好酸球性中耳炎(ベーシック)

2025年3月22日・23日

日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

弘前大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
高畑淳子先生

1. 好酸球性中耳炎(EOM)の診断

1.1 診断基準

2011年に策定された診断基準に基づき、大項目と小項目の両方を満たした場合にEOMと診断されます。

■ 大項目

  • 「好酸球浸潤が著明な中耳貯留液が存在する中耳炎または慢性中耳炎」であること
    • 病理所見として、2核・赤い顆粒を持つ好酸球や、脱顆粒した顆粒が多数認められます。

■ 小項目

  1. にかわ状の中耳貯留液
    • 耳小骨に穴を開けて吸引すると棒状に出てくるほど粘度が高い。EOMに特有の所見。
  2. 従来の治療への抵抗性
    • 滲出性中耳炎への一般的治療が奏効しない。
  3. 鼻病変の合併
    • 好酸球性副鼻腔炎などの鼻病変を併発。
  4. 除外診断
    • EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)および好酸球増加症候群を除外する。

※なお、1型アレルギーは診断基準には含まれていません


1.2 診断手順

  • 以下のようなケースでまずEOMを疑うことが重要です:
    • 難治性中耳炎
    • 膠状の貯留液
    • 気管支喘息合併の中耳炎
  • 疑いがあれば、耳漏や中耳貯留液のスメア・病理検査で好酸球を確認し、診断基準に照らして確定します。

1.3 分類と重症度

EOMは以下の2型に分類されます:

  • 滲出性型(鼓膜穿孔なし)
  • 慢性中耳炎型(鼓膜穿孔あり)

慢性中耳炎型は鼓室内肉芽の状態で以下のグレードに分類:

グレード所見
グレード1肉芽なし
グレード2鼓室内に肉芽あり
グレード3肉芽が鼓室外へ突出

グレードが高いほど炎症が強く、感音難聴のリスクも高い傾向があります。


2. 疫学と合併症

  • 有病率:2004年に10万人あたり0.12人 → 2017年には7.8人まで上昇
  • 性別差:ほぼ男女同数
  • 年齢層:50代に多い

合併症の頻度

  • 気管支喘息:90〜100%
  • 好酸球性副鼻腔炎:60〜70%
  • 両者併存:半数以上

演者の施設では、両側性(31例)>片側性(15例)
慢性中耳炎型(58例)>滲出性型(24例)


3. 病態生理

3.1 Type 2 炎症のメカニズム

Th2サイトカイン(IL-5, IL-13, IL-4)を中心とする2型炎症が中心。

  • 獲得免疫経路
    粘膜刺激 → 上皮性サイトカイン(TSLP, IL-25, IL-33)分泌 → Th2細胞活性化
  • 自然免疫経路
    ILC2が直接刺激され、即座にTh2サイトカインを分泌

3.2 サイトカインと好酸球の役割

  • IL-5:好酸球の産生と活性化に関与
  • IL-4 / IL-13:好酸球の遊走促進、IgE・ペリオスチンの産生誘導 → 線維化・肉芽形成

中耳貯留液からはIL-5、エオタキシン、ECP、EDNなどが検出され、IgEや特異的IgEも検出されることがあります。


3.3 特徴的炎症とEtosis

  • 耳管開放症が多い:炎症性物質が中耳に侵入し、2型炎症を引き起こす
  • 好酸球性ムチン:Etosis(好酸球由来のDNA放出)による形成

3.4 組織所見と内耳障害

  • MBP(主要塩基性蛋白):中耳粘膜に浸潤
  • ペリオスチン:線維化に関与
  • TSLP:耳管周囲で高発現 → アレルギー炎症の起点の可能性あり
  • 動物モデル:中耳炎により内耳にも好酸球浸潤 → 感音難聴を誘発

4. 治療

4.1 基本治療

全身療法

  • 抗ロイコトリエン薬+PDE阻害薬(例:モンテルカスト+ケタス®)
  • 効果不十分な場合:抗ヒスタミン薬、ラマトロバン追加

局所療法

  • ステロイド点耳薬(穿孔例で有効)
  • ステロイド点鼻薬(耳管経由の炎症制御)

※喘息患者への吸入指導:吸入後に鼻から呼出し


4.2 難治例への対応

  • ステロイド鼓室内注入:ケナコルト®を週1回から開始
  • 膠の除去:ヘパリン耳浴+吸引除去が有効
  • 全身ステロイド:急性期や好酸球増加時にPSL 0.5–1mg/kg
  • 抗菌薬対応:感染徴候あり時、耐性菌に注意し選択
  • 鼓膜チューブの抜去:感染源になりうるため要検討

4.3 生物学的製剤(EOM単独への保険適用はなし)

  • デュピルマブ(IL-4/13受容体阻害)
  • メポリズマブ、ベンラリズマブ(IL-5/IL-5R抗体)
  • テゼペルマブ(TSLP阻害)
  • オマリズマブ(IgE抗体)※基本的には他製剤優先

デュピルマブは副鼻腔炎合併例で良好な効果を報告


4.4 手術療法

  • 鼓室形成術/鼓膜形成術:基本的に適応外(炎症制御が前提)
  • 人工内耳埋込術:高度難聴例に検討、生物学的製剤による術前改善例あり

5. 鑑別診断:EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

  • 診断後も発症の可能性あり
  • 注意すべき症状:
    • 神経症状(しびれ)
    • 持続する発熱
    • 紫斑・体重減少など
  • 末梢血好酸球>21% の急増は重要なサイン
  • ANCA検査を一度は実施推奨(陽性率30〜40%)

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