好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の病態と治療(アドバンス)

2025年3月22日・23日

日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

地域医療機能推進機構大阪病院 耳鼻咽喉科
前田 陽平先生

講演のポイント

  • 診断の考え方
  • 通常の慢性副鼻腔炎との治療の違い
  • 治療目標の共有(患者とのSDM)
  • 再発への対処法
  • 生物学的製剤の使い分け

1. ECRSの病態分類(EPOS2020に基づく)

  • 慢性副鼻腔炎は、原発性/二次性に分類される。
  • 病変の広がり・炎症型により、局在性/びまん性Type 2/非Type 2炎症に細分類。
  • ECRSは「びまん性・Type 2炎症」に該当し、喘息等の他のType 2疾患との関連が強い。

2. 鑑別すべき疾患:アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)

  • I型アレルギーを背景に、真菌を含むムチンの貯留が特徴。
  • CT:石灰化所見、MRI:T2低信号域(ブラックアウト)
  • ESSによるムチン除去が根本治療
  • 発表施設では18例の手術後、再発ゼロ

3. ECRSの診断と重症度分類

  • **JESRECスコア(11点以上)**により臨床診断:
    • 両側性病変
    • 鼻茸
    • 篩骨洞優位の陰影
    • 末梢血好酸球比率
  • 確定診断には、組織で**好酸球の浸潤(1視野あたり70個以上)**を確認。
  • 重症度は、以下により判定:
    • 気管支喘息の有無
    • NSAIDs過敏症
    • 末梢血好酸球数

4. 臨床所見と診断の実際

  • 典型的所見
    • 嗅覚障害
    • 成人発症喘息
    • NSAIDs過敏症
    • 血中好酸球高値
    • 保存療法や手術後も再発する難治性
  • 注意点
    • ポリープがないECRSもある
    • 嗅覚障害とステロイド反応性が高い場合はECRSを疑う
    • ECRSと誤診されやすい疾患:
      • AFRS
      • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA):しびれ、非常に高い好酸球、ANCA陰性例もあり

5. 治療戦略

  • 保存的治療(点鼻ステロイド、短期経口ステロイド)から開始
  • マクロライド少量長期投与は無効のことが多い
  • 効果が乏しければ**ESS(内視鏡下副鼻腔手術)**を検討

SDM(Shared Decision Making)

  • 「炎症を起こしやすい体質」と説明
  • 手術の目的は「再発しにくい環境づくり
  • 治療ゴール:
    • ステロイド使用なしでQOL維持
    • ステロイド内服は年1〜2回以下を目標

6. ESSのタイミングと意義

  • 早期介入が予後改善に有効
  • 長期間放置すると術後のQOLが低下
  • 手術により気道全体の炎症(喘息)にも好影響
  • デュピルマブも早期投与が効果的
  • ECRS患者はその後に喘息発症リスクが高く、手術により抑制される可能性あり

7. 再発時の対応

  • CTで手術後の状態を評価
  • 未開放部位あれば再手術
  • 再手術後でも再発する場合:
    • 短期ステロイド投与
    • 頻回再燃には生物学的製剤導入
    • 術後早期再発例には初期からバイオ導入も考慮

8. 手術成績(前田先生の施設)

  • ESS施行例:223例(2022年4月〜2023年12月)
    • 慢性副鼻腔炎:163例
    • ECRS:101例
  • 術後1.5年時点:
    • 再手術:2例(2%)
    • 生物学的製剤導入:12例(12%)
    • 85%以上が良好な状態を維持
    • ポリープ再発による再手術例なし

9. 生物学的製剤の使い分け

共通事項

  • 指定難病であり、医療費助成対象(月1〜3万円の自己負担)

デュピルマブ(抗IL-4/13)

  • 4〜8週で効果発現ピーク
  • 適応合併症:
    • アトピー性皮膚炎
    • 喘息
    • 蕁麻疹
    • 結節性痒疹など
  • 副作用:
    • 好酸球増多
    • 結膜炎
  • 投与間隔:2週→4週

メポリズマブ(抗IL-5)

  • 効果発現:半年程度
  • 適応合併症:
    • EGPA
    • 喘息
  • 副作用:
    • 注射部位反応
  • 投与間隔:4週ごと

使い分けのポイント

  • デュピルマブは即効性・早期QOL向上に優れる
  • 好酸球高値(150/μL以上)やEGPA合併例にはメポリズマブが適
  • ANCA陽性の確認を投与前に行うことを推奨

10. ESSの将来展望

  • 単洞化」による病態制御が主流へ
  • 薬剤溶出ステントの導入による局所治療の進化
  • これまでの「機能温存」から「より生理的な通気構造」の構築を目指す治療へ

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