第67回日本アレルギー学会学術大会 その1

第67回日本アレルギー学会学術大会 その1

2018年6月22日から24日までの3日間、第67回日本アレルギー学会学術大会 於千葉幕張メッセ が開催され、最新の知見を学んでまいりました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

シンポジウム2 好酸球性気道疾患

S2-2 ヒト好酸球のマルチオミクス解析で紐解く、好酸球性副鼻腔炎、重症喘息の分子機構

佐野厚生総合病院
宮田 純先生

重症喘息は既存治療に抵抗性の喘息であり、喘息の5-10%と言われる。
難治化因子;女性、アスピリン喘息、鼻茸、non-atopic。
重症喘息患者の末梢血から単離した好酸球を用い、網羅的な解析(リピドミック解析?)を実施したところ、
15リポキシゲナーゼ代謝物が減少している(抗炎症性代謝物)。プロスタグランジンも減少している。
好酸球の脂肪酸代謝物のバランスが崩れて慢性炎症を惹起すると仮説を立てた。
→重症喘息と鼻副鼻腔疾患との関係を考えた。

重症喘息と好酸球性副鼻腔炎の関連

重症喘息の30%以上がアスピリン喘息であり、鼻茸を合併する。
両者ともにnon-atopicであることが共通している。
好酸球性副鼻腔炎は慢性副鼻腔炎の10-20%である。
アスピリン喘息は脂肪酸代謝異常と密接に関係していることから、その機序を明らかにしたい。

演者らは以下の研究を行った。

手術で得られた鼻茸組織から好酸球を単離した。
DNA→mRNA→タンパク質→最終代謝物(今回のターゲットは脂肪酸代謝物)
これらをオミックス解析した。(オミックスの解説は日本オミックスス医療学会のものがわかりやすいです)
鼻茸由来の好酸球の形態は末梢血好酸球とは明らかに異なっており胞体がおおきく(面積は2-3倍)明るい。
LTC4とE4は産生低下していたが、LTD4のみ増加していた。→変換酵素に違いが見られる可能性がある。

プロテオームとトランスクリプトーム

好酸球の特徴の一つは顆粒蛋白であるが、顆粒蛋白の含有量は末梢血Eoも鼻茸のEoも同等であった。→両者とも好酸球の性質は保っている。
鼻茸の好酸球でGGT5(ガンマグルタミントランスフェラーゼ5)が100倍近く増加し、dipeptidase2(LTD4→LTE4へ変換させる酵素)が80%近く減少。
ロイコトリエン全体の代謝を上げる酵素FLAP(five-lipoxygenase-activating protein)の発現が増加していた。またLTC4→D4へ変化させる酵素は増加していた。
以上の機序から鼻茸ではLTD4の産生のみが増加する代謝パターンとなっていた。

さらに演者らは脂肪酸代謝の変化を制御する上流因子について解析した。

RNAオミクス解析を更にパスウェイ解析?した。
シグナル伝達経路を解析すると、微生物応答がかなり活性化していることがわかった。すなわち、
TLR2やNOD2などの因子が上流因子として関わっている可能性が高く、例えば黄色ブドウ球菌などが活性化要因となる。
Type2サイトカインがどのようにGGT5やdipeptidase2を制御するのか。
 →IL5とGM-CSFはGGT5の発現上昇する。
IL5とGM-CSFは好酸球性副鼻腔炎と同様の病変を誘導する。

まとめ

リンパ球や微生物(細菌、真菌)が好酸球を炎症局所で刺激し活性化
 →GGT5やdipeptidase2発現変化→脂肪酸代謝異常 → LTD4増加
 →LTD4はCysLT1、CysLt2受容体を発現する細胞を刺激し炎症を増幅させる。


S2-3 管腔内好酸球増多をきたす疾患群とETosis

秋田大学
植木 重治先生

好酸球の特徴

リンパ球に比して好酸球の寿命は非常に短い。末梢血中で半日程度、組織移行して数日である。
好酸球の特徴は顆粒を有しており、30種類以上のサイトカインが顆粒内に詰まっている。
つまり局所で顆粒蛋白を放出することが役目と考えられる。
脱顆粒は好酸球の崩壊を伴っているのであり(Cytolysis)、顆粒のみを放出しているのではない。
好酸球にのみ見られる特徴的な細胞死の形式である。アポトーシスとは違う。
ある条件下で起こる現象である。
最終的な形態が興味深く核がネット状に放出される。
このような細胞死はプログラムされた細胞死であり、好酸球はこの細胞死を選択している。
これをETOSISと呼ぶ。

どうして好酸球はETosisを起こすのか

自然免疫機構の一つと言われる。放出された核はネット状で粘性が高く荷電性、疎水性相互作用で、
いろいろなものを接着し捉えて病原体を殺す。非常に多くの病原体がいる状況下では好酸球が自爆攻撃を仕掛ける。
DNAトラップと表現されるが、その本体はクロマチン線維であり、DNAがヒストンに2回半巻き付いた構造をとりクロマチン線維を形作る。
好酸球のDNAトラップは太くてゴツゴツし1週間くらい安定して認めるが、好中球のそれは細くて弱々しく不安定で1日足らずで崩壊する。
好中球はプロテアーゼ含有量が非常におおく、顆粒内のペルオキシダーゼなどによりヒストンが修飾されてしまうためであろう。
好酸球のDNAトラップは粘性が強い。好酸球性副鼻腔炎の分泌物は膠状などと呼ばれている所以である。
海外ではピーナッツバターとか粘土などと表現される。

好酸球性中耳炎も同様の粘液が中耳にたまりポリープが発生する。

副鼻腔炎の組織の検討では、MBPで染めると上皮には染まらないが、粘液には多量に染まる。
その濃度はin vitroで上皮障害を起こしうるMBP濃度の数千倍あることがわかっている。→上皮障害を起こしていると考えられる。
→血中から好酸球が組織に出ていきそこで崩壊、あるいは腔内まで浸潤しそこでETosisを起こす。

アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)も好酸球性副鼻腔炎と同様に気道に粘液が貯まる。

病理学的には粘液せん(Mucus plug)と考えられているが、気管支腔内には好酸球だらけで、DNAだらけである。
Etosisによるものと考えられる。
この粘液栓の中でアスペルギルスが腐生している。
好酸球はアスペルギルスを認識して接着しETosisを起こすが、アスペルギルスが耐性を持っているらしい。
管腔内でEtosisが起こると、その粘性からどんどん気道クリアランスが低下する→管腔内側から気道上皮の障害
 → 中枢性気管支拡張、上皮障害によりIL-33が放出され好酸球性慢性炎症が惹起される。
治療戦略としてDNAaseを投与することもあるが、好酸球そのものを減らすという方法も考えられている。
最近の研究では抗IL-5抗体投与により粘液栓が減少したと報告がある。

質疑応答

Q.  ETosis は組織内でおきているわけではなくて、管腔内でおきているのではないか
例えば鼻茸組織では組織内のETosisの所見はあまり見られない。
A. そのとおりで組織内でおきてはまずいが、一部は組織内でおきている可能性がある。(個人的な認識である)


S2-4 抗IL-5α受容体を標的とした喘息と好酸球性副鼻腔炎治療の最新知見

福井大学耳鼻咽喉科
高林哲司先生

好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)はとにかく再発が著しい。
重症ECRSに関しては従来の治療はかなり抵抗であり、分子標的治療がよいと考えている。

ECRSの病態

種々の刺激が鼻粘膜に→ 自然免疫系を活性化→好酸球性副鼻腔炎( Katoら allegology international 2015)

ベンラリズマブ(ファセンラ®)抗IL-5受容体α鎖モノクローナル抗体

好酸球における2つ機序で好酸球をブロックする。
IL-5受容体α鎖をブロックしてIL-5の刺激をブロック、ADCC活性によりNK細胞が好酸球を速やかにアポトーシスに導く。

CALIMAstudy

好酸球性気管支喘息に実施した第3相試験であるが、
ベンラリズマブを投与し、ERCSの症状改善し、末梢血好酸球が減少した。
末梢血好酸球数が多いほどERCSの術後再発が高率であるので、ベンラリズマブを投与するPhaseII試験を実施した。
ECRSにベンラリズマブを投与すると、4週でほぼ末梢血好酸球はゼロだが、鼻茸スコア(NPscore)の改善は、
12週間後でも3回投与群でわずかであった。1回投与群ではほぼプラセボ群と同様であった。
→ ECRSに対する有意な改善は認めなかった。

ペリオスチンはECRSのマーカーになるか

演者らの研究では、ベンラリズマブの投与によりペリオスチンが高値群の方が鼻茸は縮小傾向、ペリオスチン低値群では効果なし。
病理学的には喘息は基底膜肥厚、気道線維化など
好酸球性副鼻腔炎では、ほぼ水ぶくれ であり、病態はやはり違う。
これが喘息ほどの治療効果をECRSで認めなかった理由かもしれない。

まとめ

ECRSに対して、
ベンラリズマブは有意な効果は認めない
ペリオスチンの高い群ではポリープは縮小傾向
重篤な副作用は認めなかった。


会長講演 one airway, one disease―されどアレルギー性鼻炎:―アレルギー性鼻炎研究の過去、現在、未来―

東千葉大学耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学
岡本 美孝先生

アレルギー性鼻炎の8割以上は原因抗原を特定できる。
代表的なI型アレルギー疾患である。
近年動物実験においてTh2細胞にはサブポピュレーションが存在することが判明した。
大量のIL-5を放出するものやIL-17を放出するものなどである。
ヒトではIL-33受容体をもつTh2細胞がアレ鼻患者の粘膜で増加している。
スギ抗原に対してスギ花粉感作されているが未発症や未感作の患者ではIL-33は増加しないが、
発症している患者ではIL-33は増加する。
IL-33陽性Th2細胞はpathogenic Th2と呼ばれるようになった。
病原性TH2細胞は線維化誘導する。
今後の治療ターゲットとなりうる。

舌下免疫療法の開発には医師主導臨床試験が重要であった。

2005年に舌下免疫療法が最優先課題とされた。
千葉大学とかずさDNA研究所の共同研究において舌下免疫療法の治療効果のマーカーを探った。
 補体因子Hがスギ舌下免疫療法有効例において増加することが判明した。
 舌下免疫療法の有効性早期判定のマーカーとしての可能性がある。
ダニ舌下免疫療法においては作用機序の解明がなされた。
1年間の治療後で、IL-33陽性Th2細胞、Th2サイトカイン(IL-4、5、13)は有効例でいずれも低下した。
これらはバイオマーカーとしても利用できる可能性がある。

臨床試験の重要性

 マウスの実験で有意な効果があってもヒトでは効果がでないことがある
 舌下免疫療法では高いプラセボ効果がある
  ・・・例えば鼻噴霧ステロイドの治験では実薬は7割の有効性、偽薬で5割が症状改善した。

問われる臨床試験の質

 花粉飛散室を利用して患者負担の少ない試験を行った。
 以前は花粉症の発症前投与が有効とされていたが、2013年の試験により発症後すぐに投与で
発症前投与と比較して治療効果に有意差がないことがわかった。

アレルギー性鼻炎の新しい治療が出現することが期待される。
そのためには産学共同研究が重要である。


教育講演2
接触性皮膚炎 日常診療で知っておきたいポイントとは

藤田保健衛生大学 坂文種報徳舎病院 総合アレルギー科
矢上晶子先生

接触性皮膚炎の原因となる物質は多岐に渡る。
接触性皮膚炎 = かぶれ
外来性物質が皮膚に接して発症する炎症である。
正常皮膚はタイトジャンクションがあり強固に接着しているのでほとんどの物質は正常の角層を通過できないが、
病的角層や炎症、掻爬などにより高分子のものも通過するようになる。

刺激性接触性皮膚炎

刺激とアレルギー反応は大変重要でありきちんと見分ける必要がある。
刺激は誰にでも起きうる反応であり、以下のような障害物質が皮膚にかかると、皮膚では炎症がおきる。
農薬 殺菌剤 消毒剤 セメント フッ化水素 洗浄剤・界面活性剤 有機溶媒など。
角層がどんどん剥がれて、軽い水疱や熱傷様になっていく。

光毒性接触性皮膚炎

塗っただけでは症状はでず光を浴びて症状がでる。
オクソラレン(尋常性白斑治療薬)・・・光増感物質 長波長の紫外線(UVA)を照射すると激烈な水疱が起きる。
染料、ソラレン、殺虫剤、サンスクリーン
(補足:柑橘類の精油に含まれるフクロマリン類などもクマリン骨格にフラン環が結合したものである。
波長の長い紫外線 A 波(UVA, 320~380 nm)は地上に降り注ぐ紫外線で最も多く、皮膚の奥深く真皮まで到達する性質をもつ。
ソラレン 類のような不飽和結合を有する多環式分子は、紫外線エネルギーを分子内に蓄積し放出するため、
皮膚に高濃度のソラレン類が付着した状態で紫外線を受ければ、分子から放出されるエ ネルギーにより皮膚に障害を与え,
痒み,紅斑,炎症, 色素沈着などの症状を引き起こすとのこと。)
例えば柑橘類のアロマオイルを表皮に塗って外出すると皮膚炎を生じる。首などに生じやすい。
例 グレープフルーツやベルガモット、レモン、 アンジェリカ・ルート 
  対策として・・・フラノクマリンが除かれている商品がありそれを使用すること

衣類による刺激性接触性皮膚炎

衣類は洗浄剤やドライクリーニングによるものが多い。
クリーニングの石油溶剤が肌に長時間刺激し続けると、皮膚細胞が破壊されてやけどの様になる。
例 クリーニングから帰ってきた学生服のスカートを履くと膝下が真っ赤に腫れるなどがあった。
 対策として・・・クリーニング後はビニールカバーからだしてしばらく干して使うこと。
寝巻き、サマーセーターなども同様に疑う。

スタンドアップパドルボードの国際大会で配布された記念Tシャツによる重篤な皮膚障害

 原因はTシャツのロゴなどを印刷する際に使った薬剤の一成分 塩化ジデシルジメチルアンモニウムであった。

・アレルギー性接触性皮膚炎
・急性期のアレルギー性接触性皮膚炎
例 漆塗り体験コーナーで体験後に自宅で発症した。
 漆塗りを教える側は手袋をしていて、体験する患者は手袋をしていなかった。
・慢性期のアレルギー性接触性皮膚炎
金属の場合は慢性に湿疹を繰り返す。
例 ニッケルアレルギー(バックル皮膚炎) ・・・バックルの当たる皮膚に慢性的に湿疹病変がつづく。
・ケトプロフェン含有テープによる光アレルギー性接触性皮膚炎
例 関節痛のためケトプロフェンテープを貼って水疱がでてくる。
例 農作業をする高齢女性が首に貼る。その時はなんともなくても、湿布を剥して数ヶ月してから日光に当たると
湿布を貼った部位に皮膚炎が生じる。ふくらはぎに貼って毎年同部位に皮疹がでてくるなどが見られる。
アレルギー性接触性皮膚炎は、突然には発症しない。誰でもなるわけでもない。
例 化粧品を買って毎日つけていると、だいたい1週間から10日で発症してくる。
同じ物質に接触してもかぶれる人とかぶれない人がいる。
同じ化粧品を使っていても、ずっとピアスをしていても、同じゴーグルを使っていても、突然発症する。
一旦発症すると、一生続く!
原因物質として、多くは単純な化学物質で分子量300kDa程度の小さいものである。
 ハプテン 単独で抗体と結合するが、それ自体は免疫応答を起こす能力がない
 金属
 タンパク質抗原
アレルギーを獲得していく過程は、感作相(免疫の成立) 7-10日 、その後惹起相10日以後である。
例 工場勤務 エポキシ樹脂、
例 ネイリスト 
皮膚には免疫の装置があり、どんなものでもアレルギーを起こしうることを理解すべきである。
・接触皮膚炎症候群
感作性の高いものは接触部位を超えてどんどん病変が広がっていき、接触性皮膚炎症候群と呼ばれる。
例えば、ペンキ屋のエポキシ樹脂、美容師のパラフェニレンジアミン(PPD)

原因を突き止める

パッチテスト
判定 48時間後、72時間後、96時間後、できれば1週間後、金属なら1ヶ月後、3ヶ月後などに判定する。
皮内反応試験 手技料は安い
22箇所以上で350点しかない。

パッチテストの方法

オープンテスト、セミオープンテスト、クローズドテスト、光パッチテスト
使用テスト、ROAT(repeated open application test)

パッチテストパネル(s)佐藤製薬

 日常含まれる様々な接触性皮膚炎の原因物質を含んでおり、かつ安全に実施できる。
ただし子供に金は使用しないこと。

症例1 65歳 警備員 原因不明の両腕の湿疹

 →ときどき業務日誌を書く → デスクマット!が原因と判明。
4年後も33歳 同様事例 抗菌デスクマット

症例2 黒い衣類がすき。

 数年前より水着を着用すると装着部位に一致してかゆみを伴う皮疹
 パッチテストで陽性だった黒い水着 →黒色に含まれる酸性染料 が原因だった。

症例3 パッチテストが陰性であったシャツのタグによる皮膚障害

その他、プラスチックフレーム眼鏡にアレルギーの患者もいた。
ゴム手袋は即時型と遅延型がある →手荒れが感染の危険となる。医療関係者は院内感染の危険となる。
 天然ゴムにアレルギー、あるいはゴムの硬化剤にアレルギーのこともある。
症例情報登録先 NITE がある。


教育セミナー6
GERDと呼吸器疾患:慢性咳嗽を中心に

名古屋市立大学呼吸器・免疫アレルギー内科学
新実 彰男先生

日本においてはGERDが増加しており、ライフスタイルの変化と高齢化が原因として挙げられる。

一般住民における3週間以上の咳をN=9804を対象に調査した。(長浜コホート)

 32%は気管支喘息であったが、喘息ではなくても9.5%は咳をしている。

胃内容物の逆流が関与する咳の機序と原因

咳受容体は咽喉頭、下部食道、胸膜、心外膜、外耳道に存在している。
主に迷走神経の求心性を経て中枢に伝達され、咳を起こすには遠心性に指示がおりる。

GERDの診断にPHモニタリングは敷居が高いので、欧米ではPPI投与による治療的診断をしている。

欧米の研究で、PPIを十分量投与しても改善しない咳症状に対して、噴門部形成術を実施したところ、
良好な結果を得たという。すなわち、酸が逆流していないからと言ってGERDの咳を否定することはできない。
PPIが効かなかったからといってGERDを否定できない。酸以外の要素があると考えられる。
咳の原因として稀な疾患として、心室性期外収縮、外耳疾患(耳をほじると咳がでることも!)なども考慮すべし。

喘息はGERDの合併率が高い

 喘息患者からみたGERDの合併率は、自覚症状をもとに検討した報告で6-7割、PHモニターを用いた検討でも3-8割と報告されている。
 GERD患者からみた喘息合併頻度は、5-25%である。
喘息重症度でみたGERD合併率は、自覚症状による検討では重症喘息で45%、中等症16%、軽症で12%と重症で有意に高い。
PHモニターによる検討では、治療抵抗性喘息で59%、非抵抗性喘息で16%である。
喘息に高頻度にGERD合併する機序として、
 咳、気道攣縮が逆流を起こす。
 肺過膨張→横膈膜低下→胸腔・腹腔圧勾配が上昇する
 β刺激薬・抗コリン薬はLES(下部食道括約筋)の圧を下げる
 ステロイドによる酸分泌が増加する
GERDの喘息に対する病態関与として、
 遠位食道・下部食道の逆流により迷走神経刺激がおこり気道攣縮がおきる
 近位食道への逆流で微量誤嚥が生じ気道炎症が生じる

喘息にGERD治療を行うとどうなるか。

PPIを4-24週投与した場合、一秒量の改善はない、ピークフローは一部で改善、喘息症状も有意な変化なし、夜間症状も改善しない。
QOLは改善する。
PPIを日本の4倍用量を投与した研究では、ピークフローの有意な改善は認めなかった。
メタ解析においても、GERDの治療はピークフローの改善は認めなかった。
GINAのガイドラインでは、症状を伴うGERD合併喘息に対して治療は行ってよいが、GERD症状がない場合は治療の必要なしとしている。

COPDは夜間の酸逆流が多い

PHモニターを用いた2004年の報告では、夜間の酸逆流がおおいことが示された。
有症状のGERD合併COPDの前向き研究では、GERD症状のスケールが高い症例では急性増悪が多かった。
COPD増悪因子を検討したNEJMの報告では、GERD症状は有意な寄与因子とされた。
高齢COPD100例を無作為に割付、PPI服用群と従来治療群の比較した研究(SASAKI TらJ Am Geriatr)では、
PPI服用群において、感冒罹患頻度は減少、COPD急性増悪頻度減少した。

特発性間質性肺炎

この疾患は背側背部下肺野に病変が多いことから、胃食道逆流による
夜間の不顕性誤嚥の繰り返しが炎症を惹起し病変を増悪させているのではないかと言われてきた。
1998年の報告では、PHモニターを使用して近位食道の逆流を確認し不顕性誤嚥の可能性を示唆した。
喘息、COPD、IPFにおいて食道裂孔ヘルニアの合併を調べた報告では、喘息16%、COPD13%、IPF39%と
IPFにおける合併が有意に多かった(ERJ2012)。
 →GERD治療を行っていた群で肺機能がよく重症度が低かった。
LeeJら AJRCCM2011の報告では、GERD治療を行わない群の予後が有意に不良であった。

まとめ

演者らによるとGERDは増加傾向である。
GERDはCOPDやIPFで重要である。

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