排卵診断薬と月経不順

当院ではウォンツ伊勢丘薬局薬剤師と定期的に勉強会を実施しております。
内容要約を以下にしめします。

I. 排卵診断薬について

  1. 排卵のメカニズム
    • 排卵は、視床下部からのホルモン分泌によって制御される。
    • 特に、LH(黄体形成ホルモン)とゴナドトロピンが重要。
    • LHホルモン分泌後、24~36時間以内に排卵が起こる。
  2. 排卵診断薬の役割
    • 排卵日を予測し、妊活をサポートする検査薬。
    • 尿中のLHホルモン濃度を測定し、排卵の兆候を検知。
  3. 排卵診断薬の種類と特徴
    • 様々なメーカーから多様な製品が販売されている(例:ハイテスター)。
    • 製品ごとにLHホルモンに対する「感度」が異なる(例:ゴールドサイン20IU、クリアブルー40IU)。
  4. 排卵診断薬の使用方法
    • 月経予定日の17日前から使用を開始。
    • 毎日、同じ時間帯(特に朝)に測定することが推奨される。
    • LHホルモン濃度が上昇すると陽性反応が出る。
  5. 感度の違い
    • 感度が低いほど、LHサージを正確に捉えることができる可能性が高い。
    • LHホルモンは常に一定量分泌されており、サージを捉えることが重要。
    • 感度が高すぎると、偽陽性反応が出やすくなる可能性がある。
  6. ハイテスターの特徴
    • 1つの製品で3段階の感度設定が可能(10、30、100)。
    • LHサージのピークをより詳細に把握できる。
    • 1日2回(朝・晩)測定することで、より正確なタイミングを特定できる。
  7. タイミング法における注意点
    • Y染色体を持つ精子は寿命が短いため、排卵直前に性交を行うと男の子を授かりやすい可能性がある。
    • X染色体を持つ精子は寿命が長いが、運動能力はY染色体を持つ精子に劣る。
    • 排卵日検査薬で陽性反応が出た直後(24時間以内)に性交を行うことが推奨される。
  8. 薬剤師の役割
    • 排卵診断薬に関する正確な情報提供。
    • 顧客の状況に合わせた製品選択のアドバイス。
    • タイミング法に関する指導。

II. 月経不順について

  1. 月経異常の定義
    • 種々の原因によって、正常な月経周期、調整、子宮内膜の変化などが障害されることで現れる症状。
  2. 月経異常の分類
    • 月経周期の異常:
      • 正常周期:25~38日
      • 稀発月経:39日以上3か月未満で月経が起こる
      • 無月経:3か月以上月経がない状態
    • 経血量の異常:
      • 平均:50~60ml
      • 過多月経:出血量が非常に多い
    • 随伴症状:
      • 月経困難症
      • 月経前症候群(PMS):月経前にイライラ、抑うつなどの精神状態や乳房痛、腹部膨満感などの症状が現れる
      • 排卵周期症:月経様の出血はあるが排卵がない状態(多くは周期の異常や量の異常を伴う)
    • その他:
      • 黄体機能不全:黄体期が正常より短く、10日以内。月経周期の短縮や不妊をきたす。
      • 月経開始時期の異常
      • 閉経時期の異常
      • 持続期間の異常
  3. 月経異常とホルモン分泌
    • 視床下部-下垂体-卵巣系の調整異常が原因となることが多い。
    • 卵胞発育が阻害され、女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)の分泌が低下する。
    • 重症度に応じて、以下の段階に分けられる。
      1. 軽症: ホルモン分泌の調整障害により卵胞の発育が遅れるが、P(プロゲステロン)の分泌は保たれている。
      2. 無排卵: Pの分泌がなくなるが、E2(エストラジオール)の分泌はある程度ある。
      3. 重症: E2分泌が低下し、子宮内膜が増殖できず、無月経となる。
  4. 無月経の鑑別
    • 第一度無月経と第二度無月経では、E2分泌の有無が重要な鑑別ポイントとなる。
    • 鑑別のため、ゲスターゲン試験が行われる。
  5. 月経異常の治療目的
    • 不妊症の改善
    • 女性ホルモン分泌障害の改善
    • 妊娠希望の有無によって治療方針が異なる。
      • 妊娠希望の場合:不妊治療を行う。
      • 妊娠希望がない場合:ホルモン療法を行う。
  6. 月経異常の治療法
    1. 卵胞発育・排卵障害に対する治療:
      • 排卵誘発剤(クロミフェンなど)
      • ゴナドトロピン療法
      • 生殖補助医療
    2. 女性ホルモン分泌障害に対する治療:
      • エストラジオール不足の場合:骨訴しょう、脂質異常などに対する治療
        • 治療目的:エストロゲンの補充
        • 治療法:ホルモン療法
      • プロゲステロン不足の場合:子宮内膜増殖症、子宮体がんのリスク
        • 治療目的:プロゲストーゲンの補充
        • 治療法:ホルムストローム療法
  7. ホルモン療法
    • 低下したホルモンを補充する治療法。
    • ホルムストローム療法:プロゲストーゲンのみを補充(Pの分泌がなく、E2分泌がある場合)。第一度無月経、無排卵周期症など。
    • カウフマン療法:エストロゲンとプロゲストーゲンを両方補充(P、E2ともに分泌がない場合)。第二度無月経など。
  8. 原因に対する治療
    • 高プロラクチン血症:プロラクチン値を低下させる治療を行う。

III. まとめ

  • 排卵診断薬は、妊活をサポートする有用なツールである。
  • 排卵日を正確に予測するためには、製品の感度や使用方法を理解することが重要。
  • 月経不順の原因は多岐にわたるため、医師による正確な診断と適切な治療が必要となる。
  • 薬剤師は、排卵診断薬に関する情報提供や、月経不順に関する相談窓口としての役割を担うことが重要である。

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