第61回日本呼吸器学会学術講演会(WEB開催)聴講録 その2

2021年4月23日から25日まで第61回日本呼吸器学会学術講演会(WEB開催)が開催されました。
オンデマンドで何度も聴講し最新の知見を学びましたのでご報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

◆結核・非結核性抗酸菌症の現状と最新知見

●JP-1 結核の新しい治療について
ワシントン大学呼吸器内科 成田昌弘先生

●JP-3 肺非結核性抗酸菌症(NTM)の病態
筑波大学呼吸器内科 松山政史先生

●JP-4 肺非結核性抗酸菌症の治療
NHO近畿中央病院呼吸器センター 露口一成先生

●熊谷賞受賞講演 誤嚥性肺炎の定義・診断・新治療
東京医科大学八王子医療センター 寺本信嗣先生

◆若手シンポジウム4 慢性線維化性間質性肺炎の急性増悪

●YIS4-1 急性増悪の病態と予防〜症例からの検討〜
東海大学呼吸器内科学 伊藤洋子先生

●YIS4-2 急性増悪における予後因子について
順天堂大学呼吸器内科学 加藤元康先生

◆呼吸器疾患の終末期緩和ケア

●S6-4 在宅診療における呼吸器疾患の緩和ケア
東京ふれあい医療生活協同組合梶原診療所 平原佐斗司先生

◆シンポジウム12 低酸素性肺血管攣縮(HPV)と肺疾患

●S12-1 HPV総論
信州大学呼吸器・感染症・アレルギー内科 花岡正幸先生

●S12-3 COPDに合併した肺高血圧症における肺血管病変
自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器内科 山口泰弘先生

◆結核・非結核性抗酸菌症の現状と最新知見

JP-1 結核の新しい治療について

ワシントン大学呼吸器内科
成田 昌弘 先生

超多剤耐性結核(XDR-TB:Extensively drug- resistant-TB)

・XDR-TBとは、INH、RFP、キノロン系、カナマイシンに耐性を獲得した難治性結核をいう。
現在の治療ガイドラインでは治療初期に5剤を使用し、治療期間は培養陰性化後15-24ヶ月とされている。
・XDR-TBに対する新治療が2020年に発表された(NEJM 2020;382:893-902)。
ベダキリン(B)、プレトマニド(Pa)、リネゾリド(L)の経口3薬を毎日6ヶ月投与・・・通称BPaL療法
対照群なしのsingle arm 前向きコホート研究。
南アフリカで実施され、N=109、76%が黒人、男性は52%。平均年齢35歳、51%がHIV陽性、85%で空洞あり、結核診断から新治療開始までの期間は平均12ヶ月。
結果:intention to treat(全数フォローアップして解析)、治療失敗歴なし
治療12週の時点でほぼ全例培養陰性化している。
副作用が高頻度で、17%で重篤な副作用を認め、うち57%がGrade 3以上。
リネゾリドの副作用として末梢神経障害81%、骨髄抑制48%(貧血、血小板減少)。末梢神経障害治癒するまで約3ヶ月を要した。肝障害16%。
QT延長の患者なし。 ・・・ベダキリンの副作用として懸念されていた。
85%の患者はリネゾリド1200mgを6ヶ月間継続できず。
 → リネゾリドの投与量と期間について現在ZeNixという試験が実施されている。

肺結核の新規4ヶ月治療 (TBTC study 31/ACTG A5349 trial)

リファペンチン(P)、INH(H)、ピラジナミド(Z)、モキシフロキサシン(M)、エサンブトール(E)、リファンピシン(R)
13カ国から2516例の肺結核患者の治療を3群に分け比較した。

  1. 2PHZM/2PHM : 2ヶ月間PHZM、その後の2ヶ月間PHM毎日服用
  2. 2PHZE/2PH:2ヶ月間PHZE、その後の2ヶ月間PH毎日服用
  3. 2HRZE/4HR:  標準療法

結論 1.2PHZM/2PHMが標準療法と非劣性であった。
リファペンチン(RPT)の投与量について(AJRCCM 2020)
 リファペンチンはautoinduction作用(自らその代謝をコントロールする)があり、体重に関わらず1200mg投与する。

JP-3 肺非結核性抗酸菌症(NTM)の病態

筑波大学呼吸器内科
松山 政史 先生

肺NTM症の罹患率は過去20年で著しく増加している。

病型は次の5型である。

1)結節・気管支拡張型、2)繊維空洞型(結核類似型)、3)孤立肺結節型、4)播種性型、5)過敏性肺炎型(hot tub lung)

肺NTM症の菌側の問題について

原因菌の9割はMACである。
NTMは土壌や水など、どこにでも存在する環境常在菌であり、我々はいつも暴露されている。
環境因子はとくにシャワーエアロゾルが重要である。
同じMAC菌でも宿主への反応は異なる。
安定しているslow progressiveな患者から分離した菌と、増悪中の患者から分離した菌をマウスに経気道的に感染させた研究では、もとの発育状態と他のマウスに感染させたあとの発育状態は異なっていた。

播種性NTM症

免疫不全者に生じる日和見感染症である。
基礎疾患としてHIV感染、抗INF-γ中和抗体保有者(*1)、先天性免疫不全、などが知られている。
特徴的症状は、結節性皮膚病変、溶骨性病変など。
その病態はINF-γ/IL-12軸、TH1免疫が強く関与している。
抗酸菌感染症に感染した宿主はマクロファージのTLRにより抗酸菌を感知しIL-12を産生・分泌する。IL-12Rを介してTH1細胞が活性化されるとINF-γを分泌し、再びマクロファージのINF-γRを介して刺激されてIL-12を分泌する、というpositive feedbackがかかる。この機構に関わる分子のどこかに機能欠損があると播種性NTM症を発症する。
(*1)抗INF-γ中和抗体:日常診療でしばしば遭遇する重症感染症例から見いだされることがあり、成人発症の免疫不全症の原因の一つである。多臓器が侵される播種性NTM症で発症することが大多数であるが、難治性の細胞内寄生菌やウイルス感染症(サルモネラ症、帯状疱疹など)を来す場合もある。(筆者補足)

肺NTM症と播種性NTM症の違いについて

肺NTM症の病変は肺のみに限局される。病理像として気管支周囲に明瞭に肉芽腫を認め、画像では気管支壁肥厚、小葉中心性粒状影がみられる。
播種性NTM症では、肉芽腫の形成が不十分で、CTでは粟粒結節様や浸潤影、多臓器に病変が認められる。

肺NTM症の臨床的特徴 (KIm RDら、AJRCCM 2008)

63人の肺NTM患者を前向きに観察する研究では、95%が女性、高身長やせ型、36%の患者でCFTR遺伝子変異を認め、明らかな免疫異常は認めなかった。9%に僧帽弁逸脱症、11%に漏斗胸、51%脊椎側弯症を合併していた。
・肺NTM症では繊毛運動周波数が低下していることが報告された。(AJRCCM 2013)
65歳以上の患者は予後不良であると報告あり(ERJ 2020)。
NTMの病態は多因子疾患と考えられており、疾患感受性遺伝子の検索にはGWASが用いられる。例えば韓国のグループからSTK17AのSNP、日本からCHP2のSNPなどが発見されている。前者はマクロファージのアポトーシスに関与し、後者はイオンホメオスタシスに関与する。

NTMと宿主応答について

演者の研究では、ヒト培養気道上皮細胞にNTMを感染させると感染3日目には気道細胞内に感染し繊毛の障害を起こすことが証明された。
IL-32が気道上皮で誘導され、MACの発育を抑制的に働く。その機序は感染気道上皮細胞のアポトーシスを誘導して防御的に働いている。一方でIL-32は感染防御において殺菌作用とdanger signalという両刃の剣を有しており、今後の研究が待たれる。
演者らは、M.aviumをマウス肺組織に感染させ2ヶ月後の遺伝子発現量が増加あるいは減少したものをGWASで解析したところ、樹状細胞の成熟やTh1、Th17細胞の活性化に関わる経路の亢進が認められたという。

JP-4 肺非結核性抗酸菌症の治療

NHO近畿中央病院呼吸器センター
露口 一成 先生

肺NTMの問題点は以下の4つである。
問題点(1)
 一般的に有効薬が乏しく治療成績が悪い。
 メタアナリシスでは肺MAC症の治療成功率は約60%、肺M.abscessus症では54%であった。
問題点(2)
 他人への感染性がない。個人差が大きく急速進行例から自然軽快例までさまざまである。
 薬剤の効果が不十分で治癒しない例も多い。
 → 全員に治療するわけではなく、経過観察することがありうる。
問題点(3)
 治療が長期となるため副作用対策が問題となる。
 もっとも問題となるのはEBの視神経障害である。
問題点(4)
 治療終了後に、あるいは治療途中での再感染がありうる。
 →菌の暴露を防ぐことも重要である。

昨年ATS/ERS/ESCMID/IDSAS合同のClinical Practice Guidelineが発表された。(Clinical infectious Diseases 2020; 71(4): 905-13)
以下の内容はこれに沿っている。

CQ1:肺NTM症は化学療法を行うべきか、進行するまで経過観察すべきか。

肺MAC症の予後不良因子は、空洞の存在とやせ、である。
すべての死因による累積死亡率は23.9%、肺MAC症による累積死亡率は5年で5.4%。
同様に10年目までの累積死亡率は46.5%、15.7%であった。(AJRCCM 2012)
従来FC型が予後不良と言われてたが、空洞ありのNB型、空洞なしNB型、FC型を比較した報告では(Koh WJ et al. ERJ 2017)、
空洞があるかないかが予後と関連していた。→空洞ありは要治療!
軽症のNB型でも無治療経過観察中に悪化して、空洞形成することがありうる。
演者の経験例では、軽症NB型で空洞なく経過観察し、4年後排菌陰性化で診療終了。その2年後空洞形成し、CAMも耐性化して右下葉切除となった。

肺MAC症の治療開始の考え方 (非結核性抗酸菌症診療マニュアル 医学書院)

※診断後すぐに治療すべき症例
 線維空洞型(FC型)
 結節・気管支拡張型(NB型)でも
   1.血痰・喀血、2.塗抹排菌量が多く気管支拡張病変が高度、3.病変の範囲が一側肺の1/3を超える。
上記は可能なら手術も考慮する。 
※経過観察してもよい症例
 NB型で病変の範囲が一側肺の1/3以内で気管支拡張病変が軽度、自覚症状がほとんどなし、喀痰塗抹陰性、
 75歳以上の高齢者
定期的に画像でフォローし悪化あれば治療開始を検討する。
Recommendation: 肺NTM症の診断基準を満たす患者は、特に喀痰塗抹陽性あるいは/かつ有空洞症例に対しては、治療開始を提案する。
患者とよく相談して決定すること。

CQ2:肺NTM症はエンピリックに治療すべきか、薬剤感受性結果に従って治療すべきか。

マクロライドが重要。CAM単剤投与は有効だが再発時はマクロライド耐性化している。
マクロライド耐性だと排菌陰性化率は低下し、予後不良。
不適切なCAM耐性化リスクのあるレジメンは、CAM単剤、CAM+フルオロキノロン、EBを含まない治療、である。
EBは必要。
アミカシンも薬剤感受性は重要である。MIC=<16μg/mL :susceptible , MIC=32 :Intermediate, >=64:Resistant。
我が国で使用されているNTM感受性キットはAMI16μg/mLまでしか測定できない!→改良の余地がある。
Recommendation : 肺MAC症では、マクロライドやアミカシンについては薬剤感受性に従って治療することを提案する。

CQ3:マクロライド感受性の肺MAC症は、マクロライドを含む3剤治療か、含まない3剤治療のどちらで治療すべきか。

Recommendation :必ずマクロライドを含む3剤治療とすること(Strong recommendation)

CQ4:マクロライドとしてCAMかAZMのどちらか。

CAMとAZMの両者をレトロスペクティブに比較検討した報告では(Wallace RJ et al., Chest 2014)、有意差はなくどちらでも有効。
我が国ではAZMに保険適応がなかったが、2020年2月から適応拡大された。
CAMよりもAZMが好ましい点
 1.忍容性に優れる・・・味覚障害がない
 2. 薬剤相互作用が少ない・・・チトクロームP450との結合が弱い
 3. 1日1回1錠でコンプライアンス向上が期待できる
 4. 有効性はほぼ同等
Recommendation :マクロライド感受性肺MAC症では、AZMを含むレジメンを提案する。

CQ5:肺MAC症では、AMKかSMを含むレジメンで治療すべきか、含まないレジメンで治療すべきか。

Group A :RFP + EB +CAM +SM (SMは初期3ヶ月のみ)、(RECは菌陰性化後24ヶ月)
vs
Group B:RFP + EB +CAM (SMなし)
結果 Group A の菌陰性化率は71%、Group Bは50%
ただし、治療終了後の再排菌率はA31%、B35%で有意差なし。
Recommendation :難治性の肺MAC症(空洞あり、進行・高度の気管支拡張、あるいはマクロライド耐性)では、初期治療レジメンとしてAMKあるいはSMを含めることを提案する。

CQVI :マクロライド感受性肺MAC症では、AMK吸入を含むレジメンを用いるべきか否か。

CONVERT study :難治性肺MAC症に標準治療+リポソーム化アミカシン吸入試験
難治性肺MAC症に対する初のRCTである。
→ 培養4ヶ月で吸入併用群は培養陰性化率29%、非併用群は8.9%であった。(AJRCCM 2018)
2021年3月に我が国でも承認された。本年度中に使用可能となる。
インスメッド社、吸入抗菌薬アリケイス®吸入液590mg。
Recommendation :ガイドラインに基づく6ヶ月以上の治療に失敗した肺MAC症では、経口レジメン + ALISの追加投与を推奨する。

CQVII:EB →+ CAM vs EB +CAM +RFP のどちらを推奨か

現在のところ耐性化リスクも考慮して3剤治療を推奨する。

CQVIII:連続治療と間歇治療のどちらがよいか。

EBの中止が少ない群は間欠投与群、治療効果は両者とも同等であった。
ただし、空洞ありの例では間歇療法群の成績不良。あくまで軽症の肺MAC症に間歇療法は適応されるべきである。

CQIX:マクロライド感受性の肺MAC症では、治療期間は培養陰性化後12ヶ月か12ヶ月以上か。

Wallace RJ Jrらの報告では(J Infect Dis 2002)、12ヶ月以降に再排菌した症例はほとんどが他の菌の再感染であった。
→ 治療期間1年の根拠となった。
一方、日本の報告では、排菌陰性化後15ヶ月以上群がそれ未満よりも有意に再発率が低かった。50%vs78%(Furuuchi et al., Chest 2020)。
15ヶ月以上が適切では?・・・今後の検討課題である。

CQXII:肺MAC症の手術

適応は 排菌源となる主病巣が明らかで、かつ化学療法で持続排菌、再排菌、空洞や気管支拡張が高度で再発の懸念あり、その繰り返し、喀血、アスペルギルス混合感染、などがある場合。
切除部位は空洞や気管支拡張である。散布性小結節や粒状影は必ずしも切除しなくてよい。
完治が絶対望める場合ではなくても、上記条件であれば切除実施してよい。
術後の予後不良因子は、高齢、術後に空洞が残存すること、やせ、全摘を行ったこと、である。
概して術後成績は良好である。空洞残存なし群は20年生存75%、あり群15年で10%未満。

ATSガイドライン2020に記載されなかった事項

肺MAC症に対するフルオロキノロンの位置づけについて

標準治療でも排菌持続する肺MAC症41例中12例(29%)に対してMFLXを含むレジメンで改善が得られた(Antimicrob Agents CHemother 2013)。
STFXを含むレジメンで治療した肺MAC症18例中8例(44%)で排菌陰性化が得られた。(Fujita,Open Forum Infect Dis 2016)。

再感染の防止について

肺MAC症において、土壌への曝露が少なかった者の割合は、再発のなかった群で94.6%、再発のあった群で46.7%であった(Ito, BMC Infect Dis 2014)

熊谷賞受賞講演 誤嚥性肺炎の定義・診断・新治療

東京医科大学八王子医療センター
寺本 信嗣 先生

高齢者肺炎は誤嚥性肺炎が主体である。

CAPの6割、HAPの約9割が誤嚥性肺炎である。

高齢者肺炎の原因として、microaspirationが重要である。
誤嚥の評価としてVideofluoroscopic examination(VF)検査は、ゴールドスタンダードである。
しかしVFは誤嚥性肺炎リスクを評価できない。
VF検査が正常でも誤嚥が発生しているからである(Clayton J et al. Age Aging2006)。
放射性同位元素を用いた不顕性誤嚥の検出をした報告では(AJRCCM 1994)、RIを染み込ませたガーゼを歯の周囲につけて翌朝肺のγカメラを実施した。その結果、肺にRIの取り込みが認められた。
 →口腔咽頭内容物のmicroaspirationは高齢者では極めてありふれた現象である。
すなわち、高齢者肺炎とは誤嚥性肺炎であり、微量誤嚥が原因である。
食事ができるかではなく、誤嚥性肺炎リスクをターゲットとして評価法が必要である。
嚥下誘発試験(SPT)が開発されたが、非常に大掛かりな検査なので、どこでもは実施できない。
そこで、「簡易嚥下誘発試験」を演者らは開発した(Lancet 1999)。

簡易嚥下テスト(Simple Swallowing Provocation Test :S-SPT)

細いカテーテルを鼻から咽喉まで通し、呼気時に0.4mL or 2.0mLの蒸留水を注入。嚥下運動を観察する。
0.4mLの水(first – step SPT)で嚥下反射正常者(”ごくん”とできる人)は、その後6ヶ月肺炎なし。
2.0mLの水(2nd -step SPT)で嚥下反射異常者(”ごくん”とできない人)は、その後6ヶ月以内で全員が肺炎を発症した。
0.4では嚥下できず、2.0では嚥下できる人は、嚥下反射が減弱しているのでリハビリの対象群である。
水飲み試験(WST)の誤嚥性肺炎検出の感度と特異度は、10mL-WSTでも30mLでも感度特異度は71%程度であり、陰性でも誤嚥しないとは言えないし陽性でも誤嚥するとも言い切れない。
S-SPTが優れている。
・死亡率の年次推移をみると、脳血管疾患の死亡率(人口10万対)は昭和40年ころをピークに減少しているが、ミラーイメージで肺炎死亡率が増加している。→ 脳卒中は助けたが、その後誤嚥性肺炎で亡くなっている。
誤嚥性肺炎のリスクは、脳梗塞、認知症、COPD、GERD、OSAS、アカラシア、経管栄養であることを演者らは報告した。
S-SPTを脳卒中後に経時的に実施すると、肺炎発症群は8週間経っても嚥下誘発閾値が2.0mLから低下しないが、卒中後に肺炎発症しない群は1週目からどんどん嚥下反射が改善し、4週目には全例1mL以下となっていた。→どこから食べてよいのか時期を判定できる。(Lancet 2001)

従来肺炎といえば、発熱、喀痰、咳嗽、頻呼吸、頻脈 などの臨床症状に対して胸部レントゲン、CT、炎症反応高値などで診断したが、
高齢者では、食欲不振、ADL低下、意識障害、失禁 などがあれば検査し肺炎を診断する。
さらに、微量誤嚥ならば嚥下性肺炎(通常型)、胃内容物大量嘔吐・誤嚥ならばメンデルソン症候群、胃切除後ならば胃切除後嚥下性肺炎(PGAP)と診断する。
画像で肺炎所見がなく、嚥下障害リスクありならば、びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)と診断する。

誤嚥すれば肺炎になるのか?

水の誤嚥→肺炎にならない。
塩酸(胃液)の誤嚥→肺炎にならない。
食事の誤嚥→肺炎にならない。
つまり誤嚥は必要条件であり、一緒に細菌混入もあることが必須である。
換言すると誤嚥性肺炎は細菌性肺炎であり、化学性肺臓炎ではない!
メンデルソン症候群では肺炎は起こらない。化学性肺臓炎と非心原性肺水腫が起こる。
PGAPでは、LES機能消失するので誤嚥をし、胸部CTでは多区域性の浸潤影を認める。誤嚥量が少なければ細菌はいないので肺炎には至らず器質化病変のみとなる。

びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)では、小粒状影が両側中下肺野に認められ(ないこともある)、胸部CTでは、両側肺野にびまん性に比較的背側優位な小葉中心性粒状陰影を認める。
病理では異物巨細胞は認め、野菜などの異物も確認できるが、死因は肺炎ではない!座って食事の誤嚥をしても、そう滅多に肺炎にはならない。食事のたびに誤嚥しているのに死因は肺炎ではないのである。

ただし、大量の食事の誤嚥を毎日繰り返せば、閉塞性肺炎を含めて高度の誤嚥性肺炎を生じさせうるのでかなり厳しくなる。
84歳の誤嚥を繰り返す症例に嚥下造影を実施した報告では(NEJM 2008)、両側下葉の気管支造影となってしまった。これほどの誤嚥は終末期であり、食事をとるか延命をとるか、というレベルであると認識される。

・演者らの報告症例では、頻回に左下葉に肺炎を生じ、嚥下造影にて喉頭蓋谷にpoolingした造影剤が呼吸のたびに気管内に流入する症例を経験した。2ndSTEP S-SPTは良好に反応したので嚥下反射減弱程度であった。→ 結局高齢発症筋萎縮性側索硬化症であった。
誤嚥性肺炎と決めつけている症例の中に神経筋疾患の可能性がある。

mucocilially clearanceが肺炎を防ぐ

肺に異物(細菌)が入っても除去できるかどうかは、肺の水にかかっている。
正常気道粘膜上にCiliaがありその上に粘液が存在する。粘液の表面に細菌や好中球が認められ60μm/secで移動している。
このmucocilially clearance が機能していればなかなか肺炎は起こらない。
気道上皮の水の通路は2つあり、一つは気道上皮間(ギャップジャンクション)、もう一つは気道上皮細胞を直接通過、である。これにより細胞外液の浸透圧と線毛間液(PCL)の浸透圧は同じとなっている。PCLの高さは一定を保たれ線毛は自由に動くことができる。

心不全でmucusに水が多すぎても、脱水でmucusやPCLが少なくても繊毛運動は正常に働かない、一定量の水(PCL)がないとだめである。

老化と鎮静が誤嚥を悪化させる

マウスの実験では、眠っているマウスの鼻にいれたウイルス液は容易に肺に誤嚥される。ラットにおいても麻酔深度が深いほど誤嚥量は多い。
すなわち老化と鎮静が誤嚥を悪化させる。その対策として、
老化予防→ フレイル予防、脊柱起立筋の維持。
過剰な鎮静を避ける → hypnotics sedatives を減量、中止する。
夜間睡眠中の微量誤嚥 →眠らないことは無理なので、口腔ケアが重要。

正常気道上皮細胞にいくら細菌を接触させても感染が成立しないが、障害上皮になら感染する

気道上皮へのウイルス感染は線毛機能障害を生じ、感染細胞死、気道上皮障害が細菌感染の温床となる。
ウイルスの感染が成立するには、ウイルスと宿主細胞が接触 → 細胞内へ侵入 → 細胞内で増幅、して初めて成立する。
ならばその段階を防げば感染しないということである。
演者らの報告ではDNAウイルス(AAV,アデノウイルス)を気道上皮に感染させると気道上皮にアポトーシスを起こす。さらにAAVはアデノウイルス存在下で感染が増強されることが知られている。
気道上皮にはアデノウイルスの遺伝子が残存しており(Matsuse et al. Am Rev Respir Dis 1992)、AdE1遺伝子の潜在的な存在は、発がん、炎症、ウイルス感染増悪に関与する可能性がある(演者ら、AJRCCM 1997)。

誤嚥性肺炎の起炎菌

介護される状態にあることが誤嚥性肺炎のリスクである。
NHCAP(医療介護関連肺炎)の検出菌について国内11研究2678例の解析では、
多い順に肺炎球菌17%、MRSA、クレブシエラ、緑膿菌、ヘモフィルス、MSSA、ストレプトコッカス、肺炎クラミジア、大腸菌、モラクセラ・カタラーリスであった。
このデータは誤嚥性肺炎の起炎菌であるといえる。
肺炎球菌の薬剤感受性はABPC/SBT(アンピシリン・スルバクタム)80%であった。

演者曰く、高齢者肺炎は怖くない。

1.発生する仕組みがわかっている、2.原因菌もわかっている、3.抗菌薬だけでは治らないが、抗菌薬以外の治療方法もわかっている(リハビリなど)。


NHCAPを提示したことで、新しい肺炎診療ガイドライン2017では終末期肺炎を提案している。

常に抗菌薬治療ではなく、超高齢者の誤嚥性肺炎は肺癌などと同様に「どこまで治療するかの合意形成を図る疾病」へとなりつつある。

(筆者コメント)寺本先生、受賞おめでとうございます。
誤嚥性肺炎に興味をもって診療できているのは先生のおかげです。
今後もどうぞご活躍ください。

◆若手シンポジウム4 慢性線維化性間質性肺炎の急性増悪

YIS4-1 急性増悪の病態と予防〜症例からの検討〜

東海大学呼吸器内科学
伊藤 洋子 先生

急性増悪はFVCの低下あるいは低下速度が速い場合に起こりやすい。
進行性フェノタイプを呈すると予想される患者を早期に抽出して、呼吸機能低下抑制、急性増悪発症予防のために、抗線維化薬を投与することが重要である。
急性増悪の病態は、
 1. もともとのPF-ILDが加速状態、2. 好中球性炎症、3. VEGFによる炎症血管の増殖+漏出状態、が関与している。
抗線維化薬でコントロールできない病態が存在する。例えば、PF-ILDの病態である肺胞上皮細胞障害の異常修復があるところに、急性増悪でさらに障害が生じると修復が追いつかず、異常修復(線維化)が促進してしまうのかもしれない。
ステロイドは抗炎症作用や肺胞腔内水分漏出防止効果の利点があるが、急性増悪前からの投与は独立したリスクファクターとなる。
その機序として、1. PF-ILDの病態である肺胞上皮細胞障害の修復異常を助長する、2. 肺胞上皮細胞の細胞骨格を修飾する。

YIS4-2 急性増悪における予後因子について

順天堂大学呼吸器内科学
加藤 元康 先生

急性増悪を生じた間質性肺炎を特発性、感染誘因性、非感染誘因性に分類して検討した。
非感染誘因性の原因としては、薬剤、肺術後、肺以外の術後、気管支鏡検査後であった。
感染が誘因となった急性増悪群は、非感染誘因群や特発性群と比較して生存期間や死亡率が有意に良好だった。(生存期間中央値は順に、190日、29日、19日)。ただし200日の時点での生存率は非感染誘因群が最も低かった。
感染誘因群は冬に発症し、非感染誘因群と特発性群は季節変動は認めなかった。
演者らは前向きコホート試験にてさらに予後因子を検討中であるが、中間報告をされた。
症例数は15。現時点でKL-6、SP-D、LDHは発症当日と発症後4日目の差が30日後の予後予測因子となりうる。
P/F ratioは発症4日目値が有用な可能性がある。

◆呼吸器疾患の終末期緩和ケア

S6-4 在宅診療における呼吸器疾患の緩和ケア

東京ふれあい医療生活協同組合梶原診療所
平原 佐斗司 先生

在宅医療における呼吸器疾患の緩和ケアのニーズ
・非がん性呼吸器疾患の緩和ケアのニーズは米国ホスピス利用者の約10%を占める(がん36%、認知症15%、心疾患13%、呼吸器疾患10%)。
WHOがまとめた世界のニーズは、心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)38%、がん34%、COPD10%、HIV5.7%…と続く。
非がん疾患の中で特に呼吸器疾患の呼吸困難はがんを凌ぐとされており、緩和ケアが必要とされる疾患である。
世界的に先進国では70歳以上の緩和ケアニーズが増加し、特に認知症が急増すると予測されている。
・演者らの報告では、在宅看取りを行った疾患の内訳は、COPD、ILDs、TBs、ACOが多かった。
直接の死因は原疾患の急性増悪(AE)が43%、肺炎・下気道感染が15%、心不全8%、肺梗塞、喘息、心筋梗塞….などであった。
COPDはAEでの死亡は半数以下くらい、間質性肺炎は4分の3がAEであった。
演者らの診療所の新規在宅患者146名を検討した報告では、肺癌など呼吸器悪性腫瘍は5.5%(8人)、非がん性呼吸器疾患は8.2%(※1)、疾患の終末期の肺炎を繰り返す症例5.5%(※2)であった。
※1 COPD、ACO、ILD、NTM、進行性肺アスペルギルス症、喘息)
※2 認知症5例、進行性核上性麻痺1、脳腫瘍1、サルコペニア嚥下障害1)

在宅緩和ケアの実際 ~事例~

・非結核性抗酸菌症の緩和ケア事例
キードラッグが無効となった、薬剤耐性NTMによるII型呼吸不全の症例(60歳代女性)
初診時の所見
 軽労作でMMRC4度、ADLはベッド上
 夜間は喀痰と呼吸困難で眠れず
 表情:恐れている
 極度の低栄養(BMI = 13)
 SpO2 96%(HOT 1L)だが呼吸回数32回、呼吸補助筋を用いた努力様呼吸
 HR108
 両肺に広範囲に湿性ラ音を聴取

演者がまず実施したこと:気道クリアランスを中心とした呼吸リハビリテーションの導入

  1. 呼吸リハビリテーションの導入
    – 体重維持のため、栄養 経口栄養剤、訪問栄養指導(油の使用)、分食・補食なども指導
  2. 呼吸困難や喀痰などの苦痛緩和
    – 夜間のみモルヒネ徐放剤(モルペス®5mg)+食事とリハ前にオプソ®2.5mg
         ⇛ 夜間熟眠し、労作時呼吸苦にも有効
    – 発熱時アセトアミノフェン600mg
    – パニックへの対応方法指導
  3. 急性増悪への対応 
    – 細菌感染による増悪に対応・・・抗菌薬投与
  4. 療養環境の調整
    – 呼吸障害3級取得
    – 吸引・吸入器、パルスオキシメータ購入補助
    – 介護保険再申請
  5. 疾患の治療の再考

非がん性緩和ケアでは、疾患特異的治療をベースに、総合的に実施すべき。

1. アドバンストケアプランニング(ACP)・・・患者と医療者のコミュニケーション
2. 呼吸リハビリテーション・・・外来・在宅にて実施
3. 緩和ケア・・・強い呼吸困難に対する治療(薬剤と行動変容を促す)

終末期の肺炎を繰り返す事例

すべての生命を脅かす疾患の終末期に肺炎は合併する。
・神経難病で肺炎を短期間に肺炎を何度も繰り返す70歳代男性
死亡4ヶ月前に誤嚥性肺炎で入院。歩行障害、嚥下障害が進行。とろみ食でなんとか経口摂取をしていた。
その後も肺炎を繰り返し、自宅での看取りを決断された。
呼吸状態が悪化したため深夜にモルヒネの持続皮下注射(6.5mg/日)開始、最大10.5mgまで増量。ドルミカム10.9mg/日併用。
(ドルミカムは鎮静ではなく、苦しみをとるため少量つかったとのこと。エビデンスはない。)
抗菌薬中止、輸液減量。7Lリザーバーマスク。これにより呼吸困難は和らぎ穏やかな数日を過ごされて永眠。
(筆者が追記 持続皮下注: 聖隷三方原病院のレジメン 
http://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents7/39.html

疾患末期の肺炎の緩和ケアのエビデンス

末期認知症の肺炎を例に、食べられなくなり死亡する群と比較して、
・肺炎で死亡した群は呼吸困難や不快感が強く、強い緩和ケアニーズがある。
・肺炎時の不快感や呼吸困難は生存例では肺炎診断日に最も強く、10日後までに改善する。
一方、死亡例では死亡7日前から増加し、死の前日に最も強い。
・末期認知症の肺炎時の抗菌薬の苦痛緩和効果については相反する報告がある。
・オピオイドの効果について強いエビデンスはないが、海外では広く使用され、末期認知症の肺炎ではオピオイド使用を推奨するガイドラインが存在する。
・終末期(臨死期)肺炎への分泌物への対応
大事であるが、エビデンスは少ない。
安楽な体位ドレナージ、口腔ケアの継続、苦痛の少ない浅い吸引、タイムリーな呼吸理学療法、輸液の調整が重要となる。

◆シンポジウム12 低酸素性肺血管攣縮(HPV)と肺疾患

S12-1 HPV総論

信州大学呼吸器・感染症・アレルギー内科
花岡 正幸 先生

肺循環の特徴

すべての血液は肺に集まる。
低圧系である。肺胞内圧、胸腔内圧、重力、呼吸、息こらえなどの影響を受けやすい。
ガス交換のほか、血液濾過や代謝などの機能を有する。
肺の毛細血管床の面積は広大(20-100㎡)。特有の現象であるHPVがある。

肺血管抵抗(PVR)の特性

肺細動脈は弾性血管で収縮性に乏しく抵抗は小さい。従って肺胞壁に薄く広く分布する広大な面積の肺毛細血管床に血液供給が可能となっている。
正常肺では安静時、血流のない、あるいは少ない予備血管床が豊富にある。
肺血管内圧、肺血流量あるいは心拍出量の増加時に、補充と拡張(つまり閉鎖血管の再開と血管径の増大)が起こり、血管内圧の上昇に対してPVRを低下させるように働く。
PVRを規定する因子には以下がある。
 肺気量
 肺細動脈平滑筋の収縮と拡張
 収縮には、HPV、血管作動性物質(トロンボキサンA2、エンドセリン、セロトニン等)、交感神経刺激
 拡張には、酸素吸入、NO、血管作動性物質(PGI2:プロスタサイクリン等)、副交感神経の刺激

低酸素性肺血管攣縮(HPV)

肺胞低酸素により肺細動脈(arteriole)が収縮する。・・・低酸素の直接作用である。摘出肺や培養肺動脈、移植肺でもみられる。
HPVは肺循環特異的な現象である。
肺胞低酸素、つまりPaO2が70torr以下に低下すると径100-200μmの筋性肺動脈が収縮し、局所の血流を減少させる。
気管支動脈や混合静脈血のPO2低下も一部関与する。
HPVは換気の少ない部分の血流量を減少させ、局所の換気血流比不均等を軽減させる合目的反応である。
肺全体が肺胞低酸素となる状況下では、肺高血圧が惹起される。
アシドーシスはHPVを増強し肺動脈圧上昇の要因となる。
例えば高地でHPVが出現する状況は、FiO2:0.15-0.18、標高1600〜2500m である。
HPVは個体差や人種差が大きく、高地で暮らすチベット族は肺動脈圧上昇は軽度である。
・局所の換気血流比不均等について
間質性肺炎では病変部位は換気・血流ともに低下しており不均等はあまりない。
肺血栓塞栓症では病変部位の換気は正常だが血流は途絶えているので、不均等はかなり大きい。
ゆえに疾患によっては血管拡張薬は換気血流比不均等を増悪させる可能性がある。


HPVが関与する代表的な疾患

高地肺水腫、第3群肺高血圧症(肺疾患に伴う肺高血圧症)、高地肺高血圧症(慢性高山病;Monge病)。
高地肺水腫の急性期の動脈血ガス分析は、高度の低酸素血症と呼吸性アルカローシスを示し、肺血管抵抗上昇を伴う肺高血圧を示す。

高地肺水腫既往者の体質的素因を演者らは検討した。

既往者は健常者に比較して有意に肺血管抵抗が上昇しやすいことが判明した。
さらに運動負荷においても、健常者よりも肺動脈圧や肺血管抵抗上昇が有意であり、PaO2が低下した。
低酸素負荷をした場合、既往者では下肺野の肺血流は有意に減少し上肺野に再分布したが、健常者は下肺野の血流は維持されていた。
すなわち、高地肺水腫既往者は健常者に比し高度なHPVを生じる。

持続するHPV、繰り返すHPVは肺血管リモデリングを生じて肺高血圧症の原因となる。

S12-3 COPDに合併した肺高血圧症における肺血管病変

自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器内科
山口 泰弘 先生

COPD患者の肺高血圧症は軽度から中等度(平均肺動脈圧20-35mmHg)のことが多く、心拍出量は正常もしくは増加していることが多い。
一般に安定期のCOPDでは右室収縮能は保たれているが、急性増悪期には右心不全を呈する。
COPDにおいて肺高血圧の合併は予後不良因子である。
その背景にはHPV、肺血管床減少、肺血管そのものの変化などが複合的に関与する。
安静時平均肺動脈圧>=25mmHgの症例は気流閉塞が強いほど増加し、重症COPDでは高頻度に認められる。
更に多くの症例で運動時に異常な肺動脈圧の上昇が認められる。気流閉塞が強いほど急上昇の程度も大きい(GOLD2で18→38mmHg、GOLD4で20→52mmHg)。
安静時平均肺動脈圧(mPAP)>40mmHgの重症肺高血圧症はCOPD患者の数%存在し、このような症例ではPaO2濃度に無関係にmPAPは高値である(ずっと40>維持)。
mPAP>40の患者は特にDLcoがかなり低下しているが、肺気量による鑑別は難しいと思われる。
 → 特発性肺動脈高血圧症の特徴を有する可能性がある。

OPD患者の肺高血圧症に対する治療

COPD患者に選択的肺血管拡張薬であるシルデナフィルを投与すると、VQミスマッチを生じてPaO2は低下する(AJRCCM 2010)。
本邦における多施設前向きコホート研究では(Circ J. 2021;85(4):333-342)、呼吸器疾患に伴う肺高血圧(mPAP>26)に対してシルデナフィルを投与したところ、
 換気障害の軽い群(StageI)は、診断後2ヶ月以内に投与開始したところ予後良好(3年生存率76%)、治療なしあるいはあとから治療群は3年生存率38%と不良だった。
 換気障害の重い群(Stage2以上)では治療の有無に関わらず予後不良(3年生存率50%以下)。
COPDではない喫煙者においても、ADP刺激による肺血管拡張の反応性は低下しており、病理組織所見も血管内皮が肥厚していると報告がある。
肺血管で様々なサイトカインの発現の変化やリモデリングが生じている。つまり肺の血管病変が肺気腫進行の病因としても関与する可能性がある。

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