10月10日に三原市医師会学術講演会 於三原City Hotel が開催され、最新の知見を学んでまいりました。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

COPDのトータルケア

久留米大学臨床教授 霧ヶ峰つだ病院院長
津田徹先生

高齢者への吸入デバイスの選択

吸気流速が十分でない症例はエアゾールを推奨、同調ができない場合はpMDIを使う。
手指筋力低下しているならpMDIに補助具を使用。
最大吸気量30L/ 分以下なら、ネブライザーを使用。
吸気流速は遅すぎると肺内に到達しない、速すぎると口腔内沈着率が増加しカンジダのリスクが増加する。
タービュヘイラーは60L以上の吸気が必要なので高齢者にはあまり向かないかもしれない。
HOTをしているような重症のCOPDは吸気流速が十分でない、50L以下が多くなるので、ドライパウダー製剤は推奨できない。
演者らの施設では、年々pMDI製剤に変更となっている。
世界では気管支喘息の64%がpMDI製剤を使用されている。
ICS/LABAの処方数の全国データによると、かなり地域差がある。鹿児島県が最も多く、山梨県がもっともすくなかった。
Functional MRIによる検討では、末梢気道までの到達率はフルティフォームが30%、レスピマットは42%、シムビコートは19%、レルベアは11%であった。pMDIのほうが末梢に薬剤が到達しやすい。

COPDは何を指標に治療を行うか

先ずは閉塞性障害の程度 %1秒量。車の排気量になぞらえて説明すると分かりやすい。
スピオルトは1秒量ピークを411ml、トラフで201ml増加させる。LABA/LAMA合剤のトラフ1秒量改善効果であるが、ウルティブロとチオトロピウムが200ml以上増加する。
演者らは3ヶ月に1回程度肺機能検査を実姉し、1秒量の経過を患者に説明されている。
一方CAT(GOLD日本委員会が推奨)の経時的変化(治療効果)を説明して、患者の意欲を上げる。日本人のCOPDと欧米人のCOPDとは違う!日本人のエビデンスを採用するほうがよいと考えられる。
DYNAGITOデザインで実姉されたが、LAMA単剤よりもLABA/LAMA合剤のほうがCOPDの年間増悪率が低下した。スピオルト群0.94回/人・年、スピリーバ1.32回/人・年。
GOLD2019に於ける薬物初期治療では、groupDでICSを使用することを推奨している。COPDでは喘息を合併しやすい、つまりACOでは、肺機能が低下しやすいことがわかっている。
どうやってCOPDに喘息の特徴を見出すか。症状変動性、40歳以前の喘息、FENO35ppd以上、通年性アレルギー性鼻炎、アトピー素因、末梢血好酸球が増加の合併などに注意する。
ICS/LABA/LAMAの3剤合剤が急性増悪をもっとも低下させることが最近のメタアナリシスで判明したが、一方でICSのほうが肺炎を合併しやすい。
純粋なCOPDではLAMA/LABAを使用すればICSのメリットはほとんどない!(本邦COPDガイドライン2018)
FLAME試験(N=3362)では、喘息のコンポーネントをすべて除外した症例のみで検討したところ、ICSは効果はなかった。
COPD大規模介入試験は、ICSに有利なプロトコールとなっているので、解釈には注意を要する。

呼吸リハビリテーション

COPD患者は軽症から身体活動性が低下する。軽症では運動耐容能は落ちていないが、身体活動性は低下している。
一日の歩数は重症度に応じて低下している。歩かなくてはならない患者がおそらく息切れのために歩かなくなっている。
スピリーバとスピオルトの比較では、後者の吸入により安静時間が減少し、日常活動が増加することが報告されている。
LAMA/LABAの吸入は車に例えると排気量を増加する、呼吸リハビリテーションは燃費をよくする(持久力の増加)。
どうして自分は息苦しいのか、その理由を教育すると患者は安心できる。
演者の奥様は日本臨床美術協会認定の臨床美術士であり、独自のアートプログラムをおこない脳の活性化、認知症の症状の改善に役立てられるのであるが、HOTをしているCOPDの患者へ応用して効果を上げていらっしゃるという。

COPDの終末期

呼吸不全、心不全といった癌以外の疾患は増悪後に改善することもあり、予後の予測が難しい。終末期がどこからかを決めるのが難しい。
呼吸リハビリテーションのステートメントによると、通常の医療の延長線上に終末期がある。終末期のありかたを患者の意思として事前に確認しておくことが重要である。
現在緩和ケアの対象疾患に、癌以外を考慮されている。まずは慢性心不全の終末期/緩和ケアを、そして呼吸器疾患の終末期にも対象を広げようとしているところである。来年以降呼吸器学会でも呼吸不全の患者の緩和ケアのステートメントを作成することを検討中である。
COPDの原因はタバコである。若い方たちに禁煙をしっかり指導することが重要である。来年4月以降新規開業の店舗はすべて禁煙になる予定である。
PM2.5 は通常10以μg/㎥以下であるが、70以上で外出を控えるレベルである。レストランなど室内で3人の喫煙者がいると、PM2.5は600にもなる!(大気汚染のレベルは500であるがそれを超える)。受動喫煙に注意が必要である。

Q and A

Q CT検診で軽症のCOPDを発見するが、どうやって禁煙に取り組まれているか。
A Fletcherの肺機能の減少図をもちいて患者の呼吸機能がどの位置にあるのかを教えてあげ、将来のリスクが見えるようにしてあげるとよいと思われる

Q COPD急性増悪を一度挿管すると人工呼吸器が離脱できないが、抜管のコツがあれば教えてほしい。
A 演者は最近20年近く挿管していない。V60などを用いてNPPVで対応するのがよい。

Q COPDは抑うつ傾向が多いと思われる。抑うつ傾向の患者は食欲も低下し痩せがすすむ。
どうやってうつ傾向を診断されているか
A HADSを使用している。
CATで身体活動性や意欲を一部評価できるので、よいと思われる。
呼吸リハビリテーションを実施すると抑うつ不安のスコアが改善する。
※演者の監修されたリーフレットを有効活用していただきたい。

演者の津田徹先生と座長の梶山晃雄先生と一緒に

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