度90%であった。
問題点は 
 交差反応性
 鼻腔に定着菌があると偽陽性となる(肺炎球菌) ・・小児では不利
 L.pneumophilaしか検出できない(レジオネラ)
ラピラン肺炎球菌抗原 C-ps部位に対する抗体 すべての肺炎球菌を検出できる。
リボソームL7/L12
肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針
 LAMP法をまず行う、 抗体法は推奨しない。

将来の迅速診断法に望むこと

 網羅的な微生物学的検査
 薬剤耐性菌が検出できる
 血清型の判別
 病原体とcolonizationの鑑別

プロテオーム解析による迅速診断

マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 MALDI
タンパク質をレーザーをあててイオン化する。イオン化した検体を電位差のなかにおくと飛行するので、飛行時間(TOF:time of flight)を測定する。質量が大きいほどゆっくり飛行する。

MALDI-TOFでの短所

 分類学上の類縁菌種は鑑別がむずかしい
  Streptococcus pneumoniae と S.mitisが鑑別できない。
  結核菌と牛型菌は鑑別できない。
 薬剤感受性はできない。
Staphylococcus属 → かなり種の菌名がわかるようになった。

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