2019年9月19日に 明日から使える! COPD診療実践セミナーin福山 @ホーリーザイオンズパークセントヴァレンタイン が開催され、私は座長をいたしました。

2019年9月19日に 明日から使える! COPD診療実践セミナーin福山 @ホーリーザイオンズパークセントヴァレンタイン が開催され、私は座長をいたしました。最新の知見を学んできました 。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

【基調講演】当院における在宅酸素療法中のCOPD増悪に対する治療の現状

~最近経験した症例の紹介~

セントラル病院呼吸器内科
渡辺康典先生

症例1 80歳男性 意識障害

救急搬送 JCSIII−200 GCS6点
PCO2 70以上、PH7.14 (アシドーシス)
入院時はPCO2151まで上昇した。
NPPV(V60)を実施し、5日間でPH7.42,PCO273まで低下意識障害も改善傾向となった。
その後PCO2は再上昇し99となったが、在宅NPPVを導入して退院した。
自宅では階段昇降、NPPVを装着下での腕立て伏せやスクワットなども実施していた。
現在はO2吸入下に軽く散歩されるまでに回復している。
身の回り程度の活動は在宅NPPV装着したまま活動されているという。

症例2 67歳男性 呼吸困難 HOT中

労作時の脈拍が130くらいになる。
在宅往診医の連絡で入院。起坐呼吸、酸素7LでSpO2 60%台。
肺炎による急性増悪と診断。NPPV(V60)を開始、回復するが、マスクがうっとおしいと訴えるため、ネーザルハイフローを導入した。ネーザルハイフロー(NHF)はFiO2 100%まで正確に設定可能、酸素60L/min投与可能。
解剖学的死腔の洗い出し、PEEPの効果、相対湿度100%に加湿し気道の乾燥を防ぎ線毛機能維持できる。
NPPVに比較してNHFは眼鏡の装着可能、テレビも見れる、会話や飲食可能、口腔ケアしやすい、排痰しやすい、ベッドサイドなどへの移動が容易でリハビリがしやす、などのメリットがある。
NHF35L/min, FiO2 53%の設定でFiO2 50%、IPAP12、EPAP4、STmodeのNPPVと同等の血ガスデータを維持できた。

Q and A

Q 急性増悪の早期発見のための工夫があればご教示願います。
A 療養日誌をつける。呼吸回数が上昇する、PCO2が上昇するといつもと違う言動や行動などがあるので気づくなど。

Q 在宅NPPVを長時間(ほぼ1日中)装着しているが、患者ができた理由があれば教えていただきたい。
A この患者についてはリハビリが大好きだった、NPPVを装着がとにかく楽だったと言われた。
はっきりとした要因はわからないが。

【特別講演】実践に役立つCOPD 診断と治療のトピックス

川崎医科大学病院 呼吸器内科学教授
小賀徹先生

疫学編

COPD: 肺気腫と慢性気管支炎の病名をこれに統一した。
COPDは世界の死因の3位である。1位虚血性心疾患 2位脳卒中。
日本の死因は第1位が悪性新生物であるが、COPDはベスト10に入らない。
COPDの死者は2017年で18499人、喘息は1791人。
TORCH studyでみる死因の解析では、呼吸器系35%、心血管系26%、癌21%、その他10%、不明8%であった。 →COPDは全身性の併存症をもつ疾患である。
全身性炎症TNF-α、IL-6、IL-1βなどが関与。
NICE Study2001では40歳以上のCOPD有病率は8.6%。喫煙者の12%と報告された。
60歳以上から急に有病率が上昇する。
循環器疾患別のCOPD有病率と喫煙歴との関連を調査した報告では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈、心不全、虚血性心疾患のいずれも約5割が喫煙者であり、COPDの有病率は約10%であった。
平成23年度における一般人のCOPD認知度は25%、2019年令和元年現在35%程度の認知度である。

診断編

COPD診断と治療に関するガイドライン第5版による”COPDの定義”にエッセンスが詰め込まれている。
喫煙は最大の危険因子であり、日本人の場合90%が喫煙である。
重喫煙者の10−20%が発症する。
胸部レントゲンはCOPDの診断に利用するというよりは、合併症の除外のために有用である。

肺機能検査(スパイロメトリー)は診断と重症度評価に必須である。 

診断には、1秒間に呼出した呼気量FEV1.0を努力肺活量FVCで割ったものが0.7未満となった場合である。
重症度は1秒間に呼出した量の予測値に対して、実際に呼出した量を割り算したもので判定する%FEV1.0を利用する。
COPDは可逆性があってもよいが、正常には復しない。
正常では気道壁を肺胞構造が支持しているが、COPDはガス交換を行う肺胞が障害され気道を支持できなくなり呼気時に気道が閉塞して気腫状となる。

過小診断の問題について 

気腫型(気腫性病変優位型)と非気腫型(末梢気道病変優位型)はみているものが違う。 
初期の発見には前者はDLCO、胸部CT、後者はVdot 50, Vdot25などを用いるのがよい。

COPDの症状を質問表で評価するとよい。客観的・定量的となる。 

修正MRC息切れスケール COPD assessment test (CAT)演者らの研究では、息切れが強いほど予後不良であり、呼吸機能よりも予後予測に有用である。
CATを使ってフォローすると、1年後の点数比較などできる。
COPDの経過をみるには、スパイロメトリーを利用してほしい。
Woodruff PGら(NEJM2016)の報告では、非喫煙者と、COPDではない喫煙者と、COPDの患者、の3者のCATスコアを測定すると、COPDではない喫煙者は非喫煙者よりもCATスコアは上昇しており、COPDよりは低かった。
また、症状があるだけで(本当はACOではないのに)吸入ステロイドが20%程度に投与されており、過剰投与の恐れがあるので、スパイロメトリーを実施して診断しておくべきである。
CATスコアはGERD、抑うつ、不安、などにも影響されるのでスコアが高値のときは、何による高得点なのかを確認する必要がある。
COPDの診断基準は、気管支拡張後のスパイロメトリーで1秒率が70%未満であることを確認する。
気流閉塞は完全には正常に復しないことを確認すること。
COPD増悪の定義: 息切れの増加、咳痰の増加、胸部不快感の増加、何らかの治療変更追加が必要となった状態。
どんな人が増悪しやすいか?・・・増悪を1回起こしたらまた起こす(繰り返す)。
増悪を起こすと呼吸機能はその都度低下する。増悪繰り返すひとは予後不良である。
QOL、運動耐容能改善、なども目標として治療にあたることが大事。

治療編

COPDの薬物療法は3つしかない。LABA、LAMA、ICS。
テオフィリンや喀痰調整薬は補助的位置づけである。
LABAかLAMAをまず単独使用→ 疾患進行に応じて併用 → ACOならICSも併用可能。
ACOの診断には好酸球性炎症を示す指標が採用されている。FENO、末梢血好酸球>5%、or 300/μL、総IgE高値or 特異的IgE陽性。
LABA+LAMAで症状に制限、増悪がある場合はLABA+LAMA+ICSを3ヶ月試してみて、改善なければもとのLABA+LAMAに戻すという判定方法もある。
※ICSを使用した場合には、継続理由をカルテのレセプトコメントに記載する必要がある。
COPD患者にICSを投与すると肺炎の発症率が上昇する。ICSを使用前0.1発症/年・人→ICSを投与し中止前に0.22。
Kronos試験では3剤合剤が一秒率改善がもっともよかった。TDI focal スコアがよい(1.21vs ICSをのみは1.02)

Q and A

Q 喘息にICSで感染症が増加した印象はないが。感染症についてはCOPDは違うのか。
A 明らかに喘息とCOPDでは違っており、肺炎が起きやすいのはCOPDのみである。増悪の回数に比較して、肺炎を起こすリスクは少ないので、全体的にはメリットがデメリットを上回ると考えたいところである。

Q 息切れで受診される患者ですでに一秒率がCOPDの診断基準を満たすものがみられるが、禁煙について強くすすめるがなかなかできていない。禁煙を推奨するよい
A 病気をよく知ってもらうことが大事。特に命に関わる病気であることを強調する。自分の病状がどれくらいの位置づけかを肺年齢などで説明する。病状の重大性をひたすら言い続けることが重要でしょう。

Q 急性増悪を繰り返す患者について、急性増悪のベースに感染があると考えているが、3剤入っている状態での抗生物質の工夫などあれば教えていただきたい。
A 欧米のガイドラインではマクロライド系を投与すればよいとするものもある。ただ、日本で長期にマクロライドを継続投与は演者は推奨していない。COPDの一部のフェノタイプでは気管支拡張しているなどの副鼻腔気管支症候群的なものが混じっていることがあるので、その場合にはマクロライドを投与する。

懇親会にて座長の岡田先生、小賀先生、
渡辺先生と

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