喘息治療のアップデート〜全身性ステロイドを使用しないという選択〜

2018年12月13日に Scientific Exchange Meeting in FUkuyama 於ホーリーザイオンズ・パークセント・バレンタイン が開催されました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

喘息治療のアップデート〜全身性ステロイドを使用しないという選択〜

市立岸和田市民病院呼吸器センター センター長 加藤元一先生

症例1 48歳女性 好酸球性中耳炎で耳鼻科通院中

感冒をきっかけに喘鳴を発症。過換気でなんとか酸素化維持しており、呼吸筋疲労からさらなる増悪が懸念されるために入院した。 WBC 8600、好酸球12%
こんなときは? 全身ステロイド⇢ステロイドバースト(0.5mg/kg 3-8日間)⇢ICS導入⇢コントロール不良ならLTRAかテオフィリン・抗コリン薬⇢それでも不良なら経口ステロイド。

気管支喘息フェノタイプは、切り口によって異なる。

原因から見たら 感染 アレルギー 内因性 職業性 アスピリン 精神的 女性ホルモンなどなど
臨床所見から early onset, late onset, near fatal, ステロイド依存性、ステロイド抵抗性、肥満、brittle型;ピークフローの日内変動が大きいタイプ
炎症細胞から 好中球性(喀痰中細胞の40%以上が好中球?) 好酸球性 

フェノタイプを用いた治療分類:アレルギー性か非アレルギー性か early onsetかlateか 好酸球性か非好酸球性か
発作の程度がmildかsevereか
・JACI2015によると何度も発作を起こす重症難治性喘息は17%もいるが、2015年の報告ではしっかり治療しても改善しないのが約3.6%いる。
・重症喘息の定義 ERS/ATS合同ガイドライン 

以下の4つのうち一つ以上を満たす場合とした。

ACT score<20点
ステロイド全身投与が必要な急性増悪が年2回以上
入院を要するあるいはICUに入室するあるいは人工呼吸管理が年1回以上ある
β刺激薬吸入後でも一秒量が予測値の80%未満

重症喘息の治療としての全身性ステロイド

OCSの使用は重症喘息では約60%に投与されている。
OCSの有効性に関する論文は多くない。
OCS投与は重症増悪頻度を減少させ、予定外受診も減るが、一方でどんどん投与量が増加していく。合併症は、 高血圧 糖尿病 肺炎 肥満 骨粗鬆症 大腿骨頸部骨折 胃潰瘍 などなど多数ある。ではステロイドバーストなら大丈夫か。
残念ながらバースト使用しても副作用は無視できない、
(Sullivian PW ら、JACI2018.141:110−116)
年に4回以上ステロイドバーストすると、結局10年間の観察で同様の合併症が1.29倍多い。
合併症はステロイドの総投与量に左右される。
難治性喘息は6人に1人と言われるが、本当に重症難治性は3.6%である。

最初にやることはICSの適切な選択

アドヒアランスと適切な使用
吸入手技チェック
MDI DPIの向き不向き吸気能力のチェック
アウトカムのチェック

日本のガイドラインは世界でもっとも厳しい。

喘息発作を起こすほどリモデリングが生じ、炎症を生じる。
人間の気道は1回の気道収縮のみでも気道炎症を起こす。
発作を起こせば起こすほど気管支が狭くなっていく。
抗原の吸入により生じた気道収縮もメサコリンで惹起した気道収縮も、リモデリングは両者ともに生じる。
(NEJM 2011、2006 )

SMART療法

十分量の吸入ステロイドはPEFを改善し末梢血好酸球は減少する。
1日6回以上のSABAを吸入する群では、SMART療法実施すると重症の増悪頻度を有意に低下させる。

合併症の確認

増悪頻度の高い患者は有意にGERDおよび副鼻腔炎の頻度が高い(AJRCCM)。
GERDと副鼻腔炎の治療を行えば増悪頻度が低下することが期待される。

好酸球のあまり関与しない喘息の一群がある。

すなわち好中球性炎症が優位な喘息であるが、
好中球性炎症の喘息は有効な治療はあまりない。
発症機序; 汚染物質、microbes, glycolipidsが気道粘膜を障害することがスタートである。
樹状細胞からIL-23産生され→TH17が活性化 IL-6やTGFβが関与 →好中球活性化されると、好中球からMMP9、好中球エラスターゼ、ROS((reactive oxygen species) などが産生される。
まるでCOPDの病態と類似の反応である。
FENO<30 マクロライドが適応。
喫煙者には LAMA使用を推奨。
肥満⇢減量を。

TH2タイプの喘息=好酸球性喘息 ・・・薬がある

TH2の炎症の機序は2つある(BeL EHら、CHEST2017)
1つ目はIL-4,IL-13 →B細胞活性化→IgE産生・分泌→マスト細胞に結合→ケミカルメディエーター遊離→気管支平滑筋収縮・・・・抗IgE抗体が有効
同時にTH2からIL-5分泌→好酸球活性化 ・・・抗IL-5抗体が有効
IL4系炎症 early onset(小児期発症), allergic predominance ⇢オマリズマブ
IL5系炎症 late onset(中年以後発症) , eosinophi predominant ⇢メポリズマブ、ベンラリズマブ
ABPAなどはまだ機序が十分解明されておらず、現状では全身性ステロイドを使用せざるを得ない。

血清IgE30以上1500以下 ならオマリズマブの適応

末梢血好酸球300/μL以上、ステロイド投与症例なら150以上 なら抗IL−5抗体の適応である。

マスト細胞は単球が各臓器に移動してそこで分裂増殖するもので、臓器によりキャラクターが違う!

例えば筋肉に存在するものと肺、神経にいるものとは全く違うのである。
オマリズマブはfree IgEをトラップしてマスト細胞に接着しないようにするものであり、16週間オマリズマブを投与すると気道粘膜にはほとんどIgEもIgEレセプターも検出されなくなる。IL-4で活性化されるものもなくなった。

TH2型慢性喘息

欧米のガイドラインではまずオマリズマブを使うことを推奨。

理由は10年の使用経験があるから。
有効例は50%。約4分の1は効果不十分であり、末梢血好酸球が多い症例についてはメポリズマブに変更すると有効であった。
予定外受診の減少、末梢血好酸球の減少。呼吸機能はオマリズマブとメポリズマブで有意差なし。
特に末梢血好酸球が300/μL以上では抗IL-5抗体の投与を検討する症例である。(欧州呼吸器学会2018で推奨)

ベンラリズマブの効果

末梢血および気道中好酸球をゼロにする。
年間喘息増悪率 国際基準では半減、日本人サブ解析ではほとんど増悪をゼロにしている。かつ全身性ステロイドを完全に離脱したのは約50%

まとめ

全身性ステロイド投与は喘息増悪頻度を減少すると言われるがランダム化比較試験は存在しない。
全身性ステロイドを必要とする重症喘息には抗体製剤を優先したほうがよい。(演者の考え)
ZERVASのcriteriaはわかりやすいが…まだ完全ではない。末梢血好酸球300/μL以上なら抗IL-5抗体の投与がよいであろう。

Q and A

Q ステロイド全身投与はしないほうが良いのはわかるが、ステロイド依存性か非依存性かの鑑別はどうするのか。その見極めは?
A 患者が発作を起こしたときパルミコートネブライザー投与で有効例があるが、3日間投与して症状改善かどうかみればわかるであろう。しかし臨床の現場では1日待つのがせいぜいで、ステロイド全身投与を行っている。なかなかクリアには鑑別にいたらない。

Q 全身性ステロイドの投与の場合、獲得免疫には有効だが、自然免疫系には効果が低いのではないかと思われる。そこで抗体製剤が候補にあがると思うが、好酸球300以上で抗IL-5抗体を使ってみるという選択はどうか。
A 感染に関連しておこる喘息発作はILC2が関与していると考えられるが、それを証明するバイオマーカーが存在しない。年1回程度のステロイド投与でコントロールできるなら重症の定義にも入らず適応ではない。感染によって増悪するのが年間何度もなる場合は抗IL-5抗体が検討される。

引き続き
難治症例の症例検討

と題して私が座長をおこない、3人の演者の方に症例を提示いただきました。
まずは、吸入デバイスの選択と治療 という観点から、福山市民病院内科 小田尚廣先生に発表いただきました。最新のガイドラインに基づく治療および吸入デバイスの選択方法と注意事項、コツなどについて説明されました。難治症例として、高齢の患者で種々のデバイスが吸入困難、最終的にネブライザー吸入で治療成功した症例を提示されました。
次に、生物製剤の導入と治療 という観点から、公立世羅中央病院内科 片岡雅明先生に発表いただきました。アトピー型喘息でオマリズマブが効果不十分な場合の抗IL-5抗体が有効な可能性、およびベンラリズマブ投与で著効の症例についてご提示いただきました。
生物製剤はとにかく薬剤費用が高額であることが問題点として指摘されました。 最後に、気管支サーモプラスティ について、中国中央病院呼吸器内科 池田元洋先生 について発表いただきました。BTの適応は18歳以上、しかも1回しか適応できないという制約があるため、適応を慎重に考慮しているとのことでした。


左から池田先生 小田先生 加藤先生 私

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