日本睡眠学会第48回定期学術集会は2024年7月18日19日の2日間開催され、
その後オンデマンド配信も1ヶ月以上ありました。
(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
目次
こちらの記事は以下の内容が書かれています。
S2-5 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) ドライバーに対する居眠り運転事故リスク低減マネージメント
広島大学病院 睡眠医療センター
熊谷 元先生
熊谷 元先生
1. OSAと居眠り運転事故のリスク
- OSA患者は日中の眠気が強く、居眠り運転のリスクが1.2~5倍に上昇する。
- **職業ドライバーの16~78%**がOSAを有している。
- OSA治療(CPAP・OA)を受けても、一部の患者では日中の眠気が残存する。
2. CPAP療法と事故リスク
- CPAP療法が事故を完全に防ぐわけではないが、事故発生までの期間を約3倍延長する可能性がある。
- CPAPのアドヒアランス(継続使用)が重要であり、定期的な評価が必要である。
3. OA療法と事故リスク
- OA療法の事故リスク低減に関するエビデンスは不十分である。
- 保険適用外のカスタムOAは使用制限がある。
- 適応患者の慎重な選択、効果判定、定期的なフォローが必須である。
4. OSAのある一般ドライバーへの推奨対策
- CPAP治療の適切な管理
- AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)搭載車の運転(居眠り運転事故リスクを0.39倍に低減)
- 適切な睡眠時間の確保
5. トラックドライバーの居眠り運転事故の危険因子(研究2)
- 夜間運転・4%ODI・最低SpO₂が有意な因子であるが、事故予測には不十分である。
- OSAによる朝の眠気よりも、長時間運転の疲労・慢性的な睡眠不足が主な原因である。
6. 居眠り運転事故の動画解析(研究3)
- 事故直前にマイクロ睡眠(半眼・閉眼・態度停止)が頻発する。
- OSAの有無にかかわらず、マイクロ睡眠が事故の主要因である。
7. AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)の効果
- 一般事故のリスクは低減するが、居眠り運転事故の防止効果は限定的である。
- 居眠り運転事故では、AEBS搭載車の事故損害額が高額になる傾向がある。
- 今後の技術改良と他の安全支援装置との併用が必要である。
8. 総括と対策の方向性
- 一般ドライバー:CPAP管理・睡眠確保・AEBS搭載車推奨
- 職業ドライバー(トラック):CPAP治療+徹底した睡眠衛生指導が不可欠
- AEBSは限界があるため、技術改良と他の安全対策の併用が望ましい
9. 質疑応答のポイント
- 事故データ解析には、投薬歴・基礎疾患・健康状態の影響は含まれていない
S2-4 OSAの残遺眠気の状況
虎の門病院 睡眠呼吸器科
富田 康弘先生
富田 康弘先生
残遺眠気の評価に関するエキスパートコンセンサス
2023年12月に、エキスパートコンセンサスとして残遺眠気をどのように評価するかが取り決められた。
(Steier JS et al. Sleep Med. 2023 Dec; 112: 104-115.)
この論文では以下の点が記載されている。
Topic 1: EDS(過度の眠気)の評価
- 眠気を評価するタイミングや方法
- 眠気評価のアンケートの注意点とそれぞれの特性
- 大衆集団ごとに有効なツール
- カットオフ値の解釈
- 客観的評価の検討方法
Topic 2: CPAPによる残遺眠気(residual EDS)
- CPAPおよびOAの治療状況評価
- CPAPの使用時間、鑑別診断
- 睡眠時間の推奨(7~9時間)、計測方法、睡眠時間確保の指導
- それでも残遺眠気が残るケース
Topic 3: 残遺眠気への対応
Topic 4: EDSへの薬物療法の適応
残遺眠気に関するリアルワールドデータ(RDW)
海外の報告
- CPAP治療前のESS(Epworth Sleepiness Scale)>10点の割合:57%
- CPAP治療後のrEDS(residual EDS)の割合:13%
※ただし、以下の条件の患者は解析から除外されている- CPAP使用時間 <3時間
- 残存AHI(無呼吸低呼吸指数)>15/h
- うつ病合併
- CPAPの使用時間が長いほどrEDSの患者は少なくなる
- 残遺眠気についてのレビュー論文でも同様の結果が報告されているが、各報告で残遺眠気の割合は異なる
ヨーロッパにおける報告(2021年)
- 治療前の残遺眠気の割合も異なり、CPAP治療後の反応性も国ごとに相違
- 他の報告では、CPAP治療前に眠気があった群(EDS >10群)は、睡眠時間が2時間から3時間に延びるだけで残遺眠気が減少し、長時間睡眠をとるほど改善傾向がみられた
- 一方、EDSなし群(EDS ≤10群)は、CPAP装着時間を増やしても残遺眠気率の低下はみられず、6時間以上の睡眠をとることで改善傾向があった
治療前の眠気の影響
- 治療前の眠気が強いほど、治療後も眠気が残りやすい
- この眠気が治療前から存在する神経障害*なのか、眠気の捉え方の問題なのかは未解明
- 眠気は主観的指標であり、評価には限界がある
*(筆者補足)内臓脂肪や肥満との関係、長期間の低酸素状態が脳へ影響を及ぼしている可能性が指摘されている
国内におけるrEDSの報告
- 虎の門病院・池松記念クリニック:22.3%
- 睡眠総合ケアクリニック代々木:5.7%
- 京都大学病院:13.9%
rEDSに関連する因子
- マスクトラブル(OR=1.96)
- アドヒアランス不良(OR=1.68)
アドヒアランスが良好な患者に限った場合
- 虎の門病院・池松記念クリニック
- 全体:22.3%
- 6時間以上の睡眠を確保すると → 8.9%
- 7時間以上の睡眠を確保すると → 3.1%
- 京都大学病院
- 全体:13.9%
- アドヒアランス良好な患者 → 11.1%
眠気症状の変化を捉える上での注意点
- どの指標を用いてもプラセボ効果を避けることは難しい
- レスポンスシフトの影響を考慮した解釈が必要
レスポンスシフトとは?
- ESSは「CPAP治療前の状態を思い出し、その時より眠気がどうか」を答える質問票
- しかし、多くの患者は治療前に回答したESSの点数よりも高くなる
- これをレスポンスシフトと呼ぶ
理由
- 治療により「自分が眠かったこと」に気づく
- 治療前の眠気を過小評価していた可能性
S10-2 温泉と睡眠
秋田大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 理学療法学講座
上村 佐知子先生
上村 佐知子先生
はじめに:深部体温と睡眠の質
本発表では、温泉と睡眠の関係について、特に深部体温の変動と睡眠の質に着目した研究成果が示された。
- 深部体温と皮膚温の関係
- 倉内らの研究を引用し、末梢の熱放散が深部体温の低下を促し、入眠を助けることが示された。
- 深夜の最低体温が低いほど熟眠感が得られると説明。
深部体温を下げる介入
深部体温を下げる方法として、以下の介入が挙げられる。
- 入浴、運動、食事 → いずれも一過性の深部体温上昇をもたらし、夜間の熱放散を促進する。
- 特に入浴は睡眠にとって有用な介入法である。
- 半身浴
- 入眠を促進(入眠潜時短縮)
- 中途覚醒を減少
- 総睡眠時間を増加
- 睡眠の質向上(徐波睡眠の増加)
- 半身浴
研究の目的
本研究では、半身浴が睡眠に良い影響を与えるという過去の研究を踏まえ、より強い身体加温と放熱効果が期待できる温泉浴が、より深い睡眠をもたらすのではないかという仮説を検証。
日本の温泉の種類と一般的適用
環境省のデータを引用し、日本の温泉の9種類が紹介された。
- 単純温泉:痛み、こわばり、冷え性、疲労回復など
- 二酸化炭素泉(炭酸泉):創傷治癒、保温、末梢循環促進
- 炭酸水素塩泉:創傷治癒、末梢循環促進
- 塩化物泉:創傷治癒、保温、末梢循環促進
- 硫酸塩泉:創傷治癒、保温、末梢循環促進
- 鉄泉(炭酸鉄泉、緑礬泉):一般的適用
- 硫黄泉(単純硫黄泉、硫化水素泉):殺菌効果
- 酸性泉:殺菌効果
- 放射能泉(ラジウム泉):炎症抑制
塩化物泉と人工炭酸泉の効果:健常大学生を対象とした実験
演者はこれまで、塩化物泉・人工炭酸泉・硫黄泉・入浴剤・高齢者の人工炭酸泉について実験を実施。
実験概要
- 対象:健常大学生8名
- 条件:
- 塩化物泉
- 人工炭酸泉(700ppm, pH 4.5)
- 普通浴(水道水の家庭風呂)
- 入浴なし
- 方法:
- 夕食後22時に40℃のお風呂に15分間入浴(半身浴, 剣状突起部まで)
- 体温計・脳波計を装着し、0時~7時まで就床
- 深部体温(直腸温)および熱放散(DPG=遠位皮膚温-近位皮膚温)を測定
- 脳波測定(簡易脳波) → 臨床検査技師が解析
結果
- 入浴後の深部体温低下勾配が塩化物泉・人工炭酸泉で大きく、入眠を促す可能性が示唆された。
- 熟眠の指標である朝方の最低体温は、
塩化物泉 > 人工炭酸泉 > 普通浴 > 入浴なし の順で低下。
熱放散(DPG)の変化
- 人工炭酸泉・塩化物泉 → 入浴後の熱放散が増加(DPGがプラス)
- 普通浴でも就寝時には熱放散が活発化
- 入浴のタイミング
- 健常者は就寝1.5~2時間前が適切
- 高齢者はもう少し時間を離しても良い可能性
脳波の変化:デルタパワー量の増加
- 塩化物泉・人工炭酸泉で第1周期のデルタパワー量が有意に増加
- より深い睡眠が得られた可能性が示唆された
デルタ波とは?
- **深い眠り(ノンレム睡眠)**のときに出る脳波。
- デルタパワー量が増加=深い眠りの質が向上
主観的評価と安全性
- 塩化物泉では、入浴後に疲労感が強くなる傾向が見られた。
- 虚弱な方・高齢者には、人工炭酸泉の方が安全に適している可能性がある。
硫黄泉の効果
- 硫黄泉入浴後、体温はしっかり上昇し、その後なだらかに低下
- 普通浴では体温変化がギザギザ(不安定)
- ノンレム睡眠が増加、レム睡眠が減少 → 硫黄泉が良好な睡眠を促進
入浴剤の効果
- 重炭酸泉入浴剤では、深夜の深部体温が下がらず、普通浴よりも高い値を維持
- 中途覚醒時間と睡眠潜時が長くなる傾向 → 総睡眠時間・睡眠効率がわずかに低下
- 体温が下がりにくいと睡眠に悪影響の可能性(ただし有意差なし)
高齢者を対象とした人工炭酸泉の実験
- 加齢により体温調節機能が低下し、深部体温が落ちにくい
- 認知症患者に半身浴を行うと、睡眠潜時が短くなった(三島先生の研究)
- 高齢者にも入浴が有用な可能性
高齢者に対する半身浴の効果
- 地域の高齢女性9人を対象に、38℃で10分間の半身浴を実施
- 深部体温・脳波・主観的評価に有意差なし
- 介入が不十分(40℃15分の方が適切だった可能性)
O11-005 日本人における不溶性食物繊維摂取と睡眠休養感の関係
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部
伏見 もも先生
伏見 もも先生
食物繊維と睡眠・健康との関連
- 食物繊維の定義
- 人の小腸で消化吸収されづらいが、宿主に健康上の利点をもたらす3つ以上の単量体単位を持つ炭水化物群(Fu et al., 2022)。
- 食物繊維摂取と健康
- 脳血管障害の予防と関連(Fu et al., 2022)。
- 腸脳相関を通じて、精神的健康や睡眠の質の改善と関連(Willson et al., 2022)。
- 循環器疾患の発症リスク低下 → 不溶性食物繊維の方が水溶性よりも効果が高い(Kokubo et al., 2011)。
- 不溶性食物繊維の特徴
- 便のかさ増し・腸蠕動の促進。
- 含有食品:野菜類(ほうれん草、キャベツなど)、きのこ類、イモ類、穀物など。
- 主な不溶性食物繊維の一種であるセルロースがメラトニンの放出を促進(Marilena et al., 2019)。
- 睡眠障害患者ではセルロース摂取が不足している傾向(Zuzanna et al., 2017)。
- 睡眠と健康の関連
- 睡眠時間・睡眠休養感が健康転帰(総死亡)と関連(Yoshike et al., 2022)。
- 睡眠休養感が高血圧発症と関連(Saito et al., 2023)。
研究の目的
不溶性食物繊維の摂取が睡眠休養感・睡眠時間にどのような影響を与えるかを検討する。
研究方法
方法 1:国民健康・栄養調査データの解析
- 対象データ
- 2005年~2018年度の国民健康・栄養調査から、睡眠関連調査が含まれる**8年分(55,347名)**のデータを使用。
- 解析項目
- 人口統計情報:性別、年齢(60歳以上・60歳未満)、BMI(kg/m²)
- 睡眠関連情報:
- 睡眠休養感(高・低)
- 睡眠時間(6時間未満、6時間以上8時間未満、8時間以上)
- 1日の栄養素摂取量(43項目)
方法 2:栄養素のエネルギー調整
- エネルギー産生栄養素(PFCバランス)
- 炭水化物・タンパク質・脂質の摂取割合(%E)を算出。
- エネルギー非産生栄養素
- 密度法により、**エネルギー調整値(1000 kcalあたり)**を算出。
- 解析対象の栄養素(43項目)
- 炭水化物(4項目):炭水化物、不溶性食物繊維、水溶性食物繊維 など
- タンパク質(4項目):動物性タンパク質、植物性タンパク質 など
- 脂質(9項目):コレステロール、動物性脂質、植物性脂質 など
- ビタミン(15項目):ビタミンA、ビタミンD など
- ミネラル(9項目):鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム など
- その他:水分、穀物エネルギー など
研究結果
睡眠休養感と不溶性食物繊維の関係
- 睡眠休養感が高いと答えた人 → 全体の79%
- 6時間以上8時間未満の睡眠をとっている人 → 約55%
- 睡眠休養感の高さと有意な正の相関を認めた因子
- 不溶性食物繊維の摂取量
- 年齢(60歳以上)
- 睡眠時間の長さ(6時間以上)
- 睡眠休養感の高さと負の相関を認めた因子
- 不溶性食物繊維以外の炭水化物摂取量
- 鉄の摂取量
不溶性食物繊維摂取量と睡眠時間の関係
- 6時間未満の睡眠群・8時間以上の睡眠群は、不溶性食物繊維摂取量が少ない(有意な負の相関)。
→ 適切な睡眠時間(6〜8時間)の群は、より多くの不溶性食物繊維を摂取する傾向があった。
睡眠時間と関連する因子
- 6時間未満の睡眠と関連する因子
- 女性
- BMIが高い
- 8時間以上の睡眠と関連する因子
- 60歳以上
- 睡眠休養感が高い
まとめ
- 不溶性食物繊維摂取が、睡眠休養感向上に寄与している。
- 適切な睡眠時間(6~8時間)と不溶性食物繊維の摂取が関連している。
- 日本人の不溶性食物繊維摂取量は推奨基準を下回っている(令和元年国民健康・栄養調査)。
- 摂取基準:男性 14g/日、女性 12g/日
- 実際の摂取量:男性 11.8g/日、女性 11.2g/日
- 不溶性食物繊維摂取の増加が、公衆衛生政策の基礎データとして活用されることが期待される。
O11-004 軽度認知障害と睡眠指標との関係
中部大学大学院 生命健康科学研究科
古田 万奈先生
古田 万奈先生
背景
- 2023年の65歳以上の人口:3,623万人(総人口の29.1%)。
- 今後の高齢化の見通し
- 2037年:3人に1人が65歳以上。
- 2070年:2.6人に1人が65歳以上。(内閣府「令和6年版高齢社会白書」2023)
- 2022年の65歳以上の認知症・MCI有病率(二宮利治, 九州大学 2024)
- 認知症:12.3%
- 軽度認知機能障害(MCI):15.5%
- 合計27.8%が認知機能障害を有する
- MCI(軽度認知障害)
- 認知症の前駆状態であり、年間10~30%が認知症へ進行するが、正常化するケースもある(Iwatsubo T et al., 2018)。
- 睡眠障害は、MCIや認知症発症リスクの増加と関連(Nadia G et al., 2019)。
研究目的
MCIの予防を目的として、高齢者における睡眠と認知機能の関係を検討する。
研究方法
対象者
- 地域在住高齢者 31名(男性11名、女性20名)
- 平均年齢:72.6歳 ± 4.3
方法 1:アンケート・認知機能評価
- 既往歴調査(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
- 認知機能検査
- HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)
- TDAS(タッチパネル式認知機能検査)
方法 2:睡眠評価
- 睡眠に関するアンケート・検査
- PSQI(ピッツバーグ睡眠質問票) → 過去1ヶ月間の睡眠の質を評価
- アクチグラフィを7日間装着 → 総睡眠時間・睡眠効率・中途覚醒時間を測定
MCI群・非MCI群の分類
- TDASスコア7点以上14点未満 → MCI群(8例)
- TDASスコア7点未満 → 非MCI群(23例)
研究結果(N=31)
基本情報
- 高血圧合併率:45.2%
- 脂質異常症合併率:32.3%
- 糖尿病合併率:6.5%
- HDS-Rスコア:29点
- TDASスコア:2.0点
- PSQI(睡眠の質スコア):5.5点 ± 1.9
- 総睡眠時間:394分(約6時間34分) ± 60分
- 睡眠効率:95.2%
- 中途覚醒時間:20分(Q1: 15.2分, Q4: 37.6分)
MCI群と非MCI群の比較
- 高血圧合併率:
- MCI群 87.5%
- 非MCI群 30.4%(MCI群で有意に高い)
- 睡眠指標
- 睡眠効率:
- MCI群 90.4%
- 非MCI群 95.6%(MCI群で有意に低下)
- 中途覚醒時間:
- MCI群 39.1分
- 非MCI群 17.5分(MCI群で有意に長い)
- 睡眠効率:
TDASスコアとの相関
- TDASスコアが高い(認知症が重症)ほど
- 睡眠効率は低下
- 中途覚醒時間が延長
(筆者補足)TDASスコアとは?
- 点数が高いほど認知症が重症。
- カットオフ値13/12点でAD群と健常対照群を識別する感度96%、特異度97%(高い精度)。
考察
高齢者における睡眠効率の低下と認知機能低下の関連
- MCI群では睡眠効率が低く、中途覚醒時間が長い → 認知機能低下との関連が示唆された。
- 慢性的な睡眠覚醒リズムの乱れがアルツハイマー型認知症を促進する可能性(Christian B et al., 2015)。
睡眠障害と脳のアミロイドβ除去機能(グリンファティック系)
- 中途覚醒時間の延長・睡眠呼吸障害による睡眠の断片化が、アミロイドβの除去を妨げる可能性(Xie L et al., 2013)。
- アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病の発症・進行に関与。
高血圧とアルツハイマー病の関連
- MCI群では高血圧合併率が有意に高かった(87.5%)。
- 高血圧がアルツハイマー病の進行を悪化させる可能性のあるメカニズム
- 酸化的微小血管損傷の増加
- 脳の炎症促進
- 血液脳関門(BBB)の破壊
- アミロイドβのグリンファティッククリアランス障害(Zoltan U et al., 2021)
まとめ
- 睡眠効率の低下・中途覚醒時間の延長は、MCI(軽度認知障害)と関連していた。
- 慢性的な睡眠の乱れが、認知機能低下やアルツハイマー病の進行を促進する可能性がある。
- MCI群では高血圧合併率が高く、高血圧がアルツハイマー病のリスク因子となる可能性が示唆された。
- 睡眠障害の改善が、MCIの予防や認知機能の維持につながる可能性がある。