2025年3月22日・23日
日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。
(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
東海大学医学部 総合診療学系 小児科学
山田 佳之先生
山田 佳之先生
1. 消化管アレルギーの全体像
- 食物アレルギーは毒性や他疾患を除外した後に現れるアレルギー反応。
- 特異的IgEの関与により分類:
- 即時型IgE依存性
- 非IgE依存性
- その中間に位置するEGID(好酸球性消化管疾患)
2. 好酸球性消化管疾患(EGIDs)
● 定義と分類
- 消化管粘膜に好酸球が浸潤するアレルギー性炎症性疾患。
- 旧称「好酸球性胃腸炎」は廃止され、以下の名称で分類:
- 好酸球性食道炎(EoE)
- 好酸球性胃炎(EoG)
- 好酸球性腸炎(EoN)
- 好酸球性大腸炎(EoC)
- EoE以外をNon-EoE EGIDと呼ぶ。
● EoEの疫学と特徴
- 欧米では成人中心に増加:成人50/10万人、小児30/10万人。
- 日本ではNon-EoE EGIDが多い。
● 診断
- 内視鏡検査と生検が必須。
- 特徴的所見:縦走溝、輪状襞、白斑など。
- 病理診断基準:好酸球15個/HPF以上、基底細胞過形成。
- 粘膜所見がなくても生検を行うことが重要。
● 症状と年齢差
- 乳幼児:非特異的症状が多い(見逃されやすい)
- 成人:QOL低下、小児では成長障害も
● 治療
- 第一選択:PPI(プロトンポンプ阻害薬)
- 無効時:P-CAB(ボノプラザン)や局所ステロイド(吸入薬を嚥下・ブデソニド懸濁液)
- 食物除去療法:全除去→再導入
- 生物学的製剤:
- デュピルマブ(IL-13阻害)※米国承認済
- レブリキズマブなど治験中
- 機序:
- PPIはpH調整+AHR阻害でIL-13抑制の可能性
● 病態生理
- 主にTh2免疫、IL-13・IL-5・TSLP・IL-33などが関与
- 好酸球を誘導するエオタキシン-3がEoEに特異的
3. Non-EoE EGID
● 特徴
- EoEとは異なり末梢血好酸球増加が診断のヒント。
- 発症時間に幅があり、診断が難しい。
- 重症例では全層生検・腹水穿刺も必要となることがある。
● 十二指腸EGID(EoD)
- Non-EoEの一種で、難治性潰瘍を伴う重症例が多い。
● 大腸EGID(EoC)
- 病態が他のEGIDsと異なる可能性あり(Th2以外の経路)
4. 食物蛋白誘発性腸症(FPIES)
● 定義と分類
- 非IgE依存性の消化管アレルギー
- 主に乳児・小児が対象だが、成人例も増加中
- 国際的にはNon-IgE GIFAsと呼ばれる
- 種類:
- FPIES(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)
- FPIAP(アレルギー性直腸結腸炎)
- FPE(腸症)
● 症状
- 急性型:摂取後1〜4時間以内の嘔吐・下痢
- 慢性型:連日の摂取による慢性増悪
- 診断基準(急性型):
- 主症状:嘔吐
- 皮膚・呼吸器症状なし
- マイナー基準3つ以上で診断
● 疫学
- 新生児期:牛乳FPIESが多い
- 離乳期以降:卵(特に卵黄)FPIESが増加
- 重症例:嘔吐、血便、敗血症様症状との鑑別が必要
● 最近の話題
- 卵黄ASLTで抗原特異性確認
- プロカルシトニン、TARCなどバイオマーカーの有用性
- 耐性誘導の可能性が報告されている
- 経口負荷試験の方法が確立
- たんぱく0.3g/kgを3分割し20〜30分間隔で投与、2〜6時間観察
5. FPIESの治療と対応
- 原因食物の除去と再開の慎重な管理
- アドレナリンは無効、輸液と経過観察が基本
- 制吐薬:オンダンセトロン、グラニセトロン(保険適用外)
- 6時間の観察が推奨される
6. 成人FPIES
● 暫定診断基準(2022年)
- 発症:摂取後1〜6時間以内の消化管症状のみ
- 急性腹痛・下痢・嘔吐(60%)
- 再現性のある発症エピソードが2回以上
- 原因食物除去で再発予防
- 他疾患(アニサキス症、感染症等)の除外
● 原因食物(日本)
- 魚介類が最多
- 魚類:サバ、アジ、イワシ、フグ
- 魚卵:イクラ、ウニ
- 貝類:ホタテ、カキ、アワビなど
- 鶏卵、キノコ、オート麦も報告あり
● 鑑別支援ツール
- 成人FPIESスコアリングシステム(Watanabe et al. 2024)
- カットオフ266ポイントで、感度100%、特異度87%、AUC 0.987
- 項目例:
- 初発年齢27歳以上:114pt
- エピソード11回以上:193pt
- 発症時間(時間)×73pt
- 嘔吐:350pt ほか
7. まとめ・最新動向
- 欧米で小児Non-EoE EGIDガイドライン発表
- ブデソニド懸濁液が米国でEOE治療薬として承認、日本でも導入期待
- FPIESの診断精度向上と成人診断基準の整備が今後の課題
- 少量摂取による耐性誘導やプロカルシトニンなど新たな指標も注目
- 社会的認知と臨床整備の両輪が求められている
