WEB開催となった第60回日本呼吸器学会学術講演会の講演を聴講し最新の知見を学びました。 (その2)

WEB開催となった第60回日本呼吸器学会学術講演会の講演を聴講し最新の知見を学びました。
WEB開催の良いところは何度も聴講できることです。
この度は特に興味をもった演題について何度も聴講いたしました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

●Year in Review 2019 びまん性肺疾患:特発性肺線維症(IPF)とその周辺疾患
神戸市立医療センター西市民病院呼吸器内科 冨岡 洋海先生

●Year in Review 感染症・結核学術部会
長崎大学病院呼吸器内科 宮崎 泰可先生

●Year in Review アレルギー・免疫・炎症学術部会
神戸大学附属病院呼吸器内科 西村 善博先生

●Year in Review 2019 びまん性肺疾患:特発性肺線維症(IPF)とその周辺疾患

神戸市立医療センター西市民病院呼吸器内科
冨岡 洋海先生

ILDの診断

・HRCT所見から得られたProbable UIP patternについて外科的肺生検は推奨しない。
日本の全国39施設がクラウド型統合データベースに症例を登録し、MDDを実施した。(FujisawaTら、ERJ2019)
その結果、MDD後に各施設での診断が47%変更された。
重要なことはMDDで確定後の予後が各疾患の特性を反映したものとなっていることである。
・ILD疑い例におけるCryobiopsyの位置づけについて
賛否あるが、昨年Romagnoli Mらによる報告があった。(AJRCCM2019;199:1249)
HRCTにてUIPパターンでないILDの前向き試験では、
TBLC(硬性鏡使用)、引き続きVATS下SLB(外科的肺生検)を同一患者の同一葉からの検体採取し、MDDを実施した。(N=21)
その結果、TBLCとSLBとでは診断についてのκ値が0.22しかなく、SLBとMDDでも0.51であった。
しかも11例(52%)はSLBを行わなかったら異なった治療がされていた。
・COLDICE スタディ(Lancet Respir Med 2020)
オーストラリアからの同様の報告では、Cryobiopsy検体をMDDによりほぼ確定的な診断と判断された症例は、その後外科的肺生検検体で実施したMDDの診断との一致率は95%であった。
→ このような症例ではSLBは必要ないのではないか。
・Raghu Gらの報告では(Lancet Respir Med. 2019)、
UIPを示す190の遺伝子発現プロファイルを認識するmachine learning algorithmを用いて、TBLB検体から得られるRNA sequencing dataのmolecular classifierによる診断を試みた。対象はHRCTでdefinite とprobable UIPを除くILDである。感度76%、特異度88%で一致し、MDDでの最終診断との一致率は86%、κ値0.64とかなりよい結果であった。

ILDの治療

・抗線維化薬治療によってIPFの全死亡と緊急入院リスクが低下した。(AJRCCM2019)
ピルフェニドン投与群とプラセボ群では投与群の肺機能の低下は抑制された。その後実薬投与に変更されたことで肺機能低下は抑制されたが、回復はしなかった。(Am Thorac Soc 2019)
→ IPFの早期治療開始に必要性を示唆する結果である。
ピルフェニドンはIPFの重症例において息切れの増悪の程度を抑制した。
・ニンテダニブとピルフェニドン投与により体重変化をみた報告では、IPFの進行例やニンテダニブ投与例で体重減少がおこりやすいことが判明した。
・末梢血白血球のテロメア長が10th percentile 未満の短いグループは免疫抑制剤治療を受けても予後不良、テロメア長が10th percentile以上の場合には予後良好であった。(Newton CAら、AJRCCM2019)
→末梢血白血球テロメア長はIPF免疫抑制剤治療の予後予測バイオマーカーとなる可能性がある。
・IPFにオメプラゾールを投与した研究では、(N=45)
90日間オメプラゾール投与すると、プラセボ群と比較して昼間から夜間の咳の頻度を有意に減少させた。39.1%減少。
しかし下気道感染症がプラセボ群の2倍となった。

IPFの急性増悪

・IPFの急性増悪の発症リスク
日本人67例、ドイツ人54例のIPFコホートで22例が観察期間中に急性増悪を起こした。
多変量解析で得られた発症予測因子は、日本人、HRCTでのGGO、線維化の面積。
他の報告では、抗線維化薬を投与中の慢性線維化性間質性肺炎(IPF75例を含む)において観察期間中に21例の急性増悪を生じた。リスク因子を検討すると、ステロイドの併用、ステロイド量、PPIの併用があがった。
急性増悪をきたしたIPFの82例について全死亡までの期間を検討した報告では、ステロイド投与群が非投与群に比較して予後が不良であった。ステロイドはIPFの急性増悪の予後は改善できない。
Hozumi Hらの報告では(Respirology2019)、初回急性増悪IPF102例において、ステロイド+IVCY群(N=26)とステロイド単独治療群(N=26)で予後に差はなかった。(1年後の予後はどちらも60%)

IPFの周辺疾患

・健診でILA(Interstitial Lung Abnormalities)の有無からその後の肺癌発症をみた研究(Whiattaker B SAら、Chest2019)
55歳から74歳で少なくとも30pack-year の喫煙歴がある人を対象にした。
約6年のフォローで、ILAのない群(N=19988)とある群(N=5053)では、有意にILAある群の肺癌発症率が高かった。
無症状ILAは肺癌の独立した危険因子である。
・ILAをHRCTパターンで分類し疾患進行と予後を評価した研究(Putman RKら、AJRCCM2019)
ILAの進行を評価できた3176例。
No ILA(N=1777)、 ILA without Progression(N=89)、ILA with Progression(N=238)の3群に分け
ると、喫煙歴やMUC5Bに有意差があった。
2007年のHRCTパターンで分類すると、indeterminate for UIP pattern、probable UIP pattern、UIP patternとなるが、この順に予後は不良であった。

進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)

・PF-ILDとは、 %FVCの年率10%以上の減少するもののほか、 %FVCの年率10%未満の減少でも症状やHRCTにて線維化所見が増加する一群である。
基礎疾患は過敏性肺炎、自己免疫性間質性肺疾患、特発性NSIP、分類不能型特発性間質性肺炎、その他(サルコイドーシスや暴露関連ILD)
・INBUILD試験 (Flaherty KRら、NEJM2019)
PF-ILD(N=663)をニンテダニブ投与群とプラセボ群に分けた。
全期間のILDの初回急性増悪、または死亡までの期間を観察したところ、ニンテダニブ群において有意に無イベント生存率が高かった。
・ピルフェニドン
MDDで分類不能となった線維性ILD、進行性、過去6ヶ月で%FVCで5%以上低下または自覚症状悪化を登録し、24週間観察した。
ピルフェニドン群はプラセボ群に比して有意にFVC低下を抑制した。-17.8mLvs -113mL

ILDの予後

・様々なILDにおけるCT蜂巣肺の頻度と予後の検討(Adegunsoye Aら、Ann Am Thorac Soc 2019)
ILD、(N=1330)、平均年齢66.8歳、男性50%。
Unclassifable 、IPF、CTD-ILD、CHPが含まれる。
蜂巣肺を認めるUnclassifable 、CTD-ILD、CHP群は有意に予後不良であった。
IPFでは蜂巣肺の有無は予後と無関係であった。
・SSc-ILD(N=580)にニンテダニブを投与しFVC年間減少率を観察したところ、ニンテダニブが有効。
FVC年間減少率はニンテダニブ投与群:プラセボ群 = -52.4mL/年: -93.3mL/年。
皮膚硬化に対する効果は認められなかった。
・RA-ILDの予後 (N=157)(ERJ2019)
自動CT解析CALIPERにて予後を解析したところ、最も予後のよいのはVessel-related structures(血管に沿った広がり範囲)のILDであった。
・過敏性肺臓炎(N=117)の検討では、(Chest 2019)
Non fibrotic 、non -honeycomb fibrosis、honeycombの順に予後は不良であった。
CT honeycombがあればHPもIPFも予後は同じである。
・鳥関連CHP
CHP組織におけるペリオスチンの発現と血清ペリオスチンは、Th2免疫応答と線維化のバイオマーカーとして期待される。
Fibrotic HPに対してステロイド治療群は予後が不良であった。
Non-fibortic HPは抗原回避で%FVC有意に改善するが、DLcoは改善しなかった。→抗原回避の効果は不明である。

・Raghuらより世界初のHPの診断に関するガイドラインが最近発表された。(AJRCCM2020;202:e36-e69)
抗原曝露歴、typical HRCTパターン、BALFリンパ球増多、があれば、組織が得られなくてもMDDでHPと診断可能。
それ以外はCryobiopsyか外科的肺生検を検討すべきとした。

●Year in Review 感染症・結核学術部会

長崎大学病院呼吸器内科
宮崎 泰可先生

①新型コロナウイルス感染症

コロナウイルスは7種類
 αコロナウイルス(2種類) 上気道炎のみ、
βコロナウイルス(5種類) この中にSARS-CoV-1,MERS-CoV, SARS-CoV-2が含まれる
・SARS-CoV-1,2の環境中の安定性(NELM2020)
ステンレスやプラスチックでは3日間安定、ダンボールで1日、エアロゾル形態は3時間以上空中で安定性を維持するので換気が重要である。
・併存症の数が多いほど臨床アウトカムは不良と言われている。
・COVID-19の病態
気管支肺上皮細胞、I型II型肺胞上皮細胞、毛細血管内皮細胞に感染し炎症を惹起する。
間質の肥厚、血管透過性亢進をおこし肺水腫を惹起する。
同時に凝固系を亢進、微小血栓の形成 → 肺塞栓症
・COVID-19生存者と非生存者の違い(Lancet 2020)
非生存者はDダイマー高値、リンパ球数減少、IL-6上昇、血清フェリチン上昇、高感度トロポニン上昇、LDH上昇している。
・COVID-19の典型的肺炎像
末梢優位・下葉優位のすりガラス陰影86%、重症例では浸潤影の混在64%、牽引性気管支拡張53%がみられる。
その他に、小葉中心性粒状影23%、胸水14%。

②誤嚥性肺炎 (Mandell & Niederman, NEJM 2019)

発生機序;Microaspiration&Inhalation 殆どの肺炎において主要な機序である。
Microaspiration 細菌性肺炎と非感染性がある。胃酸などの化学性肺臓炎等。
・化学性肺臓炎(chemical pneumonitis)とは、
制酸薬の常用患者や小腸閉塞でなければ、ルーチンの抗菌薬は不要。
軽症から中等症では肺炎像があっても抗菌薬投与せず、経過をフォロー。
重症例では抗菌薬エンピリック治療を開始し、48時間後に再評価する。
・細菌性誤嚥性肺炎
単一菌感染の場合も少なくない。例えば肺炎球菌。
嫌気性菌の関与は進行例 グラム染色を実施すべき。
必ずしもβラクタマーゼ阻害剤配合薬でなくてもよい。
CTRXでも殆どの口腔内嫌気性菌に有効である。
CAPなら口腔内衛生状態の確認、NHCAPならMDR(多剤薬剤耐性)リスクを評価すべし。
肺化膿症、膿胸の場合にはβラクタマーゼ阻害剤配合薬を用いる。
ATS/IDSA市中肺炎診療ガイドライン(AJRCCM 2019)においても、
 肺化膿症や膿胸でなければ誤嚥性肺炎疑いでルーチンに嫌気性菌をカバーする必要なし。
 耐性菌リスクの評価を含めた抗菌薬選択において、HCAP(healthcare associated pneumonia)の概念が削除された。

③潜在性結核感染症(LTBI)の治療指針

2017年のメタ解析では、RFPの3-4ヶ月投与は、INHの6-9ヶ月投与に劣らないことが示された。(Annals of Internal Medicine 2019)
4ヶ月のRFP投与(N=3223)と9ヶ月のINH投与(N=3416)群で28ヶ月観察した結果、結核発症率に差がなかった。副作用、完遂率はRFP群のほうがよかった。(NEJM 2018)
これら2つの報告をうけて、CDCは3-4ヶ月のRFP投与は、INH単剤やINH+RFP併用群と比較しても、発症抑制は非劣性で肝障害も少ないと推奨した。その結果、LTBIの治療について4ヶ月のRFP投与を推奨、6ヶ月-9ヶ月のINH投与は代替案とした。
日本ではINHが従来どおり推奨で、RFPは代替案としている。その理由はRFP耐性化の危険性についてはさらなる検討が必要であること、RFP耐性化例はINH耐性化例よりも治療が困難であること、RFP耐性化は不規則内服が原因と考えられており、服薬遵守が前提となる、等が挙げられる。
さらにRFP単剤治療は日本国内のエビデンスが不十分であり、副作用の頻度や耐性化の問題など、今後さらなる検討が必要。
RFPは薬物相互作用が多く他剤よりも注意が必要である。
・LTBIの治療指針
WHO2018 ・・・INHが6or9ヶ月、RFP3-4ヶ月、INH+RFP 3-4ヶ月、INH高用量+RFP週1回3ヶ月
結核病学会 ・・・INH 6 or 9ヶ月、INH+RFP 3-4ヶ月、代替えRFP 4ヶ月
CDC2020 ・・・INH高用量+RFP(週1回)3ヶ月、RFP 4ヶ月、INH+RFP 3ヶ月、代替えINH 6 or 9ヶ月

④肺非結核性抗酸菌症

肺NTM症治療ガイドライン(CID2020)では、
 同一菌種が2回以上培養された場合に、積極的な治療導入を推奨
 感受性をもとにしたレジメンが推奨される、
 → MAC, M.abscessusでは、マクロライド(ML)、AMK
 → M.kansasiiではRFP
必要に応じて補助的に外科治療
・MACの治療
1.マクロライドに感受性菌の場合→3剤レジメンを推奨、RFP、EB、に加えて、AZM>CAM、で
 AZM 250-500mg/日・連日、500mg/日・週3回
 CAM 500mg x2/日・連日 or 週3回
 ※ 空洞がなく、結節・気管支拡張型の場合、週3回
2.空洞病変、高度な気管支拡張症、マクロライド耐性株の場合、
 連日投与、初期治療にAMK or SM注射(2-3ヶ月)
※AMK吸入は、6ヶ月以上の通常治療に抵抗性の場合のみ推奨
 培養陰性化後の追加治療期間は1年以上を推奨。
・MACの治療期間について
これまで12ヶ月治療では再発率25-50%と高率である。
治療後の残存空洞、高度な気管支拡張症は再発リスクである。
15ヶ月以上の治療で再発率が低下する。(Furuuchi Kら、Chest157:1442, 2020)
・M.kansasiiの治療
RFP + EB + INH or マクロライド・連日 (週3回は推奨しない:データ不足)
アミノグリコシドのルーチン使用は推奨しない。
RFP耐性の場合、キノロン追加。
・M.abscessusの治療
3剤以上 例えば、マクロライド(ML) + AMK + IPM (CFX:セフォキシチン、LZDなども有効とされる。)
※マクロライド耐性の場合もMLは追加し、4剤併用とする。

●Year in Review アレルギー・免疫・炎症学術部会

神戸大学附属病院呼吸器内科
西村 善博先生

・軽症喘息を対象として非盲検試験でブデソニド-ホルモテロールの頓用使用が有益であった。(NEJM2019)
アルブテロール頓用使用群、ブデソニド維持療法群、ブデソニド・ホルモテロール頓用使用群で年間の増悪回数を比較したところ、増悪回数はアルブテロール群に対してブデソニド群、ブデ・ホル群で有意に減少した。重篤な増悪ではブデ・ホル群がブデソニド群に比して減少した。
・軽症から中等症喘息に対するブデ・ホルの頓用使用の有効性の検討。 (LANCET2019)
テルブタリンとの比較で、ブデ・ホルの頓用使用が有意に増悪を抑制した。
・吸入ステロイドではフルチカゾン250μg/日で治療開始するのがよいのではないか(AJRCCM2019)
副作用の観点から低用量で治療を開始すればよいのではないか。
・軽症持続性喘息に喀痰好酸球レベルが低いものが多い。(NEJM2019)
喀痰中の好酸球比率2%未満の軽症持続性喘息においてプラセボ、モメタゾン、チオトロピウムで治療効果を比較し、プラセボに対してモメタゾンとチオトロピウムは有意差があったが、モメタゾン群とチオトロピウム群に差はなかった。
好酸球比率の高い患者群ではモメタゾンがプラセボよりも有意に良好だった。
・粘液による気道閉塞が原因の患者では、β刺激薬吸入後に換気の不均等分布が改善したことをfunctional MRIで証明した。
・Th2炎症、アトピー、および主な臨床パラメータに関連付けられている喘息患者における気道の真菌叢をBALと気管支内ブラシのサンプルで検討した報告(JACI2019)。
BAL検体では、Th2炎症が高い群で、Fusarium,Cladosporium,Aspergillusが検出された。気管支ブラシ検体では、Th2炎症が高いとTrichodermaが検出、Th2炎症が低い群ではPenicilliumが検出された。
・喘息モデルマウスを用いて、温度によって引き起こされる気道炎症の影響を検討した研究(Respirology2019)
温度変化26℃→10℃ により好酸球性炎症が惹起された。
・喘息増悪に関する屋外の環境要因を調査した研究(JACI2019)
温度変化、ウイルス、花粉、オゾンの影響を検討し、これらは乳児から高齢者まで喘息増悪に関与するが、年齢層で若干の差がある。
・COPD急性増悪に対してベンラリズマブを投与したが効果はなかった。(NEJM2019)
・重度のCOVID-19による入院患者の予後を喘息の有無で検討した報告(JACI2020)
有意差はなかった。→喘息はCOVID-19の重症化のリスクではない。
・日本呼吸器学会のアンケート調査では、COPD患者と間質性肺炎患者で重症化例が多いが、気管支喘息については増悪率や死亡率に有意な悪化はなかった。

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