(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
目次
こちらの記事は以下の内容が書かれています。
◆教育セミナー12 移行期医療を見据えた2型炎症の理解
- ●ES12-1 小児アレルギー患者の移行期における2型炎症治療
成田雅美先生(杏林大学小児科学) - ●ES12-2 移行期の免疫アレルギー疾患研究〜最新の知見から〜
玉利真由美先生(東京慈恵会医科大学)
◆シンポジウム18 アレルゲンコンポーネント〜最新の知見から〜
- ●SY18-1 動物感作とアレルゲンコンポーネント
千貫祐子先生(島根大学皮膚科) - ●SY18-2 種実類のアレルゲンコンポーネント
安戸裕貴先生(杏林大学臨床検査医学教室) - ●SY18-3 真菌とアレルゲンコンポーネント
福富友馬先生(NHO相模原病院臨床研究センター) - ●SY]18-4 食物アレルギーの診断のコンポーネント
丸山伸之先生(京都大学農学研究科)
- ●教育講演17 薬疹-薬物アレルギーガイドラインから最新の知見を含めて-
水川良子先生(杏林大学皮膚科)
◆イブニングシンポジウム10
喘息治療UP-TO -DATE Triple and Bio ther
- ●ES-1 日本におけるトリプル療法の位置付け
松永和人先生(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座教授) - ●ES-2 好酸球標的治療によるClinicalRemissionへの期待
長瀬洋之先生(帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授)
◆教育セミナー12 移行期医療を見据えた2型炎症の理解
●ES12-1 小児アレルギー患者の移行期における2型炎症治療
成田 雅美先生
【本日の内容】
アレルギーマーチと2 型炎症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎
・移行期とは思春期から若年成人であるが、科が変わるだけでなく、自立していくことにある。
小児期に発症するアレルギー疾患は2型炎症が共通して見られる。
アレルギーマーチと2 型炎症
アレルギー疾患に共通病態である2型炎症に対する分子標的治療が重症患者に有効である。
小児気管支喘息
・日本人小児の喘鳴のフェノタイプ
演者らの報告では喘鳴のない健常群は43.7%、乳児期一過性喘鳴群32.2%、就学期喘鳴群6.2%、幼児期一過性喘鳴群8.6%、持続型喘鳴群9.2%。
(Pediatr Allergy Immunol.2018;29:606.)
乳児期に喘鳴があった群が必ずしも持続的な喘息となるわけではない。
・英国小児の喘鳴フェノタイプ
16歳の時点で喘鳴がある場合は、気管支拡張薬の反応性や呼気NO濃度が高く肺機能の低下が認められた。
幼児期発症し寛解した群でもNOは高く肺機能は低下傾向であった。・・・寛解しているからといって必ずしも肺機能はよくない!
・CAMPスタディ(N=879)では、26%が臨床的寛解、15%が完全寛解(気道過敏性も正常)。
8歳児の肺機能・好酸球数が18歳-23歳までの寛解の予後因子となる。完全寛解には総IgEと吸入抗原感作がリスクとなる。
→ 喘息は学童期に症状があると、それ以後は臨床的に寛解しても、必ずしも予後はよくない。
喘息が持続するリスク因子は、女性、気道閉塞が強い、1秒率が低い、アレルギー感作、アレルギー疾患合併、などである。
・小児期から肺機能がわるいと将来COPDのリスクとなる(Lancet Respir Med 2018)
小児期の喘息、気管支炎、肺炎、アレルギー性鼻炎、湿疹、親の喘息、母の喫煙などは将来のCOPDリスク因子である。
・小児期の呼吸機能がどれくらいよければ将来呼吸機能が維持できるかは不明
小児では治療ステップ4を実施してもなお症状コントロール不良の場合は生物学的製剤を考慮するとされる。
抗IL-5抗体はメポリズマブのみが小児に適応である。
・小児喘息生物学的製剤投与
治療ステップ4の基本治療を行ってもコントロール不良な6 歳以上が対象。
喘息以外の疾患を除外し、服薬の問題、合併症、劣悪な環境、心理・社会的問題などに対処が困難な場合の、真の重症喘息に生物学的製剤を考慮する。
オマリズマブ・・・IgEが30ー1500U/mL
メポリズマブ・・・好酸球数 投与時は150/μL以上、過去1年間に300/μL以上
デュピルマブ・・・12歳以上、FeNO高値、アトピー性皮膚炎合併
アトピー性皮膚炎(AD)
皮膚バリア機能障害およびTH2炎症が重要である。
・アトピー性皮膚炎(AD)のフェノタイプ
全くADのないもの62.7%、幼少期からの持続型10.1%、乳児期から発症し寛解型17.6%、遅発型(学童期以後に発症)9.5%である。
・成人のAD患者へのアンケート調査(臨床経過について)
20歳以後にAD発症と、乳幼児期から発症したものが多く、両者ではフェノタイプが違うと考えられる。
20-30代の患者は小児期から徐々に寛解していく傾向だが、40-50代のAD患者は青年期の直前から発症したものが多い。
アトピー性皮膚炎の治療アルゴリズム
・アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021によると、
- 重症度評価
- 寛解導入療法:ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、テルコシチニブ軟膏
- 寛解導入できたら維持:プロアクティブ療法、リアクティブ療法、
- 寛解導入できない場合:シクロスポリン内服、デュピルマブ皮下注、バリシチニブ内服、UV療法、心身医学的療法
※ 保湿外用薬やスキンケアは常に継続
アトピー性皮膚炎に対する分子標的治療薬
12歳から使用可能 ウバダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバンコ®)
13歳から使用可能 ネモリズマブ(ミチーガ®)
15歳から使用可能 バリシチニブ(オルミエント®)、デュピルマブ(デュピクセント®)
・デュピルマブの作用機序
IL-4阻害 → 表皮角化細胞からのフィラグリン産生、抗菌ペプチド産生、セラミド産生を回復させる、線維芽細胞を抑制し皮膚線維化/リモデリングを防ぐ →皮膚バリア機能の改善
IL-13阻害 → IgE産生抑制 →肥満細胞のや好塩基球の活性化を抑制 →そう痒と掻破を防ぎ、皮膚バリア機能改善
・JAK阻害薬(経口薬)
バリシチニブ(オルミエント®)、ウバダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバンコ®)
・ネモリズマブ(ミチーガ®)皮下注射
かゆみを誘発するIL-31の受容体に対する抗体。
Q and A
Q 15歳と20歳の医療費の壁についてどのように考えるか
A 明確な答えはない。
Q 成人期では科が別れていくがどのような連携が必要か
A おそらく最も重症の症状から分子標的治療を導入されるので自然に連携となっているかもしれない。
●ES12-2 移行期の免疫アレルギー疾患研究〜最新の知見から〜
玉利 真由美先生
・アトピー性皮膚炎、気管支喘息のゲノム解析
ヒトでは23000遺伝子の蛋白に翻訳される遺伝子(ゲノム)が報告されている。
遺伝バリアント →転写因子の結合のしやすさ・しにくさとなり→ 個性を作り出し、ときに疾病となる。
・GWASはバイアスのかからない関連遺伝子検索の手法とされている
GWASの遺伝情報と形質情報には「ゲノム配列の変異→疾患発症」という 因果関係が担保されており、その結果の応用性が高い。
GWASでは関連領域を絞込めるが、どの多型が真に関連するか特定できない 。ゲノムデータのみでは疾患特異的な遺伝子の予測は難しい。
エピゲノム、eQTLデータベースによりGWASの関連バリアントの同定、疾患に関連する組織や細胞の同定が進んでいる。
※筆者補足:エピゲノムとは、細胞の中にあるゲノムDNAや、DNAが巻き付いているヒストン蛋白質にくっつくさまざまな化学修飾(メチル化やアセチル化)されたもの(後天的な変化)をさす。疾患と関連する。
・アトピー性皮膚炎(AD)
ADのうちフィラグリン(皮膚の保湿因子)の機能喪失変異は最も強い遺伝要因である。
次に、2型サイトカインの発現調節に関わる領域と考えられている。
2型免疫応答は寄生虫感染、昆虫咬傷、Th2、ILC2が関与し、その亢進がアレルギー疾患である。
ADの主要なゲノム解析はGWASによって解明されている。皮膚のバリア、制御性T細胞、ビタミンD代謝、かゆみなどである。
2015年にはADのSNPsはTh17およびTh2細胞のオープン・クロマチン領域に集積されていることが判明した。
※筆者補足:オープン・クロマチン領域: 様々なエピジェネティック制御の結果、ヌクレオソーム密度などが低下し、DNAへのアクセス性が高い領域。次のHPも参考にさせていただきました。
http://www.nibb.ac.jp/potentia/nucleosome/content.html
最近はGWAS情報とepigenome情報を統合して解析されている。
・気管支喘息のGWAS
17q21 がまずGWASで発見され、ライノウイルスによる小児喘息発症と関連がつよいことが判明した。
GWASの検討から日本独自のSNPsが発見されている。
発見されたSNPsとepigenomeのある部位に集約されていないか、を調べられている。
Pleiotropy(多面的関連)の解析では自己免疫疾患と炎症性疾患との大部分が共通していた。
2 型炎症に関連する遺伝子が多数関連領域に存在している!
重症喘息のクラスター解析により、
Early-onset allergic phenotype 早期発症アレルギー型 が分類された。これは、
小児期に発症しダニ等の吸入アレルゲンに対するI 型アレルギーが関与する重症喘息。
アトピー性皮膚炎や食物アレルギー等複数のアレルギー疾患が先行するタイプは重症化しやすい。
・小児発症と成人発症の喘息遺伝要因
2019に発表されたGWASによる喘息遺伝要因の報告では(Lancet )、
小児発症と成人発症には関連領域の重複がある。IL-33、TSLP、GATA3等。
遺伝要因は小児期発症が大きく、環境要因は成人発症が大きい(肥満と喫煙)。
小児発症に重要な臓器は皮膚、血液、小腸であり、成人発症は肺・血液・小腸・脾臓である。
小児発症はIgE-mediated disease が多い。
・・・食物アレルギー 、アトピー性皮膚炎、気管支喘息 、アレルギー性鼻炎、これらの合併。
成人発症はeosinophilic airway diseaseが多い。
・・・ABPA、成人発症気管支喘息、好酸球性副鼻腔炎、アスピリン喘息、EGPA。
・ドイツのコホートでは(Allergy 2022)
喘鳴と鼻炎・結膜炎、ADの症状について小児期から30代まで追跡調査し、潜在クラス分析を実施。症状増悪因子として特に喫煙の関連が大きいことが示された。その他カビ、犬、職業などの暴露など。
・国際バイオバンク連携によるヒト疾患リスク遺伝子アトラス
(ちょっと統計手法が難しすぎてついていけませんでした。)
Q and A
Q 遺伝要因が重要なことは理解できた。薬剤の有効性と遺伝の変異の関連はあるでしょうか
A 現在は遺伝子多形と分子標的治療薬との関連は検出力が低くあきらかではないが研究が必要であろう。
◆シンポジウム18 アレルゲンコンポーネント〜最新の知見から〜
●SY18-1 動物感作とアレルゲンコンポーネント
千貫祐子先生
粗抗原に比較してアレルゲンコンポーネントを用いれば感度・特異度は劇的に改善する。
2022年10月現在のアレルゲンコンポーネントは11項目にとどまる
・演者らは牛肉・豚肉アレルギーのある人は子持ちカレイでアレルギーが発症することを発見した。
α-Gal抗原である。
セツキシマブと牛、豚、羊の抗原は同一であり(α-Gal)、マダニ咬傷が原因であることも判明した。
フタトゲチマダニの唾液腺にα-GALが存在する。
犬を飼っている血液型A型とO型の方が牛肉・豚肉アレルギーを発症し、カレイの卵でも発症する。
カレイの抗原はZPAXという糖蛋白で交差反応性あり。
セツキシマブ初回投与後30分でショック死した症例は、血中トリプターゼが上昇していた。→マスト細胞活性化(I型アレルギー)のサインである。
α-Gal特異的IgEをセツキシマブ投与前に検査することでアナフィラキシーショックを31%→5%台まで低下させた。
牛肉豚肉を摂食後3時間以上たってから発症する蕁麻疹を認めたら「α-Gal症候群」を考慮してほしい。
・PORK-CAT症候群
(症例)13歳の男子:給食で何度もアナフィラキシー
猫の飼育歴、感作抗原でFel d 2、誘発抗原はSus s、 牛肉特異的IgE<豚特異的IgE
加熱不十分の豚肉やハム・ソーセージの摂取で発症する。
・原発性肉アレルギー、α-GAL症候群、Pork-cat症候群は感作抗原が違うのでアレルゲンコンポーネントが診断に重要であるが、いまだ保険適応がない。いずれも摂取・接触を避ければ数年で治癒しうる。
・クラゲ刺傷→納豆アレルギー
原因アレルゲンはポリγグルタミン酸 プリックテストでしか証明できない。
・Bird −egg 症候群
α-livetin が原因だが保険適応はない。鳥の飼育者が鶏肉・卵黄アレルギーを発症する。
Q and A
Q 経過で軽快するとあったが、どのようなことに注意すべきか
A マダニ咬傷に注意する文書(国立感染症感染症研究所)を渡して注意喚起する。本人は噛まれていることに気づいていないので。
若い人ほど寛解しやすい。1年半ほどで完治する。牛肉特異的IgEが0.1以下3回連続となったら、負荷試験して確認している。
●SY18-2 種実類のアレルゲンコンポーネント
安戸裕貴先生
種実類について
堅果類(種子を含んだ果皮が木化した果実)・・クリ、ヘーゼルナッツ
木化:植物がリグリンを合成し変性すること
核果類(内果皮が木化(核化)し種子を包む)・・アーモンド、クルミ
種子類(種皮で包まれているもの)・・ブラジルナッツ、ゴマ
ただし、種子類のうち小粒の種子はナッツに含まない。
・ナッツアレルギー
令和3年度食物アレルギーに関する報告では、
食物アレルギーの原因としてナッツ類は非常に増加傾向である。
2011年は2.3% →2020年は13.5%と全体の3位になった。
クルミ(Walnut)がナッツ類全体の5割強、続いてカシューナッツ(Cashew)2割程度である。
Macadamia nut , Almond, Pistachio, Pecan, Hazelnut, Coconut, Cacao, Chestnut, Pine nutと続く。
近年特に種実類の頻度が上昇している。
種実類アレルゲンコンポーネント
・種子の貯蔵蛋白に属するものは特異性が高い
Vicilin・・Cupin superfamilyに属し、抗菌活性を有する
Legumin・・Cupin superfamilyに属し種子に多く含まれる
2S-Albumins・・prolamin superfamilyに属し、ユニットが形成されておりユニット間はジスルフィド結合されている→熱・消化に抵抗性。臨床の診断に用いられている。Jug r 1(クルミ)、Ana o 3(カシューナッツ)
アレルゲンコンポーネントの臨床的応用
・種実類アレルギー診断は2S-Albuminが一般的に有用とされる。
カシューナッツはAna o 3 ピスタチオも交差反応性がありかつ有用。
ヘーゼルナッツはCor a 14、Cor a 9
では、2S-Albuminが同定/登録されていないものはどうするか。
例えばアーモンドアレルギーはどうするか。
アーモンドはLeguminであるPru du 6が有用である。
マカダミアナッツはVicilinである7S globulin 特異的IgEが有用である。
・重症度評価、合併症評価、病態解析に応用
クルミアレルギーは世界でもいろいろ報告されている。
クルミアレルギーを重症例と軽症例に分けて検討すると、
Jug r 1, Jug r 4の感作は重症例のみに認められた。Jug r VH, Jug r VLに対する感作は有意に重症例に多かった。
→クルミアレルギー重症例とクルミ貯蔵蛋白アレルゲンには関連性が認められた。
14歳未満の年少患者では貯蔵蛋白であるJug r 1, Jug r 4に対する感作が有意だが、14歳以上ではLTPに属するJug r 3に有意だった。
→おなじクルミアレルギーでも年長群と年少群では先行感作のパターンが異なっており、原因となるクルミアレルゲンも異なる可能性がある。
・クルミと交差反応があるペカンナットアレルギーについては、
クルミはJug r 1が有用だが、ペカンナットはLeguminであるJug r 4やvicilinが有用と報告された。
クルミアレルギー182例の報告では、北・中央ヨーロッパではJug r 5(PR-10)、南ヨーロッパではJug r 3(nLTP)、ヨーロッパ全体ではJug r 7(profilin)に対する感作が有意であった。おなじくるみアレルギーでも異なる感作源であることが示唆される。
・ヘーゼルナッツアレルギー
Cor a 1とCor a 9への感作は重症度と相関性が高い。
Cor a 1と Cor a 14の組み合わせが診断精度が高い。
ヘーゼルナッツに感作している91例についてInoueらの報告では、無症状症例はCor a 1が有意に高く、Cor a 9が低い。有症状患者ではCor a 1は有意に低く、Cor a 9が有意に高かった。
Q and A
Q 年少でJug r 1(storage protein)、年長でJug r 3(LTP)感作パターンが違うということでした。これは感作経路が子供では経皮、大人では経気道ということであり、花粉などの交差反応とかは関与するのでしょうか。
A この結果を素直に評価すると質問の通りということになる。
ヘーゼルナッツのPFASは有名である。ただし厳密にいうと、花粉の感作が2次的に交差反応性があるから感作を有しているだけかもしれない。その評価はされていない。タイムコースでコホート的に観察しどのアレルゲンから感作が始まるのかみると解決するが、現実的には難しい。
●SY18-3 真菌とアレルゲンコンポーネント
福冨 友馬先生
真菌アレルゲンの問題点
1 真菌の種類が多い
2 真菌のアレルゲンは交差反応性を示す蛋白がおおく、診断学上の課題である。
3 真菌の暴露形態がいろいろある。
※真菌の種類と暴露形態を整理して理解することが大事である。
・アスペルギルス フミガタスの特徴
気道内腐生真菌
その他のAspergillus 属真菌と同様に室内環境中に存在。
胞子数としては少数。
高い病原性。
至適発育温度 37 度、胞子サイズ2-3μm →肺内で腐生しやすい。
高いアレルゲン性がある。吸入性<<気道内腐生(住み着いている)
ABPAの主要原因真菌
呼吸器内科的見地からすると最も臨床的に重要な真菌アレルゲンである。
予後不良の真菌感染なので、見逃したくないが国際的にも見逃しやすいのが問題である。
2013年のABPAの総説論文では全喘息患者にアスペルギルスーIgEを測定すべきとされた。
しかし喘息の10-20%は陽性となるし、交差反応で他の真菌感作の可能性がある。
300人以上のフミガタスIgE陽性喘息患者にAsp f1 , f2追加測定したら 陽性の53%が真のABPA、陰性の5%がABPAだった。
Asp f 1-IgEは種特異性が高い。 アスペルギルス フミガタスが気道内腐生しない限りAsp f 1は分泌されない。非常に特異的である。
フミガタスの気道内腐生マーカーと言い換えることができる。
ではアスペルギルス フミガタスIgE陽性患者のうち53%が真のABPAだが、47%はどんな患者か?
この47%に認知された病名はないが、アスペルギルスフミガタスが腐生していることは間違いない。
・近年重症喘息におけるアスペルギルスフミガタス新規感作が増えている。
ICS吸入 + 何らかのgenetic factor?によりアスペルギルス フミガタス気道内腐生を生じるのではないか。
・take home messages
Aspf1-IgE: どんなときに測定するか
すべての喘息患者⇒アスペルギルスIgE 測定が必要
⇒それが陽性ならAspf1-IgEを追加測定
喘息患者におけるAspf1-IgE 陽性の意義
特異的コンポーネント⇒真のアスペルギルスフミガタスアレルギー ABPAの可能性が高い集団:ABPAの精査が必要
ABPAの診断基準を満たしていなくてもAfの気道内腐生を示唆
今後 ABPAに発展してゆく可能性がある:要経過観察患者
Af 腐生が喘息重症化に関与することもある
Q and A
Q 小児ではアスペルギルス感作は少ないが、腐生しやすい環境はなにか。
たとえばTh2炎症環境下が腐生しやすいのか?
A 粘液が多いのでそこに定着しやすいと考えられる。
Q プリックテストでは陽性にでないので皮内テストしてほしいといわれることがあるが、信ぴょう性はどうか
A Asp f 1、f 2の両者が陽性なら間違いなく感作しているので、Prick testも陽性になると思われる。皮内テストはなくてもよい。
今はAsp f 1、f 2を測定するのがよい。
Q ICSがアスペルギルスの腐生を助長するなら、生物学的製剤で炎症をしっかり治療すればリスクは低下するか
A そのとおりだと思われる。
全身性にステロイド投与されている患者は気道内で易感染性でありフミガタスが増加していることはわかっている。
一方で炎症を抑えることでよいこともあるし、フミガタスの大量暴露する環境では腐生しやすい。
●SY]18-4 食物アレルギーの診断のコンポーネント
丸山伸之先生
演者らはおもに組み換え型コンポーネントを利用して研究している。
ω-5グリアジンとAra h 2は全く別の蛋白を測定している。
演者らはまずゴマのアレルゲンを研究した。
ゴマの2S alubumin であるSes i 1というアレルゲンコンポーネントをrecomginat蛋白を調整し、Ses i 1はゴマアレルギーに非常に有用と証明した。
そばのアレルゲンコンポーネントはFag e 1から5まである。
Fag e 3 vicilinタイプのimmunoCAPを作成し有用性を証明した。
類似配列のものを検索すると そば、ペカン、かぼちゃの種、綿の種子にも存在した。
ピーナッツ、木の実類のビシリンのN末端は種子の中で切断されることが判明した。
そのN末端にはジスルフィド結合が複数存在しているのが特徴である。
クルミ、ペカン、カシューナッツではそのN末端が同定されており、その部分にIgE抗体が結合することが報告されている。
演者らはピスタチオにおいてPis v 3のN末端が切断されて種子内に存在することを同定した。
N末端の切断された部位には特徴的システインモチーフ(ジスルフィド結合を有する)がある。
→木の実類のビシリンのN末端はIgE抗体結合性があり注目されている。
大豆ではGly m 8の診断性能がよいことが報告されているが、まだ保険適応はない。
演者らはGly m 1 から Gly m 8までのすべてのアレルゲンコンポーネントを作成し、小児の場合には主に貯蔵タンパク質に感作されていることを報告した(Gly m 5, 6, 8)。
大豆とピーナッツ間のビシリンの交差反応について、50%は構造的特徴が同じだが、N末端部分(16%)は構造が違うので、この部位を用いれば診断能が上がると考えた。演者らはドメイン単位で交差反応性の低い部位を診断につかえないかと考えた。
結果、2Sアルブミン + 交差反応性の低いビシリンのドメインを測定することでAUCは増加した。
PFASアレルゲンコンポーネント
現在までに多数のアレルゲンコンポーネントの報告あるが、実臨床に使用できるものは殆どない。
・PFASの原因抗原はPR 10である。
シラカンバ Bet v 1 消化酵素で破壊される。
Gly m 4 大豆
この2つは40%程度の相同性がある。
Pru p 7 ジベレリン制御蛋白。 7kDa ,63残基、果皮や果肉に存在する。
ももアレルギーで即時型とOASの区別ができるようにPru p を調べたところ、
Pru p 1(PR-10)はOASで比較的感作が高く 、Pru p 7(GRP)は即時型で高感作かつOASでは感作なし。
→Pru p 7はももの即時型アレルギーの診断に有用である。
ももの即時型反応患者について、花粉GRPとPru p 7 の相関は高い。
結語
・さらに,診断に重要なアレルゲンコンポーネントを探索する必要がある.
・アレルゲンコンポーネントを改変することにより,診断性能の高いコンポーネントを作製できる 可能性がある.
Q and A
Q 花粉感作後食物アレルギーを生じる場合、IgEが結合しやすい構造的な特徴があるか。
A 交差反応するかという点では花粉と食物の一致しているアミノ酸残基が重要である。
GRPについては現在研究中である。
ジスルフィド結合ができるタイプは、構造がくずれるとアレルゲン性は低下する。
Q スギ、ヒノキ、もも、りんごとGRPは構造がほとんど一致しているが、もし治療にGRPを免疫療法として用いればを花粉の免疫療法を実施すると、食物では減感作ができる可能性があるか
A 交差抗原として共通のエピトープをもつ食物であれば治癒(減感作)の可能性はある。
Q ビシリンのN末端の抗原性について、ジスルフィド結合で立体構造を維持した状態で抗原性が維持されているのか?
A おそらく種子内ではS-S結合はできているが、摂取後は切断されて様々なタイプのエピトープが存在すると考えられる。
Q 将来的に、より正確な診断にはエピトープの同定が重要ではないか。
A そのとおりである。エピトープベースで臨床診断性能の高いものを選択、あるいは診断性能がないものを削る方法は必須と考える。
●教育講演17 薬疹-薬物アレルギーガイドラインから最新の知見を含めて-
水川良子先生
薬物アレルギーガイドライン2022年版が発刊された。
薬物アレルギーは薬疹だけではない。
皮膚、皮下組織障害(薬疹)、神経系障害、肝胆道系障害、免疫系障害、血液、リンパ系障害、呼吸障害など影響が多岐にわたる。
しかも、ウイルス感染やHLAにより発症の程度や頻度がかわることがわかっている。
・副作用の分類と薬物アレルギー
副作用→病態にかかわらず、薬物に関連するすべての有害事象をさす
薬物アレルギー→特定の薬物に感作された患者の薬物に対する免疫介在性反応
・疫学と原因遺伝子
世代別に発症頻度が違うことが知られる。
15歳未満と高齢者は少なく、青年層が6割である。
中枢神経系用薬と抗生物質は非常に頻度が高い。
・疫学と原因遺伝子 HLAなど
薬疹発症に関するHLAの影響が大きいことが示されてきている
例:カルバマゼピンの副作用を減少させられる(ガイドラインに詳細あり)
人種による発現の差がある。
薬物性肝障害においてもHLAの影響が少なからず存在することが知られている。
薬物アレルギー発症を回避するための遺伝子検査の有用性が示されている。
※将来的にはこのようなHLAのalleleを測定して薬剤選択するオーダーメイドがなされる可能性がある。
・薬疹の臨床型と薬物 軽症~中等症
原因薬
播種状紅斑丘疹型:アモキシシリン、ロキソプロフェン、
多形紅斑(EM)型薬疹:アセトアミノフェン、セレコキシブ
固定薬疹 :NSAIDs,抗菌薬
扁平苔癬型薬疹:抗マラリア薬、クロルプルマジン
光線過敏型薬疹:フェノチアジン系抗精神病薬、高血圧薬、抗菌薬
水疱型薬疹:チオール含有製剤、DPP-4 阻害薬
乾癬型薬疹:テルフェナビン、高血圧薬、ICI
重症
SJS/TEN:抗菌薬、抗てんかん薬、NSAIDs、アロプリノール
DIHS :抗てんかん薬、アロプリノール、抗菌薬
AGEP:抗菌薬、カルシウム拮抗薬
薬疹の考え方
重症度を判断し、鑑別診断すること、が重要である。
重症と軽症では治療方針や予後が変わるからである。
特に重症の病型を見極める必要がある。
重症薬疹では高用量ステロイド内服が必要となる。
症例)初診時は軽症にみえるが、3日後で重症となっている。
症例2)TEN? EM(多形紅斑)?
→ 3日後は明らかに悪化ならTEN (癒合傾向で拡大傾向、皮膚が脱落しはじめる)
→ 3日後消褪傾向 EM
重症薬疹を見極める
・TEN 区間がベロっと剥がれてくる 押しずらすとズルっと剥げる(Nikolsky現象)
・Stevens-Johnson 症候群の診断基準
概念
発熱を伴う口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹 および皮膚の紅斑で、しばしば水疱、表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認め る。原因の多くは、医薬品である。
主要所見(必須)
- 皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変(出血性あるいは充血性)がみられること
- しばしば認められるびらんもしくは水疱は、体表面積の10%未満であること
- 発熱
副所見 - 皮疹は非典型的ターゲット状多形紅斑
- 角膜上皮障害と偽膜形成のどちらか、あるいは両方を伴う両眼性の非特異的結膜炎
- 病理組織学的に、表皮の壊死性変化を認める
ただし、TENへの移行があり得るため、初期に評価を行った場合には、極期に再評価を行う。
主要項目の3 項目すべてを満たす場合、SJSと診断する。
・なぜ皮膚がむけるのか?
表皮が壊死しているからである。表皮と真皮の間に裂隙ができており、押しずらすとずるっと剥ける。
・原因薬
抗菌薬、抗てんかん薬、 NSAIDs、アロプリノール
最近では
PD-1 阻害薬などの免疫チェックポイント阻害薬
分子標的薬(EGFR 阻害薬-セツキシマブ、BRAF 阻害薬-ベムラフェニブなど) の報告がふえて きている.
・致死率
SJS4.1%, TEN29.9%
・皮膚の特徴
軽症の多形紅斑EMとSJS/TENの違い
多形紅斑は皮疹周囲では炎症を止めようとするT細胞が多数あり、細胞のせめぎあいで盛り上がる。
・NLR比を確認
Neutrophil-to-lymphocyteratio (NLR;好中球・リンパ球比)
悪性黒色腫で治療開始前のNLRが高いとICI 治療による予後が悪い。
NLRの上昇は腫瘍浸潤リンパ球の減少などの抗腫瘍免疫低下との関連が言われている。
NLR (SCORTEN, ABCD-10, PCT, CRP
SCORTENof≥3groupONLRISCORTEN <3group.
NLRは感度 85.7%特異度 63.6%で死亡を予測 cut-off value5.79 (p <0.05)
・合併症
眼合併症
皮疹とほぼ同時または先行して両眼性に生じる。角結膜上皮障害、偽膜形成、睫毛の脱落。重症例 では視力障害。爪甲変形・脱落を伴うことが多い.
肺障害
閉塞性細気管支炎を生じることがあり、急性期のみでなく回復後時間を経てからの顕在化症例あり
→予後不良の原因と考えられている
・治療
ステロイド全身投与 → ステロイドパルス療法 → 血漿交換療法
薬剤性過敏症症候群
Drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)/Drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms (DRESS)
・比較的限られた薬剤で生じる
•遅発性に生じる (>3wk)
・原因薬中止後も頻回に症状の再燃を認める
・肝障害、腎障害などを併発する
・多剤感作を起こしやすい
診断基準
1) 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ,
急速に拡大する紅斑
2) 原因薬剤中止後,2 週間以上の症状遷延、 3)38℃以上の発熱 、4) 肝機能障害、 5) 血液学的異常、 6) リンパ節腫脹 、7) HHV-6の再活性化
IDACs、aDACsで見られる疾患
・iDACs
消化管出血、肺炎(PCP, CMV)、心筋炎など
・aDACs
橋本病、脱毛症、SLE、関節リウマチなど
※薬疹を治すだけでなく合併症の治療も必要である。
※DACsは主に重症例で発症し、軽症例ではDACsの発症はみられていなかった
その予測のためにDDS score を初期に計算することが大事である。入院後3日以内に。
死亡例はすべて感染合併症iDACsの患者である。
・DDS score を用いた治療案
1点未満 保存的
1点以上 治療
・CMV治療と予後
CMV 再活性化から治療開始までの期間は、合併症群(10.3 日)は合併症のない群(2.2 日)より有意に 長く、3 日以上の症例では合併症を発症しやすい. →発見したら早期に治療開始
抗 CMV 治療はCMV 再活性化の陰転化を確認し、血小板低下や肝障害が 改善するまで行う必要がある場合が ある。
・DHISが治癒して少なくとも3年間は経過観察が必要である。
3年までに自己免疫疾患が発症するからである。
リスク因子:肝障害とグロブリン上昇する症例
IVIg 治療は自己免疫疾患発症に関与する ← グロブリン投与はリスクになる! 実際に自己免疫疾患が発症率が高い。
自己免疫発症群はDIHS 発症急性期においてリンパ球数が多く、NLRは低い傾向にある
自己免疫発症群は急性期から亜急性期にかけて、肝障害が持続・悪化し、グロブリンの増加がみられる
急性汎発性発疹性膿疱症
汗管のところに水疱ができる。
原因は抗菌薬が最多
トピックス1 DPP4阻害薬による水疱性類天疱瘡
DPP4阻害薬を中止で治る患者と重症化する患者がある。
重症度をNLRで予測できる。
トピックス2 SJS/TEN病態と治療
SJS/TENにおける表皮細胞死としてのネクロプトーシスや好中球の関与
海外ではTNF-α阻害薬(エタネルセプト)の有用性が指摘されている。
→本邦でも臨床試験中である。
◆イブニングシンポジウム10
●ES-1 日本におけるトリプル療法の位置付け
松永和人先生
日本人(N=1967)の喘息患者のコントロールレベルは、良好52.2%、不十分24.2%、不良23.6%(JACI 2016)。
およそ日本人喘息患者の3人に1には全身性ステロイド投与を年に1回は受けている。
治療可能な臨床特性を考慮して個別化治療すべきと考えられるようになっている。
これをTreatable traitsという。
気流閉塞は喘息コントロール状態と非常に関連している。
%一秒量が70%をきるあたりから症状が非常に重篤となっていく。
・喘息において知覚神経と副交感神経を介した気道収縮が認められる。
最近では気道構築細胞にもアセチルコリン生成能を有すると判明している。
アセチルコリンは気道平滑筋や線維芽細胞に作用して平滑筋増殖させ、コラーゲン産生し、気道リモデリング進展に寄与している可能性がある。
CAPTAIN trial
18歳以上の喘息コントロール不良にLAMAの上乗せ効果をみた試験。
結果 LAMAを追加するとおよそ100mL程度トラフの1秒量が増加した。
・すべてのトリプルがICS/LABAよりも肺機能を改善したことが示されている。
・LAMAを追加しトリプルにすると日本人が3人に一人増悪していたのが4人に1人程度になるというイメージである。
・ICS/LABAによる治療にも関わらず、増悪歴や不十分な喘息コントロールに加えて 血中好酸球と呼気 NO 濃度が高値の患者では将来の増悪リスクが高い(Couillard S, Pavord ID. Thorax 2021)。
FLOAT study
演者らは呼気NO 40ppb以上の患者が経年的に呼吸機能低下することを示した。
・LAMAは好塩基球からのIL-4 産生を制御することにより ILC2 依存性の好酸球性気道炎症を抑制する(Allergy 2021)
・LAMAとLABAは好中球性炎症を抑制する可能性がある
・喘息治療における5Tアプローチ (5T: TripleTherapyTargetingTreatableTraits)
ICS/LABAよりもTriple はtreatable traits が達成できるであろう。
トリプル選択のタイミング
・ICS/LABA併用でも喘息コントロールが不十分な患者への治療強化
症状が毎日あり、日常生活行動が制限されている患者への初期治療
・中用量ICS/LABAのステップダウン treatment failure
3ヶ月安定後の喘息患者にステップダウンを実施した報告。
どのようなステップダウンにおいても1年後に3割くらいの症状増悪している。
・短期間の安定でステップダウンした報告では、明らかにその後の増悪率が高い。
・どのような状況の患者ではステップダウンしてもよいのか (JACI pract 2019)
1年間急性増悪症状なし
呼吸機能は正常
ACTは満点(25点)
・喘息の過小評価をへらす問診のポイント (JACI pract 2019)
週に数回の息切れや喘鳴があるなら、コントロール不十分である。
TakehomeMessages
1.本邦ではICS/LABAの普及にも関わらず、半数近い患者は喘息コントロールが不十分で、増悪治療を要している
- 気流制限と気道炎症は喘息悪化の原因として重要であり、トリプル療法により治療介入が可能な臨床特性である
- 毎日の症状があり、日常生活行動が制限されている患者に対しては、トリプル療法による初期治療も可能である
- ステップダウンのエビデンスは乏しいが、1 年間の無増悪かつ無症状および呼吸機能正常の達成、が条件となり得る
Q and A
Q ステップダウンのときの炎症マーカーについてはどうか
A 現在のところ喀痰の好酸球のみが有意な結果がでている。
NOは相関なし
●ES-2 好酸球標的治療によるClinicalRemissionへの期待
長瀬洋之先生
・メポリズマブを中止するとどうなるか
1年後で急性増悪が50%程度となる。
・remission (JACI 2020) の定義
effectivenessを最近は指標としてみている。
リアルワールドではどうか。
日本でのデータ
・JMDCの保険者データベース 約300万人
メポリズマブ投与中に43%が増悪抑制した。
・MDVデータベース 約2000万人
増悪は40%減少している。
・臨床試験ではACOは除外されるが、リアルワールドではACOも同等の効果があった。
医療コストは減少、19万円→11万円/年 程度である。
メポリズマブに関連するREALITI-Aの試験では、3割以上が喫煙者であるが増悪は71%減少であった。
・ステロイドをどれくらい服用していると合併症がおきるのか
PSL20mg/日を5日間 年一回の投与、でもリスクは上昇する。
生涯蓄積使用量が、500mg~1gでも、糖尿病や不安/うつ のリスクが有意に上昇。
PSL 短期投与に換算して、5 回程度からリスクが増加している。
・メポリズマブによるステロイド減量効果 リアルワールド研究
PSL10mg未満の症例は41%に中止、10mgを超える患者でも3人に1人は中止できている。
・ステロイド中止により患者のステロイド併存症は減少できる (ERJ2022)
・重症喘息における非可逆的な気流閉塞の経過はいろいろある
呼吸機能正常だけを目標にすると実際に不可能な目標となる患者もおり過剰投与となるかもしれない。
・演者らの臨床試験 2022JSAMS34-5 石塚眞菜,杉本直也,etal.
目的
重症喘息における生物学的製剤使用下での臨床的寛解の達成について調査する。
方法
臨床的寛解を、
①ACT≧20もしくはACQ <0.75 ②%FEV80%以上 ③過去 1 年以上 OCSを使用する増悪やOCS 常用がないこと ④GETEスコア※; good 以上
と定義し、120 日以上継続して生物学的製剤を使用している重症喘息 71 例について患者背景、バイオマーカーなどの臨床的特徴についてカルテベースに調査、検討した。
※GETEスケール:主治医による包括的評価
①Excellent (completecontrolofasthma), ②Good (markedimprovement), ③Moderate (discernible, butlimitedimprovement),
④Poor (noappreciablechange), ⑤ⓢWorseningの5 段階で評価する
結果:好酸球数が多くFENOが高い患者は寛解しやすい。
分子標的治療投与のある重症喘息でも16.9%が寛解していた。
概ね呼吸機能まで正常化とすると15-20%の寛解率。
症状のみであれば30-40%の寛解率である。
・シャルコライデン結晶(CLC)は気道炎症を惹起することが判明した
ガレクチン10が主成分であり、好酸球の空砲内に蓄積される。
メポリズマブを投与すると血漿内のガレクチン10濃度が低下した。
・演者の推定では
ガレクチン10は症状に、ECPは組織障害を起こすのでFEV1と関連するのではないか?
・メポリズマブの有効性の予測
総じて好酸球性のマーカーが高いほど効果が高い。
・ではいつから治療介入するのかはいまだ決まっていない。