第61回日本呼吸器学会学術講演会(WEB開催)聴講録 その4

2021年4月23日から25日まで第61回日本呼吸器学会学術講演会(WEB開催)が開催されました。
オンデマンドで何度も聴講し最新の知見を学びましたのでご報告します。

以下の記載は私の聴講メモですので、記載に間違いがあっても責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

◆会長企画シンポジウム2 新型コロナウイルス感染-1年の総括-

●PS2-3 診断法における新しい展開
東邦大学医学部微生物・感染症学講座 舘田一博先生

●PS2-4 治療法の適応・タイミングと限界
防衛医科大学校内科学 川名明彦先生

●PS2-5 COVID-19ワクチン開発の現状
国立感染症研究所エイズ研究センター 俣野哲朗先生

◆会長企画シンポジウム2 新型コロナウイルス感染-1年の総括-

PS2-3 診断法における新しい展開

東邦大学医学部微生物・感染症学講座
舘田 一博 先生

新型コロナ感染者数は2021年4月13日現在全世界で1億3千万人以上が感染している。米国3200万人、日本は51万人である。
日本の感染者数は少ないようにみえるが、死亡率は全世界で2.2%、アメリカ1.8%、日本1.8%であり、日本の死亡率は決して低くない。1000人かかれば20人は死亡するのである。

COVID-19の重症化因子と機序

末梢血リンパ球数が減少するのは重症化するサインである。
死亡した患者の骨髄病理所見ではHemophagocytic syndromeの所見(組織球がリンパ球を貪食する像)を呈している。
SARS-CoV-2は細胞表面のACE2レセプターを介して侵入するが、血管内皮細胞にも存在するために全身の血管性病変(血栓症)を生じる。
その結果Long COVIDと称される種々の臓器の障害(後遺症)につながっている。
重症化マーカーとしてIL-6高値があるが、サイトカインストームによる。CCL17(TARC)はTh2細胞の遊走を誘導するサイトカインであるが、これが低い症例で重症化が認められやすい。
すなわちTh1優位な症例で重症化がみられやすい。
アトピー患者ではCOVID-19重症化が少なそうであり、アトピー性皮膚炎とアレ鼻患者は入院率や入院期間が少ないと言われている。(Keswani A et al. Ann Allergy Asthoma Immunol. 2020;125:479-481)。
末梢血好酸球増多(>=150/μL)を認める気管支喘息患者ではCOVID-19感染後の死亡率が有意に低い。末梢血好酸球数Eo 150/μL以上群は生存率80%、Eo 150/μL未満群は50%未満(JACI pract. 2020 Jan 23)。
いまのところHIV感染症感染患者、移植患者、関節リウマチ患者などでも重症例が多いという報告はない。
 → 細胞性免疫の障害は増悪因子ではなさそう。
ではなぜ高齢者、基礎疾患保有者の予後が不良なのか、なぜ小児では重症例が少ないのかは、いまだ不明である。

COVID-19の診断

新型コロナウイルスは唾液腺に感染し唾液中に高濃度に存在するのが特徴の一つである。
唾液内には鼻咽頭と同等あるいは高濃度に検出される。
新型コロナウイルス感染症に対する診断法は、

1.遺伝子検査

 ウイルス遺伝子の検出(診断、キャリアの抽出)
 PCR,LAMP、SmartAmp法、GeneSoc法など。高感度で1-3時間の測定時間

2.抗原検査

 呼吸器検体中の抗原を検出(診断、キャリアの抽出)
 免疫クロマト法、化学発光法

3.抗体検査

 血中抗体を検出(感染後約2週間で陽性、感染の既往)
 免疫クロマト法(15分、肉眼判定、+or -)
 ELISA法(1-3時間、高感度、定量的)

検体が、鼻咽頭拭い、鼻腔拭い(自己採取)、唾液自己採取 などと広がっている。
鼻腔検体採取法:鼻の入り口から1-2cm付近から、医師監督下で自己採取が可能。

検査体制の基本的な考え・戦略

 まずは有症状者
 つぎに無症状者 ・・・攻めの検査(積極的・戦略的・集中的)
  a) 感染リスクおよび検査前確率が高い場合(クラスター発生時、医療機関や高齢者施設) 
  b) 感染リスクおよび検査前確率が低い場合(海外渡航時、スポーツ選手、文化・芸能、社会を円滑に維持するため、一般市民の安心)
検体検査については現在、COVID-19病原体検査の指針第3版(厚労省)が示されている。
概ね発症9日以内であれば検出可能である。最近は無症状の方の検査も可能となっている。
発症前後での検査結果において注意すべきはPCRである。発症2週間以後も陽性となるので、治癒したかどうかは中和抗体検査で確認が望ましい。

発症日数に従ってCt値が上昇(検出対象遺伝子の増幅サイクル数が多くなる)し、Ct値30がちょうど発症9日目に相当し、それをすぎると極端にウイルス量は減少する。
ウイルス培養結果とCt値の報告では、Ct値20以下はほぼ100%ウイルスが培養されるが、Ct値30で約40%、発症日数10日をすぎると培養されなくなる。

新しい核酸増幅方法

GeneSoC® (杏林製薬)
核酸増幅には高温と低温を交互に負荷する必要があるが、95度と50度に設定したパイプ内を検体が移動するという画期的な技術。
数秒単位で反応がすすんでいく。(最短2秒でDenaturation、最短5秒でAnnealing /Extention)

コロナウイルススパイク蛋白の多数の変異を検出する

多数の変異を一度に検出する方法として、演者らは”πコード法”という新しい方法を研究中である。100種類の変異を1回で検出できるという。

ウイルスの変異と進化の方向性

2週間に1回の頻度で変異が発生している。
どこに変異が入るかはランダムである。
”S”の受容体結合部位に変異が入ると感染性が変化するリスクがある。
感染性と病原性は必ずしも一致しない。
一般的に”広がりやすく、弱毒”になることが進化の方向性である。
がいまのところはそうなっていない。
数年後には第5番目のかぜコロナウイルスになっているのではないか。

PS2-4 治療法の適応・タイミングと限界

防衛医科大学校内科学
川名 明彦 先生

NIH/CDC COVID-19治療ガイドライン

レムデシビル(ベクルリー®)単独もしくはデキサメサゾンとの併用を推奨
 レムデシビルを使用群は回復までの時間を5日間短縮した。
 統計学的に有意な差はないとする報告もおおい。
デキサメサゾン 酸素補給を必要とする患者に推奨
 侵襲的人工呼吸を受けている患者の28日死亡を減らした(デキサ群死亡率 29% vs  通常治療群40.7%)。
 人工呼吸器装着率に差なしなどの否定的論文も多数ある。
 ヒドロコルチゾンやメチルプレドニゾロンは有意差がでなかった。
トシリズマブ(アクテムラ®) 死亡率を低減する。
 院内死亡率がコントロールと比し10%以上低下させた。→イギリスで採用となった。
抗体製剤・細胞治療 ・・・いずれもデータ不十分/推奨しない。
JAKキナーゼ阻害薬 バリシチニブ(オルミエント®)
 コルチコステロイドが使用できない稀な状況ではレムデシビルと併用を推奨。単独使用は推奨しない。
 バリシチニブ以外のJAK阻害薬は推奨しない。

抗血栓療法

 入院不要の患者に血栓症予防療法は開始すべきでない。
 入院中の妊娠していない成人には予防的用量の抗凝固療法を行う。
 重度のCOVID-19で入院した妊娠中の患者には、禁忌でない限り推奨される。
 基礎疾患に対して抗凝固療法または抗血小板療法を受けている患者は投薬を継続する。

米国感染症学会(IDSA)COVID-19治療ガイドライン

NIHとの違いとしてはトシリズマブは使用を推奨、抗体療法は推奨あり。

日本の診療の手引き第4.2版 厚労省

軽症 対象療法のみ
中等症I 抗ウイルス薬の投与が考慮される。
中等症II (呼吸不全あり)
  ステロイド薬早期に使用 デキサメサゾン6mg、10日間、プレドニゾロン40mg、mPSL32mgも代用可能
  レムデシビル使用を考慮
  トシリズマブが用いられることもある
重症 中等症と同じ
  Dダイマーが正常上限を超えるような場合には、ヘパリンなどによる抗凝固療法を推奨。

まとめ

圧倒的に有効な治療法、は現時点では存在しない。
日本では第1波、第2波・・と死亡率が低下しており、既存の治療薬を使い慣れてきたと思われる。

Q and A

Q 在宅での薬の使用方法はどうなのか
A 現在改訂中のガイドラインに外来診療中の治療をいれるかどうか議論中である。
いままでは重症は入院が前提だったが、入院させられない患者をやむを得ず往診などもあるかもしれない。
シクレソニド吸入やファビピラビルが期待されたが、残念ながらいまだ議論中である。

Q ホテルに待機している人はいまだ無治療、せいぜい解熱。今ならあちこちで臨床試験できるのではないか。
A 全く同感である。

PS2-5 COVID-19ワクチン開発の現状

国立感染症研究所エイズ研究センター
俣野 哲朗 先生

20世紀になりパンデミックを起こした感染症を考えると、いずれも無症候感染者からの「みえない」感染拡大であった。
結核、HIV、肝炎ウイルス、HTLV・HPV、そしてSARS-CoV-2、である。
無症候ウイルス産生者の隔離は困難であり、ワクチンの重要性が特に大きい感染症である。
ワクチンは基本的に抗原を体内に入れるので、デリバリーシステムの最適化と抗原の最適化が必要である。
デリバリーシステム: 
 抗原を直接投与・・・サブユニット(タンパク質)、ウイルス様粒子(VLP)、不活化ウイルス
 抗原を体内で発現・・核酸(DNA・mRNA)、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス
※核酸を用いたワクチン開発は、HIVで開発が進展し、エボラワクチンの実用化、→COVID-19ワクチンへ発展した。
世界では2021年4月20日現在臨床試験にいってるワクチンは91ある。
日本で開発中は、
 Recmbinant Protein(Spike) 、mRNA、DNA、不活化ウイルス粒子、
 Sendai Virus Vector (HIVワクチン国際共同臨床試験:演者らが参加)

mRNAワクチンの仕組み

抗原鋳型mRNA + ナノキャリア(PEG等)→細胞内にmRNAが取り込まれ、翻訳される。→ 免疫誘導。

ファイザー社mRNA COVID-19ワクチン

有効性評価 95%の発症予防効果

COVID-19ワクチンの現在の問題点

作用機序がはっきりと判明していない。
感染から発症、重症化に至るどの段階をブロックしているのかも判明していない。

Q and A

Q 今後変異株がでてきたときに、抗体依存性の感染増強がおきてこないか心配
A  リスクがないわけではない。
半年間はかなりの抗体レベルが維持される。その後の低下してくる期間の対応は検討すべきである。

Q ワクチン接種後に時間が経つと抗体価は低下するがメモリーは残っている。
感染防御において抗体に依存しない部分でどれくらい効果があるのか。
A ワクチン接種した方の発症や重症化を防ぐ部分ではかなり有効であると考えている。
もう一つの意味は感染拡大抑制であるが、感染後に無症状でウイルス排出したり、変異株を選択してしまうリスクがあるが、メモリーがどれくらい関与しているのか不明である。
なので抗体価が低下していくのを放置してよいかどうかも不明である。

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