WEB開催となった第60回日本呼吸器学会学術講演会の講演を聴講し最新の知見を学びました。 (その3)

WEB開催となった第60回日本呼吸器学会学術講演会の講演を聴講し最新の知見を学びました。
WEB開催の良いところは何度も聴講できることです。
この度は特に興味をもった演題について何度も聴講いたしました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

●特別講演 膠原病肺 Up-To-Date
浜松医科大学第二内科 須田 隆文先生

●ランチョンセミナー19
肺炎は良性疾患か?〜高齢者肺炎予防の重要性

関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科 宮下 修行先生

●特別講演 膠原病肺 Up-To-Date

浜松医科大学第二内科
須田 隆文先生

膠原病肺の組織パターンと予後

・演者らは外科的肺生検を施行したIIP98例とCVD-IP(膠原病肺)43例について組織型の違いによる予後を検討した。IIPにおいてUIPはNSIPと比較して有意に予後不良であった。UIP(N=76)の5年生存率は60%、12年生存率は0%であったが、NSIP(N=22)は5生率80%、12生率50%以上。
一方、CVD-IPでは組織型による予後の差は認めなかった。
他の複数の報告でもCVD-UIPはIPF-UIPよりも有意に予後良好である。
・演者らは、IPF-UIPに比較してFibroblastice foci(FF)の量がCVD-UIPでは有意にかなり少ないことを報告し、これが予後良好の要因の一つであると述べている。
※FF: UIPにおける組織学的な予後因子である。

リウマチ肺(RA肺)

・RA患者において最近IP合併率が上昇している。(AJRCCM 2011、J Rheumatol 2018)
IPを合併したRA(RA-IP)は予後不良である。(Arthritis Rheum2010、Rheumatology2010)
N=522のRA患者(IP合併7.7%)は10年で50%の生存率だった。
しかしRA-IPでは生存中央期間2.9年、5生率38%であり、他の報告(N=1460 )でも同様であった。
すなわちIPFと同等の予後不良であることが判明した。
・N=625の外科的肺生検症例によりUIPパターンを呈したIPF(N=536)とCVD-UIP(N=89)の報告。
CVD-UIPの予後は総じてIPFよりも良好である。
しかしRA-UIPに限るとIPF-UIPと同程度に予後不良であった。
RA-UIPの5年生存率約40%。(Respir Res 2014)
演者らの検討でも、同様であった。
・HRCTによるRA-UIPとRA Non-UIPの比較でも、UIPパターンはIPF並に予後不良。
・RA-IPの疾患進行や予後因子を検討した報告では、以下の項目が挙げられた。
DLCO<45%、HRCTにおけるUIPパターン(Clin Rheumatol 2019)。
年齢>65歳、既喫煙者、FVC低値や低下、RF値(ERJ2016)。
→RA-IPは早期治療介入の適応と考えられる。
・RA-ILDにニンテダニブの有効性が示された。(NEJM2019、Lancet Respir Med 2020))
PF-ILDにおいてニンテダニブはIPF以外にも有効性が示され、RA-ILDにも有意に有効であった。
ニンテダニブがどのようなRA-ILDに有効であるかはまだ不明であり、今後の課題である。

PM/DMに合併した間質性肺炎

・PM/DM/CADMに合併したIPは基礎疾患によって予後が異なる。(J Rheumatol 2006,Clin Rheumatol 2007)。(CADM:筋炎症状に乏しい皮膚筋炎)
PM-IPよりもDM-IPのほうが明らかに予後不良である。PMは30ヶ月で生存率80%以上だが、DMは約50%である。PM,DM,CADMの順に予後不良である。
・発症形式で予後が異なる
演者らの報告では、CADM-IP(N=14)において慢性緩徐発症(N=5)の予後は8年後も全例生存しているが、急性・亜急性発症(N=9)の予後は発症半年以内に4割以上が死亡し、2年後の生存率は約4割と予後不良であった。
同様の他の報告ではCADM急性発症の予後は極めて不良で1年生存率は30%台。
・PM/DM/CADMのIPの独立した予後不良因子について
演者らによると、予後不良因子は、高齢、CADM、急性/亜急性発症、%VCが低い、血清フェリチン高値、であった。
血清フェリチン高値は、全身あるいは肺局所のマクロファージの活性化の状態を反映していると考えられている。
・筋炎特異的自己抗体(MSA)
PM/DM-IP48例のうち23例(48%)で抗ARS抗体陽性であった。
10年生存率は抗ARS抗体陽性群で90%以上に対し、陰性群は60%と有意に予後不良である。
(抗ARS抗体;ARSはアミノアシルtRNA合成酵素で、細胞質内で行われるタンパク質合成に関する酵素。それに対する抗体。内訳はPL-7、Jo-1、PL-12、KS、EJ、KS+EJ)
特にJo-1陽性例はPL7/12陽性例に比較して予後良好であることが報告されている。
演者らは低肺機能およびPL7抗体陽性例が再燃の危険因子であることを報告した。
・抗ARS抗体陽性例は、ステロイド単独治療よりも免疫抑制剤併用のほうが再燃が少ない。
・抗MDA5抗体陽性例は急性型の重症IPを合併する。
発症後3ヶ月以内に40−60%が呼吸不全で死亡しその後プラトーとなる特徴的な生存曲線を呈する。
抗MDA5抗体は抗ARS抗体と比し、病勢を反映し治療によりその値が変化する。
死亡例のほうが抗MDA5抗体価が高く、治療前後の比較では生存例は有意に低下し、死亡例はあまり低下しない。
すなわち、抗MDA5抗体はpathogenic antibodyの可能性がある。

PM/DM/CADMのIPの治療と予後

・Triple therapyは、抗MDA5抗体陽性CADM-IPに有用である。(Arthritis Rheumatol 2019)
従来の治療では1年生存率は33%であったが、
高用量PSL+IVCY+タクロリムス のトリプル治療では1年生存率85%であった。(N=116)
一方で強力な免疫抑制のために33%(38例)が重症感染症を合併し11例が死亡。
・抗MDA5抗体陽性DM/CADM-IP症例の予後を検討した演者らの報告では、急性/亜急性型は極めて予後不良(生存率約50%)だが、慢性型は8年以上経過で1例も死亡は認めなかった。
血清フェリチン値 500ng/mL以上群の予後は極めて予後不良(5生率40%未満)、500 未満群は全例生存していた。
・演者らは抗MDA5 抗体陽性症例の予後不良因子を以下のように示した。
 急性発症(1ヶ月以内)
 血清フェリチン値>800ng/mL
 PaO2 <65Torr
予後良好群はこれらのいずれも満たさない→1年生存率は100%
一つでも満たすと予後不良→ 1年生存率は40%。
予後良好群の9割はTriple therapyを受けていなかった。
現在プレドニゾロンとタクロリムスの2剤併用療法の有効性と安全性を評価するスタディが進行中である。
・抗ARS抗体、MDA5抗体の有無により3群に分けて検討したところ、
抗ARS抗体陽性群は女性、慢性発症、呼吸不全死は少ない。
抗MDA5抗体陽性群は女性、亜急性から急性発症、SP-Dが有意に低値、フェリチン値が有意に高値、呼吸不全死がおおい。
ARS(-)、MDA5(-)群は、女性が有意に少なく、急性発症は少ない、予後はARS(+)群とMD5(+)群の中間
という特徴がある。
・JAMI研究(Rheumatology2018) 
PM/DM-ILDの予後因子を検討した多施設共同研究(N=497)である。
本研究にて、60歳以上、抗MDA5抗体陽性、CRP>=1mg/dL、SpO2<95%が独立した予後不良因子であることが判明した。
・PM/DM-IPにタクロリムスとシクロスポリンの比較したところ、タクロリムス群で予後が良好であった。
・抗MDA5抗体陽性例に対する有望な治療法
トファシチニブ(Tofacitinib);JAK阻害薬 (NEJM2019)
抗MDA5抗体陽性例にtofacitinib投与群(N=18)と従来治療群(N=18) で半年後の予後を比較した研究では、トファシチニブでは全例生存、従来治療群では生存率80%であった。
血漿交換も少数例の検討であるが有用な可能性が報告されている。(Rheumatology2020)
・演者の施設のPM/DM-IP治療アルゴリズム
抗MDA5抗体が判明するまでは、急性/亜急性の場合はメチルプレドニゾロンパルス療法+免疫抑制剤単剤
抗MDA5抗体陽性と判明したTriple therapy

CVD-IP急性増悪

・演者らの報告では、外科的肺生検を実施したCVD-IP 83例を平均観察期間6年間で、6例(7.2%)のAEが発症した。5例がRA、1例がシェーグレン症候群で、組織型はUIP3例、NSIP2例、unclassifiable1例であった。急性増悪時の基礎疾患の疾患活動性は全例安定しており転機は6例中5例が死亡し不良であった。
膠原病肺のAE累積発症率は1年で1.25%、IPFは5-19%であり、IPFよりは発症率が低い。
AEのリスク因子は高齢、基礎疾患がRAであることが有意であった。IPFでは低肺機能が有意なリスク因子だが、CVD-IPでは低肺機能は有意ではなかった。
Parkらの報告(N=93)やToyodaらの報告(N=155)では、それぞれ4例(4.3%)、10例(6.5%)がAEを発症し基礎疾患はRAが多かった。
CVD-IP急性増悪はIPFのそれと同じとはいえず、演者らの報告では低肺機能がリスクではなく、IPFに比較し予後は良好な傾向であった。
・RA-IPのAEについて
RA-IP51例を(観察期間中央値8.5年)観察すると、11例にAEを発症した。年齢、性別、肺機能に有意差はみとめなかったが、HRCTにてUIPパターンが有意なリスクであった。転機はAE発症群は64%(11例中7例)が死亡、非発症群は3%(40例中1例)が死亡した。
RA-IPの組織型でAE累積発症率をみたところ、UIPパターンは1年累積発症率6.5%、non-UIP pattern1.7%とUIPパターンが有意に高かった。
単変量CoxハザードモデルによるAEリスク因子の検討では、高齢、UIPパターン、MTX投与が有意だった。(Hozumi H、BMJ Open, 2013)

膠原病性背景をもつ間質性肺炎(IPAF)について(IIPsと膠原病肺の関連)

・確立した膠原病の診断基準を満たさないが、膠原病と関連した症状や検査所見(皮疹、関節炎、自己抗体等)を示す間質性肺炎の患者群が存在する。
こうした患者がIIPsの中に少なからず存在するが、臨床像や予後、治療などは全くわかっていない。
2016年にATSとERSが合同でIPAF(interstitial pneumonia with autoimmune feartures )の包括的概念を提唱した(ERJ 2016)。研究をすすめるためのresearch conceptである。
・IPAFの診断基準:
 1.間質性肺炎の存在(HRCTor 外科的肺生検)
 2.間質性肺炎の原因が不明
 3.確立した膠原病の診断基準を満たさない
 4.以下のドメインの中で、2つ以上満たす
A. 臨床的ドメイン
B. 血清学的ドメイン
C. 形態学的ドメイン
・IIPs-IPAFの前向き研究
IIPs376例 観察期間中央値35ヶ月。
Clinical IPF23%、IPF/UIP8%、NSIP7%、COP6%、AIP1%、iPPFE1%、unclassifiable IIP 54%。
IPAFの診断基準を満たす頻度:IPF6%、NSIP50%、COP48%、分類不能19%、であった。
観察期間中の確立した膠原病の1年累積発症率はIPAF診断症例4.0%、non-IPAF 1.0%であった。
3年間の観察期間でIPAF症例の88%はIPAFのままで、膠原病は発症しなかった。
IPFにおいてIPAF診断症例はnon-IPAFよりも予後がよい傾向だが有意差はなかった。
Non-IPFにおいてIPAF診断症例は、non-IPAFよりも有意に予後が良好であることがわかった。

●ランチョンセミナー19
肺炎は良性疾患か?〜高齢者肺炎予防の重要性

関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科
宮下 修行先生

新型コロナウイルス

・新型コロナウイルス感染症は年齢とともに感染感受性が異なる。
70歳代以上の感染者のうち約70%が有症状者となる。10代の感染者では約20%が有症状者になる。
年齢が高くなるに従って感染しやすく、60歳くらいからプラトーに達する。
その理由はACE2発現率が年齢依存的な増加をするからである。
日本におけるCOVID-19の死亡率は60歳以上から上昇し、80歳以上は17.5%であった。
COVID-19の重症化リスクは種々挙げられているが、BMI>=30の肥満があることに注意すべきである。
・COVID-19肺炎は治ればよいのか?
Post コロナの問題点;回復した患者(N=143)の87.4%に何らかの症状(後遺症)がある。(JAMA2020)
退院後に持続する症状は頻度順に、疲労感(50%以上)、呼吸困難(43%)、関節痛(27%)、胸痛(21%)、咳、他いろいろ・・・まるで慢性疲労症候群のような症状である。
重症例では呼吸機能低下が残存する。
COVID-19に限ったことではないが、肺炎が重症化するのは高齢者であり、基礎疾患保有者である。

高齢者肺炎の特徴

・演者らの報告では高齢者肺炎罹患後は35%の患者がADL低下し14%は寝たきり状態となる。
→なかなか退院できず→療養病棟へ転院となる。
転院半年後の転帰は、入院前の場所へ戻ったのはわずか20%しかなく、残りは入院継続や再入院、老健入所や死亡であった。
老健入所の理由は老老介護で自宅では面倒が見れないためであった。
寝たきり状態はまた嚥下性肺炎を起こす。
嚥下性肺炎は不顕性誤嚥なのでPEG(胃ろう)では予防できない。
・食形態による肺炎死亡率、入院率
経管栄養は肺炎の発症が高率である。肺炎による累積入院率は3年で約40%である。不顕性誤嚥による。介護食・嚥下食でも、肺炎による累積入院率は3年で約25%。
一方で普通食の場合は累積入院率は3年で5%未満であった。
早期の嚥下リハビリテーション介入が重要である。
・米国疫学データによると、肺炎で入院した高齢者は認知症の発症リスクが2-3倍上昇する。
他の報告では入院2ヶ月後に25%が中等度以上の認知障害を発症する。これは12ヶ月後も改善しておらず、ご家族が大変な負担を強いられることになる。
・インフルエンザ後の重症化肺炎は70代以上が約4分の3を占める。
COVID-19関連の論文のうち8%が細菌/真菌の同時感染を報告している。細菌との混合感染を考慮しておく必要があるだろう。
我が国ではCAPとNHCAP両者の肺炎の起炎菌は90%近くが肺炎球菌である。
新型コロナウイルス感染が重症化するのは血栓症を誘発するからであるが、一般的に肺炎球菌など他の肺炎でも同様でありAMIは約6倍発生率が高い。

高齢者肺炎(誤嚥性肺炎)の治療方針

ガイドラインでは特に予防を強調している。重要なのがワクチンである。
・ワクチンについて
コンジュゲートワクチンは2000年以後開発されるようになり現在に至る。
肺炎球菌を例にとると、莢膜多糖体抗原をターゲットにしたものがニューモバックス®、莢膜多糖体抗原にキャリアタンパクを結合させたのがコンジュゲートワクチン(プレベナー®)である。
ニューモバックス®ではT細胞非依存型免疫応答が生じナイーブB細胞が活性化→IgM型形質細胞に分化しIgM抗体を産生する。
プレベナー®ではT細胞依存型免疫応答が生じる。キャリアタンパクはナイーブBとヘルパーT細胞を活性化させ、IgG型形質細胞やメモリーB細胞にも分化誘導される。
肺炎球菌が感染すると非特異的なIgM抗体がまず産生されて補体活性化と細菌凝集を引き起こす。クラススイッチして高親和性IgG抗体を産生し補体活性化や細菌凝集の他にオプソニン化する(抗原をIgG抗体が取り囲んで好中球に貪食されやすくする)。

・PCV13の適応追加について
PCV13は5歳未満と65歳以上にしか接種が認められていなかったが、最近になり高齢者または肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者という適応が追加された。慢性肺・心・肝・腎疾患、糖尿病、免疫抑制状態であるもの(ステロイド全身投与や免疫抑制剤投与、血液疾患など)またはその状態が疑われる者である。
肺炎球菌については、PCV13の強力な免疫力とPPSV23の高いカバー率を生かした強力な予防効果が期待される。

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