N-ERD(アスピリン喘息)

2025年3月22日・23日

日本アレルギー学会主催の第11回総合アレルギー講習会に参加して、アレルギー疾患に関するを最新の知見と実技指導をうけてきました。
以下の通り報告します。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器感染症内科学分野
小屋俊之先生

■N-ERD(アスピリン喘息)の概要

NSAIDs不耐症は大きく気道型と皮膚型に分類される。皮膚型は蕁麻疹や血管浮腫を呈し、気道型はかつてアスピリン喘息と呼ばれていたが、近年ではNSAIDs-exacerbated respiratory disease(N-ERD)と呼ばれている。

N-ERDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を持つNSAIDsにより症状を呈する非アレルギー性の過敏症であり、I型アレルギーとは異なる病態である。成人喘息患者の約5~10%に認められ、ほぼ全例が好酸球性副鼻腔炎と鼻茸を合併する。


■病態生理

N-ERDの病態にはCOX-1阻害によるシステイニルロイコトリエンの急増が関与し、強い炎症を引き起こす。加えて、ILC2(2型自然リンパ球)が活性化し、上皮由来サイトカイン(IL-33、TSLP)との相互作用により炎症が持続する。

N-ERDではPGE2のレベルが低く、ロイコトリエンの産生が過剰となる。また、血小板と好酸球、マスト細胞の相互作用も重要であり、マスト細胞のIgE受容体占有率の高さ、PGE2の低下、ブドウ球菌のスーパー抗原などがマスト細胞活性化に関与する。


■臨床症状と診断

N-ERDの診断は困難であり、問診と負荷試験が主な手段。NSAIDs服用後1~2時間以内に発症し、強い鼻汁、鼻閉、喘息発作、顔面紅潮、結膜充血、消化器症状を伴う。好酸球性中耳炎(50%)、好酸球性胃腸炎(30%)も合併。

診断確定には負荷試験が必要であるが、リスクが高く、経験豊富な医師による実施が望ましい。


■使用可能な薬剤

・アセトアミノフェン(300mg以下/回) ・選択的COX-2阻害薬(セレコキシブ、エトドラク、メロキシカム) ・塩素性消炎薬(チアラミド) ・内服ステロイド、漢方薬、モルヒネ、ペンタジン ・添加物(タートラジンなど)を含まない一般薬 ・静注用ステロイド:デカドロン、リンデロン(リン酸エステル型) ※コハク酸エステル型ステロイドは禁忌


■減感作療法

アスピリン負荷後の「不応期」を利用し、段階的にアスピリンを増量・維持することで耐性を獲得する方法がある。谷口先生らのプロトコールに基づき、慎重に実施されるべき。


■生物学的製剤の効果

・オマリズマブ(抗IgE抗体):アスピリン負荷によるロイコトリエン上昇を抑制し、耐性獲得に寄与 ・デュピルマブ(抗IL-4Rα抗体):ロイコトリエンE4抑制、PGE2のアップレギュレーションに関与 ・抗IL-5系抗体:好酸球には効果あるが、N-ERD特有の病態には限定的

これらの生物学的製剤は、N-ERDの治療において重要な役割を果たしている。


本講演では、N-ERDの病態、診断、治療方針について体系的な知識が整理され、今後の臨床対応に役立つ情報が示された。

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