2018年4月15日にみやこめっせ(京都)にて開催された、第115回日本内科学会総会・講演会に出席し、最新の知見を学んで参りました。

2018年4月15日にみやこめっせ(京都)にて開催された、第115回日本内科学会総会・講演会に出席し、最新の知見を学んで参りました。

以下の内容はあくまで聴講メモですので、間違いがあっても責任はもてませんのでご了承ください。

シンポジウム3 二次性高血圧

腎血管性高血圧の診断と治療

防衛医科大学 熊谷裕生先生

腎動脈高血圧がレニンが高くないとしても否定できない。・・・両側性腎動脈狭窄である!

ステント治療

ドプラーエコーで腎動脈が60%以上の狭窄を検出できる。
腎血管性高血圧においてステント治療をするかどうかの判定として重要なものにResistive indexがある。
Resistive indexが0.8以上だとステント留置による治療効果は期待できない。内科的治療を選択すべきである。
腎臓糸球体や血管周囲の線維化がおきて不可逆的となっている。炎症の指標であるNFκBも亢進している。
治療のアルゴリズム:
MRアンギオ→腎動脈ドップラエコー PSV>180cm/secかつRA比>3.5 →狭窄所見あり →ステント治療
一方Resistive indexが0.8以上は内科的治療
腎血管性高血圧に対してステント術450例、内科的治療470例を比較検討したところ、心血管イベントや腎不全の発生増悪などの頻度について、有意差は認めなかった。
→症例を選ぶべきである。
腎動脈狭窄度70%以上、狭窄部の圧較差が20mmHg以上 ならば血管拡張とステント術は有効、腎機能は改善するという報告がある。

薬物治療

腎血管性高血圧はレニン・アンジオテンシン系が亢進しているので、
ARB、ACE阻害薬を使用、降圧が不十分ならカルシウム拮抗薬、β遮断薬の併用も考慮する。
注意すべきは、ARB、ACE阻害薬投与後に血清Cr、カリウムが上昇する可能性がある。
投与開始初期は週一回程度は採血検査すべきである。
投与前に比較してCr1.3以上上昇、あるいはカリウム5.5以上となる場合は中止すべきである。
腎機能悪化のメカニズム:腎動脈狭窄すると、糸球体前の血管が細いために糸球体内の濾過圧が低下する。そのために生理的反応としてレニン・アンジオテンシン系が賦活し、糸球体動脈を締めることで濾過圧をあげている。そこにARBやACEIを投与し糸球体動脈を無理やり開くと濾過圧が再び低下し、腎機能悪化につながる。

まとめ

Ca拮抗薬
スタチンが腎機能保護に有効
ステント治療:
両側の腎動脈狭窄に、ARBやACEは禁忌 →まず片側を血管拡張術で片側腎動脈狭窄にして投与するとよい。
ステント留置の適応
腎動脈ドップラエコー PSV>180cm/secかつRA比>3.5 かつ造影CTで腎動脈狭窄率70%以上。
若年女性で急に血圧上昇した場合は線維筋性異形成の可能性を考慮する。

原発性アルドステロン症PAの診断と治療

大分大学 柴田洋孝先生

PA は代表的二次性高血圧、一般外来での高血圧の5~10%を占める。
高血圧、低カリウム血症、アルドステロン自立分泌、低レニン血症が特徴である。
ただし、アルドステロンは基準値内、低カリウム血症は必ずしも認められずスクリーニングには向いていない。
通常は多量の塩分摂取をするとアルドステロンは抑制されるが、この疾患は抑制がかからない。
つまり塩分を摂取すればするほど血圧が上昇する。

PAの特徴

PAの特徴は、治療抵抗性高血圧であり、かつ食塩感受性高血圧である。
一般的な高血圧以上に減塩が重要な高血圧である。
3−4種類の降圧剤を併用が必要なことも多い。
心血管疾患の高い罹患率であり、3−5倍である。

2つのサブタイプ

片側副腎にアルドステロン産生腺腫 ・・・手術で治癒
両側性副腎過形成・・・内科的治療しかない。

PAの診断は順序だてて行うことが必要である。 (日本高血圧学会2014)

スクリーニング → 機能確認検査 → サブタイプ診断 → 治療
スクリーニング アルドステロン/レニン比 かつ低カリウム血症 低レニン血症PAC>20ng/dl
機能確認試験
副腎CT
手術希望なら副腎静脈サンプリングAVS
両側病変 MR治療、片側病変は手術

PAのスクリーニングのポイント

PAのを疑う患者群
重症高血圧
低カリウム血症
若年者
OSASを合併した高血圧
160/100以上の高血圧
治療抵抗性高血圧
副腎偶発腫瘍を伴う高血圧
40歳以下の脳血管障害既往

診断手順

ステップ1 スクリーニング

アルドステロン/レニン比ARR
朝8時から10時に血漿アルドステロン濃度PAC 血清レニン活性PRAの同時採血
単位がpg/mlかng/mlかに注意して PAC/PRA≫200 かつ PAC≫120pg/ml
レニン濃度はレニン活性の4~5倍程度である。
※採血時の注意事項
▪. 午前中、安静臥床30分後(難しければ坐位15分後)の採血が推奨。β遮断薬、抗アルドステロン薬、利尿薬の内服時はPRA、PACに影響の少ないCa拮抗薬、α遮断薬に変更して検査を推奨。

β遮断薬は2週間前から、抗アルドステロン薬・利尿薬は6週間前から中止することが望ましい。
ただし、演者は、まずは随時に測定して疑わしい場合にきちんと手順どおり測定するのでもよいと言われた。
▪. PAC≦ 120 pg/mLでもPAは完全には否定できない点に留意する。

ステップ2 機能確認試験

カプトプリル試験ARR>=200
生理食塩水負荷試験 ・・・生食2L仰臥位で点滴して4時間後にアルドステロンを測定する。
PAC>=60pg/ml を陽性とする。 一定数の偽陰性が知られている。
そこで、座位ですることを推奨(座位では偽陰性が減るらしい)

ステップ3局在診断 およびステップ4治療

片側副腎からの分泌か、両側副腎かを見分けるのが重要である。
副腎CTは局在診断がやや不確定、AVSは局在診断率が高い。
CTで局在のわかる腫瘍は切除、CTで不明な場合は薬物治療。
CTで腫瘍があり低カリウム血症がある場合は75%が実際にPA腫瘍あり。
CTが両側正常副腎で低カリウ血症がない場合は6%程度しかPAは発見されない。
→ AVSを省略して薬物治療を実施してよい。
生理食塩水負荷試験はPAサブタイプ診断に有用である!

PAの心血管疾患リスクが高い

PA VS 本態性高血圧では、心血管疾患のリスクは数倍高い。特に脳卒中がおおい。
低カリウム血症、片側病変、PAC125pg/mL以上がリスク要因である
心房細動を有するPAでは、降圧効果は薬物治療と手術で同等だったが、心房細動の予後は手術が有意だった。
・ハーバード大学の報告では、スピロノラクトンやエプレレノンのようなMR拮抗薬を投与しても心血管イベント予防は手術には及ばないとされたが、詳しく分析するとレニン抑制状態がつづいている患者の予後が改善がしていないが、治療によりレニンを抑制解除されている患者群では、リスクは本態性高血圧群と同等のリスクに低下していた。

クッシングCS・サブクリニカルクッシング症候群SCS

福岡大学 柳瀬俊彦先生

CS・SCSは慢性コルチゾール分泌過剰症、である。
SCSとは、CSの身体的特徴を有しないが高血圧、糖尿病、骨粗鬆症といった重篤な内科的疾患は平俗するもの。
皮膚の萎縮が比較的わかりやすい身体的特徴である。
デキサメサゾン抑制試験でスクリーニングを行う。
両側副腎が大結節状に腫大 ・・・両側性大結節副腎過形成と表現される。
副腎偶発腫瘍3,678例の検討では、50%がホルモン非産生腫瘍であった。
SCS 10.5%、アルドステ ロン産生腺腫 5.1%、褐色細胞腫が8.5%あることにも注意すべき。
・なぜコルチゾールが自律的に分泌されるのか
プロテインカイネースA触媒の変異(PRKCA変異)、GNAS変異でクッシング症候群の7割を占める。
・CSの高血圧の頻度は84%である。下垂体性でも副腎性でも頻度は同じ。
SCSでも62%が高血圧を合併する。
・外因性の糖質コルチコイド投与に伴う高血圧の発生頻度は約20%である。
・コルチゾールは朝高く夕方にかけて低下する日内変動がある。深夜3時が最低となる。
・2017年9月日本内分泌学会雑誌で、SCSの診断基準を発表している。
副腎腫瘍、CS臨床兆候なし、血中コルチゾール正常
デキサメサゾン抑制試験1mgでコルチゾール<1.8μg/dL は非機能性、1.8以上はSCSである。
・3cm以上の副腎偶発腫は経過をみると徐々に増大することがある。
3.5cm以上の腫瘍では高血圧を高率に合併している。
・CS、SCS の高血圧の病態
コルチゾール過剰 → 鉱質コルチコイド作用
ミネラルコルチコイド過剰とは関係なくコルチゾールACTH系に関係する。
・やはりCS、SCSの高血圧対策は、手術が最も有効である。
シンチグラフィを実施して局在を診断して手術が推奨である。

褐色細胞腫・パラガングリオーマ(両者を合わせてPPGL)の診断と治療

京都医療センター 成瀬光栄先生

内分泌腫瘍という側面と悪性腫瘍という側面がある。
病型分類
パラガングリオーマPPGL : 交感神経性の副腎髄質由来:褐色細胞腫、副腎以外の由来;パラガングリオーマ
2017年WHOによて、悪性腫瘍として分類をされた。

診療アルゴリズムについて

PPGL高リスク群について

家族歴 既往歴 遺伝性PPGL
特色のある高血圧 ;治療抵抗性 発作性。DM合併、クリーゼ
多彩な自覚症状 ;動悸、発汗、頭痛、胸痛
副腎偶発腫瘍

演者の施設での初診症状は動悸が30%

外来検査

血中カテコールアミン分画 ・・・正常値の3倍以上
随時尿メタネフリン分画 ・・・正常値の3倍以上
ノルアドレナリン優位型ではクロニジン抑制試験が有用。
カテコールアミン分泌誘発試験は危険なため実施してはならない。
特に、最近では血中遊離メタネフリン濃度が海外では第一選択となっている。

画像診断

まずCTまたはMRI
123IーMIBGシンチ
ただし、甲状腺ブロックを実施することを推奨している。
FDGーPETによる転移病変検索
68ーGa DOTATATE  PET-CTが非常に高感度であり、今後のスタンダードになる可能性がある。

治療の基本

治療の基本はα1遮断薬など
外科的治療は
腫瘍切除術が第一選択
悪性の可能性を念頭におき、腫瘍皮膜の損傷を避ける。
小腫瘍は腹腔鏡、悪性度が高い場合は開腹手術
治癒切除困難例でも原発巣を摘出
家族性の場合も手術を。
術後は少なくとも10年間フォロー、悪性リスクの高いものは終生フォロー。

30−40%が遺伝性である

SDHB遺伝子変異が多い
すべての患者で解析する意義がある。

今後の課題

今後の課題はゲノム医療と悪性褐色細胞腫・パラガングリオーマ である。

まとめ

良性褐色細胞腫 という用語が消失
高リスク群での積極的スクリーニングが重要
機能検査は血中遊離メタネフリン分画が主流
画像診断はDOTATATE
術後終生フォローが必要
QandA スクリーニングをどこまでするのか
ます腹部エコーで副腎腫瘍のチェックから。
血中カテコラミンは変動が大きいので、尿中のほうがよいが、遊離メタネフリンである。
服用中の薬剤は考慮するとなかなかスクリーニング検査に踏み出せないので、最初は採血する方向で。

睡眠時無呼吸症候群

自治医科大学 苅尾 七臣先生

昨年暮れに2017年にAACからガイドラインが新たに発表された。
高血圧患者に診られる循環器疾患のリスク要因として、修正困難な固定リスク要因としてOSASが位置づけられた!!
高血圧かつOSASの成人患者において、血圧低下を目的としてCPAPの効果は十分確立されていない、とされた。

OSAS →胸腔内陰圧

脳波上の覚醒、低酸素、高炭酸ガス血症、酸化ストレス
特に夜間高血圧Non-Dipper、Riser型を呈する。

OSASを疑う所見

夜間に強いいびき、頻回の夜間覚醒や夜間尿(3回以上)、夜間呼吸困難(窒息感)
肥満、小額症
治療抵抗性高血圧、早朝高血圧(夜間高血圧を含む)
左室肥大(特に診察室血圧と家庭血圧が正常例;圧負荷である)
夜間発症の心血管イベント(心房細動、心室性不整脈を含む)
・米国心臓病学会ACCでは、
夜間血圧110/65以下
仮面高血圧 :睡眠中に血圧上昇している
夜間に下がらない、あるいは夜間にむしろ上昇する(Riserパターン)
riserパターンは循環器疾患が非常におおく、心不全の予後も不良。脳卒中の合併多い。
・Basal BPは循環血液量と食塩摂取量に関連している。
non-dipperやRiser型が、OSASでは更に夜間の血圧サージを引き起こす。
その結果、心不全、脳卒中、腎不全のトリガーとなる。実際に尿中微量アルブミンやNT-proBNPが上昇している報告がある。
(症例)睡眠中の夜間血圧サージが原因で脳卒中発症した症例。
→その後アルファブロッカー投与で安定。
・夜寝る前にカルベジロールを投与すると、夜間の血圧サージが抑制される。
・腎デナベーション(腎交感神経除神経術)
カテーテルを用いて遠心性腎交感神経と求心性腎神経を焼灼し除神経する手術。
夜間の血圧、特にピーク血圧を低下させる。特にOSAS患者に有効と言われれいる。
・SGLT2(カナグル)が夜間血圧を低下させ、SASも改善させる可能性がある。
・SAVE試験
中等症から重症OSAS患者にCPAP治療群と通常ケア群に比較すると、無呼吸低呼吸指数やいびき、日中の眠気はCPAP群で大きく改善したが、心血管イベントを改善しなかったという報告がされた。(NEJM2016)
一方で、4時間以上CPAP装着患者なら心血管イベント抑制に有効との報告もある。
・演者によるとCPAPは約50%が離脱するとのこと
(院長注釈:当院では5%程度しか離脱はない、この報告はちょっと成績が悪すぎるように思われる。)

まとめ

OSASは、コントロール不良の夜間血圧サージを伴う夜間高血圧を特徴とする。
アドヒアランス不良のCPAP治療では効果は限定的である。
循環器リスクは交感神経亢進が関与しており、CPAP治療と他の治療薬も併用を考慮すべきである。

QandA

診察前に患者が血圧測定しても、診察室で測定してもあまり変化なかった。
演者らによると最も低かったのは診察室で一人安静にして10分以上した時の血圧であった。
CPAP治療しながら、夜間血圧測定して低下してれば、間違いなくリスクは低下していると考える。

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