第72回日本アレルギー学会学術集会 聴講録 その2

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

目次

こちらの記事は以下の内容が書かれています。

◆シンポジウム15自己免疫疾患とアレルギー

◆MS22 喘息の多様性と寛解

◆教育セミナー10 アトピー性皮膚炎治療を再考する

  • ●ES10−1
    馬場直子先生 神奈川県立こども医療センター皮膚科
  • ●ES10-2
    沖山奈緒子先生 東京医科歯科大学皮膚科学分野 教授

◆シンポジウム15自己免疫疾患とアレルギー

●S15-2 自己免疫性疾患の皮膚病変から自己免疫性皮膚疾患までのトピックス

沖山奈緒子先生

特異疹=炎症

非特異疹=血管拡張
SLEの皮疹の治療 プラケニルが標準治療
SLE新規治療薬 アニフロルマブ(ヒトI型インターフェロン受容体1抗体)サフネロー®点滴静注
皮膚LE(CLE)は以前からI型INFの関与は指摘されている。
CLEではCXCR3陽性である。
I型INFのソースはpDCの他にケラチノサイトある。

皮膚筋炎の皮疹

ヘリオトロープ疹 =特異疹
DMの皮疹の特徴は 痒いことである。→どうやらTh2炎症も関与しているとされている。
IVIGは皮膚症状に有効、ただし適応は難治性のPM/DMである。
アピレミラスト治療抵抗性DMに有効だが、まだ保険未収載である。
さまざまな皮疹に有効である。

強皮症に伴う皮膚病変

 浮腫にステロイド
 sDMARDS
 皮膚硬化そのものへの有効な治療はあまりない。
 抗CD20除去抗体リツキシマブは有効である。

天疱瘡

 デスモプレイン1抗体陽性。
 リツキシマブで再燃少なく有用である。
円形脱毛症(これも自己免疫疾患)にはバリシチニブを投与する。

●S15-3 全身性炎症疾患と気管支拡張

日本医科大学武蔵小杉病院呼吸器内科
齋藤好信先生

気管支拡張症は不可逆的に気管支が異常に拡張した状態である。
根本治療なく、しばしば増悪し、進行例では予後不良である。
病態は、vicious circleが有名な概念である。
最近は一方向だけではないのでvicious vortexと言われている。

原因疾患)特発性、感染後、COPD、膠原病、
・関節リウマチでは20%がBEを合併する。
BE合併例は自己抗体陽性率が高く、リウマチ活動性が高い。
特発性BEに対してリウマチ合併BEの予後は不良である。
関節炎発症前に気道病変が先行していることが多いとされている。
気管支拡張はACPA陽性RA>ACPA陰性
ACPA陽性RAでは気道にシトルリン化蛋白が認められる。
慢性気道炎症→ガレクチン9発現亢進→PAD4誘導→蛋白のシトルリン化→免疫寛容の破綻→RA発症が病態である。

炎症性腸疾患
 腸管外合併症が多くしられており、肺病変もある。
呼吸器症状のあるIBDでは約20%に気管支拡張症が認められる。
腸管外合併症の機序はいろいろ推定されているが、未だ不明である。
腸管炎症(neutorophil priming , lymphocyte primingの仮説)
 α4β7インテグリンとMadCAM−1が関与しているとされる。
大腸切除術後に気管支拡張症を発症したとする報告は多い。
 →発症リスク因子である。
IBDの気管支拡張症は吸入ステロイドや全身性ステロイドが有効である。

Brensocatinibが気管支拡張症治療に臨床試験中であり、有望とされている。現在Phse 3。
最近はeosinophilic bronchiectasisという概念もでている。

コメント 細気管支炎→細気管支拡張がおこるが、なかなか画像だけで特発性と膠原病性は区別が難しい。

現在国際バイオバンク連携によるGWAS解析が利用できる。症例数は50万人以上。
genome研究によるとアレルギー疾患と自己免疫性疾患は明らかに別の疾患であると判明した。
複数疾患の遺伝的背景の網羅的比較をすると、バセドウは制御性T細胞関連、アトピー性皮膚炎はTh2と関連。これらはすでに判明していることであるが、疾患名を隠して分類を試みても同様の結果が生じる。
約1000人の自己免疫疾患46疾患のデータが産業医大に蓄積されている。免疫フェノタイプに基づき自己免疫疾患患者を6クラスターに分類できた。

COVID-19の重症化ゲノム解析(国際コンソーシアムによる)
重症化はゲノムの違いによることが判明した。
日本では6000名のCOVID-19患者で解析し、重症化因子DOCK2変異が発見された。
日本人の約10%程度ある。
COVID-19 肺炎患者のBALではDOCK2が低下しINFγ活性低下がおきた。
日本人集団COVID-19患者血液シングルセル解析 Edahiro et.al. Nature genetic

*遺伝統計学・夏の学校 若手の育成 HPに資料を公開している。

Q 乾癬とアトピーを最近バイオで治療するが、乾癬治療するとアトピーがでたり、アトピーを治療すると乾癬がでてきたりする。
A ドライブしている遺伝子変異は各個人で違うと思われる。

◆MS22 喘息の多様性と寛解

●MS22−1 生物学的製剤による重症喘息のremissionに関するreal world evidense

松本周一郎先生

CR群の定義;直近1年間無増悪、OCS常用がない、固定性気流制限(FEV1/FVC>=70%)
PALなし persistence airflow limitation
N=53、64.0歳
CT関連因子は、罹病期間、Bio導入前一秒率がCRと独立して関連していた。
考察; 増悪なし、OCSなし、PALなしは、全Bio使用者の39.6%であった。
Q バイオ導入前にすでに肺機能低下、罹病期間が長いなどがremissionしない原因としてあるのか
A その通りと考えている。

●MS22-2 喘息の臨床的寛解達成はその後の1秒率経年低下抑制と関連しない

環境再生保全機構調査研究班
長瀬洋之先生

future riskとしての経年的肺機能低下をremissionは反映するか。
ベースラインの%FEV1は、高いほうが低下が速く、症状の増悪と呼吸機能の低下は相関しない。

●MS22-4 生物学的製剤非仕使用の喘息患者における臨床的寛解の達成率と背景因子の検討

熊本大学病院
高木僚先生

寛解の定義;ACT 20>= 、過去1年間増悪なし 全身性ステロイドなし、
N=CR148  + 非CR216
結果 CR達成は148例40.7%
多変量解析では、PHQ-9 10点以上が負のインパクト、好酸球300以上、血清IgE75以上、マクロライドの使用、現喫煙、重症ほど。
生物学的製剤使用のCR率は43%から19%程度である。
現喫煙者→禁煙指導を。PHQ-910点以上は抑うつと関連。
好酸球300以上、血清IgE75以上 は、Bio導入の必要性を示唆している。

◆教育セミナー10 アトピー性皮膚炎治療を再考する

●ES10−1

神奈川県立こども医療センター皮膚科
馬場直子先生

ステロイドはあまり塗ってはいけいないと言われて、保湿剤ばかりを熱心に塗っているがちっとも治らない。
ステロイド塗ったら良くなるが保湿剤にしたらすぐ悪くなった。
赤みがあるところは抗炎症薬が必要である!保湿剤では治らない。

プロアクティブ療法がてきていない。
プロアクティブ療法を始めるにはまず寛解導入できていなければならない。
 ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、デルゴシチニブ軟膏など
なぜ寛解導入できないのか
 処方するステロイドのランクが低すぎる。
 量が少ない。
 塗り方が適切でない。
軟膏の塗り方の適量とは、すり込むのではなく均一にのせるイメージである。
患者はどうしても少なめの量しか塗らない。
・苔癬化のある慢性湿疹は単純塗布では治せない。
→塗貼りをすればまず寛解するであろう。
顔でも塗り貼り(お面のように)
一旦寛解したら1−3日置きに塗る;プロアクティブ療法
いつの間にか悪化時のみの治療であるアクティブ療法に変わってしまう人がおおい。
ダラダラとステロイドを塗ることで、多毛、緑内障、などの副作用も起きてくる。
そこで、ヤヌスキナーゼ阻害薬軟膏(コレクチム軟膏®)が上市された。
全身はII群ステロイドで寛解導入後にコレクチム軟膏とステロイド軟膏を1日置きなどでプロアクティブ療法持続。
女児の顔病変は軽症なら最初からコレクチム軟膏、全身はステロイドで寛解させた。
中等症の全身性病変も、ステロイドをどうしても塗りたがらない親がいるときは、コレクチム軟膏のみで寛解導入した(1日2回塗布)。6ヶ月かかったが寛解導入に成功した。
コレクチム軟膏は2歳未満は保険適応外だったが、最近可能となった。
N=22例の2歳未満の患児にコレクチム軟膏を塗布し、mEASIスコアは低下した。
IGAスコアも低下した。

コレクチム軟膏の使用
重症はまずステロイドで寛解させ、その後寛解維持に。
軽症・中等症ならコレクチム軟膏でも寛解導入可能。
適量については、MRの配布する資料に詳しく書いてある。

●ES10−2

東京医科歯科大学皮膚科学分野 教授
沖山奈緒子先生

ADの治療目標 日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
成人AD患者は、そう痒、増悪、皮膚感染症、睡眠障害、作業生産性の低下、メンタルヘルス(不安や抑うつ)の問題などの疾病負荷がある。
ADの治療アルゴリズム
 まず中等症以下は外用剤のみで。
 プロアクティブ療法に加えて、難治性にはデュピルマブが使用可能となった。
バリア障害はスキンケアで。
 保湿剤:ヘパリン類似物質、尿素剤
 保護剤;ワセリン
ステロイド外用剤による副作用
 紅皮症 皮膚萎縮 酒さよう皮膚炎 ステロイドざ瘡、→酷い赤ら顔
 ステロイド白内障
 デルゴシチニブ 
タクロリムスは肥満細胞は神経細胞に直接作用してかゆみを止めるのが特徴的である。ただし塗り始めは1週間程度トウガラシを塗ったようなカーっとした副作用がある。
デルゴシチニブもタクロリムス程度の強さがある。
IL-31、IL-4,13、TSLPなどのかゆみ物質はJak-Stat経路を介する。
pEASI
ジファミラスト軟膏 PDE4阻害薬の外用剤
JAK阻害薬は副作用は少ない。

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