2018年11月15日にビッグローズにおいて第3回呼吸器疾患の治療連携を考える会 が開催され、私は特別講演の座長をいたしました。最新の知見を学びましたので、報告します。

2018年11月15日にビッグローズにおいて第3回呼吸器疾患の治療連携を考える会
が開催され、私は特別講演の座長をいたしました。最新の知見を学びましたので、報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

気管支喘息の病態に基づいた治療

筑波大学医学医療系・筑波大学附属病院
呼吸器内科 教授 檜澤伸之先生

one -size fit -all Medicine 換言すると、病名に基づいた治療
Stratified Medicine フェノタイプに基づいた治療
Precision medicine エンドタイプに基づいた治療
15年まえはICS/LAVAを処方しておけばよい という状態に一旦なった。

治療のステップアップに関する調査では、追加薬剤で良かったものは、

4割以上 LAVA、3割弱はICS、LTRAは3割がよかったと答えた(NEJM2010 )。
しかし6割は追加増量しても効果がなかったことになる。
喘息は多様なフェノタイプで構成されており、その違いには分子病態の多様性がある。
ガイドラインはあくまでアベレージであり、目の前の患者の答えを書いてあるわけではない。
つまりone -size fit -all Medicineには限界があるのである。

これからは3つの病態を考える必要がある。

IgEがあってアレルギーがあって好酸球が増加するもの
IgEがなくて好酸球が増加するもの
好中球が優位なもの
である。

症例)26歳女性

高校3年生から喘息と診断され、各種ICS/LAVA使用していた。
気道可逆性あり、副鼻腔炎の家族歴、好酸球やIgEは認めない。FeNOも正常。
胸部CTでDPB様の画像所見をみとめ、喘息+DPB の難治病態として演者に紹介された。
演者はICS/LAVAを中止しLAVA/LAMAに切り替えたところ、フローボリュームカーブの閉塞性パターンはすっかり改善した。

非好酸球性喘息にICSは本当に必要か(CEA2018)

低用量ICS症例は ⇢3ヶ月かけてICS中止、 中用量ICS⇢6ヶ月かけて中止。
その結果…
増悪した症例は喀痰好酸球が陽性の患者であり、ICSが有効な症例である。
一方好酸球の反応が全くしめされない症例ではICSは適応ではないであろう。

Lancet Respir Med 2017 の報告では、

呼気NOはICSの治療効果とどのように関連するか調べたところ、好酸球性気道炎症の証拠のある症例では有効だったが
病名が喘息というだけでは治療効果と関連がなかった。

喘息は紀元前から使用されている病名である。

喘息というLabelを貼って治療するのはやめて、病態を主体とした理解と治療にすべきである(The Lancet Commissions)。
血圧が高くないと降圧薬は使用しないし高脂血症でないと脂質治療薬は使わないはずだが、喘息に限っては気流閉塞を確認せずに喘息と診断してICSが処方されている。⇢そもそもおかしい!

フェノタイプにあった治療について

若い時期の発症はTh2関連好酸球性が多い(Th2−associated esosinophils)
中年以降TH2、nonTh2 、Non eosinophilicが多くなる
好中球性ならチオトロピウム、PPI、マクロライドなど考慮する。
ICS/LABAを使用してなお気流閉塞が残っているときはチオトロピウム追加。

チオトロピウム、LABA、プラセボ 肺機能は間違いなくプラセボより改善するが、QOLはプラセボでも約5割が症状改善したと答える。

喘息患者のプラセボ効果は高い!

好酸球性気道炎症の評価

喀痰好酸球は3%以上あれば、好酸球性炎症を考えて良い。
一方末梢血好酸球は300/μLとか200/μLとか、カットオフを決めてもあまり好酸球性気道炎症と関係ない。
末梢血好酸球はIL-5の影響⇢type2 炎症 をうけ、FeNOはIL-4/13 ⇢ペリオスチン が影響する。

病気は徐々に発症する

precision medicineは病気の発症予防あるいは早期治療を目指すものである。

アトピー性皮膚炎の原因遺伝子がみつかった

フィラグリン遺伝子・・・皮膚のバリアを維持する分子であり、アレルギーとは無関係だった。
皮膚のバリアが保たれず皮膚感作することがアレルギーの原因である。
同様に、喘息になった結果として感作されやすくなるのかもしれない。
現在発見されている喘息関連遺伝子は、上皮細胞と関連している。
気道上皮がストレスを受けると、気道上皮から放出されるIL-33 ,TSLP,がpro-allergic(アレルギーの環境を作っていく分子)であり、ある意味アレルゲンやIgEとは無関係で、自然免疫による。
演者のいう喘息の定義案は、肺組織自体が障害やストレスに対して感受性亢進し自然免疫が慢性的に活性化した状態。

従来の喘息概念はアレルゲン⇢獲得免疫で喘息発症であるが、その結果気道のバリアが脆弱化し種々のアレルゲンに対するIgEが作られるのであろう。

現在は気道・肺組織障害、粘膜のストレスで喘息発症⇢その結果アレルゲンに感作される。

喘息のない患者は気道のバリアが正常であり、ライノウイルス感染しにくい。

喘息があると粘膜が障害されておりライノウイルスの受容体(CDHR3)がむき出しであり、易感染性で重症な病態となる。小児期発症でアトピーが酷く低肺機能の喘息患者の遺伝子がこのCDHR3であった。すなわち、ライノウイルスに感染しやすい体質が重症喘息になりやすいと考えられるようになってきた。
CDHR3-C529Y 若年発症喘息の関連遺伝子として注目されている。

Type2 喘息

アレルゲン感作、気道粘膜バリア障害、ウイルス感染にかかりやすい、肺の成長が悪い(impaired lung development)などの特徴がある。

好酸球の全くいない好中球性喘息について

重症喘息では喀痰を調べると種々のBacteriaが定着している。肺のマイクロバイオームが乱れることによって気管支喘息を発症したかもしれない。生後すぐの新生児の下咽頭に種々の菌がコロナリゼ−ションしているのもがいるが、その乳児は5歳までに喘鳴を発症しやすい。
・40歳以上の中高年発症難治性喘息の遺伝子を調べたらHCG22 geneが有力なものとして浮上したが、これはDPBの原因遺伝子だった。COPDの発症にも関与している。すなわちエンドタイプで考えると病名は意味がなくなる。
遺伝子だけではなく環境要因も疾患発症(疾患の顔つき)と関連していると考えられる。
最近DPBの発症が減っているが、もしかしたら昔DPBだったひとが中高年重症喘息に含まれているのかもしれない。
・嚢胞性繊維症の一部は非常に喘息症状を呈する。
・primary ciliary dyskinesiaという疾患があるが、この疾患の不全遺伝子異常がもしかしたら非好酸球性難治性喘息という診断になっている可能性がある。
重症喘息は将来エンドタイプで分類されるようになるかもしれない。

Salford lung study

real world で治療効果の悪いICS/LABA投与中患者を維持群とレルベアに変更した群に分けて比較した。
レルベアに変更群のほうの6割がACT改善していた。しかし、従来群でも5割はACTがよくなった。
⇢臨床試験に入る前にはきちんと吸入できていなかったが、吸入方法を再指導され、定期的に連絡がはいったことでアドヒアランスが向上したからであろう。
このスタディではレルベアでコントロール不良の患者は入っていないので、レルベア⇢他剤 がどうなるか不明。
アドエアでコントロール不良患者⇢フルティフォームに変更で改善。(長瀬ら アレルギー2018)
FP-DPIよりFP-pMDIのほうが治療効果(症状、増悪頻度)がよかった報告もある。
すなわち、あるデバイスでのコントロール不良時はデバイスを変えてみる選択肢がある。

吸入薬の選択をどうするか

しっかり吸入できるならDPI、同調ができるものはpMDIを、同調不良ならスペーサーをつかう。

まとめ

病名で治療するのではなく、どういう治療すべき病態があるかを考える。
末梢血好酸球が多い・FeNOが高値だからICS、閉塞性パターンがあるので気管支拡張薬を使う。

演者の檜澤先生と

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