2018年11月22日に 福山呼吸器講演会於福山ニューキャッスルホテル が開催され、 私は特別講演Iの座長を担当いたしました。

2018年11月22日に 福山呼吸器講演会於福山ニューキャッスルホテル が開催され、
私は特別講演Iの座長を担当いたしました。そして最新の知見も学びましたので報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

特別講演I

COPD の身体活動性および運動耐容能評価法と薬物療法の重要性

鳥取大学医学部 病態検査学講座教授 鰤岡直人先生

COPD身体活動性評価の重要性

身体活動性とは生活活動+運動
運動耐容能とは客観的に測定した運動能力
運動耐容能低下は身体活動性の低下と比例するが、身体活動性の低下は運動太陽脳低下とは限らない。なぜなら息切れを自覚しないように動かないようになるからである。 身体活動性低下は加齢の他に、併存症の脳梗塞、虚血性心疾患、骨粗鬆症、高血圧、るいそう・筋力低下などで生じる。
COPDの病期が重症ほど大腿四頭筋筋力が低下していることがわかっている。
身体活動性の評価方法では3軸加速度計がよく用いられている。
身体活動性の評価方法はスポーツでよく用いられるMETs、エネルギー消費量(kcal)、身体活動レベル(Physical activity level:PAL)がある。3METs 以上を運動と定義するが、散歩歩行、社交ダンスなどである。
3軸加速度計で測定した報告では、COPD患者は3METs以上の運動が50%以上低下しており、活動時間や1日の歩数もCOPD軽症から有意に低下している(Respir Investig 2014 , Respir Med 2010)。
身体活動性が低いほど予後不良であり、1日の総歩数は生命予後と関連する(Chest 2011、および2012)。
ただし、身体活動性低下で生命予後不良はCOPDに限ったことではなく、運動そのものが予後を改善する。

COPDの運動耐容能評価の重要性

運動耐容能の評価は6分間歩行試験が一般的であるが、この試験は6分間の歩行距離で評価するが、途中で立ち止まってよいことになっている。6分間連続して歩行できた例と途中で立ち止まった例を同等に評価することはできないと考えた演者らは、
平均・単位時間歩数、という指標を定義し、累積歩数の時間経過で評価する方法が有用であることを示された。

薬物療法による改善効果

薬物療法の改善効果判定には、肺機能検査、運動耐容能、身体活動性、の測定があるが、特に身体活動性による評価は難しい。
天候、モチベーション、など種々の条件が一定にならないため良い結果がでにくいことにある。
運動耐容能で評価する限り、チロトロピウム、グリコピロニウム、アクリジニウム、インダカテロール、およびLABA/LAMA配合剤の全てにおいて有意に改善している。
治療薬のピットフォール: シーブリ、スピリーバ、エクリラは咳がでにくいが、配合剤のウルティブロ(咳あり)、アノーロ(咳が強い)、スピオルト(むせる)と咳が問題となる。
スピオルトはソフトミストが喉を刺激するので、エアロチャンバープラスを使用することでむせなくなる。
LABA/LAMA配合剤を使用する利点は、すぐに見える効果として呼吸機能を改善、生活の質の改善、があり、将来期待できる効果として生活の質の改善、ADL改善、急性増悪の頻度の減少、がある。

まとめ

身体活動性・運動耐容能低下は予後不良である。
COPDを早期に診断して治療を開始する。
治療はLAMA or LABA or LAMA/LABAを使用し、喘息合併例にはICSを併用する。
薬物療法により息切れ改善させ運動を推奨する。

特別講演II

IPFの予後改善を目指す早期治療介入

神戸市立医療センター中央市民病院副院長 呼吸器内科 富井啓介先生

IPF(特発性肺線維症)の経過
抗線維化薬のインパクト
早期治療開始の必要性
早期治療開始のための診断
かかりつけ医の役割

IPFとは、慢性線維化性間質性肺炎のなかで最も代表的な疾病がIPFである。

IPFの経過で重要なことは、ステロイドは使ってはいけない!

ということである。ガイドラインにも明記されている。  PPFE(網谷病)もステロイド禁である。  ステロイドを使って良い間質性肺炎は、  特発性NSIP   DIP   COP  AIP ・IPFは予後不良であり、肺がん並の5年生存率である。
・IPFの肺活量が進行度合の目安となる。
診断時の%肺活量が80%あれば予後は5年以上あるが、それを下回ると60−80%で2.5年、40−60%で1.5年、40%未満で4ヶ月−9ヶ月である。
・IPFの死亡原因(北海道study) 急性増悪40%、慢性呼吸不全24%、肺がん11%、肺炎7%、心血管障害3%、その他10%、不明5%
・抗線維化薬 INPULSE試験 ニンテダニブ(オフェブ®)
プラセボ群は年間250ml程度の肺機能低下だが、ニンテダニブを投与群は減少が半減した。急性増悪発現までの期間をニンテダニブは急性増悪発生率が1年間で半減する。  急性増悪の頻度はプラセボ8.7%、 ニンテダニブ4.6%であった。
ニンテダニブ5年間投与の効果 −1340ml⇢ −680ml、急性増悪率43%⇢23% ・生命予後(OS)の改善は本当にあるのか?
プラセボに対して直接OSを比較した検討はないので、5年の比較など用いると、ニンテダニブ服用例では予後が延長傾向である。 
・ワイブルモデルによる生存曲線では、予後を2−3年伸ばしている。
オフェブでは予後5年延長させている可能性が示される。

早期治療の重要性

IPFの初期病変かもしれない病変を調べた研究では (Putman RKら、JAMA 2016. 315: 672−10)
ILA(初期病変と考えられる病変)があると、やはり予後は不良である。
また進行するILAはかなり予後不良(Putman RKら AJRCCM 2016. 194)。
したがってIPF疑いは肺がん疑いと同じような予後の疾患であって、放置してはいけない!最低限フォローすべきである。
・IPFの治療は治癒が目標ではなく予後を延長させるにとどまるので、早期介入が重要と考えられる。
・演者の試算によると、60歳発症で%VC80%で治療開始したら85歳くらいまでは生存可能(ただし急性増悪はのぞく)。
しかし、患者の進行は実際には一律ではない。肺機能低下が急に進行することもある。
例えば3年間普遍だったIPF患者が、1年間で急に蜂巣肺にまで進行した症例がある。
80歳で%VC100%ある高齢者のIPFは治療意義がどれほどあるかは評価がむずかしいが、このような例でも急性増悪はいつでも起こりうるので、急性増悪を抑制するという効果を期待するなら、ニンテダニブで治療する意味もあるであろう。

IPFの診断

日本呼吸器学会のガイドライン2016を提示された。

胸部CTで典型的UIPパターンは、IPFとして治療可能。
CTでUIPと断定できないpossible やinconsistent with UIPの場合は外科的肺生検が推奨される。 ただし肺生検により急性増悪を発症するリスクはある。
演者らの苦い経験として、VATSまでに説得が数年かかった症例は%VC90%⇢60%になった時点でVATSしUIPと診断されたが、予後は改善しなかった。→早期診断が重要と感じた。

ATSにおいて2018年に新しい診断基準が発表された。

HRCTにおけるUIPパターンを4つに分類する。
UIP, Probable UIP, Indeterminate(明確でない), Alternative(代替)
変更点で最も重要な点は、
Probable UIPもVATSなしで抗線維化薬を投与可能にしよう、という提案に変わった。 すなわち、possible UIPの中には、よりUIPらしいものが含まれているであろうから、生検なしでもよいのではないか、ということ。
Probable UIP(蜂巣肺のない段階) ・・・ 末梢性牽引性気管支拡張 をUIPの特徴にとる! 胸膜直下に網状影があり、気管支拡張が若干でも認める。↔ 中枢性気管支拡張はむしろNSIPと考える所見。

かかりつけ医の役割

呼吸困難出現から専門医受診までの期間と予後 (Lamas DJら、 AJRCCM2011.184)を調査した報告によると、4年以上をすぎると予後が明らかに低下する。

したがって、無症状であっても発見時に専門医に紹介することが望ましい。 ⇢呼吸器専門医で診断と定期的評価3−6ヶ月毎に。

かかりつけ医のための診療ポイント

両側肺野の捻髪音・・・特に重要
ばち指 30−60%
レントゲンとCTで網状影、すりガラス を 比較読影する!
HRCTを撮影することが重要。
KL-6測定 ・・・必ずしも高値とはならないので注意
・専門医に送る際の判断基準
初診時
短期増悪⇢緊急
定期評価のため
自分の手に負えなくなったとき 気胸など

Q and A

Q. 抗線維化薬(ピルフェニドンとニンテダニブ)の使い分けはどうか
A. 優劣はつけがたい。どちらが先に投与するかも決まっていない。むしろ薬剤の副作用を考慮し、患者背景でどちらが受け入れやすいかで決定している。また両者を併用することも考慮しているが、保険が許してくれないかもしれない。
Q. 中止基準は?
A. 無効の判断も難しいが、演者の場合は急性増悪の頻度を減らすということを期待して継続はあり。%VC50%を切る症例や寝たきりに近い症例に投与をどうするかは決まっていないが、薬剤投与でさらに食欲低下なども起こる可能性があり注意が必要。
Q. 医療費の問題から、重症度3以上で導入するとあるが、すでに手遅れの印象だが、どうするか
A. 軽症高額の補助があるので利用してはどうか。
Q. 高齢者はいつまで治療するか
A. 80歳以上の予後は延長しないが、急性増悪を抑制する目的で患者本人が希望すれば継続治療をする。実際にたくさん80歳以上はいる。
鰤岡先生 富井先生と

コメントは停止中です。