好酸球性副鼻腔炎:病態と治療(ベーシック)

2025年3月22日・23日

日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

福井大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
加藤幸宣先生

はじめに:好酸球性副鼻腔炎の基本

ECRS(Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis)は従来の慢性副鼻腔炎と異なる病態で、成人に発症します。両側性の鼻茸、嗅覚障害、粘性鼻汁、喘息やアスピリン不耐症との合併が特徴です。ステロイドには反応しますが、再発性・難治性の疾患です。

疫学と難病指定

慢性副鼻腔炎は日本で約100万〜200万人とされ、そのうちECRSは約2万人。厚生労働省の指定難病に登録されています。

解剖と画像所見の理解

副鼻腔は前頭洞・篩骨洞・上顎洞・蝶形骨洞の4領域で構成されます。ECRSでは篩骨洞優位のCT陰影が特徴で、非ECRSとの鑑別に有用です。

JESRECスタディと診断基準

2015年のJESRECスタディでは、鼻茸の病理診断と術前評価、重症度分類が確立されました。
確定診断基準は、鼻茸組織中の好酸球数が70個/HPF以上。再発率とも相関があり、予後予測にも使われます。

JESRECスコア(合計11点以上でECRS診断):

  • 両側性病変:2点
  • 鼻茸の存在:2点
  • 篩骨洞優位のCT所見:4点
  • 血中好酸球比率6%以上:3点

病態生理:Type2炎症と関連因子

Type2炎症が中心で、TSLP・IL-25・IL-33がILC2やTh2を活性化し、IL-4/5/13を産生。これにより好酸球浸潤やIgE産生、鼻茸形成や嗅覚障害が起こります。

発現遺伝子とCST1

CST1(Cystatin SN)はポリープ内の好酸球数と正相関。IL-33刺激により発現が増加。エオタキシン-1やペリオスチン分泌を促進し、組織線維化にも関与。Cystatin AはCST1と逆の抑制的作用を持ちます。

凝固・線溶系の関与

凝固系は活性化し、線溶系(tPA)は抑制。これによりフィブリンが過剰蓄積し、鼻茸形成が促進されます。短鎖脂肪酸やレチノイン酸はtPAを誘導する可能性があります。

鼻腔NOの役割

NOは抗菌・抗炎症作用があり、ECRSではその産生が低下。鼻腔NOは副鼻腔機能の評価指標となります。福井大学ではルーチンで測定を実施。

治療戦略

【手術療法(ESS)】
内視鏡下副鼻腔手術(ESS)が第一選択。副鼻腔の単洞化により通気・排泄を改善。ナビゲーションシステムの活用で安全性が向上。術後は鼻洗浄、点鼻ステロイドが再発防止に不可欠。

【ステロイド療法】
経口ステロイドは短期投与(10日間の漸減)が推奨され、漫然使用は副作用のため避けられるべき。

【生物学的製剤】

  • デュプリマブ(Dupilumab):IL-4/13受容体阻害。2週ごと皮下注。術後再発やステロイド抵抗例に有効。
  • メポリズマブ(Mepolizumab):IL-5阻害。4週ごと皮下注。重症例で有効。

バイオ製剤の導入タイミングは再発後が多いが、術前導入の検討も進行中。

今後の展望

CST1やIL-33、ペリオスチンなどを標的とした治療や、NO・線溶系因子を用いた個別化医療の実現が期待されています。


好酸球性副鼻腔炎:病態と治療(アドバンス)

前田陽平先生(JCHO大阪病院 耳鼻咽喉科)

講演のポイント

  • 診断の視点
  • 通常の副鼻腔炎との違い
  • 患者との治療目標共有
  • 再発への対応
  • 生物学的製剤の選択基準

ECRSの分類と鑑別

EPOS2020分類では「びまん性」「Type 2炎症」に分類。喘息などとの合併が多い。
AFRS(アレルギー性真菌性副鼻腔炎)は真菌を含むムチン蓄積が特徴で、画像やIgEで鑑別。手術でのムチン除去が根本治療。

診断と重症度分類

JESRECスコア(11点以上)で臨床診断、鼻茸中好酸球70個/HPF以上で確定診断。
重症度分類は、気管支喘息、NSAIDs過敏症、末梢血好酸球数で行う。

臨床所見と鑑別

典型所見:嗅覚障害、成人発症喘息、NSAIDs過敏、保存的治療への抵抗性。
ポリープを伴わないECRSや、診断基準に満たない症例でもECRSに準じた治療が必要。

【注意すべき疾患】

  • AFRS:真菌ムチン、IgE高値、石灰化
  • EGPA:神経症状、非常に高い好酸球数、ANCA・RFも参考に

治療戦略

保存的治療(点鼻ステロイド、短期内服ステロイド)から開始。
マクロライド少量長期療法はECRSには効果薄。

Shared Decision Making(SDM)

「体質による炎症」として説明し、「根治でなく再燃しにくい環境作り」が手術の目的と伝える。
治療ゴールはステロイドなしでQOLを維持すること。内服は年1〜2回以下が目標。

ESSのタイミングと意義

早期介入でQOLと喘息予防効果。病悩期間が長いほど予後が悪化。
手術は気道全体の炎症制御にも寄与し、喘息発症の予防効果もある。

再発への対応

再発時はCT評価を行い、未開放部位があれば再手術。
術後再発時は短期ステロイドを行い、頻回再燃にはバイオ製剤導入を検討。

手術成績(2022年4月〜2023年12月)

ESS 223例中、ECRS 101例。
再手術は2例(2%)、バイオ導入12例(12%)。85%以上が良好維持。再手術例にポリープ再発はなし。

生物学的製剤の使い分け

製剤名標的効果発現適応副作用投与間隔
デュピルマブIL-4/134〜8週でピークアトピー・喘息・蕁麻疹など好酸球増多・結膜炎2週→最大14週間隔可
メポリズマブIL-5半年程度EGPA・喘息注射部位反応4週ごと
  • デュピルマブは早期効果が特徴でQoL改善が早い
  • 好酸球高値例やEGPAではメポリズマブが望ましい
  • デュピルマブ使用前にはANCA測定が推奨される

ESSの将来展望

「単洞化」による構造再構築が主流に。薬剤溶出ステントなどの局所治療も進化中。
従来の「機能温存」から「より生理的な通気構造の構築」へとシフトしている。

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