JSA/WAO Joint Congress 2020(その1)

日本アレルギー学会学術大会とWorld allergy organizationの合同開催となったJSA/WAO Joint Congress 2020に出席し、最新の知見を学びましたので報告します。 この会議は残念ながらWEB開催となりましたが、期間中何度でも視聴可能でしたので、興味ある演題について繰り返し聴講いたしました。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

■教育セミナー10 Educationa seminar 10 重症喘息・ABPMにおける真菌特異的IgE検査の重要性

 Opening remarks
浅野浩一郎先生

●1.ABPMにおける真菌特異的IgE検査の重要性
国立病院機構相模原病院臨床研究センター 福冨友馬先生

●2.成人喘息における(環境)真菌感作の意義
湘南鎌倉総合病院免疫・アレルギーセンター 谷口正実先生

Opening remarks

座長
浅野浩一郎先生

・アスペルギルス関連気道・肺疾患のスペクトラム
関連疾患には以下のようなものがある。
侵襲性肺アスペルギルス症 慢性肺アスペルギルス症 アスペルギローマ ABPA 真菌感作重症喘息
侵襲性肺アスペルギルス症は感染症、真菌感作重症喘息はアレルギー、そして残りは中間である。
つまり、
左ほど感染症 ↔ 右ほどアレルギー 
左ほど急性発症  ↔ 右ほど慢性発症
左ほど菌量多 ↔ 右ほど菌量少
である。
・ABPAは成人喘息の2.5%、日本人1.5万人、全世界で約500万人と推定されている。
真菌感作重症喘息は重症喘息の30-50%
これらの疾患では発症速度と菌量が重要である。
菌量のおおい侵襲性肺アスペルギルス症では培養や抗原検査が診断に重要である。
一方菌量が少ないABPAや真菌感作重症喘息ではIgEやIgGなどの抗体検査が重要となる。

●1.ABPMにおける真菌特異的IgE検査の重要性

国立病院機構相模原病院臨床研究センター
福冨 友馬先生

・喘息診療でIgE抗体を行う目的は以下の3つを同定するためである。
 喘息診断の参考にする
 喘息亜型の同定
 患者の増悪因子の同定
とくに3番めは重要で、重要なアレルゲンをもれなく感作状況を把握したいのである。
演者らはヤケヒョウダニ、スギ、イヌフケ、ネコフケ、アスペルギルス、アルテルナリア、ガ、ゴキブリ、カモガヤ、ハンノキ、ブタクサ、ヨモギ、をスクリーニング検査としている。
ダニについては、ヤケヒョウダニを提出すればコナヒョウダニやハウスダスト1は必要なし。
ガイドラインにアレルゲンの推奨は記載されておらず診療医師の裁量にまかされている。
大手臨床検査会社で受注されたIgE抗体価検査(1000万件以上)の解析から、陽性率の地域差が判明した。
その結果から演者らは成人気道アレルギー原因抗原同定スクリーニングパネルを提唱した。(Minami et al. Allergol Int. 2019)
北海道の必須はダニ、イヌフケ、ネコフケ、ガ、ハンノキ、カモガヤ
北海道以外は、ハンノキの代わりにスギ、あとは同じ
沖縄はダニ、ネコフケ、イヌフケ、ガ、ゴキブリ
陽性率および交差反応性から効率を考慮して以下の11項目(ヤケヒョウダニ、スギ、イヌフケ、ネコフケ、アスペルギルス、アルテルナリア、ガ、カモガヤ、ハンノキ、ブタクサ、ヨモギ)が推奨である。
この11項目を基本にして地域差も参考にしながら測定すればよい。
スクリーニングパネルを利用することにより効率的かつ見落としの少ない診療ができる。

ABPA(アレルギー性肺アスペルギルス症)の診断

・ABPAは喘息の1−2%であるが、環境中のアスペルギルス フミガタス(Af)胞子を吸入し下気道へ到達→下気道で腐生し局所でプロテアーゼ、アレルゲン等を放出する。→ 下気道で2型免疫反応惹起しAf−IgE陽性、総IgE高値、末梢血好酸球増多、粘液栓形成し中枢性気管支拡張などを認める → 重症化・低肺機能・気管支拡張に至る。
アスペルギルス フミガタスの特徴
 ①世界中で環境中に普遍的に存在する
 ②胞子経が小さく浮遊しやすい(3−6μm, 球形)、肺末梢まで到達しやすい。
 ③至適発育温度が37℃と他の真菌に比して人の体温に近いため下気道で腐生しやすい。(他の真菌は25℃程度)
・ABPA診断基準(ISHAM working group’s criteria, CEP2013)
素因:気管支喘息、嚢胞性線維症
必須項目:
 Af-IgE陽性 または 即時型皮膚反応陽性
 血清総IgE>1000IU/mL (ただしその他の項目をすべて満たせば<1000も可)
その他の項目(3項目中2項目以上):
 Afに対する沈降抗体またはIgG抗体陽性
 ABPAに合致する画像所見
 非ステロイド下における末梢血好酸球数>500cells/μL(既往も可)
すべての喘息患者においてABPAを鑑別するためにAf-IgE抗体価を測定すべきであると述べている。
しかし実際にはAf-IgE抗体陽性の患者の殆どはABPAではない。粗抽出アレルゲンタンパク質は交差反応性アレルゲンを多数含んでいるからである。
・Asp f1抗原について
Asp f1とf2は種特異性および陽性率が高い。f1は保険適応となる予定。
Asp f1は培養開始して数時間して分泌が確認されるものであり、環境中には認めない。
すなわちf1は真に下気道に腐生していないと陽性とならない。
今までのIgE抗体価ではマラセチアIgE陽性患者において交差反応性のためにアスペルギルスIgE陽性となりやすい。すなわちアトピー性皮膚炎患者には陽性となりやすい。Asp-f6が交差反応性の高い抗原である。
Af-IgE陽性かつAsp f1or f2陽性なら、53%がABPAである。
一方f1、f2陰性かつf6陰性ならABPAの可能性は低い。(5%)
f1,f2陰性だがf6陽性ならアトピー性皮膚炎によりマラセチアに感作された交差反応による陽性例、ABPAの可能性は低い。
・ABPAのの診断基準を満たさなくても、Af-IgE感作例の喘息患者は低肺機能である。
またAfのみならず多くの熱耐性Aspergillus/Penicillium属真菌が喀痰から検出される症例では、低肺機能と関連している。
真菌IgE感作があると、より低肺機能となる(CEA 2012)。
・以前Severe sathma with fungal sensitization が提唱されたことがある。(ERJ2006, AJRCCM 2009)
イトラコナゾールが有効な症例がある。
おそらくABPAの診断基準を満たさないABPA様患者が多数含まれているのではないか。

ABPM(アレルギー性肺真菌症)の原因アレルゲン真菌

・トリコフィトン
ステロイド投与が必要な重症喘息患者には白癬合併例が多く認められ、フルコナゾール投与で喘息も改善する例があることが報告された(Ward et al. JACI 1999)。この報告ではトリコフィトンの吸入負荷をすると、かなり低濃度で喘息発作が誘発されるが、フルコナゾール治療によりその反応閾値も低下していくことが示されている。
・カンジダ
アトピー集団におけるIgE感作率は高い
アトピー性皮膚炎の重症化と関係?マラセチアとの交差反応性?
Cystic fibrosis患者の気道から高頻度に検出されるも、感作とは一致しない(Chest 2013)
喘息にとってあまり重要なアレルゲンではなさそうだが、一方で、
カンジダの特異的な酵素にSAP(secreted aspartyl proteinase )があり、この吸入誘発によりisolated LARが誘発されることを演者らのグループが報告した(Mori et al. abstract JACI 2007)。

喘息長期管理におけるAsp−IgE

・演者らは10年以上通院している成人喘息患者(n=139)の特異的IgEの経年変化を調べたところ、真菌粗抽出抗原に対するアスペルギルスIgE抗体は0.7% →13%に陽性率が上昇していた(Allergy 2018)。
最も陽転化しやすいのがアスペルギルスである。
どのような患者が陽転化しやすいのか。男性、非アトピー、低肺機能、高用量ICS使用。
喘息は長期に臨床経過のなかで、Afの新規感作が高率に起こっているので、定期的なIgE感作の再評価が必要である。

●2.成人喘息における(環境)真菌感作の意義

湘南鎌倉総合病院免疫・アレルギーセンター
谷口 正実先生

・環境中の真菌

屋内と屋外に分けて考える必要がある。
屋外空中飛散真菌は主にクラドスポリウム(クロカビ)とアルテリナリア(ススカビ)であるが、5-6月と9-11月に2峰性にピークがある。
環境真菌が屋内にはいり、湿気の多いところではクラドスポリウムとアルテリナリアが水回りカビとしておおく、押入れや壁などはアスペルギルス(コウジカビ)、ペニシリウム(アオカビ)などのホコリカビがおおい。

・真菌抗原の特殊性

真菌は抗原種として70以上同定されており、不明な部分がおおい。
プロテアーゼなど多岐にわたる抗原性を有する。
アスペルギルスやペニシリウムの胞子は5μm以下で容易に末梢気道に到達する。
抗原性だけでなく細胞壁のGlucanは炎症惹起物質、Mycotoxinは毒素として作用する。
Afは37℃で増殖しやすい。気道内腐生により持続暴露状態となりやすい。
マラセチアやカンジダは皮膚粘膜常在菌として感作されやすい。
環境中の抗原量が測定できない ⇛ 対応が困難
真菌に対する年代別の皮内テスト陽性率は一般的に若年>中高年で年齢とともに低下傾向であるが、
アスペルギルス、カンジダ、トリコフィトンは中高齢喘息患者でも低下しない。これが何故かはよくわかっていない。
ダニやペットの抗原感作率は地域差はほとんどないが、真菌は温暖な地域で陽性率が高いので、西日本、九州は注意が必要である。

大気中の真菌増加と喘息悪化には多くのエビデンスがある。
・英国では6-9月に若年成人の喘息死が増加する。この時期はアルテリナリアとクラドスポリウム飛散数が数倍増加する。喘息死患者の60%以上がアルテリナリアに感作していた。同様の報告はシカゴでもあり。
発作入院や発作受診も同時期に増加する。
カナダ国内では真菌>花粉飛散数が多い都市ほど、発作受診数がおおい(JACI2004)

アルテルナリア(ススカビ)について

屋外や水回りにおおい。
喘息死にアルテリナリア皮膚テスト陽性者がおおい(NEJM1989)。
真菌のなかでもアルテルナリアは感作率は高くないが小児から若年成人喘息の重症化に関与している。
大気中にたくさんのアルテルナリア胞子は飛散している。
アルテルナリアのプリックテスト陽性患者は重症化しやすく、その影響はダニやネコ、花粉よりも強い。(JACI1999)
大気中のアルテルナリア胞子数が増加するとアルテリナリア陽性アレルギー患者の喘息症状が悪化する(AJRCCM 2001)。
米国家庭内のアルテリナリア抗原量が多いほど喘息症状が1.8倍多いが、アルテルナリアは鼻炎症状には影響しない。
ただし小児においてアルテリナリアは喘息の重症度は関係するが、喘息発症とは関連がない(真菌感作率は高くないための影響ではないかと思われる)。喘息発症とは気道過敏性を認めることである。
アルテルナリア以外ではクラドスポリウムやAureobasidiumの関連性、あるいは真菌全体への感作と重症化について多くの報告がある。

ICS/LABAが普及して喘息患者の気道症状・臨床症状が変化している。

・下気道では、喘鳴を伴う発作の減少
 → 痰がからむ咳喘息患者の相対的増加
上気道では、花粉症と好酸球性副鼻腔炎の増加
アスピリン喘息では、喘息症状の安定化と上気道(鼻茸、中耳炎)の悪化と、
NSAIDS誤使用や負荷試験においても増悪なしの例が増加
気道過敏性が正常化する例が増加
新規感作アレルゲンの出現
とくにアスペルギルス・フミガタスの感作が新規に生じることを演者らは報告した。

日本人小児・成人アトピー型喘息におけるアレルゲン感作の自然史

・日本人のアトピー型喘息は以下の順で感作が成立し発症すると考えられる。
第一段階:ダニ感作(90%以上) and/or ペット感作(約30%)
 この2つのアレルゲンは特に重要であり、気道過敏性を出現させ、喘息を発症させる因子である。
すなわち「喘息発症アレルゲン」である。
第二段階: 加えて真菌感作20%(アルテリナリア、クラドスポリウム)
 第一段階でダニかペットに感作後に第二段階の真菌感作が生じ、「喘息重症化因子」として関与する。
アルテリナリアやクラドスポリウムの単独感作はほとんど認めない。
第三段階:Aspergillus fumigatus感作(5-10%)
 第三段階となると、難治化 + 一部ABPA化 として関与する。
もともと非アトピーだった患者が、高齢かつ高用量ICS使用患者に感作が成立していた。
いままではアトピー型の一部がアスペルギルスに感作しABPAを発症し、一方で非アトピーは一生非アトピーのままであった。
しかしこれからは非アトピー型の一部もアスペルギルスなどに感作しABPAを発症する時代となった。

喘息重症化に関与するアレルゲンについて

・かつて相模原病院では数千例の皮内テストを実施していた。そのデータによる多項ロジスティック回帰分析結果から、ダニ感作例は喘息重症例は少ないが、アスペルギルス感作(フミガタス、レストリクタス)が重症化に関与することが判明した。
Menziesらの報告では(Allergy 2011)、英国133例の重症喘息を解析し、5例がABPA診断基準を満たし、83%にCT異常、35%で気管支拡張所見を認めた。Aspergillus感作例(約3分の1)では、気管支拡張所見が2倍多く、ベータ刺激薬吸入後の1秒率は有意に低値であった。
同様に成人喘息433例(平均51歳)における画像所見の横断的研究によると(JACI 2017)、
真菌感作喘息は気管支拡張、気道壁肥厚、Tree in Bud(細気管支の炎症)、無気肺が非感作喘息に比して有意に多い。
またカンジダ、アルテリナリアよりもアスペルギルスの感作例がこれらの画像所見が有意に多かった。
アスペルギルス感作喘息は肺機能も有意に低値であり、早期からリモデリングを起こしていると考えられる。
・アスペルギルスは300種類近く存在するが、フミガタスのみが1型と3型の両方のアレルギーを起こしうる。侵襲性も強い。

アスペルギルス由来の下気道疾患における移行性

・中等症以上のアスペルギローマでは菌球周囲に中枢性気管支拡張や浸潤影を繰り返し認めやすい。IgE抗体陽性、浸潤影増加時は好酸球も増加していることがおおく、アスペルギローマとABPAは近縁疾患と考えるのが妥当である。ABPA的な対応も必要となる。
ABPA-Sという概念があり、ABPAの診断基準満たさない(画像に中枢性気管支拡張CBのない、血清学的IgG/IgE抗体のみ陽性)症例がある。この群はそのうちABPAになるのだろうと考えられていた。
演者らはABPA-Sにおける肺機能について5年以上経年的変化を観察したところ、殆どは肺機能低下せずCBにもならないことが判明した。ABPAとABPA-Sは別疾患?と考えて良いかもしれない。
・ABPAは最初の浸潤影出現から診断までが約7年と言われている。世界的に診断が遅れる疾患として知られている。
粘液栓(mucoid impaction)と栓が抜けたあとの中枢性気管支拡張が特徴的画像であり、ABPA以外では認めない。
ABPA患者の粘液栓は縦隔条件で内部に高濃度吸収域を呈する粘液栓である。好酸球の多い非常に粘稠な痰である。
ABPAにおける粘稠痰の機序:
 気道に腐生したアスペルギルス胞子を好酸球が認識してETosis→DNA traspsを起こすが、アスペルギルスはETosisに耐性で気道内に定着(持続腐生)するので痰が貯留する。
ABPAは血清総IgEが病勢を反映するバイオマーカーとされる。(↔ 通常喘息)

アスペルギルス以外の真菌が原因になったABPMについて

・ABPMはアスペルギルスが90%原因だが、ほかもある。
インドなど世界の報告では60%がカンジダ属がおおいが、
日本ではスエヒロタケ(Schizophyllum spp)が報告されている。
アスペルギルス以外のABPMは喘息症状は38%しかでない。
スエヒロタケによるABPMは粘液栓を認めるも、喘息は約半数、IgE正常3分の1である。

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