2019年3月17日に、広島国際会議場において尿酸に関連する講演会を聴講いたしました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

特別講演I 新しい高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインから見た高尿酸血症の治療戦略

鳥取大学 再生医療学分野教授
久留 一郎先生

尿酸は7mg/dLを超えると高尿酸血症と定義する。血中に溶ける限界値が7である。

高尿酸血症と痛風を放置すると、痛風発作が頻発し、痛風結節、尿路結節、痛風腎となりうる。
高尿酸血症は脳血管疾患の合併症が多いことも知られている。
演者らの行った5年間のコホート研究では、高尿酸血症からは男女問わず高血圧、脂質異常、CKDが生じる。女性は糖尿病が発症しやすい。
2002年に世界で初めて高尿酸血症と痛風のガイドラインが作成された。
現在第3版となり、7つのクリニカルクエスチョンからなっている。
・診療アルゴリズムとしては、
 尿酸7〜8mg/dL未満で生活習慣指導(アルコールを含めた食事指導)を行う。
 腎障害、尿路結石、心血管疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームがある場合は、6以下にする。
・アロプリノールは尿酸コントロールと腎保護に有用である。しかし、
アロプリノールはスキンラッシュ、スティーブンス・ジョンソン症候群、など合併症がおおいのが問題。
・腎障害を有する高尿酸血症の患者に尿酸降下薬を投与すると、腎機能低下とくにクレアチニンクリアランス低下を抑制、末期腎不全の抑制効果、が得られる。エビデンスの強さは中等度。
薬剤中止に至る副作用は認めなかった。
まとめ:腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して、腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることを条件付きで推奨する。
高尿酸血症は、尿が酸性化、腎機能低下の直接原因、RASを介して尿細管障害を起こす、などの影響がある。
高尿酸血症の腎障害の進展阻止のために早期から尿酸を低下させ、NO合成を増加し、RASを抑制し、尿PHをアルカリ化する必要がある。

高尿酸血症の新たな病型分類と尿酸輸送体

今回小腸からの尿酸の排泄低下により高尿酸血症を生じることが判明したことから、病型を3つに分類された。
 尿酸排泄低下型
 尿酸産生増加型
 腎外排泄低下型
フェブキソスタットはどの病型にも同等に有効で尿酸値を低下させる。
・痛風発作抑制のために血清尿酸値コントロールについて
好中球やマクロファージが尿酸血症を貪食しIL-1βやIL-18が分泌され痛風関節炎を起こすが、その主役はインフラマソームである。
・高尿酸血症のリスク(痛風関節炎)
血清尿酸値を6以下にすることが、発症抑制のための目標である。
・関節に蓄積した尿酸ナトリウム塩結晶を最近はエコーで観察できるようになった。
アロプリノールとフェブキソスタットを投与して血清尿酸値を6以下に保つと、8割以上の尿酸塩結晶は消失した。
・スポット尿で尿酸濃度と尿クレアチニン比を計算して薬を選択する。
・痛風の発症機構
 高尿酸血症の場合、無症候のうちに徐々につもっていき、屋根につもった雪がくずれおちるように発症
 尿酸コントロール開始時は、屋根の雪を急に太陽があたって溶かしてしまうので発症。
 ※尿酸結晶が脱落するときに発症する。

痛風の治療

①コルヒチン
②短期大量療法 ナイキサン(ナプロキセン)100mg3錠を3時間毎に3回まで服用
③NSAIDS常用量
④ステロイド20−30mg/日
上記方法はいずれも有効で効果に有意差ないが、NSAIDSで有害事象がおおく、プレドニゾロンで少ない。
・痛風発作予防のためにコルヒチン長期投与は短期投与に対して有用なのか?
コルヒチン予防投与1mg/日 3ヶ月と6ヶ月で比較した。
3ヶ月投与群では投与中は発作ないが、中止後リバウンドして発作が起こった。
6ヶ月投与ではリバウンドがなかった!
一方、副作用では、3ヶ月短期投与は下痢が有意に多かったが、6ヶ月では肝障害が多かった。
長期投与で有意に有害事象は増える。
これらの結果をふまえて、条件付きでコルヒチンは推奨。益>害 と判断されている。
・高尿酸血症合併患者に心血管イベント抑制のために尿酸コントロール薬を投与すべきか。
高尿酸血症は3つの機序で血管障害を起こしうる。
長期高尿酸血症 →細胞内に尿酸がとりこまれるとNOの産生が低下する。
尿酸代謝過程で活性酸素も産生する →動脈硬化のリスク。
尿酸結晶をマクロファージが貪食しインフラマソームが活性化してIL-1βやIL-18 が動脈硬化を促進するらしい。
抗IL-1β抗体を高尿酸血症患者に投与すると心血管イベントを抑制した報告がある。
・高尿酸血症合併高血圧患者において、生命予後や心血管イベント抑制目的の尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか。
ケースコントロール研究2編しか論文はなかった。
心血管イベント・脳卒中リスクは低下していた。
有害事象については3つの論文がありメタ解析にて有意差はなかった。
結局、益も害もどちらも小さい。
→結局推奨されない。
尿酸値を上昇させない高血圧治療をすること。ロサルタンを含むARB、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬。
・無症候性高尿酸血症において食事指導(アルコール制限を含む)は推奨できるか。
尿酸値を低下させる食材は、
 ビタミンC DASH食、地中海食、果物と、大豆食 
 やや低下させるものとして、乳製品、コーヒー
 逆に増加させるものは、アルコール、肉類、魚介類、糖質
コーヒーは有意に痛風を抑制する。
アルコールは痛風を増加させる。
食事指導は推奨される。

質疑応答

Q.食事指導の件 プリン体摂取量についてはガイドラインに記載がないがなぜか
A. プリン体摂取量は増加は尿酸値上昇しやすいが、アデニン、グアニンはプリン体だが尿酸値上昇には関与しない。日本痛風核酸代謝学会にはプリン体の量を記載しているのでご覧になってほしい。

特特別講演II 高尿酸血症とCKDとの関連 〜最新の知見〜

東京慈恵会医科大学名誉教授
細谷 龍男先生

痛風患者の推移は増加の一途。1986年25.4万人→2013年106.3万人。食生活の変化が関連している。
1000万人の高尿酸血症患者のうち100万人が痛風となっている計算である。
血清尿酸値と高血圧の合併率は尿酸値に比例して増加する。
The Normotive Aging Studyによると尿酸値が高いと後に高血圧発症することが判明した。
アロプリノールを投与すると血圧は低下する。メタ解析の結果低下傾向である。平均で3mmHg程度低下。
女性は6以上の高尿酸血症で末期腎不全発症率が有意に高値。男性も有意差はなかったが高い傾向にあった。
血症尿酸値とCKD発症リスクをメタ解析した報告では、尿酸値が高いと有意に発症率が高い。
蛋白尿の程度、eGFRも低下するほど心血管イベント発症率が高い。これに高血圧が加わるともっと予後が不良となる。
・オキソニン酸誘発高尿酸血症ラット(動物実験)
 コントロールでは尿酸上昇とともに血圧は上昇するが、利尿薬やエナラプリルを投与すると血圧は低下した。エナラプリル投与すると腎糸球体輸入動脈の血圧がとくに低下する。またアロプリノールを投与しても輸入動脈肥厚を改善した。
高尿酸血症は、
 輸入動脈の自動調節能の障害を起こす→糸球体高血圧
 輸入細動脈の内腔狭窄→腎血流低下→尿細管間質障害 →細動脈の硝子様変性

CKD症例における高尿酸血症の治療

Feather Study
CKD3a,3bをともなう高尿酸血症にフェブキソスタット投与しeGFR の低下を観察した。
N=443、投与群219例(尿酸値平均4に維持)、コントロール群222例(尿酸値平均8)。
結果は蛋白尿陰性症例においてフェブキソスタット投与群よりもコントロール群でeGFRが低下した。
蛋白尿陽性症例ではeGFRは両者ともに低下の傾きを抑制できなかった。またeGFRが30以下の群では低下を抑制できなかった。
 → eGFRの悪い群はフェブキソスタット投与しても低下は抑制できないのであろう。
痛風関節炎発現率はフェブキソスタット群で0.9%、コントロール群は4%くらいで有意に改善した。
フェブキソスタットを投与し脳血管疾患累積発症率をみた研究では、投与群で23%、コントロール群で28%の発症率であった。腎機能低下を抑制することに起因すると考察されている。

質疑応答

Q. 尿酸を下げることは心臓にはあまり作用せず、腎不全抑制に有効ということか?
A. 内皮細胞障害を研究している方は、関与を考慮されている。
Q.  透析患者の尿酸管理を悩んでいる。体内尿酸プールが少ないと思われる透析患者でも透析前は尿酸が12あり、透析後は3くらいになる。治療の必要性はどうか。
A. 透析患者の尿酸プールは少ないし、すでに腎不全であるし、心血管イベント抑制についてはまだエビデンスが十分に確立されていないので、治療の益と害を考慮した場合、治療は必要ないという立場である。
Q. 心不全など利尿剤を長期投与が必要な場合、尿酸が上昇する場合は尿酸降下薬を投与しながら利尿をはからざるを得ないであろう。ただし、一過性の利尿剤投与による尿酸上昇には尿酸降下薬は投与必要ないと考える。

パネルディスカッション 生活習慣病と痛風・高尿酸血症

①実臨床における痛風の治療と問題点

川上消化器内科クリニック
川上由育先生

演者のクリニックに通院患者の7割が肝疾患で、10%が高尿酸血症を合併、とくに脂肪肝を合併している患者が非常に多い。(脂肪肝の患者の約半数が高尿酸血症を合併)
肝炎のない患者のうち32%が高尿酸血症を合併している。
脂肪肝、痛風、高尿酸血症の患者は年齢が若い(平均50歳前半である。)
高尿酸血症の患者は痛風発作を起こしたときのみいろいろな医療機関を受診するが、発作がおちつくと受診しない。
患者教育が重要である。
 痛風発作を止めてあげるが、将来腎不全になる可能性があるので治療は継続が重要である。
 他の生活習慣病を合併している可能性が高いので、定期的にチェックする。
 脂肪肝のチェックも重要である。

②高尿酸血症と動脈硬化

広島大学医学部循環器内科学助教
丸橋達也先生

血管内皮細胞の機能
 血管拡張 細胞増殖抑 抗凝固 抗炎症 抗酸化 ・・・動脈硬化によりこれらの機能が障害される。
特にNOによる血管拡張作用が障害されるのが問題である。
種々の要因で血管内皮細胞障害が生じるが、高尿酸血症患者では血管内皮機能は低下している。
1.キサンチン酸化酵素を介した血管内皮機能障害
キサンチン酸化酵素はヒポキサンチン→キサンチン→尿酸 への変換に関与するが、スーパーオキシドの生成によりNO活性低下→もっと強力なスーパーオキシドが生成されて血管内皮障害となる。
2.尿酸自体によるもの
 近位尿細管での尿酸トランスポーターは血管内皮細胞にも存在するが、尿酸がURATv1を介して血管内皮細胞にとりこまれ、この尿酸が酸化ストレス、炎症の惹起する。
・アロプリノールはキサンチン酸化還元酵素阻害薬であるが、Flow-mediated vasodilation(%)を改善する。
・プロベネシドは尿酸トランスポーター阻害薬であるが、肥満で尿酸値5以上の患者におこなった研究ではFMD改善は認めない。
高尿酸血症の治療としては、痛風患者、高血圧合併例は尿酸値6以下を維持することが推奨。
ただし、尿酸はもともと強力な抗酸化物質であるので、尿酸値を下げすぎると尿酸の抗酸化作用が抑制されて、逆に血管内皮機能障害をおこす可能性がある。

③高尿酸血症と心臓病

広島赤十字・原爆病院循環器内科部長
岡田武規先生

尿酸値と心血管イベント(JCAD研究サブ解析)によると、
 血清尿酸値が6.8以上で有意にイベントリスクとなる。
慢性心不全について、血清尿酸値が低いほど予後は良好である。
(症例)66歳男性 慢性心不全 慢性腎不全 虚血性心疾患
アロプリノールを継続しているときは尿酸7.5程度でeGFRが低下傾向であったが、フェブキソスタットに変更後尿酸値は4以下となり、eGFRは徐々に上昇していった。
・アロプリノールの時代にTEN(中毒性表皮壊死症)が合併症として経験された。
演者の施設では血清尿酸値6未満達成率は約60%だった。
1日2回服用の薬では夕方が飲めない患者がおおく、血清尿酸値も高い傾向にあった。

総合討論

Q. 肝疾患の患者において痛風発作が起きた場合のコルヒチン長期投与はどう考えるか。
A. 肝障害の場合は控えているが、投与する場合は2週間に1回程度肝機能検査をフォローしている。
NAFLDには投与するが、NASHの場合は投与は控えている。エコーで肝臓の硬度を測ることができるのでそれを指標にしている。
Q. 高尿酸血症において尿酸排泄低下型かどうか鑑別しているが、ベンズブロマロンの位置づけはどうなっているか。
A. おそらく殆どの病型は排泄低下型なので、ベンズブロマロンは有効であろう。産生亢進型には排泄促進薬は使うべきではない。
Q. キサンチン酸化還元酵素阻害薬による血管内皮機能の改善について、用量依存性なのか。
A. 用量依存性ではなさそう。
 臨床的にはACE阻害薬はNOを増加させて有用である。
 尿酸の低下とFMD改善は相関する報告もあれば、相関しないとする報告もあり、まだ定まっていない。
Q. 新たなスタット系薬剤にて、かなり尿酸は低下するが、どこまで下げるべきか。
A. 血清尿酸値が0.8以下となると、有意に血管内皮障害が生じることが観察されている。
また血清尿酸値2以下となると、運動後の急性腎障害が生じる可能性がある。
またヨーロッパでは血清尿酸値3以下を持続すると、神経細胞内のプリン体を維持できず、アルツハイマー病などの脳障害がでるかもしれないと言われている。
現時点で日本では2−6に保つことを目標にする。
Q. 尿酸の肝代謝に関して特異的なものがあるでしょうか。
A. 尿酸は必要であるが、過剰になれば悪い。肝臓に関して言えばアルコールが悪い。アルコール分解後に尿酸を産生してくるので、よくない。健康食品としてクロレラなどプリン体の多いものをよかれと摂取しているひともいるので、よく尋ねる。
Q. アロプリノールはTENだけでなく、軽症の皮膚合併症があるように思うがどうか。
A. 中国やアジアではアロプリノール過敏症がおおいことが知られている。HLAタイプによると考えられており、測定してその患者を除外しているとのこと(韓国、中国)。日本人では1%程度の過敏症が予想されている。日本ではHLAタイピングするよりも、フェブキソスタットを投与したほうがベネフィットがある。

追加コメント:小腸から尿酸が分泌されず高尿酸血症がおきる機序以外に、肝細胞から胆汁に排泄している経路も報告されており、どちらが重要かは今後の研究課題である。

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