(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
◆シンポジウム4 びまん性肺疾患 治療のトピックス
目次
こちらの記事は以下の内容が書かれています。
◆抗酸菌症 新しい治療の時代へ
- ●非結核性抗酸菌症診療の手引き 2023 改訂 MAC 症
NHO 東名古屋病院呼吸器内科 中川 拓先生 - ●肺Mycobacterium abscessus症治療の発展
一成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解2023年改訂からの展望
公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器センター 藤原 啓司先生 - ●潜在性結核感染症の治療 2剤併用療法の実際
国立病院機構東京病院呼吸器センター呼吸器内科 武田 啓太先生
◆抗酸菌症 新しい治療の時代へ
●非結核性抗酸菌症診療の手引き 2023 改訂 MAC 症
中川 拓先生
成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解 -2023 年改訂
(日本結核・非結核性抗酸菌症学会非結核性抗酸菌症対策委員会
日本呼吸器学会感染症・結核学術部会・日本呼吸器学会感染症・結核学術部会)
肺Mac症に関する治療に関する推奨は
マクロライドを含む多剤併用療法 推奨度Strong 確実性very low
アミノグリコシド 空洞例や重症例では初期からAMKかSMを併用する 推奨度conditional 確実性Moderate
吸入AMK 6ヶ月以上ガイドライン治療失敗例にはALIS併用する 推奨度Strong 確実性moderate
・NTM治療薬の保険適応
AZM、AMK、IPM/CS、CFZ(クロファジミン)は保険適応はなかったが、審査事例承認により臨床応用が認められている。
ALIS(アミカシン吸入)は難治性肺MAC症のみ、IPM/CS、CFZはM.abscessusのみに認められている。
・NTMに対する薬剤感受性試験について
必ず菌腫に対して適切な方法で検査を行うことが重要である。
比率法:結核菌
ブロスミックSGM :NTMの遅発育抗酸菌(SGM;slow growing mycobacteria)に使用する。M.avium、M.intracellulare、M.kansasiiなど
ブロスミックRGM :NTMの迅速発育菌(RGM;rapid growing mycobacteria)に使用する。M.abscessus spieciesなど
感受性結果が治療有効性予測に利用できるもの
MACとM. abscessusにおけるマクロライドとAMK
M.kansasiiにおけるRFP
注射用AMKではMIC≥64μg/mL、ALISではMIC≥128μg/mLの場合に耐性 と判定。
AZMはCAMのMICで感受性を代用する
*invitroの感受性結果がNTM治療の有効性を予測することが示されているのは、MACとM. abscessusにおけるマクロライドとAMKと、M.kansasiiにおけるRFPの感受性のみである。
*CLSIM62によれば注射用AMKではMIC≥64μg/mL、ALISではMIC≥128μg/mLの場合に耐性 と判定される。ブロスミックSGMはCLSI M24 3rd ed/M62(Muller-Hinton培地を使用)に準拠し、AMKのMIC値を256mg/mlまで評価できる。
*AZMはCLSIM62でブレイクポイント設定されておらず、CAMのMICで感受性を判断する。
治療開始時期について (成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解2023年改訂ー結核2023;98:177)
・診断確定は治療開始のための必要条件だが十分条件ではない。
·とくに空洞をみとめない結節・気管支拡張型の軽症例では、治療開始時期については注意深い観察を前提として個別に検討する。
・2020国際ガイドラインでは喀痰抗酸菌塗抹陽性あるいは有空洞例では経過観察ではなく治療開始を推奨している。
・本見解でもこれを支持するが、その他に、年齢によらず忍容性、基礎疾患、 画像所見の推移、菌種などを加味して治療の要否を判断する。
・できるだけ過去の画像との比較を行う。
・治療にあたっては、その理由、使用薬剤と投与法、副作用、治療効果の判断法、治療期間、環境からの再感染を含む再発の可能性、外科治療の適応 などについて患者に十分に説明し、患者の理解を確認したうえで開始する。
肺MAC症の標準治療
空洞なし(重症除く)では、 CAM or AZM + EB +RFP は連日 or 週3日
空洞ありか重症 では、CAM or AZM + EB +RFP は連日 + SM or AMK初期より併用
6ヶ月以上治療しても効果不十分=難治例 の場合には、ALIS または AMK or AZMの併用をする。
手術は空洞ありか重症、難治例で必要に応じて考慮する。
注意)RFPについて:副作用や薬物相互作用を懸念する場合、RFPを除くか減量を考慮する。
間欠的治療について
2023改訂見解では、国際的な現況を考慮して、空洞のないNB型肺MAC症 (重症は除く)に対しては間欠的治療と連日治療の両者を推奨する。
間欠的治療のメリット:副作用による治療中止・変更が少ない、とくにEB の中止率が少ない。
軽症例では有効性もそれほど連日治療と変わらない。
投与量がA法:連日とB法:間欠法(週3日投与)で違うことに注意が必要である。
A法(連日):CAM800mg or AZM 250mg、EB750mgまで(10-15mg/kg)、RFP600mgまで(10mg/kg)
B法(週3):CAM1000mg or AZM500mg、EB1000mgまで(20-25mg/kg)、RFP600mg
処方箋記載は最大量で以下の通り(体重40kg以上の患者は最大量である)
A法:アジスロマイシン(250)1錠 分1、エサンブトール(250)3錠 分1、リファンピシン(150)4C 分1
B法:アジスロマイシン(250)2錠 分1、エサンブトール(250)4錠 分1、リファンピシン(150)4C 分1
・CAMレジメンかAZMレジメン(2023年改訂見解)か、どちらを使うか
2020年国際ガイドラインではマクロライド感受性肺MAC症にはCAMよりもAZMを含むレジメンが推奨されている。
その理由として、両者の排菌陰性化率に基づく有効性は同等だが、AZMの方が
①忍容性が高い、②薬物相互作用が少ない、③内服錠剤が少なく服用の負担が少ない、④1日1回投与である、⑤コストが低い、などがあげられている。
審査事例の留意事項には、AZM単剤で治療しない、第一選択薬とする場合には原則としてCAMを検討した後に投与する、とされている。
これらの諸点を考慮し、利点が大きい場合にAZM使用を検討する。
日本ではAZMの長期使用に関する報告は限られている。
塗抹陽性例では連日投与のほうが良いのか
英国のガイドラインでは塗抹陽性例は重症の定義にはいり、韓国の報告では塗抹陽性例では連日投与のほうが間欠的投与よりも喀痰培養菌陰性化率が高いと報告された。
日本の試験(iREC試験)では塗抹陽性陰性にかかわらず治療効果は同等であった。
間欠的治療と連日治療は空洞の有無だけでなく重症度、患者背景、懸念され る副作用、治療の目標に応じて個別に選択すべきと考えられた。
マクロライド耐性化をおこさないために
マクロライド(CAMあるいはAZM)は肺MAC症治療のキードラッグであり、耐性化すると治療がきわめて困難となる。
耐性化させないことが重要で、EBを含むレジメンで治療するとマクロライド耐性出現が減少すると報告されている。
マクロライド耐性化抑制の機序やそのために必要な投与量は不明だが、EBを継続することが重要。
EBによる視神経障害は投与間隔、投与量と関連する。間欠的治療では視神経障害がおこりにくい。
連日治療の場合、12.5mg/kg/day以下の低用量EBは12.5mg/kg/dayをこえる群と比べて視力障害が少ないが、治療成功率、画像改善率、マクロ ライド耐性化に差が無かった。
実臨床では高齢者や合併症を有する症例でEBが含まれない処方が多い報告あり、間欠的治療や投与量の減量などで視神経障害を減らせる可能性がある。
RFPの位置づけ: マクロライド+EBの2剤治療でもよいか
RFPは副作用が多い:肝障害、胃腸障害、皮疹、発熱、血小板減少など
薬物相互作用が非常に多い:併用薬の確認が必須
RFPを併用するとCAMの血中濃度が低下する:RFP併用時はCAMは800mg/日使った方がよい
RFPの有効性はそれほど高くない:マクロライド+EBの2剤併用療法は3剤併用療法と比較して培養陰性化率は劣っていないとの報告あり
2020国際ガイドラインはマクロライド耐性増加の懸念から3剤治療を推奨している。
実際2剤治療でマクロライド耐性は増えなかったと、日本から報告あり。
日本の2023改訂見解では、基本的に3剤併用を推奨するが、高齢者など副作用や薬物相互作用がおこりやすい場合の選択肢として2剤治療をあげている。
NB型で肺MAC症は再感染による再発が多い。
*筆者注)CT画像診断にて、線維空洞型(FC型 : fibrocavitary disease) と結節・気管支拡張型(NB型: nodular/bronchiectatic disease) に分類される。空洞(FC型)は好気的な環境による菌の増殖と,これに伴う周囲への散布を促すとともに,抗菌薬の到達を困難とするため、難治あるいは再発の要因となりうる。
FC型:上肺野中心に多発する空洞性病変が特徴的。空洞内に抗酸菌を含む壊死物質が含まれ、壁内層における肉芽腫形成や散布性病変としての被包乾酪巣および肉芽腫性病変など、結核と類似した所見が認められる 。
NB型:いわゆる中葉舌区症候群を呈する。拡張した気道壁に散在する細胞浸潤と類上皮細胞性肉芽腫や、気管支内腔における好中球を含む滲出物を伴う粘液の充満が特徴として挙げられる。(結核第94卷第11-12号2019年11-12月より引用改変)
最初はM.intracellulareで次はM.aviumやM.abscessusといった別の菌種に感染することもある。
肺MAC症初回治療成功完了後に再発(異なる菌種含む、 新たに診断基準を満たした症例と定義)をみとめた118症例を検討した報告では、肺NTM症累積再発率は特にNB型は82%が再感染症例であった。FC型は40%が再感染である。
喀痰培養陰性化してから最低12ヶ月は治療することが推奨される。
菌陰性化とは、喀痰抗酸菌培養が3回以上連続して陰性と定義。陰性化日は初回陰性の喀痰を提出した日とする。
複十字病院のデータでは15ヶ月以上の治療すると再発がすくない(15ヶ月未満は80%再発、15ヶ月以上は55%再発)。韓国からの報告では治療期間と死亡率に有意な逆相関があり、18ヶ月以上の治療で有意に死亡率が低下する。
→ 培養陰性化後15ヶ月以上かつ治療期間として18ヶ月以上の治療がのぞましい。
アミノグリコシドについて
以下の①から③の患者には、初期治療レジメンに注射用AMKあるいはSM併用を推奨。
①空洞、②重症の結節気管支拡張型、③マクロライド耐性の肺MAC症 (2020ガイドライン)
RFP+EB+CAM +週3回15mg/kg SM vs プラセボ筋注を3ヶ月併用した日本のランダム化比較試験において、SM群で菌陰性化率が有意に高かった。
空洞をもつ肺MAC症116例の検討(韓国)では3ヶ月以上アミノグリコシド(ほとんどがSM)使用した症例で治療成功率が高かった。
SMとAMKでは菌陰性化率も副作用も差は無し。
KMはNTM症の保険適応なし
ALIS(アミカシンリポソーム吸入液懸濁液 アリケイス®):CONVERT試験の結果
難治性肺MAC症にガイドライン標準治療のみとALISを併用した群では、6ヶ月後の培養陰性化率は8.9% VS 29%と有意にALIS併用群が高かった。
使用にあたっての留意点
・ALISを単剤で使用しないこと
・2018年のCLSI M24 3rd ed/M62に準拠した感受性試験でAMKのMICを評価する。
AMKのMICが 128μg/mL以上であれば原則ALISを使用できない。
・ALIS開始後は可能な限り定期的な喀痰抗酸菌培養検査をおこなうこと
・本剤の効果は投与6ヶ月後を目安に臨床症状、画像所見、細菌学的検査結果などを併せて総合的に判断する。
菌陰性化達成されなくても臨床経過やMICを参考に継続の要否を検討する。
副作用と対策
重大な副作用(結核2022;97:29. 学会合同で指針を出している)
過敏性肺臓炎(SpO2やKL-6を測定する)、気管支痙攣(休薬、β2刺激薬の前投与)、
第8脳神経障害(家族性難聴の問診、聴力モニタリング)
急性腎障害、ショック・アナフィラキシー
主な副作用一耳鳴、疲労、発声障害、咳嗽、呼吸困難、喀血、口腔咽頭痛など。
発声障害には、休薬、隔日投与、夜に吸入、吸入前に水をのむ、吸入後温湯うがいを徹底、トローチなど の対策を講じる。
咳嗽、呼吸困難休薬には、隔日投与、β2刺激薬の前投与など
Q and A
Q 手術はどのあたりで検討するか
A 熟練した外科医がいるかどうかが重要な因子となる。
内科医としては切除してほしいと考えている。
Q 高齢者にAMK投与するときに500mgまででしょうか。血中濃度がPeakが標的まで到達しないことがあるが500mgなのか
A 500mgまでと決まっているわけではないが、CAM耐性だと強めにいきたいとかで決めている。
Peakを上げるほど治療効果があるかというとそのようなエビデンスはなく、副作用は投与量に比例して起こりやすいので、500mgを目安にしている。
●肺Mycobacterium abscessus症治療の発展
一成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解2023年改訂からの展望
藤原 啓司先生
NTMは年々増加しているが、2020年で人口10万人あたり19.2人の罹患率である。
1.位 MAC 92.9% うちM. avium 62.0%、M. intracellulare 30.9%、2位 M. abscessus 2.8%、3位 M. kansasii 2.3%
M.abscessusには亜種があり、subsp. abscessus 、subsp. massiliense 、subsp. bolletii の3種である。
bolletiiは0-3%なので、主に前2種が重要となる。
治療反応性という点でこの2亜種は区別される。
abscessusは喀痰陰性化率は25-45%、massilienseは72-88%で明らかに後者の反応性が良好である。
subsp. abscessus、subsp. massiliense、subsp. bolletii性の違いはマクロライドに対する感受性の違いである。
大まかにいうと、subsp. abscessusの8-9割はマクロライド耐性、subsp. massilienseの8-9割はマクロライド感受性である。
マクロライド耐性化機序には erm(41)遺伝子とrrl 遺伝子変異(23S rRNA)が関与する。
abscessusの多くはマクロライドに暴露することによってerm(41)遺伝子が活性化し、マクロライド結合部位(薬剤標的部位)をメチル化することにより耐性を生じる。一部のabscessusはerm(41)遺伝子に変異(T28C sequevar)がおきており、耐性を生じない。
massilienseはerm(41)遺伝子が欠失しているので、耐性を生じない。
重要な亜種同定であるが、標準の質量分析法(MALDI-TOF-MS)では、同定できない。
残念ながら保険適応の検査はなく、専門施設に依頼する必要がある。(大阪大学、感染症研究所など)
一方でMIC測定は国際基準にもとづいた検査が可能。
ブロスミックRGM®(陽イオン調整ミューラーヒントンブロス):14薬剤のMIC測定が可能。培養3日目で判定。
ただしCAM/AZMは培養14日目に最終判定(理由:耐性が誘導されるかどうかも確認するため)
CAMとAMKはカットオフ値が臨床的にも有用である。その他の薬剤は参考値。クロファジミンCLFとシタフロキサシンSTFXはカットオフ値の設定がない。
クラリスロマイシンのMICから遺伝子変異/亜種の予測がある程度可能である。
3日目CAM感受性試験結果 耐性 → rrl遺伝子変異による耐性。ただし亜種は同定できない。
3日目CAM感受性試験結果 感受性 → 14日目も感受性 → erm(41)遺伝子欠失 または T28C sequevar → 多くはmassilenseと一部のabscessus
3日目CAM感受性試験結果 感受性 → 14日目に耐性 → erm(41)遺伝子活性化 → abscessus
肺M.abscessus症治療の流れ
肺MAC症とは異なり、初期治療は原則点滴と経口抗菌薬の併用である。4週間以上の治療強化期間。
その後経口抗菌薬で維持期間である。
治療期間は肺MAC症と同様に菌陰性化後12ヶ月以上を推奨。
ATS/ERS/ESCMID/IDSA (2020)の国際ガイドラインでは、
マクロライド感受性の場合にはマクロライドを含む3剤以上の併用療法で強化期間を治療する。
マクロライド耐性の場合には4剤以上の併用療法で強化期間。マクロライドは併用薬剤数には含まないが、免疫調整機能を期待して併用してもよい。
点滴:AMK、IPM、TGC(チゲサイクリン)
経口:AZM、CLF(クロファジミン)、LZD 強化期間および維持期間ともにこの中から2剤、耐性あれば3剤を使用する。
維持期間にはALISも考慮される。
* CLF、LZDは消化器症状、皮膚着色、骨髄抑制、末梢神経障害などの副作用で長期使用が困難な場合あり
日本の見解(2023)では、マクロライド感受性ありの場合
強化期間は点滴+経口抗菌薬3剤以上併用、維持期間は2剤以上併用。
強化期間:IPM、AMK、AZM、CLF(またはSTFXシタフロキサシン)
マクロライド耐性の場合は、
IMP、AMK、AZM(薬剤数には数えない)、CLF、STFX?、LZD?
であるが、基本的に専門施設に依頼する。
・安易な外来治療導入はしてはいけない!点滴を含む強化治療を必ず実施すること。
マクロライド単剤やマクロライド+経口抗菌薬併用レジメンは安易に外来導入しないこと。
IMP、AMKの点滴治療を併用することにより、治療成功率が上昇する。
クロファジミンは強化期間から導入し、特有の副作用に警戒すること。
クロファジミンはAMKの耐性化予防や、AMK、CAMとシナジー効果(相乗効果)があるとされる。
演者らの研究では、64名、CLF投与患者では、定常状態到達時間約6ヶ月後もかかるため、強化期間から投与が重要である。
また、CLF血中濃度と皮膚着色は関連あり、CLO血中濃度とQT延長は関連ありと判明した。
クロファジミンとシタフロキサシンを併用するとQT延長するリスクがあり心電図を定期に確認する必要がある。
LZDリネゾリドは21週間投与すると45%に副作用が出現するので、長期使用は難しい印象である。末梢神経障害24%、血球減少12%など。
外科治療の有効性
特に耐性例に対してであるが、Systematicreview&meta-analysisでは、肺NTM症1071名(15研究)において喀痰培養陰性化93%、再発9%、術後合併症17%と良好な成績が報告されている。
演者の施設では、M.abscessus33名に対して 術後喀痰培養陰性31名(94%)、再発2患者(7%)、無再発率96%(1yr)、96%(3yr)、80%(5yr) と良好である。
実臨床で注意すべき点について
細菌学的にはコロニー性状、CAM感受性、T28 sequevarの有無、臨床的には年齢、肺NTMの既往、空洞性病変 などが治療予後と関連する
MAC抗体は大変便利であるが、abscessusは偽陽性となることがあり、演者の施設で検討したところ約半数は陽性だった。
→菌株をきちんと確認してから治療することが重要である。
まとめ
肺M.abscessus症は増加傾向にある注意すべき肺NTM症
適切なパネルでMIC測定を行う
マクロライド感受性に応じたレジメン選択をする
経口抗菌薬のみでの治療導入は行わないこと
クロファジミン導入をためらわない
特にマクロライド耐性例は早期の外科的治療の検討する
●潜在性結核感染症の治療 2剤併用療法の実際
武田 啓太先生
潜在性結核感染症(Latent tuberculosis infection:LTBI)の定義
臨床的に明らかな活動性結核を発症している証拠はないが、 結核菌抗原による刺激に対する免疫反応が持続している状態。
結核の感染と発病
結核菌に暴露 → 25-50%が感染成立する(LTBIの状態)→ 5-40%発病(初感染発病)
→発病しなかった95-60%はLTBIの状態であるが、免疫力低下時に2-23%が内因性再燃する。
LTBI治療は結核制圧のために必須の治療である。
本邦におけるLTBIレジメン「結核医療の基準」の一部改正がされた。2021年10月18日
原則として(1)又は(2)
(1)INH単剤6か月間必要に応じて更に3か月間
(2)INH及びRFPの2剤併用療法を3か月ないし4か月間
RFP単剤4か月を考慮する場合、
-INHが使用できない場合又はINHの副作用が予想される場合
INHが使用できない場合とは、
-感染源がINH耐性の場合
-INH投与によって副作用が生じた場合
-INHのアレルギー歴がある場合
-INHと相互作用を有する薬剤が必須の場合
(フェニトイン、カルバマゼピンはINHによって代謝阻害されるため血中濃度測定し中毒症状に注意)
INH+RFP2剤併用療法はINH単剤と比較し治療効果は同等である。
INH+RFP2剤併用療法はINH単剤と比較し有害事象が少ない傾向
INH+RFP2剤併用療法はINH単剤と比較し肝障害発生率は同等
RFP単剤投与による投与中止に至る有害事象は少ない。
患者背景による薬剤選択
現在の併存疾患や併用薬について、ある場合には薬剤相互作用はないか、ある場合の中止や変更ができるか、薬剤相互作用の影響を許容できるかを考慮する。
影響なしと判断したら、INH+RFP 3-4ヶ月
影響ありなら、INH6-9ヶ月、RFP4ヶ月
RFPと薬剤相互作用のある主な薬剤
副腎皮質ステロイド ・・・→増量が必要 PSL2-3倍、デキサメサゾン5倍
免疫抑制剂 ・・・血中濃度を測定して調整する
抗HIV薬・・・とにかく併用禁忌が多い。
DOAC・・・AUC35-66%減少(効果が減弱する)
ワルファリン・・・2-6倍に増量
高齢者でもLTBI治療は若年者同様に実施してよいが、高齢者の治療の報告はまだ限られている。
Q and A
Q 2剤治療の3ヶ月と4ヶ月の使い分けはどうするか
A 特に明らかな使い分けはないが、免疫抑制状態がない場合は3ヶ月でよいと思われる。
Q 単剤と2剤でさほど治療期間に差はないようだが耐性化を懸念しての2剤と考えてよいか
A そのとおりである。