閉塞性肺疾患におけるType2炎症

2025年4月11日(金曜日)~13日(日曜日)に
第65回日本呼吸器学会学術講演会が開催されました。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

ランチョンセミナー14
閉塞性肺疾患におけるType2炎症
杉浦久敏先生 東北大学内科病態学講座呼吸器内科学分野教授

Type2炎症とは

炎症にはType1からType3まで存在するが、Type2炎症はIL-4、IL-5、IL-13といったサイトカインによって特徴づけられる炎症である。この炎症にはTH2細胞、ILC2(自然リンパ球2型)、好酸球、マスト細胞、好塩基球などが関与する。

COPDにおけるType2炎症の意義と実態

COPD患者においては、標準的なトリプル療法(ICS/LABA/LAMA)を行っても51%の患者で症状コントロールが不十分であるというアンメットニーズが存在する。
近年の研究により、COPD患者の最大30%から40%に、喀痰中または血中の好酸球増加として評価されるType2炎症が認められることがわかってきた。このType2炎症はCOPD増悪リスクと明確に関連しており、血中IL-4が高値の患者は増悪しやすい(OR 2.24)。
また、血中好酸球数が300/μL以上の患者では増悪リスクが1.32倍(OR 1.32)であり、好酸球数が増加するにつれてリスクはさらに上昇する(500/μL以上でOR 1.6倍)。

COPDにおけるTreatable Traits

COPD治療においてTreatable Traits(治療可能な形質や特徴)という概念が重視されている。これには咳、痰、息切れといった症状、呼吸機能低下、呼吸不全、そして増悪などが含まれるが、Type2炎症の程度が強いほど呼吸機能は低い傾向にあり、Type2炎症も重要なTreatable Traitの一つである。

Type2炎症の病態生理とCOPD

COPDの病態において、Type2炎症は単なる併存ではなく、病態形成そのものに関与している可能性が示唆されている。
健常対照群と比較してCOPD患者では気道におけるILC2が増加している。TH2細胞やILC2から産生されるIL-4やIL-13は、好酸球の動員や活性化、気道粘液産生亢進、そしてマクロファージからのMMP-12(マトリックスメタロプロテアーゼ12)産生誘導などを介して、肺気腫形成や気道リモデリングに関与する。
演者らの報告では、好酸球や好塩基球由来のサイトカインがMMP-12産生を介して肺気腫を悪化させる(動物モデル)。喘息では網状基底膜の肥厚が特徴的だが、COPDではType2炎症が肺胞壁の線維化に関与する点が異なる。
現在、臨床現場で利用可能なCOPDにおけるType2炎症のバイオマーカーとしては血中好酸球数が唯一である。FeNOの位置づけはまだ研究段階である。

デュピルマブの臨床試験成績(BOREAS/NOTUS試験)

デュピルマブ(抗IL-4/13受容体抗体)のCOPDに対する有効性を検証した主要な臨床試験としてBOREAS試験とNOTUS試験がある。これらの試験は同様のデザインで実施された。対象は、トリプル療法などを受けているにも関わらず増悪を繰り返し、血中好酸球数が300/μL以上のCOPD患者である。
プライマリーエンドポイントである中等度または重度の年間増悪率は、プラセボ群と比較してデュピルマブ群で約30%有意に抑制された。
これは既存の強力なトリプル療法使用下での上乗せ効果である。
副次評価項目である呼吸機能(気管支拡張薬投与前FEV1)は、投与後早期(2週)から改善し、ベースラインから160mL増加、プラセボとの差は80mLであり、52週間にわたり効果が持続した。QOL評価(SGRQスコア)も有意に改善し、臨床的に意義のある最小差(MCID)である4ポイント以上の改善を達成した患者割合は、デュピルマブ群で51.2%(プラセボ群33.4%)であった。
E-RSスコアで評価した呼吸器症状(咳、痰)も有意に改善した。バイオマーカーとして、FeNOは投与早期から低下し、血清IgEは緩やかに低下した。
血中好酸球数は投与直後に一過性に上昇するものの、その後低下傾向を示した。有害事象プロファイルは概ね良好であった。

デュピルマブの適正使用について(医療者として重要)

以下の条件を満たす必要がある。
1. 投与方法 成人に300mg皮下投与、2週間隔 初回も300mg(※喘息は600mg)
2. 投与対象(基本条件) トリプル療法など標準治療後も増悪を繰り返す安定期COPD 血中好酸球数≧300/μL(Type2炎症関与)
3. 最適使用推進ガイドライン(主な条件) COPD確定診断 %FEV1:30%超〜70%以下 トリプル療法(またはLABA/LAMA)を3ヶ月以上継続 年2回以上の中等度増悪(うち1回以上はOCS投与)、または年1回以上の重度増悪、 スクリーニング時の好酸球数≧300/μL
4. 非薬物療法の管理要件 禁煙指導・呼吸リハ・ワクチン接種を含む管理計画の策定と実施
5. 診療報酬(摘要欄)記載内容 検査値・増悪歴・治療歴・非薬物療法の実施年月日など
6. 投与継続の評価時期と判断 開始後12週・52週で肺機能・症状・増悪を総合評価 効果不十分であれば中止を検討

今後の展望とまとめ

GOLDガイドラインでは、すでに2025年版(草案)において、好酸球数高値の増悪を繰り返す患者に対する治療選択肢としてデュピルマブが記載されている。
日本呼吸器学会のCOPDガイドライン第7版(2026年4月改訂予定)においても、この薬剤の位置づけが議論されている。

コメントは停止中です。