2018年4月19日に、福山呼吸器講演会が開催されました。

2018年4月19日に、福山呼吸器講演会が開催されました。前半の特別講演1の座長をさせて頂き、さらに最新の知見を学んで参りました。

福山呼吸器講演会 於 福山ニューキャッスルホテル 2018年4月19日

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

循環器病とCOPD~現状と今後の課題

国立循環器病研究センター 呼吸器・感染症診療部 医長 佐田 誠先生

演者の施設のCOPD疑い 約30%
COPDによる死亡は16000人超えで、なかなか減少傾向にならない。
COPDの診断率は世界的に低いが、中でも日本は非常に低い。
開業医の調査では呼吸器疾患以外で通院中の6人に1人がCOPDであった。
他の報告でもCOPD診断率は7%程度しかないとされる。
COPDは健康日本21に主要取り組み疾患となったが今だ認知度が低い。
間もなく刊行されるCOPDガイドライン第5版では定義の中に炎症があまり強調されなくなっている。
COPDの診断基準は、気管支拡張薬吸入後の一秒率70%未満で定義される。
煙草→肺に炎症→炎症性メディエータが血管内に入り込み→全身疾患
 併存症が多数ある。循環器疾患、骨格筋疾患、骨粗鬆症、癌、GERDなど。
2011年からGOLDガイドラインでは併存症の章が設けられた。
心血管系疾患は共通した重要な併存症である。
COPDの治療は併存症に左右されるべきではなく、併存症は各々のガイドラインにそって治療すること。
・COPDの心血管系への影響について
  COPDは炎症がある、酸化ストレス、低酸素血症など心血管系のリスクがおおい。
・COPDの閉塞性換気障害と死因
 肺機能が軽いCOPDでは癌と心血管系疾患による死亡が主要な死因である。
 60歳以上は呼吸不全、60歳未満は循環器疾患による死亡が多い。
・脈波伝達速度PWV
 COPDがあると年齢があがるほどPWVが大きくなる →動脈硬化が進展していくことを示している
・中年日本人男性における気流制限の有無とIMTの関係
 COPDがあるとIMTが厚くなる。一秒量83%程度の軽症のCOPDであっても明らかにIMTが厚い。
COPDの患者は大動脈壁に炎症が認められる。
大動脈瘤患者の39%はCOPDを合併している。
・COPDや気流閉塞は左室充満障害を引き起こす。
%FEV196.2%、FEV1/FVC 74.6% の比較的軽症の集団での検討N=2816 (NEJM2010)
・循環器疾患をCOPDの有無で死亡率を検討すると、有意にCOPD合併例の予後が悪い。
・COPD患者は虚血性心疾患の合併が多い。
・COPD増悪による入院早期死亡の原因疾患 43例の剖検例では、
 心不全 37%、肺炎27%、PTE20% であった。
・COPDの診断
 煙草を吸っていたら、COPDをまず疑う。
中高年者で慢性咳・痰、息切れ
COPDと心不全は鑑別を要する疾患であるが、症状がよく似ている。そのため、どちらかの診断がすでについている場合には、合併していても気づかないことがしばしばある。
・労作時息切れ症例(N=80 )における疾患の割合
 34%COPD疑い、11%心不全、25%が両者の合併、その他30%
COPD疑い例にBNP測定すると43%がBNP100を越える。
 BNPはルーチンに行ってもよいであろう。

治療について==
安定期COPDの管理のアルゴリズム COPDガイドラインを元に説明された。
今回の改訂では、ICS(吸入ステロイド)の位置づけは低下している。
LABAやLAMAが主薬である。
※競争馬が咳をすると気管支拡張薬吸入させるのが慣例らしい。(トリビア)
・チオトロピウム吸入薬によりCOPDの死亡率を13%低下させた。(NEJM2008)
UPLIFT試験(N=5756) では55%の患者がチオトロピウム吸入で一秒量200ml以上増量した。
チオトロピウム吸入群では心血管系疾患死亡が有意に低下した。その機序は十分わかっていないが、演者らの症例報告では、慢性心不全合併COPD(BNP200程度)に1ヶ月チオトロピウム投与すると肺機能は改善し、血中エピネフリンとBNP低下し、心エコーで左室拡張能の改善を得た。すなわち気管支拡張を最大限行うと交感神経系の活性が抑えられ、循環器疾患にもよい影響を与えると考えられる。
演者の意見ではLAMA単剤かLABA/LAMA合剤か問われたら当然合剤の方が気管支拡張がよく、QOLを改善させ交感神経系の賦活も抑えられる。残気量も減少する。
・スピオルトやスピリーバは日本人は効果が高い。当然スピオルトのほうが有効である。
・中等度から重度のCOPD増悪年間発現率は合剤が低い傾向にある。P=0.0498
増悪が起こるたびに肺機能は低下するので、可能な限り増悪頻度を減らすことが必要である。
・心臓に対する効果として、LANCET RESPIR MED 2018に報告された論文では
 LABA/LAMA投与はCOPD患者の左室機能を改善させる。
 たかだか2週間の吸入で残気量が低下し、左室拡張末期圧が減少しstroke volumeが増加した。肺過膨張がとれ心臓が拡張しやすくなった。
 交感神経活性も抑制され、併存症にも有効。
・β受容体作動薬
β2刺激薬 βブロッカー :この相反する作用の薬をCOPDに使えるのか?
GOLD2018では、LABAは比較的安全と記載があり、使用禁忌とは書いてない。
・COPDの併存心筋梗塞患者におけるβブロッカー投与群の予後改善効果を示した。(NEJM1998)・・・ただしこのstudyでは心不全に対して投与したのであって、COPDの治療の目的ではない。
・COPDと循環器疾患が合併している場合にβブロッカーを使用するほうが予後がよい。
・ESCガイドラインでは、βブロッカーは喘息には比較的禁忌だがCOPDは禁忌ではない。
βブロッカーはなにがよいか。β1選択性がつよく、内因性交感神経活性の無いもの。
βブロッカーは水様性と脂溶性があるが、効果は脂溶性の方が高い。例えばビソプロロール(メインテート®)
COPD併存慢性心不全患者の、CHF/COPD増悪に対するβブロッカーの効果については、
カルベジロール(アーチスト®)がビソプロロールよりも予後がよかった。つまりβ1選択性の高いブロッカーの方がよいと考えられる。
・βブロッカーは肺保護作用があると最近では報告されている。
 βブロッカーを長期投与するとβ受容体が増加する。→β刺激薬の効きがよくなる。
 マウスの実験だが、気道炎症や気道分泌を抑制し、NO産生して血管拡張する。
・ブロックCOPDというスタディが走っている。
  COPDの治療薬としてβブロッカーであるメトプロロールを投与して治療効果をみる。
・まとめ
併存症を意識したCOPD治療戦略が重要である。

特発性肺線維症(IPF)の早期診断・治療の課題~当院でのnintedanibの使用経験も含めて~

愛媛大学医学部附属病院 呼吸器センター 濱口直彦先生

北海道studyを通して日本人のIPF実態がわかるようになった。
間質性肺炎の診断のgold standard は病理組織から画像診断重視に変化している。
ピルフェニドン
・特発性肺線維症(IPF)の位置づけ
びまん性肺疾患の中で間質性肺炎の分類に属し、誘因が不明の特発性間質性肺炎IIPsのうち
約50%が特発性肺線維症IPF、である。
・特発性肺線維症は
病理医による 組織学的視点・・・ UIP pattern
放射線科医による 放射線学的視点・・・UIP pattern
呼吸器内科医よる 臨床学的視点・・・身体所見(背側肺底部のfine crackles)、呼吸機能検査、問診(誘引となる背景を探る:生活歴、職業歴、膠原病を疑う症状など)
総合的な所見・・・IPFは慢性進行性である。経過中に他の疾患の2次性と判明することがある。
典型的画像所見;いわゆるUIP patern、背側肺底部に網状影、牽引性気管支拡張所見、蜂巣肺
・北海道study
 2003年から2007年に新規受理された特発性間質性肺炎IIPsと診断された症例を分析した。北海道ではすべての重症度(I~IV)の間質性肺炎を認定していることから全例解析が可能となっているためである。
・IPFの病像
平均年齢70歳 男性72% KL-6がカットオフ値より上昇
発生率 10万人中2.23人
有病率 10万人中10人
診断後の生存中央値35ヶ月(約3年)、 肺がん、膵癌以外の癌より予後不良である。
IPF死亡原因は40%が急性増悪、24%慢性呼吸不全、肺がん11%、肺炎7%。
 従って、診断時に患者と家族に急性増悪で急死することがあると説明すべきである。
IPFは5年で致死率80%。
・IPFの臨床経過は多様性がある。
疾患増悪のパターンには、
 ゆっくり進行するslow progressive  タイプ
 急速に進行するRapidly prgressive タイプ
 急性増悪
しかも、現時点では予測不可能である。
・画像所見の蜂巣肺のみで診断確定するのはなかなか難しい。
 (4症例の実例を示して、画像所見と最終診断が一致しないことがあることを示された。)
・気腫合併肺線維症(CPFE)の演者の施設例では
CPFEとは上葉は気腫、下葉間質性肺炎である疾患であり、 N=23例を検討。
蜂巣肺があると予後が不良であった。
・診断の多様性(アルゴリズムを示しながら)
HRCTを実施し
 UIPパターン → clinical IPF でよい。
 possible UIP → honeycombがない
・病理学的にUIPと診断されたうち、約半数がHRCTではpossible UIPであった。
・どのような所見があったらIPFと診断してよいのか
  画像所見でpossible UIPパターンがあり、牽引性気管支拡張症、年齢、性別を用いてスコア化することにより診断率が上昇することが報告されている。やはり、画像だけではIPFの診断は難しい。
・時間経過にも注意が必要である。
IIPsを診断していたなかには、慢性経過中に突然CKが上昇しはじめ皮膚筋炎を発症することがある。
IPFと思っても経過をきちんと追うことが必要である。
治療について
・慢性安定期の抗繊維化薬の治療の開始、終了のタイミング
日本では重症度I,II期からである早期からピルフェニドンを投与することが多くなった。
ピルフェニドン(ピレスパ®)もニンテダニブ(オフェブ®)も年間の肺機能減少を抑制する。
2017年のガイドラインでは、ピルフェニドンは慢性安定期のIPF患者に上記薬剤を推奨するとされている。ニンテダニブは推奨まではなってない。
・ニンテダニブは性別、年齢、人種、喫煙歴の有無、気管支拡張薬投の有無に関係なく年間肺機能減少率を抑制する。
ニンテダニブはFVC90%以上の軽症でも有効性が示されている。
・特発性肺線維症の予後規定因子について、
 とくに演者は6分間歩行試験時のSpO2 88%以下になること! が重要とのこと。
北海道studyの結果も、労作時desaturationがある重症度III度以上は予後が明らかに不良である。
肺活量が少ないものほど急性増悪率が高い。
・AJRCCM2017の報告では、HRCTで蜂巣肺があるものと無いもので、ニンテダニブの効果は同等に認めた。すなわちUIPパターンであっても、possible UIPパターンであっても、肺機能の低下抑制および急性増悪抑制効果が認められた。
・北海道studyが教えてくれるもの
急性増悪はどの重症度(軽症であろうと重症だろうと)であっても起こりうる!
また診断が遅れるほど予後がどんどん不良になる。
 → ぜひ背部下肺野の聴診をしてfine cracklesを聴取してほしい。
・演者の施設におけるニンテダニブの処方例の検討
N=15  平均72歳
投与理由 呼吸機能悪化35%、急性増悪抑制20%、
投与6ヶ月の有害事象について
 grade1以上は80%12例におこった。
 体重減少が9例に認めた。
300mg/日から200mg/日に減薬したもの5例、理由は肝機能異常と下痢。
有害事象は投与30日以内に殆どが発生し、肝機能異常も同様。
体重減少は1ヶ月以後がおおい。
 症例1 80歳代女性
 肝機能障害の例  中止すれば2週間から4週間で速やかに改善した。300mgを200mgに減薬して再開し問題なかった。
体重減少は最大24ヶ月の投与観察期間において、ステロイド併用群で少なかった。
300mgを投与すると、体表面積<1.5、BMIが低いと肝障害が起こりやすい傾向にある。
この場合には200mg開始も考慮される。
 症例2 ステロイド減量効果のあった66歳男性
急性増悪後ステロイドパルス投与し軽快したが、歩行時の低酸素血症もあり紹介された。
画像上はpossible UIPパターン。肺がん術後でありその病理からUIPパターンは証明されていた。
糖尿病コントロールが不良であったこともあり、ニンテダニブを投与した。
→肺機能が改善傾向となった。
・病期が早期の場合は軽症高額による難病助成制度の申請を使用することで患者負担を軽減することができる。

QandA

Q下痢の原因は?
A現状では明らかとなっていない。

Q治療のバイオマーカーはないか
A現状では有用なものはない。
基本的にIPFは高齢者の病気と考えている。
一回の診察では診断できない、経過をみてVlolume Lossを確認できるかもしれない。
もし、BFもできないのであれば、よく説明して導入すべきである。
有害事象と急性増悪や呼吸機能低下抑制とのバランスをみて処方することになる。
IPAF(自己免疫疾患の要素を有する間質性肺炎)については、IPFに準じて考える。
ときにステロイドをかませながら経過をみて、ニンテダニブ上乗せすることもある。


ー演者の先生方と懇親会にてー
(私、演者佐田誠先生、濱口直彦先生、座長玄馬顕一先生)

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