アトピー性皮膚炎の症状と最新治療法

2025年3月22日・23日

日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

(2024年最新ガイドラインに基づく)


はじめに

アトピー性皮膚炎の治療は、病態理解の進展に伴い大きく変化している。2024年の最新ガイドラインに基づき、3つの講演内容を統合して、アトピー性皮膚炎の症状、病態、治療についてまとめる。


1. アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の主な臨床症状は以下の3点に集約される:

  • 皮膚の炎症
  • かゆみ(掻痒)
  • 乾燥(ドライスキン)

● かゆみ(掻痒)について

  • アトピー性皮膚炎のhallmark(特徴的症状)
  • かゆみの分類:
    • 急性:6週間以内
    • 慢性:6週間以上(アトピー性皮膚炎ではこちらが主)
  • ハイパークネシス(かゆみ過敏)
  • アロクネシス(非刺激性の刺激でもかゆみを感じる)

2. 病態の理解

アトピー性皮膚炎の発症には複数の要因が関与しており、主に以下の3つが重要である。

2.1 皮膚バリア機能の障害

  • 皮膚の角質層と表皮が、水分蒸発防止と異物侵入防止のバリアを担う。
  • フィラグリンの発現低下・遺伝的変異が報告されており、バリア機能が脆弱になる。
  • タイトジャンクションの障害も確認されている。

2.2 2型炎症(Type 2 Inflammation)

  • 主要なサイトカイン:IL-4、IL-13、IL-31
  • 各サイトカインの特徴
    • IL-13:皮膚病変に作用し、バリア機能障害・かゆみ誘発
    • IL-4:リンパ節でT細胞分化・IgE産生を促進
    • IL-31:神経に作用し、強いかゆみを引き起こす
  • 関与細胞:Th2細胞、TC2細胞、ILC2、好塩基球、樹状細胞など

2.3 かゆみのメカニズム

  • 伝達経路:皮膚 → 末梢神経 → 脊髄 → 脳
  • かゆみ物質(Pruritogen)例:ヒスタミン、IL-31
  • IL-4/13/31は神経過敏状態を誘導
  • オピオイド系の関与:
    • MOR(ミューオピオイド受容体):かゆみを促進
    • KOR(カッパオピオイド受容体):かゆみを抑制
  • 夜間のかゆみ増強:下行性抑制系の機能低下
  • 表皮内「かゆみ抑制神経」の減少も一因

3. アトピー性皮膚炎の最新治療法

3.1 基本治療(標準治療)

  • 外用療法+スキンケア+悪化因子の管理
  • 個別化医療が重視され、エビデンスの蓄積が進められている
  • プロアクティブ療法:寛解期のステロイド使用で再燃予防
  • 新規外用薬(例:デルゴシチニブ軟膏)のガイドラインでの位置づけは今後の課題

3.2 生物学的製剤(バイオロジクス)

サイトカインや受容体を標的とする抗体製剤。

製剤名標的特徴
デュピルマブ(デュピクセント)IL-4RαIL-4/13を同時に阻害。2日目からかゆみ改善。
トラロキヌマブ(アトラーザ)IL-13IL-13を特異的に阻害。
レブリキズマブ-ラア(イブグリース)IL-13同上
ネモリズマブ(ミチーガ)IL-31受容体かゆみに特化した即効性の効果を持つ。

3.3 JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害薬)

JAK/STAT経路をブロックし、サイトカイン信号やかゆみを抑制。

● 内服薬

  • バリシチニブ(オルミエント®)
  • アブロシチニブ(サイバインコ®)
  • ウパダシチニブ(リンヴォック®):関節症性乾癬にも適応あり

● 外用薬

  • デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®):塗布当日に効果を実感することも

作用はサイトカインシグナルにとどまらず、TRPV1などのイオンチャネル阻害も関与
※副作用への注意が必要


3.4 その他の治療法

  • 光線療法:ナローバンドUVBが代表。オピオイド系の調整、炎症・サイトカイン抑制など多面的に作用。
  • 局所麻酔薬:リドカインなど、ナトリウムチャネル遮断による一時的かゆみ抑制。
  • オピオイド作動薬:ジフェリケファリン(KOR刺激薬)などが研究段階。
  • 抗うつ薬:ミルタザピンなどは夜間のかゆみと睡眠障害の緩和に有効。
  • GABA作動薬:ガバペンチン、プレガバリンなどが神経性かゆみに効果を示す可能性。

3.5 リアルワールドデータとデジタルヘルス

  • アトピオ」のような症状共有アプリが、患者主導のデータ収集を支援
  • 自撮り写真・感情・治療への思考を可視化・蓄積
  • AIや自然言語処理を用いたデータ分析で、診療室外の行動や感情傾向を把握
  • ダークサイド(治療拒否や中断)」から患者を救う手段としても注目

おわりに

アトピー性皮膚炎は、「かゆみ」「炎症」「バリア障害」が複雑に絡み合う疾患であり、近年の治療は科学的知見に基づく個別化医療に大きく進化している。今後も新たな薬剤の登場やデジタルツールの活用により、患者のQOL向上が期待される。

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